ページトップ
  • 平成15年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

廃棄物埋立護岸の整備事業において、審査、確認等の体制の強化を図ることなどにより、補助率の算定及び収益納付を適切に行うよう改善させたもの


(2)廃棄物埋立護岸の整備事業において、審査、確認等の体制の強化を図ることなどにより、補助率の算定及び収益納付を適切に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 港湾整備特別会計(港湾整備勘定) (項)港湾事業費
部局等の名称 関東、北陸、中部、中国、九州各地方整備局(平成13年1月5日以前は運輸省第一、第二、第三、第四、第五各港湾建設局)
補助の根拠 港湾法(昭和25年法律第218号)
公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和46年法律第70号)
補助事業者
(事業主体)
都1、県5、市3、計9事業主体
補助事業 10港の港湾整備事業
補助事業の概要 廃棄物処理問題に対応するため、廃棄物を受け入れる施設である廃棄物埋立護岸の整備を行うもの
補助率の算定方法の変更が考慮されていないもの (1) 4港
収益納付において、正確な収益計算ができなくなっているもの (2) 7港
上記に係る事業費 (1) 463億5453万余円 (平成12年度〜15年度)
(2)  3389億3488万余円 (事業開始から平成15年度まで)
3783億1242万余円 (重複分を除く)
上記に対する国庫補助金交付額 (1) 119億5882万円  
(2) 875億6640万円  
977億8097万円 (重複分を除く)

1 事業の概要

(廃棄物埋立護岸の整備事業)

 国土交通省では、港湾法(昭和25年法律第218号)等に基づく港湾整備事業として、廃棄物埋立護岸の整備を実施する港湾管理者に対して、毎年度国庫補助金を交付している。
 廃棄物埋立護岸は、昭和48年7月に港湾法が改正され、港湾施設の一つとして廃棄物処理施設が追加されたことなどにより、48年度から整備が開始されているもので、深刻化する廃棄物処理問題に対応するため、港湾の適正な開発、利用、保全と十分な整合を図りつつ、港湾において廃棄物を受け入れる施設である。この廃棄物埋立護岸内に受け入れる廃棄物は、一般廃棄物、産業廃棄物、陸上残土及び浚渫土砂の4種類となっている。
 港湾管理者は、港湾法に基づく「港湾の開発、利用及び保全並びに港湾に隣接する地域の保全に関する政令で定める事項に関する計画」(以下「港湾計画」という。)等において廃棄物処理施設の規模等を定めている。そして、公有水面埋立法(大正10年法律第57号)に基づく公有水面埋立免許の願書(以下「埋立願書」という。)を埋立免許権者に提出し、同免許の取得を経て廃棄物埋立護岸の整備を開始している。この埋立願書の提出に際しては、同法及び同法施行規則により、設計の概要、埋立てに用いる土砂等の採取場所及び採取量、埋立地の用途及び利用計画の概要等を示した添付図書を併せて提出することとされている。
 本件事業は、整備された護岸内に港湾計画、埋立願書等で見込んでいた廃棄物を逐次受け入れ、これによる埋立てが完了した後、造成された埋立地の所要の整備を行い港湾施設、工業用地等として利用するもので、整備の開始から埋立後の土地利用に至るまで長期間を要するものとなっている。

(補助率)

 廃棄物埋立護岸の整備事業に係る補助率は、港湾法により10分の2.5以内とされている。そして、前記4種類の廃棄物のうち、産業廃棄物は、公共施設から発生するもの(以下「公共産廃」という。)と民間施設から発生するもの(以下「民間産廃」という。)に分けられており、55年度からは、一般廃棄物及び公共産廃については、「公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(昭和46年法律第70号)が適用される場合には、補助率は10分の5とされている。このため、補助率の異なる廃棄物を併せて受け入れる廃棄物埋立護岸を整備する場合の補助率は、護岸内に受入れを計画している廃棄物等の種類や量を算定の要素として、算定することとなっている。
 そして、国土交通省では、平成11年8月に、「廃棄物埋立護岸整備事業に係る国の財政措置について」(平成11年港環第50号)を各港湾管理者に対して発し、補助率算定の要素となる廃棄物や新たな算定方法等を示している。これによると、12年度以降に整備する廃棄物埋立護岸については、一般廃棄物及び公共産廃に係る表層覆土量は、実際に施工される表層覆土厚の如何を問わず厚さ0.5m分の量を補助率算定の要素とすることとされている。また、従来は補助率算定の要素となっていた民間産廃については、廃棄物埋立護岸に受入可能な廃棄物ではあるが、補助率算定の要素からは除外することとされている。
 また、前記のとおり、本件事業の補助率が受入廃棄物等の種類や量に基づいて算定されるものであることから、事業途中において、受入廃棄物等の種類や量の変更に伴い、補助率の変更が必要な場合には、国土交通省において、内容を確認し変更するものとされている。そして、埋立工事完了時点において、廃棄物の受入計画と実績が相違した場合には、必要に応じて補助金の精査を行いその全部又は一部を国庫に納付させる場合があるとされている。

