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  • 平成15年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

医薬品等の購入に係る予算執行について、当該年度に行うべき会計事務処理を行わず、翌年度の予算から支払っていた事態を改善させたもの


(2)医薬品等の購入に係る予算執行について、当該年度に行うべき会計事務処理を行わず、翌年度の予算から支払っていた事態を改善させたもの

会計名及び科目 国立病院特別会計 (病院勘定)  (項) 病院経営費
    (療養所勘定)  (項) 療養所経営費
部局等の名称 厚生労働省
会計経理の概要 薬品類、レントゲンフィルム、医療用消耗品等の購入に要する経費
不適正な会計経理を行っていた国立病院等 国立札幌病院(平成16年4月1日以降は独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター)ほか20国立病院等
上記の施設の医薬品等購入費の額 759億2412万余円 (平成13、14両年度)
不適正に経理されていた経費の額 76億0126万円 (平成13、14両年度)

1 会計経理の概要

(国立病院等に係る予算)

 国立病院及び国立療養所(以下、これらのうち国立ハンセン病療養所を除いたものを「国立病院等」という。)は、医療を行い、併せて医療の向上に寄与することなどを目的として設置されており、平成14年度末における全国の国立病院等の数は166となっている。
 国立病院等の運営に要する経費は、厚生労働大臣から国立病院特別会計の(項)病院経営費及び(項)療養所経営費として、支出負担行為計画の示達を受けた歳出予算の額(以下「示達額」という。)の範囲内で賄うこととされている。このうち、患者の診療に使用する薬品類、レントゲンフィルム、医療用消耗品等(以下、これらを「医薬品等」という。)の購入に要する経費については(項)病院経営費及び(項)療養所経営費の(目)医薬品等購入費(以下「医薬品等購入費」という。)から支出されている。

(支出負担行為制度)

 国が行う契約から支払までの会計事務は、財政法(昭和22年法律第34号)、会計法(昭和22年法律第35号)等(以下「会計法令」という。)に従って処理することとなっている。
 会計法令では、予算の執行を、支出の原因となる債務負担とその結果として発生する支出とに区分して、支出の原因となる債務負担の段階において厳格な統制を実施し、予算の適正かつ計画的な執行を図ることを目的として支出負担行為制度が設けられている。
 この支出負担行為制度は、示達額を超過して国の債務負担の原因となる行為が行われることを防止しようとするものであり、支出負担行為担当官は、支出官から当該支出負担行為が示達額を超過しないことの確認を受け、関係の帳簿に登記された後でなければ、支出負担行為をすることができないとされている。

(医薬品等の購入に係る会計事務処理)

 国立病院等における医薬品等の購入については、会計法令の定めるところに従い、次のように契約から支払までの会計事務を処理することとなっている。
〔1〕 一定期間継続して購入する医薬品等については、年度当初などに、支出負担行為担当官が、購入の見込まれる品目を対象として単価契約を行う。そして、物品管理官は、薬剤科、看護部等に配置された物品供用官の供用請求に基づき、支出負担行為担当官に対して購入を要求する。これを受けて支出負担行為担当官は業者に発注し納品させる。その後、通常、翌月に業者から1箇月分をまとめた請求書が提出され、これを受けて支出負担行為の決議書を作成し、支出官に送付する。
〔2〕 その他の医薬品等については、物品管理官が、物品供用官の供用請求に基づき、支出負担行為担当官に対して購入を要求する。これを受けて支出負担行為担当官は、品目及び数量を取りまとめ、その都度見積書を徴し、業者と総価による契約(以下「総価契約」という。)を行い納品させる。そして、契約時に支出負担行為の決議書を作成し、支出官に送付する。
〔3〕 支出官は、支出負担行為差引簿を備え、予算科目別に示達額を超えることなどがないよう、支出負担行為の確認を行い、予算の執行を管理するとともに、業者から提出された請求書を審査確認の上、所定の期日までに購入代金を支払う。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 国立病院等における歳出のうち、医薬品等購入費の支出額は毎年多額に上っており、その予算執行については、本院としても強い関心を持って検査してきたところである。また、16年4月からは、国立病院等が独立行政法人国立病院機構(以下「国立病院機構」という。)へ移行することとなった。
 そこで、国立病院機構にその運営が引き継がれることとなる国立病院等における予算執行、特に医薬品等購入費に係る会計経理が、会計法令に従って適正に行われているかに着眼して検査した。

(検査の対象)

