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  • 平成15年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

出願適正化等指導事業等の委託における人件費の算定方法に職員等の勤務実態を反映させることにより委託費の節減を図るよう改善させたもの


(3)出願適正化等指導事業等の委託における人件費の算定方法に職員等の勤務実態を反映させることにより委託費の節減を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 特許特別会計 (項)事務取扱費
部局等の名称 特許庁
契約名 平成14年度出願適正化等指導事業に関する委託契約ほか5契約
委託契約の概要 知的財産権制度に関する事業の一環として、指導事業や相談事業等の業務を実施するもの
契約の相手方 社団法人発明協会
契約 平成14年4月 随意契約
平成15年4月 随意契約
支払額 23億1753万余円 (平成14、15両年度)
節減できた委託費 1億5078万円 (平成14、15両年度)

1 委託事業の概要

(契約の概要)

 特許庁では、知的財産権制度に関する事業の一環として、各種の事業を実施している。このうち、次の(1)〜(3)などの事業について、いずれも、その事業の内容が高度で専門性を有するものであることなどから、随意契約により、社団法人発明協会(以下「協会」という。)に委託して実施している。

(1)出願適正化等指導事業

 協会本部及び47都道府県支部において、中小・ベンチャー企業等及び個人を対象に、知的財産権制度に関する理解を深めるための講習会を開催したり、具体的な案件に関して個別相談や出願手続に関する指導を実施したりなどするもの

(2)外国産業財産権制度相談事業等(平成14年度以前は外国工業所有権制度相談事業等)

協会本部において、諸外国の産業財産権制度及びその運用に関する資料を収集・整備し、諸外国で産業財産権を取得し、活用するための相談業務及び説明会等を実施するもの

(3)産業財産権人材育成協力事業等(14年度以前は工業所有権人材育成協力事業等)

協会本部において、アジア太平洋諸国における産業財産権に携わる人材を育成するための研修等を実施するもの
 そして、14、15両年度における各委託事業の実施状況は、表1のとおり14年度4事業、15年度5事業、計延べ9事業となっている。

表1 協会に対する委託事業の実施状況
(単位:千円)

委託事業名 委託費支払額
14年度 15年度
(1)出願適正化等指導事業 645,549 645,401 1,290,950
(2)外国産業財産権制度相談事業等 131,437 130,175 261,612
(3)産業財産権人材育成協力事業等 387,380 377,596 764,976
その他(14年度1事業、15年度2事業) 62,341 175,836 238,177
計(14年度4事業、15年度5事業) 1,226,707 1,329,009 2,555,716

(委託費の算定)

 本件各事業の委託費については、事業の経費の内訳ごとに定めた上限額の範囲内で、その支払に要した実績額(以下「支払実績額」という。)を合計した額とされている。そして、事業の経費の内訳は、委託事業に従事する職員等の人件費、事業費、協会の管理費等となっており、このうち人件費については、委託事業に従事する協会の職員等が、前記の講習会の開催、相談、指導等の業務に年間を通して専念して従事することを前提としている。また、管理費については、人件費及び事業費の合計額に協会における管理費率を乗じて算定することとされている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 特許庁が実施している委託事業の多くは協会に委託され、これに係る委託費の支払額も多額に上っていること、また、協会の事業実施体制は、近年、業務量に応じて機動的に対応する目的で職員等が複数の業務に従事できるようになってきていることから、委託事業に係る人件費の算定方法は協会における職員等の勤務実態を反映したものとなっているかに着眼して検査した。

(検査の対象)

 協会が14、15両年度に実施した延べ9事業に係る9件の委託契約(委託費の総額25億5571万余円)について、協会の本部及び東京、大阪両支部(以下「本部等」という。)に所属して各委託業務に専念して従事したとされる職員等延べ117人(14年度54人、15年度63人)に係る人件費を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、上記の延べ117人の職員等に係る人件費は、これらの職員等の当該年度中のすべての基本給、賞与、諸手当、法定福利費等(以下「基本給等」という。)の支払実績額となっており、両年度の事業別の従事職員等及び支払実績額は表2のとおりとなっていた。

表2 平成14、15両年度の本部等の従事職員等数及び人件費の支払実績額

(単位:人、千円)

年度 委託事業名 従事職員等(延べ) 支払実績額
本部 東京
支部
大阪
支部
14 (1)出願適正化等指導事業 20 4 3 27 200,730
(2)外国工業所有権制度相談事業等 10 0 0 10 88,938
(3)工業所有権人材育成協力事業等 11 0 0 11 90,160
その他(1事業) 6 0 0 6 38,714
小計 47 4 3 54 418,543
15 (1)出願適正化等指導事業 19 3 3 25 178,199
(2)外国産業財産権制度相談事業等 10 0 0 10 83,265
(3)産業財産権人材育成協力事業等 9 0 0 9 79,245
その他(2事業) 19 0 0 19 114,409
小計 57 3 3 63 455,119
104 7 6 117 873,663

 そして、特許庁では、支払実績額の確認に当たり、委託事業に係る人件費の算定が、協会の職員等が前記の講習会の開催等の業務に年間を通して専念して従事する勤務体制を前提としていることから、その従事職員等の年間の基本給等について、給与台帳等の提示を求めて額の確認をしている状況であった。
 しかし、これらの本部等の職員等の委託事業への従事状況についてさらに詳しく調査したところ、次のとおり、職員等の勤務実態は本件委託契約が前提としている勤務体制とは異なる状況となっていた。
 すなわち、本件各事業に係る委託契約では、職員等が委託事業に従事した時間数等について業務日誌等に記録することとはされていないため、職員等の委託事業への従事状況を証する書面等は作成されていなかった。そこで、本院において、前記延べ117人の職員等から14、15両年度における勤務実態を聴取したところ、9件の契約のうち6件(契約総額23億1753万余円)において、表3のとおり、延べ19人(実職員数15人)の職員が委託事業に該当しない協会の発明奨励事業等にも従事していたことが判明した。

表3 従事職員等の勤務の実態
(単位:人)

度委託事業名 本部等における従事職員等 左のうち委託事業に年間を通しては専念していなかった職員
14 (1)出願適正化等指導事業 27 6
(2)外国工業所有権制度相談事業等 10 4
(3)工業所有権人材育成協力事業等 11 2
その他(1事業) 6
54 12
15 (1)出願適正化等指導事業 25 3
(2)外国産業財産権制度相談事業等 10 3
(3)産業財産権人材育成協力事業等 9 1
その他(2事業) 19
63 7
合計 117 19

 したがって、上記6件の契約に係る委託費は委託事業に該当しないものに係る支払実績額を含めて人件費が算定されていると認められ、特許庁において、人件費の算定に当たり、上記のような勤務実態を十分反映させることにより委託費の節減を図る要があると認められた。

(節減できた委託費)

 従事職員等から聴取した勤務実態に基づき、上記6件の契約について、本院において委託費を修正計算すると、14年度10億6176万余円、15年度11億0499万余円、計21億6675万余円となり、委託費を14年度1億0260万余円、15年度4818万余円、計1億5078万余円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、特許庁において、委託事業に従事する協会の職員等が委託事業以外の複数の業務に従事できる勤務体制となっているのに、こうした実態を委託費の人件費の算定に反映させていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、特許庁では、16年度からの委託契約において、人件費の算定を委託事業に従事した職員等の年間の基本給等のすべてを対象とする方法に代えて、実際に従事した時間を基に算定することとし、委託業務に従事した時間等を明らかにするため、出勤状況や従事した時間を記録する帳簿等を整備させることとする処置を講じた。