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  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

FAZ支援センターの運営について、独立行政法人の重点業務に対応した運営とするとともに、運営費用を賄うための保証金の債権保全を図り、また、事前に交付した維持管理費用の精算を行うよう改善させたもの


FAZ支援センターの運営について、独立行政法人の重点業務に対応した運営とするとともに、運営費用を賄うための保証金の債権保全を図り、また、事前に交付した維持管理費用の精算を行うよう改善させたもの

科目 国内管理費・施設費  
部局等の名称 独立行政法人日本貿易振興機構(平成15年9月30日以前は日本貿易振興会)
FAZ支援センターの概要 輸入促進地域における国際ビジネス活動の拡大と産業の国際化を支援することを目的として、専任アドバイザーによる相談・情報提供業務等を運営しているもの
検査の対象としたFAZ支援センター 大阪りんくうFAZ支援センターほか6FAZ支援センター
上記の設置に要した金額 82億5056万円
重点業務に対応していないなどしているFAZ支援センター 7FAZ支援センター
保証金の債権保全を必要とするFAZ支援センター及びその額 1FAZ支援センター、7億円(平成15年度)
維持管理費用の精算を必要とするFAZ支援センター及びその額 3FAZ支援センター、5480万円(平成15年度末)

1 事業の概要

(FAZ支援センター事業の概要)

 独立行政法人日本貿易振興機構(平成15年9月30日以前は日本貿易振興会。以下「機構」という。)では、輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関する臨時措置法(平成4年法律第22号。以下「輸入・対内投資法」という。)に基づき承認された輸入促進地域(Foreign Access Zone、15年度末現在22地域)のうち10地域に仙台FAZ支援センターほか9FAZ支援センター(注1) を設置している。これらのFAZ支援センターは、輸入・対内投資法において、国が輸入の促進及び対内投資事業の実施の円滑化に資するため必要な援助をすることとされていることから、その一環として機構が設置したものである。

(FAZ支援センターの設置形態)

 10FAZ支援センターには、以下の三つの設置形態がある。

〔1〕 機構が建物を借り上げ、自らが専任アドバイザーを配置して輸入、対日投資などビジネスの実務や手続についての相談・情報提供業務を直接運営しているもの
 仙台、川崎、大阪各FAZ支援センター

〔2〕 機構が建物を取得し、第3セクターにこれを管理させるとともに、自らが〔1〕と同様に相談・情報提供業務を直接運営しているもの
 境港、大分両FAZ支援センター

〔3〕 機構が建物を取得し又は借り上げて、第3セクターにこれを管理させるとともに、自らが〔1〕と同様に相談・情報提供業務を直接運営する部分と、第3セクターに無償で貸与し、機構が輸入促進地域支援事業に資すると認める相談・情報提供業務や、展示場、会議室等を運営させている部分を合わせて一つのFAZ支援センターとして運営しているもの
 大阪りんくう、神戸、山口、愛媛、北九州各FAZ支援センター

(第3セクターが管理するFAZ支援センターの設置に係る原資)

 10FAZ支援センターのうち大阪りんくうFAZ支援センターほか6FAZ支援センター(注2) は、7年度の補正予算で設置されたもので、国が機構に出資した135億4299万円のうち82億5056万余円が上記7FAZ支援センターに充てられている。この出資金は、表1のとおり、神戸FAZ支援センターを除く6FAZ支援センターの建物等の取得費に34億余円が充てられ、7FAZ支援センターの管理及び業務運営に当たる第2セクターに47億余円が保証金等(以下「保証金」という。)として預託されている。そして、この保証金は、10年間の預託を前提として、その運用益をもってFAZ支援センターの管理及び業務運営に必要な経費の一部(機構が所有していない神戸FAZ支援センターの借館料を含む。)を賄うこととされている。

表1
(単位:千円)

設置
形態
FAZ支援
センター名
建物等取得状況 左の取得費用 保証金額 第3セクター名
(保証金の預託先)
〔2〕
境港 土地・建物取得 83,683 47,441 (株)さかいみなと貿易センター
大分 建物区分所有 47,524 24,805 (株)大分国際貿易センター
〔3〕
大阪りんくう 建物区分所有 1,392,298 1,616,000 りんくうゲートタワービル(株)
神戸 建物賃貸借 - 1,320,000 (財)神戸市産業振興財団
山口 建物区分所有 322,037 161,643 (財)山口県国際総合センター
愛媛 建物区分所有 680,342 700,000 愛媛エフ・エー・ゼット(株)
北九州 建物区分所有 948,792 906,000 (株)北九州輸入促進センター
    3,474,676 4,775,889  

(機構の重点業務)

 機構では、日本経済やそれを取り巻く国際環境の様々な変化に対応するため、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月閣議決定)なども踏まえ、従来の業務の重点としていた輸入促進から対日投資の促進へ移行しており、14年11月の対日投資促進本部の設置や、15年5月からFAZ支援センター以外の他の輸入関連施設の閉鎖(予定を含む。)又は対日投資向けへの組織換えなどの方針を決定し、その処置を講じてきている。また、15年10月に機構が独立行政法人へ移行した際に経済産業大臣が定めた中期目標においては、対日投資の促進を重点業務として取り組むことを明記していて、輸入促進部を廃止し対日投資部を設けるなどの組織改正を実施している。

