科目 | 通信設備使用料 |
部局等の名称 | 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ本社 |
専用回線による通信サービスに係る契約の概要 | 無線基地局に設置されている無線装置と交換局に設置されている交換機を接続するため専用回線による通信サービスの提供を受けるもの |
契約の相手方 | 東日本電信電話株式会社 |
専用回線による通信サービスに係る使用料金の支払額 | 7億0221万余円(平成15年度) |
節減できた専用回線による通信サービスに係る使用料金 | 5640万円(平成15年度) |
1 専用回線に係る契約の概要
株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(以下「NTTドコモ」という。)では、関東甲信越地域における携帯電話サービスの提供(注)
のため、携帯電話等と無線で直接交信を行う無線基地局(以下「基地局」という。)、基地局との間で音声等のデータを送受信する交換局を設置している。
基地局に設置されている無線装置には、平成5年からサービスを開始している第2世代携帯電話(以下「PDC」という。)用として使用する装置と、13年からサービスを開始している第3世代携帯電話(以下「IMT」という。)用として使用する装置がある。そして、基地局には、両方の無線装置を設置している箇所、PDC用の無線装置のみを設置している箇所、IMT用の無線装置のみを設置している箇所がある。
基地局と交換局との間の接続には、NTTドコモが自ら設備を設置、運営しているマイクロ波を利用した無線設備(以下「マイクロエントランス設備」という。)等を使用するものと、東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)との間で、専用回線による通信サービス(以下「専用サービス」という。)の提供を受ける契約(以下「専用契約」という。)を締結し、これを利用するものがある(参考図1参照)
。
専用サービスは、ディジタル化された音声等の信号を専用回線により伝送するものである。そして、NTTドコモでは、専用サービスの用途やNTT東日本の専用サービスの提供状況に応じて、高速ディジタル伝送サービス、ディジタルアクセスサービス、ATM専用サービスなどを利用している。
このうち、高速ディジタル伝送サービス及びディジタルアクセスサービスは主にPDC用として利用されているものであり、また、ATM専用サービスは主にIMT用として利用されているものである。
マイクロエントランス設備は、PDC用に開発されたものとIMT用に開発されたものがある。そして、NTTドコモでは、基地局と交換局との接続については、長期的な経済性を考慮して、マイクロエントランス設備を自ら設置することを優先している。
PDC用の無線装置を設置している基地局のうち、マイクロエントランス設備が設置されていない箇所では、交換局との間を専用回線で接続している。
これらの基地局では、13年5月以降におけるIMTサービスの開始に伴い、IMT用の無線装置を併設する場合には、専用サービスの料金体系からみて、IMTの音声等のデータ及びPDCの音声等のデータを1回線に重畳して伝送する装置(以下「多重化装置」という。)を設置し、専用回線を集約する方が専用サービスの使用料金(以下「専用料金」という。)を節減することができ、経済的となる(参考図2参照)
。
そこで、NTTドコモでは、13年度以降、PDC用の無線装置と交換局の交換機との接続に一定帯域以上の専用回線を使用しており、かつ、ATM専用サービスが提供されているなどの専用回線を集約するための条件を満たす場合には、基地局と交換局を接続する複数の専用回線をATM専用サービスの1回線に集約した上、PDCで使用している専用回線に係る専用契約については解約することにしている。
NTTドコモでは、無線アクセスネットワーク部において、基地局の新増設に係る計画を策定しており、マイクロエントランス設備の設置計画等を担当するマイクロ部門では、この計画に基づき、マイクロエントランス設備の設置が技術的に可能であるかについて検討することにしている。
そして、マイクロエントランス設備を設置することが技術的に不可能な場合には、専用回線を使用することとして、伝送部門において、交換局とのデータの伝送方法についての検討を行うことにしている。
また、マイクロエントランス設備を設置することが技術的に可能な場合であっても、技術的な問題以外の障害がある場合には、専用サービスを利用することにしている。
マイクロエントランス設備の設置に当たり障害がない場合には、設備の設置計画を策定した上でその工事を実施することにしている。
2 検査の結果
前記のように、NTTドコモでは、IMT用の無線装置を基地局に設置する場合で、基地局と交換局との間を専用回線で接続する場合には、多重化装置を設置して専用回線を集約することにより専用サービスの使用料金(以下「専用料金」という。)の節減を図る施策を13年度から計画的に行っている。そこで、このような施策の実施が適切に行われているかに着眼して検査した。
16年3月末時点において、NTTドコモがPDC用及びIMT用の無線装置を併設し、かつ、専用サービスを利用している基地局のうち、多重化装置を設置せず、交換局との接続にPDC用、IMT用それぞれの専用回線を使用している基地局50箇所の143回線に係る専用契約(15年度の専用料金支払額7億0221万余円)を対象として検査した。
検査したところ、上記のうち、前記のような専用回線を集約するための条件を満たしている基地局が17箇所、40回線(うちPDCで使用している専用回線23回線)あった。
これらの基地局の中には、マイクロエントランス設備の設置が基地局の構造上不可能であったり、地権者との交渉が難航していることなどからマイクロエントランス設備の設置の見通しが立っていなかったりなどしていて、マイクロエントランス設備の設置が当分見込めないものが見受けられた。
そして、上記17箇所の基地局に係るPDCで使用している専用回線23回線のうち、5箇所、8回線については、多重化装置の設置に要する期間等を考慮しても、15年度当初には、PDCで使用している専用回線をATM専用サービスの専用回線に集約するとともに、PDCで使用している専用回線に係る専用契約を解約することにより、専用料金を節減できたと認められた。
本件について、上記5箇所の基地局に多重化装置を設置し、PDCで使用している専用回線をATM専用サービスの専用回線に集約した上、PDCで使用している専用回線を解約することとすれば、多重化装置の購入及び設置に係る費用等を考慮したとしても、15年度の専用料金を約5640万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、次のようなことによると認められた。
(ア)伝送部門において、IMT用に利用しているATM専用サービスを導入した後、既設のPDC用のマイクロエントランス設備の使用が不可能となっていたり、マイクロエントランス設備の設置が基地局の構造上不可能となっていたりしていた状況について、マイクロ部門から十分に情報を入手できていなかったこと
(イ)マイクロ部門において、地権者との交渉が難航していることなどから、マイクロエントランス設備の設置の見通しが立っていないなどの状況の推移について、逐次その情報を入手できていなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、NTTドコモでは、16年度内に、前記5箇所の基地局、8回線については速やかに専用回線への集約を行うこととするとともに、16年9月に、専用料金の節減を図るため、関係部門において次のような体制を整備する処置を講じた。
(ア)マイクロ部門と伝送部門との間における連絡調整を十分に行うこと
(イ)マイクロ部門において、地権者との交渉状況等の情報を逐次入手できるようにすること