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第3 特定優良賃貸住宅供給促進事業の実施について


第3 特定優良賃貸住宅供給促進事業の実施について

検査対象 国土交通省(平成13年1月5日以前は建設省)
会計名及び科目 内閣府 一般会計
(組織)内閣本府(平成11年度以前は沖縄開発庁)
    (項)沖縄開発事業費
国土交通省 一般会計
(組織)国土交通本省(平成11年度以前は建設本省)
    (項)住宅建設等事業費
    (項)北海道住宅建設等事業費
部局等の名称 北海道ほか24都府県
補助の根拠 特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成5年法律第52号)
補助事業の概要 都道府県知事等から賃貸住宅の建設及び管理に関する計画の認定を受けた者等が当該計画に基づく賃貸住宅の建設等を行うもの
25都道府県における特定優良賃貸住宅の供給数 5,399団地(平成15年10月1日現在)
127,204戸
上記5,399団地における空家率が15%以上の団地数 1,235団地
上記の127,204戸において1年以上の空家となっている戸数  5,980戸
上記に要した建設費補助金  95億円(平成5年度〜15年10月1日)

1 事業の概要

(特定優良賃貸住宅供給促進事業)

 国土交通省では、住宅施策の一環として、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成5年法律第52号。以下「法」という。)に基づき、特定優良賃貸住宅供給促進事業(以下「特優賃供給事業」という。)により、中堅所得者等の居住の用に供する居住環境が良好な賃貸住宅の建設等に要する費用の一部を地方公共団体に補助している。
 我が国の住宅事情は量的には一応充足し、質的にも着実に向上しているものの、借家については平均床面積が持家の約3分の1にとどまり、大都市地域を中心に居住水準の改善が著しく立ち遅れている。特に世帯人員が3人から5人の標準的な中堅所得者層が必要とする優良な賃貸住宅のストックが著しく不足している状況にあり、その改善が強く要請されていた。特優賃供給事業は、こうした状況を背景として、賃貸住宅の供給が可能な民間の土地所有者等が法に基づき建設及び管理を行う優良な賃貸住宅(特定優良賃貸住宅。以下「特優賃」という。)の供給の促進を図るとともに、居住環境が良好な賃貸住宅が不足している場合には、地方公共団体が法に基づき建設及び管理を行う優良な賃貸住宅(特定公共賃貸住宅。以下「特公賃」といい、「特優賃」と「特公賃」を併せて「特優賃等」という。)の供給の促進を図るものである。そして、平成5年度から15年度末までに供給された特優賃等は約22万戸に上っている。

(特優賃等の入居者)

 特優賃等の入居者資格は、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則(平成5年建設省令第16号。以下「規則」という。)により、所得(注1) が20万円以上32万2千円以下(以下「中位の所得」という。)の者となっているが、所得が20万円未満の者でも所得の上昇が見込まれる者や所得が32万2千円を超える者でも60万千円以下で都道府県知事が定める額以下の者は入居できることとなっている。
 また、公営住宅法(昭和26年法律第193号)等によれば、地方公共団体は、公営住宅に入居している者の所得が所定の額を超えることなどのため、公営住宅の明渡努力義務がある収入超過者に該当する者や明渡義務がある高額所得者に該当する者に対しては、公営住宅の明渡しを容易にするように、特優賃等の公的資金による住宅への入居についてのあっせん等に努めなければならないこととなっている。

所得 入居者の世帯の過去1年間の収入から所得税法に定めるところにより所得金額を計算し、配偶者控除等の一定の控除を行った上で、12で除した額

(特優賃)

