会計名及び科目 | 労働保険特別会計(労災勘定) (項)保険給付費 |
部局等の名称 | 厚生労働本省(支出庁) |
北海道労働局ほか6労働局(審査庁) | |
支払の相手方 | 199医療機関 |
不適正な支払となっていた労災診療費 | 手術料、入院料等 |
不適正支払額 | 36,471,438円(平成14、15両年度) |
1 保険給付の概要
労働者災害補償保険は、労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病等に対し療養の給付等の保険給付を行うほか、労働福祉事業を行う保険である。
療養の給付は、保険給付の一環として、負傷又は発病した労働者(以下「傷病労働者」という。)の請求に基づき、都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所又は労働福祉事業で設置された病院において、診察、処置、手術等(以下「診療」という。)を行うものである。そして、診療を行ったこれらの医療機関は、都道府県労働局に対して診療に要した費用(以下「労災診療費」という。)を請求することとなっており、都道府県労働局で請求の内容を審査し、その結果に基づき、厚生労働本省において労災診療費を支払うこととなっている。
労災診療費は、「労災診療費算定基準について」(昭和51年基発第72号労働省労働基準局長通達。以下「算定基準」という。)に基づき算定することとなっている。この算定基準によれば、労災診療費は、労災診療の特殊性などを考慮して、〔1〕健康保険法(大正11年法律第70号)に基づく診療報酬点数表の点数(以下「健保点数」という。)に12円(法人税等が非課税となっている公立病院等については11円50銭)を乗じて算定すること、〔3〕初診料、再診料等特定の診療項目については、健保点数とは異なる点数又は金額を別に定め、これにより算定することとなっている。
2 検査の結果
労災診療費のうち手術料、入院料等に着目して、北海道労働局ほか6労働局の審査に係る平成14、15両年度の労災診療費の支払についてその適否を検査した。
検査したところ、上記の7労働局の審査に係る労災診療費のうち、手術料、入院料、注射料、指導管理料、処置料等が適正に支払われていなかったものが、199医療機関について36,471,438円あった。
これらの事態について、その主なものを示すと次のとおりである。
ア 手術料に関するもの
手術料は、創傷処理、植皮術等の区分ごとの所定点数により算定することとなっている。そして、1回の皮切により手術を行い得る範囲(以下「同一手術野」という。)の手術につき、2以上の手術を同時に行った場合の手術料は、主たる手術の所定点数のみにより算定することとなっている。
しかし、前記の7労働局管内の150医療機関では、本来算定すべき区分の所定点数によらず、異なる区分のより高い所定点数により算定したり、同一手術野につき2以上の手術を同時に行っているのに、主たる手術の所定点数によらず、それぞれの手術の所定点数により算定したりなどしていた。このため、手術料247件、25,302,790円が適正に支払われていなかった。
イ 入院料に関するもの
傷病労働者が医師又は看護師の常時監視を要する症状であるなどの要件に該当し、医療機関で個室から4人部屋までの病室に収容した場合、個室、2人部屋等の別に算定基準に定められた金額を限度(以下、この額を「上限金額」という。)に、各医療機関が表示している金額を入院室料加算として算定できることとなっている。
しかし、前記の7労働局管内の42医療機関では、傷病労働者が医師又は看護師の常時監視を要する症状でないなど入院室料加算を算定できる要件に該当しないのに入院室料加算を算定したり、入院室料加算について当該医療機関が表示している金額によらずに上限金額により算定したりなどしていた。このため、入院料221件、6,273,612円が適正に支払われていなかった。
このような事態が生じていたのは、医療機関が労災診療費を誤って算定し請求していたのに、前記の7労働局において、これに対する審査が十分でないまま支払額を決定していたことによると認められる。
上記の適正に支払われていなかった労災診療費の額を労働局別に示すと次のとおりである。
労働局名 | 医療機関数 | 不適正支払件数 | 不適正支払額 |
件 | 千円 | ||
北海道労働局 | 33 | 120 | 5,297 |
埼玉労働局 | 42 | 169 | 10,477 |
愛知労働局 | 31 | 67 | 3,930 |
大阪労働局 | 31 | 145 | 6,212 |
和歌山労働局 | 32 | 85 | 6,504 |
鳥取労働局 | 11 | 36 | 1,592 |
福岡労働局 | 19 | 50 | 2,456 |
計 | 199 | 672 | 36,471 |