会社名 | (1) | 東日本電信電話株式会社 |
(2) | 西日本電信電話株式会社 | |
科目 | (1) | 附帯事業営業損益 |
(2) | 附帯事業営業損益 | |
部局等の名称 | (1) | 東日本電信電話株式会社本社 |
(2) | 西日本電信電話株式会社本社 |
平成15事業年度における附帯事業営業損益 | (1) | (2) |
営業収益 | 1643億7186万余円 | 1690億0014万余円 | |
営業費用 | 1656億9087万余円 | 1716億0352万余円 | |
営業損失 | 13億1901万余円 | 26億0337万余円 | |
試験研究費の配賦基準の見直しにより増加した営業費用 | 4億4475万円 | 4億7098万円 |
1 業務及び経理の概要
(1)業務の概要
東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)及び西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)では、日本電信電話株式会社等に関する法律(昭和59年法律第85号)に基づき、地域電気通信事業を経営することを目的として、それぞれ所定の区域において電気通信役務を提供する地域電気通信業務、地域電気通信業務に附帯する業務、会社の目的を達成するために必要な業務等を営んでいる。
このうち地域電気通信業務に附帯する業務としては、電気通信設備の調査・設計・建設・保守等の受託、端末機器の売切り販売及びその附帯関連工事並びに電気通信システムの構築等に係るコンサルティング(以下、これらの業務を「受託等業務」という。)などがある。
両会社では、上記の会社の業務を営むため、電気通信技術に関する研究開発を推進している。この研究開発に関しては、平成11年7月の日本電信電話株式会社の再編成以降、電気通信の基盤となる電気通信技術に関する研究(以下「基盤的研究開発」という。)を日本電信電話株式会社(以下「持株会社」という。)が実施し、基盤的研究開発以外の応用的研究はNTT東日本及びNTT西日本の両会社が実施している。
そして、両会社では、持株会社との間で「基盤的研究開発に関する基本契約」を締結し、基盤的研究開発に要する費用を継続的に負担することにより、その研究成果を使用する権利を得て、その後の応用的研究開発や事業展開を行っている。
また、15年度から、基盤的研究開発の成果等の基盤技術の事業化を促進するため、新たに「基盤技術の個別実用化および技術の個別支援に関する基本契約」を締結し、ニーズに特化した商用開発を推進している。
(2)経理の概要
両会社は、上記の業務の経理を行うに当たっては、電気通信事業法(昭和59年法律第86号。以下「事業法」という。)により、電気通信役務に関する料金の適正な算定に資するため、総務省令で定める勘定科目の分類その他会計に関する手続に従い、その会計を整理しなければならないこととされている。
そして、電気通信事業会計規則(昭和60年郵政省令第26号。以下「会計規則」という。)により、勘定科目の分類は電気通信事業と電気通信事業以外の事業に区分し、双方に関連する収益及び費用は、適正な基準によりそれぞれの事業に配賦しなければならないこととされており、共通費、管理費、試験研究費等の費用については、それぞれ配賦の基準が定められている。このうち試験研究費の基準は、原則として営業収益額比又は関連する支出額比若しくは固定資産価額比によることとされている。
また、事業法等では、市場支配的な事業者に対し、内部相互補助の監視・抑制及び業務運営の透明性向上の観点から、電気通信役務に関する収支の状況その他会計に関する事項の公表を義務付けている。これに基づき、両会社は、会計規則に定める様式による貸借対照表、損益計算書、附帯事業損益明細表等を公表しなければならないこととされている。なお、このうち附帯事業損益明細表は附属明細書とはされていない。
両会社では、事業法等に基づき、地域電気通信業務等については電気通信事業として、地域電気通信業務に附帯する業務及び両会社の目的を達成するために必要な業務については、附帯事業として区分して経理している。
また、電気通信事業と附帯事業の双方に関連する収益及び費用をそれぞれの事業に配賦するため、会計規則に定められた勘定科目を内訳科目に細分化し、その内訳科目ごとに具体的な配賦基準を定めている。そして、試験研究費等の費用は、いったん電気通信事業の勘定科目で整理した後、各月ごとに、営業収益額比等の配賦基準によりそれぞれの事業に配賦している。研究開発に要した費用は、この試験研究費として経理している。
そして、両会社では、各月分の合計残高試算表を作成し、さらに、期末の合計残高試算表を基にして期末決算処理等を行った上で当該事業年度の財務諸表を作成している。
2 検査の結果
両会社では、近年、受託等業務について、電気通信設備・システムの設計・構築から保守・運用に至るまでの総合的なソリューションビジネス(注)
を展開したり、政府の「e−Japan重点計画」等に対応した営業体制を強化したりなどしており、当該業務の内容が変化してきている。また、これらの受託等業務の分野を含め、事業者間の競争が激化するなど、市場環境も変化している。そして、このような変化に対応して、前記のとおり、基盤的研究開発に係る成果を利用した商用開発が推進されている。
そこで、両会社の財務諸表の作成に当たり、上記の状況も踏まえ、電気通信事業及び附帯事業に共通的な費用がそれぞれの事業に適切に配賦されているかなどに着眼して、15事業年度の試験研究費(16年2月分の合計残高試算表の残高:NTT東日本587億2501万余円、NTT西日本572億7389万余円)について検査した。
両会社では、研究開発に係る試験研究費を「一般試験研究」、「共通事務」等4つの内訳科目に区分し、更に「一般試験研究」については、「アクセス」、「通信網構成」、「線路土木」、「ユーザ(利用)」等の研究分野別に14の内訳科目に細分し、配賦基準を定めていた。
上記のうち「ユーザ(利用)」に係る試験研究費は、「端末側に具備する技術(情報流通ビジネスの利用に関する技術)の試験研究に必要な費用」とされており、両会社では、専ら電気通信ネットワークの利用による電気通信事業に係る営業収益を獲得する費用であるとして、配賦基準においてその全額を電気通信事業に配賦することとしていた。このため、各月分の合計残高試算表において、その全額が電気通信事業の営業費用として計上されていた。
しかし、「ユーザ(利用)」に係る試験研究費は、ほとんどが基盤的研究開発に係るものとなっているが、基盤的研究開発の研究テーマには、「ユーザ(利用)」の研究分野に属する「電子政府・自治体システム」などのように、受託等業務として商用化することが可能であると認められるものが含まれるようになってきており、両会社では、研究開発の成果をソリューションビジネスの営業活動におけるシステム構築等の提案に活用したり、受託等業務として受注した業務のシステム構築に活用したりしている。
したがって、「ユーザ(利用)」に係る試験研究費については、電気通信事業と附帯事業の双方に関連する費用として附帯事業にも適切に配賦することにより、附帯事業の損益の状況が適切に表示されるよう改善する要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、近年、受託等業務において商用化することができる研究テーマが研究開発に含まれてきており、また、今後もニーズに特化した商用開発を推進していくこととしているのに、「ユーザ(利用)」に係る試験研究費の配賦基準の見直しが行われていなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、両会社では、15事業年度における財務諸表作成に当たり、「ユーザ(利用)」に係る試験研究費の配賦基準を改正し、電気通信事業と附帯事業における受託等業務の各事業との営業収益額比により、附帯事業へも費用を配賦することとする処置を講じた。
なお、両会社の15事業年度の附帯事業の営業損失は、NTT東日本で13億1901万余円(営業収益1643億7186万余円、営業費用1656億9087万余円)、NTT西日本で26億0337万余円(同1690億0014万余円、同1716億0352万余円)となっているが、配賦基準の改正により増加した営業費用の額は、NTT東日本で4億4475万余円、NTT西日本で4億7098万余円となっている。