会計名及び科目 | 一般会計 (組織)文部科学本省 (項)公立文教施設整備費 |
平成12年度以前は、
(組織)文部本省 (項)公立文教施設整備費 |
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部局等の名称 | 文部科学本省(平成13年1月5日以前は文部本省) |
補助の根拠 | 義務教育諸学校施設費国庫負担法(昭和33年法律第81号)、へき地教育振興法(昭和29年法律第143号)等 |
補助事業の概要 | 公立の小学校、中学校等の学校施設及びへき地学校等に勤務する教職員のためのへき地教員宿舎の整備を行う市区町村等に対してその経費の一部を補助するもの |
検査の対象とした市区町村 | 市59、特別区12、町85、村27計183市区町村 |
検査の対象とした廃校等数及びへき地教員宿舎数 | (1) 廃校等 | 466校(昭和47年度〜平成13年度) |
(2) へき地教員宿舎 | 435戸(平成2年度〜14年度) | |
上記の廃校等施設及びへき地教員宿舎のうち活用されていなかったり、転用の手続が適切に行われなかったりしていたもの | (1) 廃校等 | |
(ア) 廃校等施設が活用されていなかったもの | 106校 | |
(イ) 転用の手続が行われていなかったもの | 156校 | |
計 | 241校(純計)(昭和47年度〜平成13年度) | |
(2) へき地教員宿舎 | ||
(ア) へき地教員宿舎が活用されていなかったもの | 48戸 | |
(イ) 転用の手続が行われていなかったもの | 95戸 | |
計 | 143戸(平成2年度〜12年度) |
上記の廃校等施設及びへき地教員宿舎に係る事業費 | (1) 廃校等施設 | 424億8688万円 | |
(2) へき地教員宿舎 | 13億2367万円 | ||
計 | 434億0405万円 | (純計) | |
上記に対する国庫補助金 | (1) 廃校等施設 | 214億7938万円 | |
(2) へき地教員宿舎 | 7億0675万円 | ||
計 | 219億7151万円 | (純計) |
1 制度の概要
文部科学省(平成13年1月5日以前は文部省)では、公立の小学校、中学校等の義務教育諸学校の校舎、屋内運動場等の学校施設及びへき地に所在する小学校、中学校等に勤務する教職員のための宿舎(以下「へき地教員宿舎」という。)の整備を行う市区町村等(以下「設置者」という。)に対し、これらに要する経費の一部として、公立学校施設整備費負担金及び公立学校施設整備費補助金(以下、これらの補助金等を併せて「国庫補助金」という。)を交付している。
このうち、学校施設の整備に係る公立学校施設整備費負担金は、義務教育諸学校施設費国庫負担法(昭和33年法律第81号)等に基づき、義務教育諸学校における教育の円滑な実施を確保することなどを目的として設置者に交付されるものである。
また、へき地教員宿舎の整備に係る公立学校施設整備費補助金は、へき地教育振興法(昭和29年法律第143号)等に基づき、へき地における教育水準の向上を図ることなどを目的として設置者に交付されるものである。
近年における出生率の低下等を原因とする少子化等を反映し、15年度における公立の小学校及び中学校(以下「小・中学校」という。)の児童生徒数は、5年度に比べて10年間で約20%減少している。そして、これに伴い小・中学校数も減少しており、5年度に35,010校であった小・中学校数は、15年度では33,739校となっていて、10年間で1,271校減少している。
このような小・中学校数の減少は、児童生徒数の減少等に伴い廃校となった小・中学校数が新設された小・中学校数を大きく上回っていることによるものである。5年度から13年度までの8年間に廃校となった小・中学校数は計1,797校、1年度平均で約200校となっており、また、12年度では250校、13年度では285校となっていて、増加傾向にある。
さらに、児童生徒数の減少により、児童生徒が在籍しておらず休校となった小・中学校の数も増加している。すなわち、休校となった小・中学校数は、5年度で353校であったものが15年度では502校となっていて、10年前に比べて149校増加している。
そして、このような児童生徒数の減少に伴い、小・中学校の教職員数も減少しており、特に、へき地に所在する小・中学校に勤務する教職員数は著しく減少している。すなわち、15年度における小・中学校の教職員数が5年度に比べて約8%減少しているのに対し、へき地に所在する小・中学校に勤務する教職員数は約16%減少している。