(収益納付)

 国土交通省では、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(昭和30年法律第179号)に基づいて、廃棄物埋立護岸の整備に係る補助金の交付決定において、補助事業の完了により、補助事業者に相当の収益が生じた場合には、交付した補助金の額を限度として、当該事業を対象として交付した補助金に相当する金額を納付しなければならないとする収益納付の条件を付している。
 この収益納付の取扱いについては、港湾関係補助金等交付規則実施要領(以下「実施要領」という。)により、以下の項目等が定められている。
〔1〕 対象物件等補助事業等により取得することとなる埋立地及びこれに類するものを他目的利用その他の処分をすることによって生ずる収益とする。
〔2〕 収益の範囲相当の収益の範囲は、実収入額又は評価益から維持管理に要した費用及び処分等に要する必要経費を控除したものとする。
 さらに、今後、多くの港湾において、廃棄物埋立護岸整備事業による埋立地が造成され、その売却等に伴って収益の発生が見込まれることから、6年11月に、各港湾管理者に対し、実施要領の具体的な事項を解釈した「収益納付の取扱について」(事務連絡)を送付している。これによると、収入については、〔1〕廃棄物の捨込料徴収額、〔2〕埋立地売却代、土地賃貸料等とされており、支出については、〔1〕維持管理費(人件費、事務費等)等の廃棄物の受入れに要する費用、〔2〕地盤改良費、整地費等の埋立地造成費用等とされている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 深刻化する廃棄物処理問題に対応するため、港湾における廃棄物埋立護岸の整備及び廃棄物の受入れは今後も長期間、継続して実施されることが見込まれている。このため、廃棄物の受入計画に基づく補助率の算定、埋立地の処分に伴う収益納付等は適切に行われているかに着眼して検査した。

(検査の対象)

 北海道ほか18都府県(注1) の30事業主体(港湾管理者等)、52港における64箇所(事業費9406億6458万余円、国庫補助金2418億0962万余円)の廃棄物埋立護岸の整備事業について検査を実施した。

(検査の結果)

 検査の結果、8都県の9事業主体(港湾管理者)、10港の14箇所(事業費3783億1242万余円、国庫補助金977億8097万余円)の廃棄物埋立護岸において、以下のような事態が見受けられた。

(1)補助率の算定について

(注2)
4県
4事業主体(港湾管理者) 4港 4箇所

事業費 463億5453万余円 国庫補助金 119億5882万円(12年度〜15年度)
 廃棄物埋立護岸の表層覆土は一般に陸上残土で施工されることが多いが、陸上残土が入手できないなどのため購入土(山土等)により施工される場合がある。この場合には、11年度以前は、4種類の廃棄物に係る表層覆土はすべて補助率算定の要素となっていた。しかし、12年度以降は、前記のとおり、一般廃棄物、公共産廃に係る表層覆土の厚さ0.5m分の量のみが補助率算定の要素とされ、0.5mを超える分の量は補助率算定の要素から外すこととされており、民間産廃、浚渫土砂及び陸上残土に係る表層覆土も補助率算定の要素から外すこととされている。また、民間産廃については、12年度以降、補助率算定の要素とはならないとされている。したがって、このように補助率の算定方法に変更があった場合には、埋立完了時点において受入廃棄物等の実績に基づいて補助金の精査を行うこととなっているものの、事業途中においても、適時適切に補助率の変更を行うべきであると認められる。
 しかし、受入計画に基づく補助率の算定において、一般廃棄物及び公共産廃に係る厚さ0.5mを超える分の購入土や民間産廃を従来と同じく補助率算定の要素としているなど、補助率を変更していないものが、次表のとおり、4港4箇所見受けられた。

港名 平成12年度〜
15年度の補助率
補助率算定の要素とならないもの(計画量) 左を考慮した場合の補助率 整備完了予定年度 受入完了予定年度
A港 0.281
民間産廃
17,000m3

