会社名 | (1) | 北海道旅客鉄道株式会社 |
(2) | 四国旅客鉄道株式会社 | |
(3) | 九州旅客鉄道株式会社 | |
科目 | (1) | (款)鉄道事業営業費 |
(2) | (款)鉄道事業営業費、(款)建設勘定 | |
(3) | (款)鉄道事業営業費、(款)建設仮勘定 | |
部局等の名称 | (1) | 北海道旅客鉄道株式会社本社、釧路、旭川、函館各支社 |
(2) | 四国旅客鉄道株式会社本社 | |
(3) | 九州旅客鉄道株式会社本社、北部九州地域本社、長崎、大分、熊本、鹿児島各支社 | |
工事名 | (1) | 東追分構内ほか2駅ATS 新設ほか198工事 |
(2) | 観音寺駅構内改良に伴う電気設備新設工事ほか170工事 | |
(3) | 博多駅改良に伴う信通設備改良その1工事ほか214工事 | |
工事の概要 | 鉄道施設の機能向上、安全対策等を目的として行う改良工事及び検査、修理、機能維持等を目的として行う修繕工事 | |
工事費 | (1) | 64億9558万余円(平成14、15両年度) |
(2) | 31億3382万余円(平成14、15両年度) | |
(3) | 81億3024万余円(平成14、15両年度) | |
請負人 | (1) | 株式会社ドウデンほか2会社(平成14、15両年度) |
(2) | 四国電設工業株式会社ほか2会社(平成14、15両年度) | |
(3) | 九州電気システム株式会社ほか2会社(平成14、15両年度) | |
契約 | (1) | 平成14年3月〜16年2月 随意契約 |
(2) | 平成14年3月〜16年2月 随意契約 | |
(3) | 平成14年3月〜16年3月 随意契約 |
一般管理費の積算額 | (1) | 4億6882万余円(平成14、15両年度) |
(2) | 2億7646万余円(平成14、15両年度) | |
(3) | 5億6937万余円(平成14、15両年度) | |
低減できた一般管理費の積算額 | (1) | 1890万円(平成14、15両年度) |
(2) | 4240万円(平成14、15両年度) | |
(3) | 2690万円(平成14、15両年度) |
1 工事の概要
北海道旅客鉄道株式会社(以下「JR北海道」という。)、四国旅客鉄道株式会社(以下「JR四国」という。)及び九州旅客鉄道株式会社(以下「JR九州」という。)の各旅客鉄道株式会社では、鉄道施設等の建設及び管理の一環として、毎年、多数の土木、建築、電気設備等の建設工事及びこれらの改良工事等を実施している。
各会社の契約方式については、各会社とも、「経理事務規程」等において、随意契約、指名競争契約及び公開競争契約によるものとし、契約の性質及び目的に応じて、会社にとって最も有利な方式を選択することとしている。そして、各会社では、「工事等契約事務取扱要領」等において、履行上の経験、知識を特に必要とする場合又は現場の状況等に精通しているものに履行させる必要がある場合などにおいては随意契約によることとしている。
各会社では、「営業線工事保安関係標準示方書(在来線)」(以下「示方書」という。)で定めている、営業線に近接して施工する場合や工事用機械の転倒等により諸設備に支障するおそれがある場合などの列車の運転保安又は旅客公衆等の安全に関係する場合の電気、土木等の各工事については、上記の履行上の経験、知識を特に必要とする場合などに該当するとして随意契約によることとしている。
そして、各会社は、示方書において、上記の工事の施工に当たっては、電気、土木等の各工事の保安対策のため「工事管理者(在来線)」等の資格を有する者を従事させることができる請負業者であることを要件としている。
以上のような保安上の必要性から、各会社では、鉄道施設の機能向上、安全対策等を目的として行う改良工事及び検査、修理、機能維持等を目的として行う修繕工事のほとんどを請負業者を特定して随意契約で発注しており、平成14、15両年度における工事費は、JR北海道で68億9686万余円、JR四国で32億2322万余円、JR九州で89億2474万余円となっている。
各会社では、電気、土木等の各工事費の積算について、各会社制定の「電気関係工事基準価格積算標準」、「土木建築関係工事等積算標準」等(以下、これらを「積算標準」という。)によることとしている。積算標準によれば、工事価格は工事原価等と一般管理費(付加利益を含む。以下同じ。)からなり、このうち一般管理費は、工事施工に当たる請負業者の継続運営に必要な本支社の経費である役員報酬、従業員給料手当、租税公課、広告宣伝費、交際費、保険料等で構成されている。
