会社名 | (1) | 北海道旅客鉄道株式会社 |
(2) | 四国旅客鉄道株式会社 | |
(3) | 九州旅客鉄道株式会社 | |
科目 | (1) | (款)建設勘定 |
(2) | (款)建設勘定 | |
(3) | (款)建設仮勘定 | |
(款)鉄道事業営業費 | ||
部局等の名称 | (1) | 北海道旅客鉄道株式会社本社 |
(2) | 四国旅客鉄道株式会社本社 | |
(3) | 九州旅客鉄道株式会社本社 |
マルス端末装置の概要 | 旅客販売総合システムの中央装置と専用回線等で接続され、乗車券類等を予約、発行等するための端末装置 |
調達の相手方 | 鉄道情報システム株式会社 |
ジャーナルプリンタ等の調達額 | (1) | 8875万余円 | (平成8年度〜15年度) |
(2) | 1714万余円 | (平成8、9、13、15各年度) | |
(3) | 9693万余円 | (平成7、9両年度、11年度〜15年度) | |
節減できた調達額 | (1) | 3783万円 | |
(2) | 753万円 | ||
(3) | 3269万円 |
1 旅客販売総合システムの概要
北海道旅客鉄道株式会社(以下「JR北海道」という。)、四国旅客鉄道株式会社(以下「JR四国」という。)及び九州旅客鉄道株式会社(以下「JR九州」という。)の各旅客鉄道株式会社では、管内の駅等において、普通乗車券、座席指定券などの乗車券類等を発売している。この予約、発行等に関しては、鉄道情報システム株式会社(以下「JRシステム」という。)が運営する旅客販売総合システム(以下「マルス」という。)を使用している。
各会社管内の駅等には、マルスの中央装置と専用回線等で接続され、乗車券類等を予約、発行等するための端末装置(以下「マルス端末装置」という。)が設置されている。マルス端末装置は、駅係員が操作するタイプや顧客が操作するタイプなどがあり、平成15年度末現在、下表のとおり551台が各会社管内の駅等344箇所に設置されている。
会社名 | 駅等箇所数 | マルス端末装 置の設置台数 |
JR北海道 | 151 | 267 |
JR四国 | 53 | 71 |
JR九州 | 140 | 213 |
計 | 344 | 551 |
各会社が所有するマルス端末装置のうち、多くの割合を占めるMR形端末装置は、駅係員が操作するタイプで、周辺機器を制御するシステム装置、乗車券類等を発行等する印刷発行機、ジャーナルプリンタ等から構成されている。このうち、ジャーナルプリンタは、当日の乗車券類等の発売枚数、発売金額等の集計の記録の印刷、複写式の団体乗車券の発行、乗車券類等の払戻記録の印刷等の業務に使用されている。
MR形端末装置は、JRシステムが独自に開発・設計し、特定の製造会社(以下「製造会社」という。)に仕様を示し製造させたもので、JRシステム1社により7年度から販売されている。JRシステムは、各会社にMR形端末装置の価格表(以下「価格表」という。)を提示し、MR形端末装置を構成する各機器(以下「標準品」という。)のうち、基本的に必要な標準品をセットで販売している。
そして、価格表には、標準品のセットの価格のほかに標準品の個別価格が明示されており、標準品の個別価格を積み上げたものよりも、標準品のセットの価格の方が低く設定されている。
各会社では、MR形端末装置を調達する場合、予備などのため標準品を個別に調達するものを除き、原則として標準品をセットで調達している。
各会社におけるMR形端末装置の調達手続は、おおむね次のとおりである。
〔1〕 計画部門では、調達部門に必要数量の調達を依頼する。
〔2〕 調達部門では、価格表を参考にして、予定価格に相当する基準価格を設定する。
〔3〕 調達部門では、JRシステムから見積書を徴して価格交渉等を行う。
〔4〕 契約が成立すると、製造会社から駅等に直接MR形端末装置が納品され、併せてMR形端末装置に関するハードウェア保守マニュアル及びセットアップガイド(製造会社による作成。以下、これらを「マニュアル等」という。)が、保守等を行う部門に配布されている。
2 検査の結果
MR形端末装置は、永年にわたりJRシステム1社により販売されていることから、各会社におけるMR形端末装置の調達が適切かつ経済的なものとなっているかに着眼して検査した。
15年度末に各会社の駅等に設置されているマルス端末装置のうち、7年度から15年度までに随時調達されたMR形端末装置480台(JR北海道257台、JR四国59台、JR九州164台)及び個別に調達した標準品を対象として検査を実施した。