上記のようなことから、近年、廃校若しくは休校となった小・中学校(以下「廃校等」という。)の学校施設等(以下「廃校等施設」という。)又は入居者のいないへき地教員宿舎が生じている。
しかし、学校施設及びへき地教員宿舎は、いずれも多額の国庫補助金の交付を受け、地域住民の身近な公共施設として整備されたものなどであり、廃校等施設又は入居者のいないへき地教員宿舎となった場合には、地域住民の共通の財産として学校教育以外の用途にも可能な限り積極的に有効活用されることが望ましいものである。
そこで、文部科学省では、廃校施設及びへき地教員宿舎については、地域の実情に応じ、本来の学校教育の目的以外の用途に使用するなどすること(以下「転用」という。)により積極的にその有効活用を図ることとして、次のような措置を講じている。
(ア)転用の手続の簡素化
設置者が国庫補助金の交付を受けて整備された学校施設又はへき地教員宿舎の転用を行う場合には、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)に基づき、原則として、文部科学大臣の承認を得る手続を執ることが必要とされている(以下、このような転用を行うに当たり必要となる承認の手続を「転用の手続」という。)。
しかし、文部科学省では、廃校施設及びへき地教員宿舎の有効活用を促進する見地から、これらの転用の手続を簡素化している。すなわち、9年11月に同省が設置者に対して発した「公立学校施設整備費補助金等に係る財産処分の承認等について」(平成9年文教施第87号)によると、次のような場合には、転用に係る所定の報告書を文部科学大臣に提出することをもって転用の手続を行ったものとみなすなどとされている。
〔1〕 国庫補助事業完了後10年を超える期間を経過した学校施設を無償で同一地方公共団体における公共用の施設等に転用する場合のうち、廃校施設を社会教育施設、社会体育施設、福祉施設等に転用する場合
〔2〕 地域事情等により入居見込みのないへき地教員宿舎を無償で公営又は職員住宅等に転用する場合
(イ)活用事例集の公表
文部科学省では、設置者における廃校施設の有効活用の参考に資するため、その活用の実態を調査し、15年4月、その成果としての活用事例集を作成し、公表している。
2 検査の結果
前記のとおり、近年における少子化等を反映し、廃校等施設及び入居者のいないへき地教員宿舎が生じており、今後、これらについては一層増加することが見込まれる。
そこで、このような廃校等施設及びへき地教員宿舎の有効活用が十分に図られているか、また、これらの施設の有効活用に当たり、前記のように簡素化された転用の手続が周知され、適切に行われているかなどに着眼して検査した。
北海道ほか18都府県(注1) の169市区町村において昭和47年度から平成13年度までに整備され5年度から14年度までに廃校となるなどした466校に係る学校施設等(補助対象事業費802億9111万余円、国庫補助金409億9996万余円)、及び北海道ほか15県(注2) の45市町村において2年度から14年度までに整備されたへき地教員宿舎435戸(補助対象事業費41億1045万余円、国庫補助金21億9097万余円)を対象として検査した。
検査したところ、北海道ほか18都府県(注1) の123市区町村における廃校等241校及びへき地教員宿舎143戸(補助対象事業費434億0405万余円、国庫補助金219億7151万余円)について、次のような事態が見受けられた((1)及び(2)には事態が重複しているものがある。)。
(1)廃校等施設について
北海道ほか18都府県(注1) の107市区町村における廃校等241校(補助対象事業費424億8688万余円、国庫補助金214億7938万余円)について、次のような事態が見受けられた((ア)及び(イ)には事態が重複しているものがある。)。
(ア)廃校等施設が活用されていなかったもの
17都道府県 | 57市区町村 | 106校 | 補助対象事業費 | 141億5015万余円 |
国庫補助金 | 73億1887万余円 |
これらの廃校等施設は、耐用年数が相当期間残っていることから転用により有効活用することができると認められるのに、設置者における取組が十分でなかったため、その転用が図られておらず、廃校等となった後1年以上全く活用されていなかったものである。
<事例1>
A町では、平成4年度にa小学校の校舎の新増築、危険改築等の事業を補助対象事業費1億6350万円(国庫補助金8704万円)で実施していたが、同校は過疎化により児童数が減少したことから14年3月に廃校となり、その後、当該校舎は利用価値が十分高いと認められるのに全く利用されていなかった。
(イ)転用の手続が行われていなかったもの