積算標準によれば、一般管理費の積算に当たっては、〔1〕 電気工事では、労務費、材料費等の純工事費に所定の諸経費率を乗じて諸経費(現場経費及び一般管理費)を算出することとし、〔2〕 土木等の工事では、労務費、材料費等の純工事費及び現場経費の工事原価に所定の率を乗じて一般管理費を算出することとしている。そして、一般に工事原価が増加するほどには本支社の経費は増加しないことなどから、一般管理費と工事原価との比率(以下「一般管理費率」という。)は、工事原価が増大するに従って逓減するものとして定められている。
2 検査の結果
各会社では、鉄道施設の改良工事等については、保安上の必要性から、前記のとおり多くの工事を請負業者を特定して随意契約で発注している。このため、これら各工事における工事費の積算が適切かつ経済的なものとなっているかという点に着眼して検査した。
請負業者を特定して随意契約で発注している前記工事のうち、同一の請負業者に14、15両年度とも発注している585工事(これらに係る工事費計JR北海道64億9558万余円、JR四国31億3382万余円、JR九州81億3024万余円)について検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
各会社では、前記の585工事を電気、土木、軌道及び建築の4工種で実施しており、14、15両年度における、各会社ごとの工種別の件数、工事費総額及び請負業者数をみると、次表のとおりとなっており、各工種ごとに複数の工事に分割し、1ないし2の請負業者を特定して発注している状況となっていた。
工種 | 年度 | JR北海道 | JR四国 | JR九州 | ||||||
件数 | 工事費 (千円) |
請負 業者数 |
件数 | 工事費 (千円) |
請負 業者数 |
件数 | 工事費 (千円) |
請負 業者数 |
||
電気 | 14 | 43 | 1,478,339 | 1 | 35 | 851,090 | 1 | 50 | 3,671,489 | 1 |
15 | 47 | 1,474,005 | 1 | 30 | 790,735 | 1 | 126 | 3,864,216 | 1 | |
土木 | 14 | − | − | − | 52 | 492,612 | 2 | 12 | 223,586 | 2 |
15 | − | − | − | 37 | 379,901 | 2 | 27 | 370,953 | 2 | |
軌道 | 14 | 54 | 1,807,450 | 2 | − | − | − | − | − | − |
15 | 55 | 1,735,786 | 2 | − | − | − | − | − | − | |
建築 | 14 | − | − | − | 9 | 271,654 | 1 | − | − | − |
15 | − | − | − | 8 | 347,827 | 1 | − | − | − | |
合計 | 199 | 6,495,581 | − | 171 | 3,133,821 | − | 215 | 8,130,245 | − |
そして、各会社では、前記の積算標準に基づき、これらの工事の一般管理費を次のとおり積算していた。
〔1〕 電気工事では、各工事について1契約ごとに純工事費を算出し、純工事費に所定の諸経費率を乗じて諸経費を算出していた。
〔2〕 土木、軌道及び建築各工事では、各工事について1契約ごとに工事原価を算出し、工事原価に所定の一般管理費率を乗じて一般管理費を算出していた。
この結果、各会社の4工種ごとの一般管理費率及び一般管理費の積算額は、次表のとおりとなっていた。
工種 | 年度 | JR北海道 | JR四国 | JR九州 | ||||||
件数 | 一般管理 費率 (%) |
一般 管理費 (千円) |
件数 | 一般管理 費率 (%) |
一般 管理費 (千円) |
件数 | 一般管理 費率 (%) |
一般 管理費 (千円) |
||
電気 | 14 | 43 | 9.3〜11.0 | 127,016 | 35 | 9.2〜10.8 | 61,646 | 50 | 8.5〜10.8 | 222,501 |
15 | 47 | 9.3〜11.0 | 128,133 | 30 | 9.2〜10.8 | 59,283 | 126 | 8.5〜10.8 | 278,136 | |
計 | 90 | − | 255,149 | 65 | − | 120,930 | 176 | − | 500,638 | |
土木 | 14 | − | − | − | 52 | 11.3〜13.1 | 53,326 | 12 | 12.2〜13.7 | 25,011 |
15 | − | − | − | 37 | 11.3〜13.1 | 39,059 | 27 | 12.0〜14.1 | 43,727 | |
計 | − | − | − | 89 | − | 92,385 | 39 | − | 68,738 | |
軌道 | 14 | 54 | 8.7〜10.3 | 107,279 | − | − | − | − | − | − |