検査したところ、各会社では、基準価格の設定に当たり、新規に標準品をセットで又は個別に調達する場合は、JRシステムから提示を受けた価格表記載の価格を、また、既に調達実績のある場合は、調達した際の価格を、それぞれそのまま適用していた。
そして、各会社でMR形端末装置を調達するに当たっては、JRシステムから別途見積書を徴して価格交渉を行っているが、標準品をセットで調達している場合は、全調達台数の8割以上は基準価格と同額で契約していた。また、標準品を個別に調達している場合は、すべて基準価格と同額で契約していた。
また、MR形端末装置のシステム装置には、一般に普及している基本ソフトウェアが組み込まれており、システム装置がパーソナルコンピュータであると製品カタログに明示されているものもあった。
そこで、MR形端末装置を構成する機器について、標準品に代えて標準品と全く同じではないが類似した機能、品質を有している市販品(以下「類似市販品」という。)などの使用が考慮できないか、その仕様、価格等を調査した。
その結果は、次のとおりとなっていた。
(ア)類似市販品を考慮していない事態
標準品のうち、乗車券類等の発行に係る記録の印刷等を行うジャーナルプリンタは、他の会社が製造し市販もしているドットインパクトプリンタ(注)
を製造会社が調達し、これにJRシステムの作成した仕様書に従って電源ファン等を設置し、MR形端末装置の標準品であるジャーナルプリンタとして、JRシステムに納品しているものであった。そして、上記ドットインパクトプリンタの市販品及びその後継機(以下、これらを「市販プリンタ」という。)の価格は、ジャーナルプリンタの標準品の価格と比べて安価となっていた。
そこで、本院がJRシステムの中央システムセンターにおいて、市販プリンタにより、MR形端末装置の各機器間の連動試験、マルス中央装置との連動試験及び市販プリンタの印字等の動作試験を行ったところ、標準品と同じ結果を得ることができた。したがって、標準品のジャーナルプリンタに代えて、市販プリンタを使用しても機能上支障はないと認められた。
(イ)標準品と同形式の市販品を考慮していない事態
各会社がJRシステムから提供されているマニュアル等についてみたところ、MR形端末装置の標準品の一覧表に、標準品の形式名とともに、当該標準品を製造会社が市販する際の形式名を併記しているものが見受けられた。そして、同形式の市販品(以下「同形式品」という。)のうち、拡張メモリ、拡張ボード等、標準品の価格より安価となっているものがあった。
したがって、MR形端末装置の基準価格の設定を行う際に、単に標準品のセットの価格及び標準品の個別価格や過去に調達した際の価格を参考とするだけでなく、類似市販品又は同形式品を確認するなどして、それらの価格を調査することにより、MR形端末装置の調達額を節減する要があると認められた。
上記により、本件MR形端末装置の標準品の調達に当たり、ジャーナルプリンタ及び同形式品が存在するものについて、標準品の価格を類似市販品や同形式品の価格に見直すなどして修正計算すると、別途発生する機器組立費、動作試験費等を考慮しても、その基準価格は、JR北海道5091万余円、JR四国960万余円、JR九州6425万余円となり、標準品の調達額JR北海道8875万余円、JR四国1714万余円、JR九州9693万余円は、JR北海道3783万余円、JR四国753万余円、JR九州3269万余円が節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、主として、次のことによると認められた。
(ア)各会社では、JRシステムがマルス端末装置を開発している経緯もあって、JRシステムの販売するマルス端末装置を使用することを当然としていたこと、また、マルス端末装置はすべてが特別な仕様であり、マルス端末装置をセットとしてしか調達できないとしていたことから、類似市販品の導入の検討をしていなかったこと
(イ)各会社では、標準品の中には同形式品が存在するという認識に乏しかったため、標準品と同形式品がマニュアル等に明示されていたにもかかわらず、同形式品の価格の調査を行わずに、基準価格の設定をしていたこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、各会社では、マルス端末装置の調達に当たって、それぞれ16年9月に通知を発するなどし、計画、調達、保守等を担当する関係部門間において連絡を密にし、類似市販品等の価格を調査するなどして、適正な基準価格を設定し、経済的な調達に努めるよう周知徹底を図る処置を講じた。