(1)特優賃の供給計画

 民間の土地所有者や地方住宅供給公社など特優賃の建設及び管理をしようとする者は、法に基づき当該賃貸住宅の建設等に関する計画(以下「供給計画」という。)を作成し、都道府県知事等に当該供給計画の認定を申請することができることとされている。そして、都道府県知事等は、供給計画が法等の定める認定の基準に適合していると認めたものについて認定することができ、認定を受けた者(以下「認定事業者」という。)は、これを受けて事業に着手することとされている。
 上記認定の基準は法及び規則により、〔1〕住宅の戸数は、特定の地域を除き10戸以上であること、〔2〕各戸の床面積は、原則として50m 以上125m 以下であること、〔3〕入居者資格は、原則として中位の所得にある者で自ら居住し、同居親族があること、〔4〕家賃は、近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないよう定められること、〔5〕管理の方法及び期間は、適切になされることなどとされている。さらに「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律の運用について」(平成5年住管発第4号、住建発第110号建設省住宅局長通知。以下「運用通知」という。)により、地域の住宅事情により賃貸住宅に対する需要が見込まれない場合については、供給計画がこれら認定基準に適合していても必ずしも認定を要しないこととされている。

(2)特優賃の建設及び家賃の減額に係る補助

 特優賃供給事業による地方公共団体に対する補助には、特優賃等の建設に要する費用に係るもの(以下、この補助金を「建設費補助金」という。)と、特優賃等の家賃の減額に要する費用に係るもの(以下、この補助金を「家賃対策補助金」という。)がある。
 このうち特優賃の建設に要する費用に係る地方公共団体への国庫補助については、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行令(平成5年政令第255号。以下「施行令」という。)により、〔1〕地方公共団体が民間の土地所有者等の認定事業者に対して建設に要する費用の一部を補助する場合は、当該住宅の廊下及び階段等の共用部分等に係る費用の3分の1までを補助することができ、〔2〕地方公共団体が認定事業者である地方住宅供給公社等に対して建設に要する費用の一部を補助する場合は、当該住宅の全体工事費用の6分の1までを補助できることとなっている。
 また、家賃の減額に係る地方公共団体への国庫補助については、施行令により、近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないように設定された特優賃の本来の家賃(以下「契約家賃」という。)を、認定事業者が入居者の居住の安定を図るため減額(以下、この減額後の家賃を「入居者負担額」という。)し、その減額に要する費用の一部を地方公共団体が補助する場合、契約家賃と国土交通大臣が定める方法(以下「告示」という。)により算定した入居者負担基準額(以下「基準額」という。)との差額を限度として、地方公共団体が補助した額の2分の1(中位の所得を超える所得の者は3分の1)を補助できることとなっている。このため、多くの場合、入居者負担額は基準額とほぼ同額に設定されている。
 基準額は、告示により、入居者の所得区分等に応じて算定されており、2年目以降は当初算定された額から図1のとおり原則として毎年3.5%ずつ上昇することとされている(以下、この基準額の算定方式を「傾斜型家賃方式」という。)。この方式において、家賃対策補助金の交付は基準額が契約家賃と同額になるまで最長20年間を限度として行われる。そして、上記のとおり、基準額が毎年上昇していくために、住宅の管理開始段階での家賃負担の軽減効果が大きく、経過年数とともに軽減効果が逓減していくこととなる(図1参照)

図1 傾斜型家賃方式

図1傾斜型家賃方式

 また、11年度には所得の伸びの鈍化や賃貸住宅市場の低迷等の経済情勢の変化等を踏まえ、図2のように基準額が家賃対策補助金の交付期間中上昇しない方式(以下、この基準額の算定方式を「フラット型家賃方式」という。)も導入された。この場合における家賃対策補助金の交付期間は原則として15年間又は10年間となっている。フラット型家賃方式の基準額は契約家賃と傾斜型家賃方式の当初の基準額の中間に設定されるため、住宅の管理開始段階での家賃負担の軽減効果が傾斜型家賃方式に比べ少ないものとなるが軽減効果は逓減することなく維持されることとなる。

図2 フラット型家賃方式

図2フラット型家賃方式

(特公賃)