15 | 55 | 8.7〜10.4 | 106,392 | − | − | − | − | − | − | |
計 | 109 | − | 213,672 | − | − | − | − | − | − | |
建築 | 14 | − | − | − | 9 | 10.5〜11.3 | 27,635 | − | − | − |
15 | − | − | − | 8 | 10.4〜11.3 | 35,516 | − | − | − | |
計 | − | − | − | 17 | − | 63,152 | − | − | − | |
合計 | 199 | − | 468,821 | 171 | − | 276,468 | 215 | − | 569,377 |
以上のように、各会社では、これらの工事の請負業者を各工種ごとに1ないし2業者に特定し、各工事の一般管理費を1契約ごとに算出していた。
しかし、これらの工事は、工事施工管理上等の制約により、施工箇所、工程又は工事内容の別に各々分割し、施工実績のある請負業者を特定して発注しているものであり、毎年度、定期・計画的に実施され、工事量等も請負業者ごとにほぼ固定していること、また、一般管理費率は、工事原価が増大するに従って逓減する性格のものであることから、請負業者の本支社の経費等である一般管理費の積算に当たっては、複数の工事を1つの契約の工事とみなして一般管理費率を算出し、これにより積算することとしても支障はないと思料された。
したがって、請負業者を特定して定期・計画的に発注する場合、当該年度に発注する特定の請負業者ごとの工事原価の総額を対象として一般管理費を算出することが適切であると認められた。
各会社における特定の請負業者ごとの工事原価の総額を対象として一般管理費を修正計算すると、次表のとおり、JR北海道計4億4991万余円、JR四国計2億3398万余円、JR九州計5億4244万余円となり、14、15両年度における一般管理費の積算額、JR北海道計4億6882万余円、JR四国計2億7646万余円、JR九州計5億6937万余円は、それぞれJR北海道約1890万円、JR四国約4240万円、JR九州約2690万円低減できたと認められた。
工種 | 年度 | JR北海道 | JR四国 | JR九州 | ||||||
件数 | 一般管理費 率 (%) |
一般 管理費 (千円) |
件数 | 一般管理費 率 (%) |
一般 管理費 (千円) |
件数 | 一般管理費 率 (%) |
一般 管理費 (千円) |
||
電気 | 14 | 43 | 9.3 | 123,406 | 35 | 9.2 | 57,561 | 50 | 9.2 | 215,836 |
15 | 47 | 9.3 | 124,268 | 30 | 9.2 | 55,581 | 126 | 9.2 | 270,188 | |
計 | 90 | − | 247,674 | 65 | − | 113,143 | 176 | − | 486,024 | |
土木 | 14 | − | − | − | 52 | 8.7、10.9 | 37,477 | 12 | 10.7、11.5 | 21,430 |
15 | − | − | − | 37 | 9.3、10.5 | 29,465 | 27 | 10.0、11.1 | 34,993 | |
計 | − | − | − | 89 | − | 66,942 | 39 | − | 56,424 | |
軌道 | 14 | 54 | 9.2、8.5 | 101,510 | − | − | − | − | − | − |
15 | 55 | 9.2、8.5 | 100,728 | − | − | − | − | − | − | |
計 | 109 | − | 202,239 | − | − | − | − | − | − | |
建築 | 14 | − | − | − | 9 | 9.5 | 23,840 | − | − | − |
15 | − | − | − | 8 | 9.4 | 30,063 | − | − | − | |
計 | − | − | − | 17 | − | 53,904 | − | − | − | |
合計 | 199 | − | 449,914 | 171 | − | 233,989 | 215 | − | 542,449 |
このような事態が生じていたのは、各会社において、請負業者を特定して定期・計画的に発注する工事の一般管理費の取扱いについて検討が十分でなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、各会社では、16年9月に、請負業者を特定して定期・計画的に発注する工事の一般管理費は、当該年度の個々の契約全体を1つの契約と考えた一般管理費率により算出するよう積算標準を改正し、17年4月以降契約する工事から適用することとする処置を講じた。