2 検査の結果

(検査の着眼点及び対象)

 機構では、上記のように重点業務の移行に伴い、組織改正やFAZ支援センター以外の輸入促進関連施設の見直しを行っている。そこで、FAZ支援センターの業務(以下「支援業務」という。)は、それらの変化に対応した事業となっているか、保証金の債権保全は十分なものとなっているか、第3セクターの行うFAZ支援センターの管理及び業務運営は適切なものとなっているかなどについて、前記の国からの出資金をもって設置された7FAZ支援センターについて検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、以下のような事態が見受けられた。

(1)業務運営が機構の重点業務に対応していないなどしているもの

ア 機構が自ら運営している支援業務について

 機構では、7FAZ支援センターに自らアドバイザー等を配置し、輸入促進及び対日投資の促進を図るために相談・情報提供業務を実施している。その業務量についてみると、表2のとおり、13年度から15年度までの各年度の件数は、相談者が直接来訪したものと電話によるものとを合わせても最大で364件、最少で50件、平均で184.2件にすぎず低調となっていたほか、年度別の推移をみても逐年業務量は減少していた。また、相談・情報提供業務の内容別の業務量についてみると、輸入に関するものが最大で360件、最少で49件、平均で176.6件であるのに対し、対日投資に関するものは最大でもわずか24件、最少で0件、平均で7.6件となっていて、輸入促進と比べて対日投資促進関係の支援業務は著しく低調で、業務運営が前記機構の重点業務に対応していない状況となっていた。

表2
FAZ支援
センター名
相談・情報
提供の内容
相談・情報提供件数
13年度 14年度 15年度 平均(割合)
大阪りんくう 輸入関係 211 176 104 163.7(93.3%)
対日投資関係 16 10 9 11.7(6.7%)
227 186 113 175.4
神戸 輸入関係 91 96 68 85.0(83.6%)
対日投資関係 14 13 23 16.7(16.4%)
105 109 91 101.7
境港 輸入関係 94 60 49 67.7(99.5%)
対日投資関係 0 0 1 0.3(0.5%)
94 60 50 68.0
山口 輸入関係 360 345 111 272.0(98.3%)
対日投資関係 4 5 5 4.7(1.7%)
364 350 116 276.7
愛媛 輸入関係 155 145 152 150.7(98.5%)
対日投資関係 4 2 1 2.3(1.5%)
159 147 153 153.0
北九州 輸入関係 294 237 181 237.3(97.9%)
対日投資関係 2 8 5 5.0(2.1%)
296 245 186 242.3
大分 輸入関係 210 288 281 259.7(95.5%)
対日投資関係 3 10 24 12.3(4.5%)
213 298 305 272.0
平均 輸入関係 202.1 192.4 135.1 176.6(95.9%)
対日投資関係 6.1 6.9 9.7 7.6(4.1%)
208.2 199.3 144.8 184.2

イ 機構が第3セクターに運営させている支援業務について

 大阪りんくうFAZ支援センターほか4FAZ支援センターでは、機構が自ら実施している相談・情報提供業務のほか、表3のとおり、第3セクターに建物の一部を無償で貸与し、輸入促進地域支援事業に資すると認められる業務を運営させている。

表3
FAZ支援
センター名
面積(m2 ) 第3セクターの運営する支援業務
機構利用分 第3セクター
利用分
大阪りんくう 243 717 相談・情報提供業務
神戸 163 327 外国、外資系企業向け生活情報提供業務、会議室運営
山口 200 200 展示場運営
愛媛 189 553 輸入品展示即売場運営
北九州 250 1200 展示場、共同仕入センター事務所等運営

 上記のとおり、これら5FAZ支援センターのうち相談・情報提供業務を実施しているのは大阪りんくうFAZ支援センターのみで、他の4FAZ支援センターは、貸与スペースを展示場、会議室等として利用していたが、これらの業務の運営状況については、以下のような事態が見受けられた。

(ア)支援業務の実施内容について

 大阪りんくうFAZ支援センターにおいて、機構が第3セクターに運営させている相談・情報提供業務件数は、表4のとおり、業務量自体は十分なものとなっていたものの、前記アと同様、輸入促進に関するものが大半で、対日投資促進に関するものは低調となっていた。

表4
相談・情報
提供の内容
相談・情報提供件数
13年度 14年度 15年度 平均(割合)
輸入関係
対日投資関係
898
78
1,345
35
1,138
45
1,127.0(95.5%)
52.7(4.5%)
976 1,380 1,183 1,179.7

 また、山口、愛媛及び北九州各FAZ支援センターでは、いずれも展示場の運営を実施していたが、輸入品の展示商談会や展示即売場といった輸入促進に関する利用が大半で、対日投資に関するものはわずかであった。

(イ)施設の利用状況について

 大阪りんくうFAZ支援センターを除く4FAZ支援センターでは、利用実績が著しく低調となっていたり、本来の用途に利用されていなかったり、業務を継続する必要性が乏しくなったりしていた。

