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  • 平成15年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第29 東日本電信電話株式会社、第30 西日本電信電話株式会社、第31 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項|
  • (西日本電信電話株式会社)

(7)建物等への入館・入室を管理する業務について、実態に適合した業務量に基づき算定することなどにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの


(7)建物等への入館・入室を管理する業務について、実態に適合した業務量に基づき算定することなどにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの

会社名 西日本電信電話株式会社
科目 営業費用
部局等の名称 西日本電信電話株式会社本社及び名古屋支店ほか11支店
契約名 建物入退室管理業務委託契約
契約の概要 建物等への入館・入室を管理する業務をシステムを利用して遠隔で監視する方法により行わせるもの
契約の相手方 株式会社エヌ・ティ・ティファシリティーズ
契約期間 平成15年4月〜16年3月
支払額 4億9575万余円(平成15年度)
節減できた委託費 5610万円(平成15年度)

1 契約の概要

(建物等への入館・入室を管理する業務の概要)

 西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)では、電気通信事業のため多数の建物等を保有しており、各支店等ではこれらの建物等への入館・入室を管理する業務(以下「出入管理業務」という。)を次の方法により委託して実施している。

〔1〕 有人で管理する方法

〔2〕 入口ごとに設置した施錠装置で管理する方法

〔3〕 遠隔で監視する方法

 上記のうち、入館・入室を遠隔で監視する方法(以下「遠隔監視」という。)による出入管理業務は、建物等の玄関、機械室等に入館・入室管理装置(以下、この装置が設置されている出入口を「ゲート」という。)を設置し、ゲートごとに入館・入室することができる者(以下「許可者」という。)を定めて監視センタのコンピュータに事前登録し、許可者でなければゲートを通過して入館・入室することができないようになっている。
 そして、本社及び名古屋支店ほか11支店(注1) では、遠隔監視による出入管理業務について、〔1〕許可者を監視センタのコンピュータに登録したり、削除したりなどする業務(以下「入館・入室管理業務」という。)、〔2〕監視センタで、入館・入室管理装置から送られてくる各種警報の監視を常時行い、関係部門との連絡を行う業務(以下「警報監視業務」という。)などの全部又は一部を、株式会社エヌ・ティ・ティファシリティーズに委託して実施している。

(遠隔監視による出入管理業務に係る委託費の算定)

 本社及び各支店では、遠隔監視による出入管理業務を委託するに当たっては、本社が定めた業務委託に関する事務処理の要領等に基づき、上記の業務ごとに費用を算定することとしている。そして、〔1〕入館・入室管理業務及び〔2〕警報監視業務に係る費用(以下、それぞれ「入館等管理業務費」、「監視業務費」という。)については、次により算定することとしている。

〔1〕 入館等管理業務費

〔1〕入館等管理業務費

 このうち1ゲート当たりの月間稼働時間は、許可者のデータを監視センタのコンピュータに登録するなどの作業に要する稼働時間で、本社から各支店等に対して発した事務連絡において示された年間の稼働時間528分/年に基づき、これを1月当たりに換算して44分/月を使用することとしている。

〔2〕 監視業務費

〔2〕監視業務費


 このうち監視単価については、全国各地の監視センタで、年間(365日)を通じて終日(24時間)常時1名が監視することとして次により算出した労務費に諸経費率を乗じ、これを監視する総ゲート数で除することにより算出することとしている。

このうち監視単価については、全国各地の監視センタで、年間(365日)を通じて終日(24時間)常時1名が監視することとして次により算出した労務費に諸経費率を乗じ、これを監視する総ゲート数で除することにより算出することとしている。

