会計名及び科目 | 国民年金特別会計(業務勘定) (項)業務取扱費 |
部局等の名称 | 社会保険庁 |
契約名 | 届出用紙等印刷システムの提供契約 |
契約の概要 | 社会保険業務に関する多種類の届出書・申請書等を印刷供給するための印刷システムを提供するもの |
契約の相手方 | 株式会社カワグチ技研(平成13年度以前は株式会社河口技研) |
契約 | 平成11年11月 随意契約 |
平成12年4月 随意契約 | |
平成13年4月 随意契約 | |
平成14年4月 随意契約 | |
平成15年4月 随意契約 | |
支払額 | 2,271,364,533円(平成11年度〜15年度) |
不当と認める支払額 | 2,271,364,533円(平成11年度〜15年度) |
1 届出用紙等印刷システムの概要
社会保険庁では、社会保険業務に関する多種類の届出書・申請書等(以下「届出書等」という。)について、簡単な操作で印刷供給する手段の確保、その保管場所の効率化等を図るため、届出用紙等印刷システム(注) (以下「印刷システム」という。)の提供(印刷システムの設置及び保守・点検)を受ける役務契約を、平成11年度から毎年度、株式会社カワグチ技研(社名変更後。13年度以前は株式会社河口技研。)と、表1のとおり、随意契約により締結している。
年度 | 契約年月日 | システム設置数 (年度末) |
契約単価(月額) (消費税額を除く) |
支払額 |
11 | 11.11.19 | 909 | 9,385 | 13,246,773 |
12 | 12.4.3 | 3,605 | 9,385 | 404,859,360 |
13 | 13.4.2 | 3,605 | 13,600 | 617,752,800 |
14 | 14.4.1 | 3,605 | 13,600 | 617,752,800 |
15 | 15.4.1 | 3,605 | 13,600 | 617,752,800 |
合計 | 2,271,364,533 |
そして、同庁では、印刷システムについて本庁で一括して契約し、これを地方社会保険事務局(12年3月31日以前は都道府県国民年金主管課等)、社会保険事務所等(以下、これらを総称する場合は「社会保険事務局等」という。)及び市区町村に設置している。
印刷システムの主な仕様等は、次のような要件を満たすものなどとなっている。
〔1〕 JIS規格A4版及びはがき形態の2種類の印刷用紙の使用が可能なこと
〔2〕 届出書等を簡便な操作により1分以内に出力できること
〔3〕 400種類(15年度は700種類)以上の届出書等が出力できること
〔4〕 印刷システムの保守・点検業務を提供できる体制であること
印刷システムの設置数の算定に当たっては、〔1〕社会保険事務所等に各2システム、〔2〕市区町村国民年金担当課等に各1システム設置することなどを基本として決定していた。
2 検査の結果
同庁では、一年を通じて需要がそれほど高くなく多種類にわたる届出書等の供給等について、印刷システムを導入することにより、業務処理の改善を図ることとしていた。しかし、このように使用数量が限られることがあらかじめ予想される印刷システムの導入に当たっては、費用対効果を考慮し、その必要性、また、代替手段(届出書等のコピーでの対応、CD−ROM等の媒体利用によるパーソナルコンピュータでの対応等)との比較検討を十分に行う必要があると認められた。
そこで、印刷システムの導入に当たり、上記の検討がなされていたかについて検査したところ、これらについての具体的な資料が見当たらず、導入決定までの経緯も明らかではない状況となっていたことから、同庁が検討を十分行ったかについては確認できなかった。
また、同庁では、市区町村に設置した印刷システムの使用状況を全く把握しておらず、社会保険事務局等に設置した印刷システムからの15年度における出力枚数のみ実績として把握していた。これによると、出力枚数は、表2のとおり、921システム中254システムにおいて全く無く、特に22の社会保険事務局等においては、設置してあるすべての印刷システム(55システム)において、出力枚数が皆無であった。そして、使用実績のある667システムの出力枚数をみても、全体で68,642枚、1システム当たり年間平均103枚程度であり、ほとんど使用されていないと同然の状況であった。
出力枚数 | 0 | 1〜9 | 10〜99 | 10〜999 | 1000以上 | 計 |
システム数 (%) |
254
(27.6) |
231 (25.1) |
284 (30.8) |
145 (15.7) |
7 (0.8) |
921 |
一方、印刷システムを設置していない市区町村においては、届出書等のコピーで対応したり、社会保険事務局等から届出書等を入手したりすることで十分足りている状況であった。
したがって、上記の使用実績などを考慮すると、印刷システム導入に当たって検討を十分行ったとは認められず、届出書等のコピー等で十分に対応が可能であったのに、印刷システムを導入したことは適切でなく、この印刷システムに係る支払額2,271,364,533円が不当と認められる。
現に、同庁においては、16年度の契約を7月末で終了し、それ以降、すべての社会保険事務局等及び市区町村においては、コピー等で対応している状況である。
このような事態が生じていたのは、前記のような使用状況等を勘案すると、印刷システムの導入に当たり、その必要性及び代替手段についての十分な検討を行わずに契約を締結したことなどによると認められる。