<事例1>

 北九州FAZ支援センターでは、機構が第3セクターに展示場、事務室等として運営させているスペースがある。このうち一つの展示場については、FAZ支援センターに隣接して同様の施設が多く設置されていることなどから、利用実績は平成13年度18件、14年度27件、15年度21件と低調であった。また、外部の者の利用は13年度8件、14年度5件、15年度12件となっていて著しく低調であった。また、貸与スペースのうち二つの事務室については、当初利用を予定していた物流業者が入居しなかったなどのため、12年度からは第3セクターの倉庫とされており、本来の用途に利用されていなかった。

<事例2>

 愛媛FAZ支援センターでは、機構が、平成8年より第3セクターに輸入品の展示即売場を運営させているが、この事業が開始した頃は輸入品を紹介することで輸入の促進に寄与する業務として意義を有したと認められた。
 しかし、インターネットの普及等の社会情勢の変化に伴い一般消費者も輸入品の情報取得、購入などが比較的容易にできるようになってきている。現に、機構が輸入消費財の普及に特化して地方に設置してきた地域輸入促進センター(アンテナショップ)は、その必要性が低下したとして15年9月に閉鎖している状況である。
 これらのことから、同様の事業である本件展示即売場を今後も継続して運営させる必要性は乏しくなっていると認められた。

(2)保証金の債権保全が十分でなかったもの

 機構では、FAZ支援センターの管理及び業務運営を行うために、第3セクターへ10年間を前提として保証金を預託し、第3セクターではその運用益をもって必要な経費を負担することとしている。この保証金は、本来機構が支払うべきFAZ支援センターの経費を第3セクターに支払わせるために預託しているもので、実質的な所有権は機構にあり、事業終了時に保証金が機構に返還されるまで債権保全がなされるべき性格のものである。このため、機構では、これらの保証金の保全について、原則として保証金の運用のため第3セクターが購入した国債等の債券に対し質権を設定していた。
 しかし、愛媛FAZ支援センターへの保証金7億円の債権保全については、預託先である第3セクターの所有している建物に対し抵当権を設定していた。そして、保証金預託時点(8年3月)におけるこの建物の評価額は62億余円で、先順位及び同順位抵当権者の債権額を考慮しても担保余力は19億余円あり、保証金は保全されていたが、14年3月時点の評価額は21億余円となっていた。このため、先順位抵当権者の債権額27億余円を控除すると、担保余力は全くなく、機構の保証金7億円は全額保全されていない状況となっていた。

(3)維持管理に係る契約条件が十分でなかったもの

 機構では、7年度末に境港、山口及び大分各FAZ支援センターの建物等を第3セクターから購入するに際し、その売買契約において、第3セクターが上記各FAZ支援センターの修繕等の維持管理を行うこととしていた。この売買契約金額は、計4億5324万余円となっているが、この中には、建物の維持管理費用計9972万円が含まれており、この額については、維持管理の期間が保証金の預託期間内とされていることから、保証金と同様に10年間の維持管理を前提として算出したものであった。
 そして、上記3FAZ支援センターの維持管理費用の実績額についてみると、15年度末までの8年間に要した額は、計2495万余円であり、上記維持管理費用計9972万円のうち8年分に相当する額計7977万余円に対し約5480万円の開差が生じていた。しかし、機構では、維持管理に必要とされた費用について、精算方法を定めないまま契約を継続していたため、上記開差額が精算できない状況となっていた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

(1)機構において、社会経済情勢等の変化を踏まえて輸入促進から対日投資促進へと業務の重点を移してきている中、

(ア)他の輸入関連施設については順次廃止するなどの措置を講じてきたのに、FAZ支援センターについては輸入関連施設でありながら、第3セクターの出資元である自治体等が運営に関与していたことなどもあり、これに対応した運営方法についての検討が十分なされていなかったこと

(イ)FAZ支援センターのうち第3セクターに管理運営をさせているスペースの利用実態を十分把握していなかったこと

(2)保証金の債権保全が十分でなかったこと

(3)建物等の売買契約の締結に当たり、維持管理費用について精算条項を設けるなどの配慮が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、機構では次のような処置を講じた。

(1)FAZ支援センターの業務運営について、16年10月に事務連絡を発し、(ア)機構の対日投資促進に関係する部局との連携を密にして、投資環境の情報提供や投資案件の地方展開を図るなど対日投資促進に重点を置いた事業を実施し、(イ)第3セクターへの貸与スペースについても用途変更を行うなどして活用を図ることとした。

(2)保証金の債権保全について、16年3月に第3セクターの定期預金に質権を設定し、債権保全を図った。

(3)第3セクターとの間で、16年12月までに、維持管理費用に係る契約について実績額との差額に関する精算条項を新たに設けることとした。

(注1) 仙台FAZ支援センターほか9FAZ支援センター仙台、川崎、大阪、大阪りんくう、神戸、境港、山口、愛媛、北九州、大分各FAZ支援センター
(注2) 大阪りんくうFAZ支援センターほか6FAZ支援センター大阪りんくう、神戸、境港、山口、愛媛、北九州、大分各FAZ支援センター