会計名及び科目 | 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農業生産振興費 |
部局等の名称 | 農林水産本省、東北、関東、九州各農政局 |
補助の根拠 | 予算補助 |
補助事業 | 生産振興総合対策等 |
補助事業の概要 | 生産の組織化及び作付けの団地化等を図り、生産性の高い効率的かつ安定的な農産物産地の形成等に資することを目的として、農作物被害防止施設の設置を行うもの |
検査実施補助事業者 | 青森県ほか3県 |
間接補助事業者 (事業主体) |
農業協同組合4、営農集団54、計58事業主体 |
検査実施事業数 | 70事業 |
事業費 | 20億9157万余円(平成12年度〜14年度) |
上記に対する国庫補助金 | 10億3227万余円 |
作付けの団地化等が図られていない箇所を含んでいる事業を実施した間接補助事業者 (事業主体) |
農業協同組合4、営農集団47、計51事業主体 |
作付けの団地化等が図られていない箇所を含んでいる事業 | 63事業 |
上記の箇所に係る事業費相当額 | 16億0007万円 | (平成12年度〜14年度) |
上記に対する国庫補助金相当額 | 7億8897万円 |
1 事業の概要
農林水産省では、平成12、13両年度に農業生産総合対策事業実施要領(平成12年12農産第1550号農林水産事務次官依命通知)等に基づき農業生産総合対策事業を、また、14年度に生産振興総合対策事業実施要綱(平成14年13生産第10198号農林水産事務次官依命通知)等に基づき生産振興総合対策事業(以下、これらを「総合対策事業」という。)を、農業協同組合等を事業主体とする国庫補助事業として実施している。
総合対策事業は、生産性の高い効率的かつ安定的な農産物産地の形成、畑作物、果樹、野菜、花き、地域特産物等の生産性及び品質の向上等に資することを目的としており、上記の要領及び要綱において、事業の実施方針として、生産の組織化及び作付けの団地化等を図ることとしている。
総合対策事業では、共同利用施設整備として、農作物の発芽期等における霜害を軽減する防霜ファンや、開花期から結実期における強風被害を軽減する防風網等の農作物被害防止施設の設置を行っている。
このうち、防霜ファンは、地表よりも暖かい上層の空気を吹き下ろすことにより地表面付近の気温の低下を緩めるもので、その効果の範囲は汎用品の750Wの場合、前方14m、両側16mから20mとされている。そして、組織的に配置することにより気温低下をより効果的に防止でき、一般的に対象農地が広くなるほど単位面積当たりの設置台数を減ずることができる。また、防風網は、風の流れを弱めたり変えたりするもので、その効果の範囲は風下方向に高さの10倍程度となっている。そして、風下方向に連続的に配置することなどにより防風効果の範囲が広くなり、間隔を広くして設置することができる。
総合対策事業による農作物被害防止施設の設置については、農業生産総合対策事業の運用について(平成12年12農産第1551号農林水産省農産園芸局長、食品流通局長通知)及び生産振興総合対策事業実施要領(平成14年13生産第10200号農林水産省総合食料局長、生産局長通知)(以下、これらを「実施要領等」という。)が定められている。
その実施要領等によれば、農作物被害防止施設の設置は、事業を実施することによる効果が高く、かつ、共同利用効率の優れた地区において認めることとし、事業参加者は3戸以上、1団地の受益面積はおおむね2ha以上(ただし、果樹を対象とする場合等はおおむね1ha以上。以下、この場合等を含め「2ha以上」という。)であることが事業の採択要件とされている。
そして、12年度から14年度までの間における総合対策事業による農作物被害防止施設の設置に係る事業費は計55億5315万余円で、これに対する国庫補助金の交付額は計27億3948万余円となっている。
総合対策事業を実施しようとする農業協同組合等は、事業実施計画を作成し、市町村を経由して都道府県に提出し、その承認を受ける。その際、都道府県及び市町村は、事業実施計画が実施要領等に定められた要件を満たしているかなどについて指導・審査等を行う。そして、都道府県は事業実施計画の承認をしようとするときは、あらかじめ地方農政局等に協議をすることとなっている。
2 検査の結果
防霜ファン及び防風網(以下「施設」という。)の設置は、広くまとまりのある農地を対象とするのが効率的である。また、総合対策事業の農作物被害防止施設は、共同利用効率の優れた地区について認めることなどとし、採択要件を事業参加者が3戸以上であること及び1団地の受益面積が2ha以上であることとしている。