(1)特公賃の収支均衡見通し

 特公賃は、前記のとおり、その区域内において居住環境が良好な賃貸住宅が不足している場合に、地方公共団体が、法に基づきその建設に努めるものである。そして、特公賃の建設に当たっては供給計画を作成することとはなっていない。しかし、運用通知等において特公賃の供給については住宅需要を勘案すること、独立採算を原則とし、おおむね30年以内の期間において収支均衡を図ること、その際、団地ごとに財政計画を策定し、収支の見通し(以下「収支均衡見通し」という。)を明らかにすることとなっている。

(2)特公賃の建設及び家賃の減額に係る補助

 特公賃の建設に要する費用については、施行令により当該住宅の全体工事費用の3分の1を国が補助することができ、また、家賃の減額に関しても特優賃と同様に国が補助することができることとされている。
 また、地方公共団体が事業実施者となるため、当該地域での定住化を図るなど地域の実情に応じた政策により、自らの財源で特公賃の契約家賃そのものを基準額以下に設定(以下、このような家賃の設定方式を「家賃独自施策」という。)する場合がある。

(特優賃等の管理)

 特優賃等は、その機能を適切に維持するためには長期に安定した経営を行う必要があることから、空家が長期にわたって生ずることがないように努めるなど適正な管理が求められる。特優賃の管理については、入居者の募集等の管理業務を、地方住宅供給公社等が一括して借り上げて行う方式(以下「一括借上方式(注2) 」という。)や、都道府県知事が定める基準に該当する者に委託する方式が一般的である。一方、特公賃については、地方公共団体自らが直接管理を行っている。

一括借上方式 特優賃の所有者から住戸を最長で20年間(特優賃の管理期間)にわたり一括して借り上げ、住戸の空家の有無にかかわらず、所有者に一定の家賃を保証するもの

(特優賃等の用途の変更のための廃止)

 特定優良賃貸住宅供給促進事業等補助要領(平成5年住建第116号建設省住宅局長通知)により、特優賃等のうち、社会・経済情勢の変化により空家となったもので、認定事業者等が入居者募集のための処置を講じたにもかかわらず、3ケ月以上入居者がなく、当該特優賃等を用途廃止後において〔1〕 公営住宅法に規定する公営住宅として、地方公共団体が借上げて管理するもの、〔2〕 入居者資格を公営住宅と同様とするなど公営住宅に準じて定められた準公営住宅等供給基準(平成14年国住備第682号国土交通省住宅局長通知)に基づき地方公共団体が管理するもの(以下「準公営住宅」という。この場合は特公賃であったものに限る。)等については、認定事業者等は都道府県知事又は地方整備局長等の承認を受けて、用途の変更のための廃止を行うことができることとなっている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 前記のとおり、我が国の住宅事情は標準的な中堅所得者層が必要とする優良な賃貸住宅のストックが著しく不足している状況にあり、その改善が強く要請されてきた。このような状況に対処するため、5年度から特優賃等の供給が開始され、15年度までに約22万戸が供給されている。
 この間、地価や家賃が下落するなど社会・経済情勢は大きく変化し、また、年々住宅の空家率は上昇傾向にある。
 このような状況を踏まえ、特優賃においては、供給計画を認定する際、当該住宅に対する需要予測、近傍の賃貸住宅との家賃比較等について十分検討がなされているか、また、特公賃において、当該住宅の建設の必要性等について十分検討がなされているか、特優賃等に空家が多数発生している場合、その原因及び対策の検討は十分なものとなっているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 北海道ほか24都府県(注3) 管内において5年度から15年度の間に、建設等され15年10月1日現在管理している特優賃4,213団地112,794戸、特公賃1,186団地14,410戸、計5,399団地127,204戸(国庫補助基本額6788億8443万余円、建設費補助金1989億0594万余円。表1参照 )を対象に検査した。

北海道ほか24都府県東京都、北海道、大阪府、岩手、宮城、秋田、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、富山、福井、静岡、愛知、三重、兵庫、島根、岡山、広島、愛媛、福岡、熊本、大分、沖縄各県

 

表1 25都道府県における特優賃等の管理戸数等

(平成15.10.1現在、単位:団地、戸、千円)