 国立札幌病院(16年4月1日以降は「独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター」)ほか25国立病院等(注1) における医薬品等購入費支出済額13年度426億5572万余円、14年度396億1461万余円、計822億7034万余円を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、上記の26国立病院等のうち、国立札幌病院ほか20国立病院等(注2) における医薬品等購入費支出済額13年度392億3651万余円、14年度366億8761万余円、計759億2412万余円について、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、上記の21国立病院等では、13年度及び14年度の会計経理において、各年度中に納品させた医薬品等の一部について、当該年度内に支出負担行為等の会計事務処理を行うと示達額を超えることになるため、支出負担行為等の会計事務を翌年度に持ち越して処理していた。各年度において会計事務処理を行わなかった金額は、13年度20億8617万余円、14年度55億1509万余円、計76億0126万余円に上っている。
 これらについて、21国立病院等では、支出負担行為の事務処理に際し、契約時に支出負担行為を行うこととなっている総価契約によるものも含め、業者から納品書・請求書の提出を受けた上で「支出負担行為並びに支出決議書」(以下「決議書」という。)を作成している。そして、おおむね、次のような方法で、一連の会計事務処理を行い、翌年度の予算から支払っていた。
〔1〕 単価契約分については、日付欄が空白の請求書を業者に提出させ、これに翌年度、適当な日付を記入したり、翌年度の単価契約分に対する請求書に合算した請求書を提出させたりするなどして、決議書を作成する。
〔2〕 総価契約分については、日付欄が空白の請求書を業者に提出させ、これに翌年度、適当な日付を記入するなどして、決議書を作成する。
 このように、医薬品等の購入に当たり、当該年度に行うべき会計事務処理を行わず、翌年度の支出負担行為により処理するなど、事実と異なる会計経理が行われ、年度を超えて翌年度の予算から代金が支払われている事態は、会計法令及び予算に違背するもので適切とは認められない。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のようなことなどによると認められた。

ア 厚生労働省において

 国立病院等における医薬品等購入費に係る予算の執行状況についての把握が十分でなく、また、国立病院等に対する適正な会計事務処理の周知徹底や支出削減など業務運営の効率化に向けた指導が十分でなかったこと

イ 国立病院等において

(ア)医薬品等購入費に係る予算執行について、会計法令及び予算を遵守して適正に執行すべきことへの認識が欠如していたこと
(イ)支出削減等の業務運営の効率化や収入の確保への計画的取組みが十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、厚生労働省では、次のとおり、改善の処置を講じた。
〔1〕 国立病院等に対し、適切な会計事務処理の周知徹底や支出削減等業務運営の効率化に向けた指導を実施した。これを受け、国立病院等においては、医薬品等の共同購入等を実施した。また、特に経営改善の必要性が高いと判断した国立病院等については特別指導を行うとともに、その指導事項等について地方厚生局を通じて全国の国立病院等に周知した。
〔2〕 15年度において、医薬品等購入費の予算が不足する場合に備えて他の予算科目においても経費の削減に努め、同年度の医薬品等購入費の予算の執行状況を踏まえて、16年3月、財務大臣の承認が得られた額について、(項)病院経営費(目)医療機器整備費等の予算科目から医薬品等購入費に予算の流用の措置を執った。
〔3〕 15年度末において支払未済のものについては、国立病院機構が国(国立病院特別会計)から負債として承継し、法人設立時の貸借対照表上に表示した上で、同じく国から資本剰余金として承継した診療報酬に係る未収金を財源として国立病院機構へ移行後の国立病院等が16年6月に業者に支払った。

(注1) 国立札幌病院ほか25国立病院等 国立札幌病院、国立函館病院、国立仙台病院、国立郡山病院(平成16年3月廃止)、国立病院東京医療センター、国立名古屋病院、国立金沢病院、国立滋賀病院、国立大阪病院、国立米子病院、国立大竹病院、国立病院呉医療センター、国立病院九州循環器病センター、国立指宿病院、国立療養所帯広病院、国立療養所道北病院、国立療養所八雲病院、国立療養所福島病院、国立療養所翠ヶ丘病院、国立療養所西群馬病院、国立療養所七尾病院、国立療養所岐阜病院、国立療養所長良病院、国立療養所豊橋東病院、国立療養所近畿中央病院及び国立療養所柳井病院(16年4月1日以降は独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター、独立行政法人国立病院機構函館病院、独立行政法人国立病院機構仙台医療センター、独立行政法人国立病院機構東京医療センター、独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター、独立行政法人国立病院機構金沢医療センター、独立行政法人国立病院機構滋賀病院、独立行政法人国立病院機構大阪医療センター、独立行政法人国立病院機構米子医療センター、独立行政法人国立病院機構大竹病院、独立行政法人国立病院機構呉医療センター、独立行政法人国立病院機構九州循環器病センター、独立行政法人国立病院機構指宿病院、独立行政法人国立病院機構帯広病院、独立行政法人国立病院機構道北病院、独立行政法人国立病院機構八雲病院、独立行政法人国立病院機構福島病院、独立行政法人国立病院機構いわき病院、独立行政法人国立病院機構西群馬病院、独立行政法人国立病院機構七尾病院、独立行政法人国立病院機構岐阜病院、独立行政法人国立病院機構長良病院、独立行政法人国立病院機構豊橋東病院、独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター及び独立行政法人国立病院機構柳井病院)
(注2) 国立札幌病院ほか20国立病院等 国立札幌病院、国立函館病院、国立仙台病院、国立病院東京医療センター、国立名古屋病院、国立金沢病院、国立大阪病院、国立米子病院、国立大竹病院、国立病院呉医療センター、国立病院九州循環器病センター、国立指宿病院、国立療養所帯広病院、国立療養所道北病院、国立療養所翠ヶ丘病院、国立療養所西群馬病院、国立療養所七尾病院、国立療養所岐阜病院、国立療養所長良病院、国立療養所近畿中央病院及び国立療養所柳井病院