そこで、総合対策事業で施設を設置した農地が隣接した2ha以上のまとまりのあるものとなっていて、共同利用効率が高いものとなっているか、そして事業の実施方針である生産の組織化及び作付けの団地化等を図るものとなっているかに着眼して検査した。
青森県ほか3県(注) において、12年度から14年度までに58事業主体が実施した70事業(事業費計20億9157万余円、国庫補助金計10億3227万余円)について検査した。
検査したところ、上記の70事業のうち7事業主体の7事業では、施設を設置した農地が2ha以上の一まとまりとなっていて、事業参加者が3戸以上となっていた。
一方、51事業主体の63事業では、いずれも市町村等を区域とする事業実施地区を1団地とし、同地区において、事業参加者が3戸以上あり、その受益面積が計2ha以上あるとしていたが、農地のまとまり具合をみると、1事業で2箇所から89箇所、計973箇所に相当程度の間隔で点在していた。そして、このうち945箇所(事業費相当額計16億0007万余円、国庫補助金相当額計7億8897万余円)は、それぞれの事業参加者が2戸以下で、かつ、受益面積が2ha未満となっているなどしていて、採択要件に合致しない状況となっていた。
また、これらの事業主体が作成した事業実施計画では、今後の設置対象面積の計画は記載されているが、その計画は具体的な事業参加者名や設置箇所及びその受益面積等を踏まえたものでなく、また、将来団地化を図るための年次計画もないことなどから、点在した農地が将来団地化し採択要件に合致する状況となるか不明となっている。そして、地方農政局及び県も当該年度の事業実施の審査等を行っているだけで、将来の設置計画等については十分検討していない状況であった。
上記のように、事業参加者が2戸以下で、かつ、受益面積が2ha未満となっているなどしている農地が点在し、将来的にまとまりのある団地が形成されるか不明なままとなっている事態は、施設の設置効率ばかりでなく共同利用効率が限定され、生産の組織化及び作付けの団地化等を図るという趣旨に沿わないもので、適切でないと認められる。
<事例>
平成14年度に、A農業協同組合が事業主体となって、梨を栽培する果樹畑に防霜ファン169基(事業費3433万余円、国庫補助金1597万余円)を設置している。
同組合では、3市町村の区域からなる事業実施地区を1団地とし、組合員の事業参加者が13戸あり、防霜ファンを設置する果樹畑が計11.45haあるので、採択要件を満たすとしていた。
しかし、その果樹畑のまとまり具合をみると、組合員13戸の果樹畑計23枚、11.45haが事業実施地区の3市町村の17箇所に広範囲に点在しており、それぞれの間隔は同一市町村においても50mから4.5kmとなっていた。
そして、上記17箇所の事業参加者はいずれも1戸で、このうち10箇所は受益面積も果樹畑の場合の要件(おおむね1ha)に満たないものであった。また、同組合の事業実施計画では今後の設置の計画はない状況であった。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
(ア)実施要領等において、施設を設置する農地のまとまり具合等の団地の定義が明確になっておらず、このため、事業主体において、事業実施地区内に3戸以上の事業参加者がいて、受益面積が合わせて2ha以上あれば団地を構成するとして事業実施計画を作成していたこと
(イ)地方農政局等及び都道府県等において、共同利用施設としての農作物被害防止施設の設置の趣旨や事業の採択要件に対する理解が徹底されておらず、施設を設置する農地を団地化することなどについての指導や事業実施計画に対する審査を十分に行っていなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、16年5月に各地方農政局等に対して通知を発し、農作物被害防止施設を設置する農地が一定のまとまりを持ったものとなって、共同利用効率が発揮され、生産の組織化及び作付けの団地化等が図られるものとなるよう、次のような処置を講じた。
(ア)施設の設置対象となる農地は、原則として隣接してまとまりのある農地であることとするなど団地の定義を明確にし、地方農政局等、都道府県等及び事業主体に周知徹底させることとした。
(イ)事業主体に、総合対策事業における農作物被害防止施設が共同利用施設であることの認識を徹底させるとともに、今後の具体的な施設整備の計画がある場合には、その年次計画も含め具体的な内容を記載した事業実施計画を作成することなどを指導するとともに、地方農政局等及び都道府県等に対して事業実施計画の内容を十分に審査するよう指導した。