 上記のうち、日割基礎単価、割増基礎単価及び宿直単価については、前記の事務連絡等において、刊行物である積算参考資料に掲載された「建築保全業務技術者賃金」を使用することとなっている。そして、同積算参考資料によれば、日割基礎単価は基本給、各種基準内手当及び賞与の総額を1日8時間当たりに換算した単価、割増基礎単価は時間外単価及び夜勤単価算出の際に割増しの基礎となる1時間当たり単価、宿直単価は現場に宿直する場合の1回当たり定額単価であるとされている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 NTT西日本では、電気通信事業のため多数の建物等を保有しており、これらの建物等に係る遠隔監視による出入管理業務の委託費も多額に上っている。また、同会社では、これまで業務の集約、営業拠点の統廃合等を実施するとともに、平成14年5月には財政基盤を建て直し、経営の自立化を図るための構造改革を実施するなど業務運営体制の効率化を進めているところである。このような状況を踏まえ、出入管理業務に係る委託費の算定が適切に行われているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 本社及び名古屋支店ほか11支店において、15年度に支払った遠隔監視による出入管理業務に係る委託費計4億9575万余円を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

ア 入館等管理業務費の算定について

 入館・入室管理業務を委託している本社及び名古屋支店ほか9支店(注2) では、入館等管理業務費の算定に当たり、前記のとおり、1ゲート当たりの月間稼働時間を44分/月としていた。この稼働時間は、8、9両年度に行った実績調査の結果に基づき、許可者のデータを監視センタのコンピュータに登録するなどの作業に要する時間1.1分に1ゲート当たりの年間平均作業件数480件を乗じて算出した528分/年を1月当たりに換算して算出したものである。
 しかし、前記のとおり、NTT西日本では、業務の集約、営業拠点の統廃合等業務運営体制の効率化を進めており、これに伴い拠点ごとの許可者の登録数等に変動が生じることを踏まえ、本社及び上記10支店の15年度における年間作業件数の実績について調査したところ、1ゲート当たりの年間平均作業件数は237件となっていて、480件を大幅に下回っている状況であった。
 このように、稼働時間の基礎としていた作業件数は実績とかい離したものとなっていることから、入館等管理業務費の算定に当たっては、作業件数の実績に基づくなど業務の実態に適合した稼働時間により算定すべきであると認められた。

イ 監視業務費の算定について

 警報監視業務を委託している名古屋支店ほか11支店では、前記の方法により労務費を算出していた。
 しかし、割増基礎単価は深夜割増しの基礎となる1時間当たりの単価であって、これに深夜割増率を乗じることによって、深夜勤務に係る割増額を算出するものであることから、その算出に当たっては、割増基礎単価そのものに対象時間数を乗じるのではなく、割増基礎単価に深夜割増率を乗じたものに対象時間数を乗じて算定すべきであった。また、深夜割増しの対象時間数については、労働基準法(昭和22年法律第49号)において深夜割増しの対象とされている7時間とすれば足りると認められた。さらに、監視センタの業務実施体制は、3交替で24時間を監視する体制を前提としており、宿直単価は現場に宿直する場合に支払われる手当であることから、これを加算する要はないと認められた。

(節減できた委託費)

 本件について、入館等管理業務費については、15年度における各支店等の作業件数の実績に基づいた稼働時間により算定し、また、監視業務費については、深夜割増しに係る金額を適切な方法により算出するなどして算定したとすると、本社及び名古屋支店ほか11支店における委託費計4億9575万余円は4億3964万余円となり、約5610万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、前記アの事態については、業務運営体制の効率化や各支店等における入館・入室管理業務の実態に基づいて作業件数を見直すこととしていなかったこと、また、前記イの事態については、深夜割増しの趣旨等について十分理解しないまま監視業務費の算定式が定められていたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTT西日本では、16年9月に、各支店等に対して次のような内容の指示文書を発し、遠隔監視による出入管理業務に係る委託費の節減を図る処置を講じた。

(ア)入館等管理業務費について、作業件数の実績に基づくなど業務の実態に適合した稼働時間により算定すること

(イ)監視業務費について、深夜割増しに係る金額を適切な方法により算出するなどして算定すること

(注1) 名古屋支店ほか11支店  名古屋、静岡、岐阜、三重、金沢、広島、岡山、山口、愛媛、福岡、熊本、沖縄各支店
(注2) 名古屋支店ほか9支店  名古屋、静岡、三重、広島、岡山、山口、愛媛、福岡、熊本、沖縄各支店