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  • 平成15年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第24 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

新幹線施設の建設のため取得した残地の売却に係る事務を速やかに行う事務処理体制を整備することにより、その早期の売却を図るよう改善させたもの


新幹線施設の建設のため取得した残地の売却に係る事務を速やかに行う事務処理体制を整備することにより、その早期の売却を図るよう改善させたもの

科目 (款)業務外収入 (項)業務外収入
部局等の名称 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(平成15年9月30日以前は日本鉄道建設公団)盛岡支社及び北陸新幹線建設局ほか2建設局
早期に売却することができる土地の概要 新幹線施設の建設のため取得した土地のうち保有する要のないもの
一般競争入札により売却した土地の面積 45,486m2
上記のうち早期に売却することができたと認められる土地の面積 17,146m2
上記の土地の実際の売却価格 4億1334万余円
実際の売却価格と推定売却価格との開差額 3600万円

1 事業の概要

(土地の取得、管理及び処分)

 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「機構」という。)では、東北、北陸、九州各新幹線の建設のために必要な土地を盛岡支社ほか3建設局(注) (以下「支社等」という。)において多数取得し、保有している。そして、このような土地には、建設する新幹線の鉄道線路、駅舎等(以下「新幹線施設」という。)の用地に供するために必要な土地のほか、このような土地の取得に当たり、同一の土地所有者の請求に基づき当該土地を含む一団の土地を取得したために保有している残りの土地(以下「残地」という。)がある。
 残地は、新幹線施設の工事が完了した場合には、次のような土地を除き、機構において引き続き保有する必要のないものであり、一般競争入札等により売却することになるものである。

〔1〕 建設した区間における新幹線の運行を開始するに当たり(以下、この新幹線の運行の開始を「開業」という。)、新幹線を運営する旅客鉄道株式会社に対し、新幹線の運行又は保守・管理上必要な土地として、新幹線施設とともに貸し付けるもの

〔2〕 新幹線の建設により通行等に支障を生ずる道路、水路等(以下「道水路」という。)に代わり新たな道水路を設置した場合において、道水路の管理者である地方公共団体等に対し交換契約等により当該道水路とともに譲渡されるもの

 そして、機構では、新幹線の開業後に、残地に隣接する土地の登記簿調査、境界及び面積の確定等残地を売却するために必要な事務(以下「売却に係る事務」という。)を行うとともに、工事用道路等を原形復旧するなどのため開業後も実施している工事(以下「残工事」という。)が完了するまでの間に、残地の売却を図ることとしていた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 前記のとおり、残地の多くは、新幹線施設の工事が完了した場合には、機構において引き続き保有する必要のないものである。そして、機構では、残地を保有している間は、その固定資産税等のほか、その管理も負担となる。また、バブル経済の崩壊後、土地の価格は下落傾向にあり、残地の売却に係る事務が遅延している場合には、これにより機構に損失が発生することも懸念される。
 そこで、機構において取得し、保有している残地について、適時に適切な売却が行われているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 支社等において、平成15年度末までに一般競争入札により売却された残地45,486m (売却価格11億9757万余円)及び新幹線の建設区間における15年度末現在の売却予定の残地69,546m を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、残地に隣接する土地で施工される新幹線施設の工事が完了した場合には、残地の面積・境界の確定等を行うことが可能となることから、残地の売却に係る事務については、新幹線の開業を待たずに行うことができるものと認められた。
 また、9年10月の北陸新幹線(高崎・長野間)の開業及び14年12月の東北新幹線(盛岡・八戸間)の開業後に一般競争入札により売却された残地45,486m について調査したところ、その入札公告の時期は、北陸新幹線に係るものについては10年1月から15年7月までとなっていて開業後3箇月から5年9箇月が、東北新幹線に係るものについては15年8月となっていて開業後8箇月がそれぞれ経過していた。そして、これらの残地の売却については、土地面積の狭小、形状の不整形等の理由により公告から売却までに長期間を要しているものが見受けられる一方で、画地形状の条件等が良好であることから公告後早期に売却されているものも見受けられた。
 そこで、上記の残地のうち公告から6箇月以内に売却されていた17,146m (売却価格4億1334万余円)について更に調査したところ、これらの残地については、公告が行われる相当以前に残地に隣接する土地で施工される新幹線施設の工事が完了していたのに、公告が行われたのは、開業後相当期間を経過した後となっていた。このため、これらの残地については、新幹線の開業を待つことなく、当該工事の完了後速やかに売却に係る事務を行うことにより、早期の売却を図ることが可能であったものと認められた。
 また、前記のとおり、機構では、15年度末現在、東北、北陸、九州各新幹線の建設区間における売却予定の残地69,546m (これに係る15年度の固定資産税等の維持管理費326万余円)を保有しており、このうち、1,411m については、残地に隣接する土地で施工される新幹線施設の工事が既に完了しているのに、売却に係る事務は何ら行われていない状況となっていた。
 しかし、今後とも、新幹線施設の工事の進ちょくに応じ、売却することができる残地は順次発生することから、残地の売却に係る事務については、隣接する土地の新幹線施設の工事の完了後速やかに行うこととして、早期に残地の売却を図る要があると認められた。
 前記の北陸、東北両新幹線に係る残地17,146m について、隣接する土地における新幹線施設の工事の完了後速やかに売却に係る事務を行うこととし、仮に、実際に公告から売却に要した期間と同程度の期間で売却することができたとした場合、実際の売却価格及び公示価格の変動率から推定売却価格を試算すると約4億4960万円となり、現下の土地の価格の下落傾向の下では、実際の売却価格との間に約3600万円の開差が生ずることとなる。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、機構において、残地の売却に係る事務については新幹線の開業後に行うこととし、また、その売却については残工事期間中に行うこととしていて、新幹線施設の工事の進ちょく状況を踏まえて早期に残地の売却を図るための事務処理体制が整備されていなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、機構では、16年9月、支社等に通知を発し、売却する残地に隣接する土地で施工される新幹線施設の工事が完了した場合には、支社等において、逐次、工事未利用地報告書の提出を受けるとともに、これに基づき残地の売却を計画的に行うなど売却に係る事務を速やかに行うための事務処理体制を整備することとして、残地の早期の売却を図る処置を講じた。

盛岡支社ほか3建設局  盛岡支社、北陸新幹線建設局、北陸新幹線第二建設局、九州新幹線建設局