0.280 19 28
B港 0.242
購入土(山土)
260,000m3

0.229 22 22
C港 0.250
購入土(山土)
335,000m3

0.240 18 25
D港 0.227
購入土(山土)
265,000m3

0.201 20 23

 なお、上記の廃棄物埋立護岸について、受け入れる予定の廃棄物等の種類や量に基づく補助率により国庫補助金を試算すれば、114億6302万余円となり、前記119億5882万円に比べて4億9579万余円の開差を生じることとなる。

(2)収益納付について

(注3)
5都県
6事業主体(港湾管理者) 7港 11箇所

事業費 3389億3488万余円 国庫補助金 875億6640万余円
(事業費及び国庫補助金は事業開始時から15年度までの合計額)
 今回検査した64箇所のうち、15年度末までに土地の売却等の処分が行われたものは12箇所(約86万m 、売却等収入約484億円)となっている。そして、今後、34箇所(約1181万m 、護岸整備中のものを含む。)において売却等の処分が行われることとなり、多くの港湾において収益の発生が見込まれる状況となっている。また、廃棄物埋立護岸の整備開始から廃棄物の受入完了までの期間(予定を含む。)は、最短で4年(予定のものは5年)、最長で20年(予定のものは32年)となっており、その後の埋立地の整備、売却等の処分を含めた期間はさらに長期間を要するものとなっている。
 そして、収益納付を適切に行うためには、廃棄物埋立護岸の整備事業における収入支出の状況を的確に把握しておくことが必要であり、港湾管理者において、事業開始から、埋立完了後の整備、売却等がすべて完了し納付すべき額が確定するまでの間、埋立地売却代等の収入、埋立地造成費等の支出を、その都度、正確に把握、整理し、その関係資料を保存しておくことが必要である。
 しかし、収益納付に係る上記事項について検査したところ、次のような事態が見受けられた。

ア 収益計算に必要な関係書類の保存について

 本件事業における収入支出の関係書類のうち、事業主体で定める保存期間が経過した10年度以前のものを廃棄処分したなど、収益計算に必要な関係書類が保存されていないことから、収益納付の前提となる正確な収益計算ができないものが3港6箇所見受けられた。

イ 収益計算に係る収入支出の把握、整理について

 廃棄物の受入業務を外部に委託していることから、収益計算に必要な収入支出を把握していなかったり、他の事業等の収入支出と混在していることから、収益計算に必要な収入支出を区分できなかったりなど、収益計算に係る収入支出が適切に把握、整理されていないため、収益納付の前提となる正確な収益計算ができないものが6港10箇所見受けられた。
 以上のように、廃棄物埋立護岸の整備事業について、〔1〕補助率の算定において、算定方法の変更が考慮されていない事態、〔2〕収益納付において、港湾管理者の関係書類の保存や把握、整理が行われていないため正確な収益計算ができなくなっている事態は適切でなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

ア 港湾管理者において

(1)補助率の算定に当たり、表層覆土及び受入廃棄物の種類や量に基づいて、適切な算定を行うことについての認識が十分でなかったこと
(2)収益納付に関する認識が十分でなく、事業実施中における他部局等の分も含めた収入支出の関係書類の把握、整理及び保存が徹底されていなかったこと
(3)収入支出の範囲及び収益の計算方法が徹底されていなかったこと

イ 国土交通省において

(1)補助率の算定について、審査、確認等の体制が十分でなかったこと
(2)収益納付について、現状の把握、確認等の体制が十分でなかったこと
(3)上記アについての港湾管理者に対する周知徹底が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、16年9月に文書を発し、各地方整備局等における審査、現状の把握、確認等を行うための体制の更なる強化を図るとともに、港湾管理者等に対して以下の事項についての周知徹底を図る処置を講じた。
(1)表層覆土の取扱いを含めた補助率の算定方法及び変更時期
(2)収益計算に係る収入支出の関係書類の把握、整理及び保存
(3)収益計算に係る収入支出の範囲及び収益の計算方法
 また、過去に収益納付に係る関係書類の把握、整理及び保存が適切でなかったものについて、港湾管理者に対し、収入支出に係る関係書類の調査、精査及び収入支出の範囲の整理等を求める処置を講じた。

(注1) 北海道ほか18都府県 東京都、北海道、大阪府、青森、宮城、千葉、神奈川、富山、石川、愛知、兵庫、島根、岡山、広島、山口、愛媛、福岡、長崎、宮崎各県
(注2) 4県 神奈川、愛知、広島、山口各県
(注3) 5都県 東京都、富山、岡山、広島、福岡各県

(参考図)

(参考図)