19都道府県 | 75市区町村 | 156校 | 補助対象事業費 | 284億4734万余円 |
国庫補助金 | 142億1726万円 |
これらの廃校等施設については、前記のように転用の手続が簡素化されているのに、社会教育施設、社会体育施設等への転用に当たり転用の手続が行われていなかったものである。
<事例2>
B特別区では、平成元年度にb小学校の校舎及び屋内運動場の大規模改造事業を補助対象事業費8000万円(国庫補助金2666万余円)で実施するなどしていたが、同校は都市化による定住人口の減少により児童数が減少したことから9年3月に廃校となった。そして、同特別区では、同年4月からこの校舎及び屋内運動場を地域住民が利用するためのレクリエーションホール、コミュニティ室等に転用していたが、転用の手続が行われていなかった。
(2)へき地教員宿舎について
北海道ほか14県(注3) の33市町村におけるへき地教員宿舎143戸(補助対象事業費13億2367万余円、国庫補助金7億0675万円)について、次のような事態が見受けられた。
(ア)へき地教員宿舎が活用されていなかったもの
13道県 | 18市町村 | 48戸 | 補助対象事業費 | 4億5788万余円 |
国庫補助金 | 2億4793万余円 |
これらのへき地教員宿舎は、2年度以降補助事業により整備されたものであり利用価値が十分高いことなどから有効活用することができると認められるのに、設置者における取組が十分でなかったため、その転用が図られておらず、1年以上全く活用されていなかったものである。
(イ)転用の手続が行われていなかったもの
13道県 | 27市町村 | 95戸 | 補助対象事業費 | 8億6578万余円 |
国庫補助金 | 4億5881万余円 |
これらのへき地教員宿舎については、教職員の入居者がいないことから地域住民、役場の職員等を入居させていたが、前記のように転用の手続が簡素化されているのに、転用の手続が行われていなかったものである。
このように、廃校等施設及び入居者のいないへき地教員宿舎については、全く活用されていない事態が見受けられるとともに、転用の手続及び趣旨が周知されていないため、転用に当たりその手続が適切に行われていない事態が見受けられた。したがって、このような廃校等施設及びへき地教員宿舎の転用並びに簡素化された転用の手続について周知徹底を図ることにより、これらの施設の有効活用が適切に促進されるよう改善を図る要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことによると認められた。
ア 設置者において
(ア)廃校等施設又はへき地教員宿舎を地域住民の共通の財産として有効活用することについての認識が十分でなく、その転用による有効活用のための取組を十分に行っていなかったこと
(イ)転用の手続の必要性及びその簡素化の趣旨についての理解が十分でなかったこと
イ 文部科学省において
(ア)廃校等施設及びへき地教員宿舎の転用による有効活用のための取組について、設置者の意識を喚起するための方策が十分でなかったこと
(イ)転用の手続の必要性及びその簡素化の趣旨について、設置者に対する周知徹底が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、文部科学省では、16年9月に各都道府県に対し通知を発するとともに、同省主催の各種会議等において、廃校等施設及びへき地教員宿舎の有効活用並びに転用の手続について設置者に周知徹底を図ることとし、もってこれらの施設の有効活用が適切に促進されるよう次のような処置を講じた。
(ア) 設置者に対し、廃校等施設及びへき地教員宿舎の転用による有効活用についての意識を喚起するとともに十分な情報提供を行うこととし、前記廃校施設の活用事例集のほか、へき地教員宿舎の転用による有効活用の具体例についても示した活用事例集を新たに作成し、都道府県及び設置者に配付するなどした。
(イ)廃校等施設及びへき地教員宿舎の転用の手続の理解に資するよう、各都道府県において設置者を対象とする講習会を実施するとともに、手引書を作成し、都道府県及び設置者に配付した。
(注1) | 北海道ほか18都府県 東京都、北海道、京都府、青森、秋田、山形、栃木、群馬、新潟、石川、愛知、岡山、広島、山口、愛媛、福岡、長崎、熊本、大分各県 |
(注2) | 北海道ほか15県 北海道、青森、秋田、山形、群馬、新潟、石川、愛知、岡山、広島、山口、愛媛、福岡、長崎、熊本、大分各県 |
(注3) | 北海道ほか14県 北海道、青森、秋田、山形、群馬、新潟、愛知、岡山、広島、山口、愛媛、福岡、長崎、熊本、大分各県 |