  団地数 管理戸数 国庫補助基本額 建設費補助金
特優賃 4,213 112,794 431,498,138 116,443,845
特公賃 1,186 14,410 247,386,296 82,462,098
5,399 127,204 678,884,434 198,905,943

(検査の結果)

(1)特優賃等の空家の概要

 検査したところ、上記127,204戸の特優賃等において15年10月1日現在13,867戸の空家(空家率10.9%)が生じていた。そして、検査した5,399団地を特優賃と特公賃に分類し、団地ごとに空家率が15%以上となっている団地数の割合をみたところ表2のとおり、それぞれ25.7%、13.0%となっていた。

表2 空家率が15%以上の団地数とその割合
  団地数(A) 空家率が15%以上の団地数(B) (B)/(A) %
特優賃 4,213 1,081 25.7
特公賃 1,186 154 13.0
5,399 1,235 22.9

 さらに、空家率の状況を管理開始年度別でみると図3のとおりとなっていて、これによれば全体的に管理開始年度が古い住宅の空家率が高い傾向となっており、管理開始年度の新旧が空家率に影響を及ぼしている。

図3 管理開始年度別空家率(平成15年10月1日現在)

図3管理開始年度別空家率(平成15年10月1日現在)

 一方、空家率が15%未満の団地と15%以上の団地の管理開始当時における平均新規応募倍率をみたところ、表3のとおりとなっており、特優賃、特公賃とも当初から需要の多い団地は空家の発生も比較的少ないことから供給計画認定時等における需要の検討が重要なことを示している。

表3 空家率別平均新規応募倍率
空家率 平均新規応募倍率
特優賃 特公賃
15%以上 2.72倍 0.97倍
15%未満 5.79倍 2.38倍

(2)特優賃について

ア 空家状況

 特優賃は、表4のとおり管理戸数112,794戸に対し12,115戸の空家(空家率10.7%)が発生しており、これを空家期間別に区分したところ3ケ月以上の空家は9,326戸(空家率8.3%)、このうち1年以上の空家は5,042戸(同4.5%)となっていた。また、住宅新築後1年以上経過しても、未だ一度も入居のない住戸(以下「長期新築空家」という。)が4,213団地、112,794戸のうち、42団地、196戸発生しており、うちひとつの団地で5戸以上発生している団地が17団地あるなど、特定の団地において長期新築空家が見受けられた。これは、後述の認定事業者に対する空家が発生している理由についての調査にもあるとおり、環境・利便性に問題がある立地に特優賃が建設されたためなどと思料される。

表4 特優賃における空家発生状況

(単位:団地、戸)

団地数 管理戸数
(A)
空家戸数
(B)
B/A
 %
3ヶ月
以上の
空家戸

(C)
C/A
%
Cのうち1年以上の空家戸数(D) D/A 
%
  長期新築空家
団地数 戸数
  うち3
年以上
4,213 112,794 12,115 10.7% 9,326 8.3% 5,042 42 196 125 4.5%

イ 家賃方式

 前記(1)のとおり、特優賃等の空家率は、管理開始年度が古いものほど高い傾向となっている。また、空家率が15%以上となっている1,081団地のうち、98%に当たる1,062団地が傾斜型家賃方式を採用していた。
 そこで、上記1,062団地について、契約家賃と基準額とのかい離をみると、表5のように管理開始年度が古い団地ほど新しい団地に比べてかい離幅が小さくなる傾向となっていた。これは、管理開始年度の古いものほど、家賃軽減のメリットが少なくなっているということであり、図4のとおり民間賃貸住宅家賃は下落傾向となっているなかで、入居者にとっては毎年実際に負担する家賃が値上がりすることとなること、入居者や新たに入居しようとする者にとって特優賃に入居するための煩雑な手続きなどは管理開始年度が古いものについても新しいものと同様に残っていることなどが、古いものほど空家率が高くなっている一因と考えられる。

表5 管理開始年度別契約家賃・基準額かい離状況
管理開始年度 5年度 6年度 7年度 8年度 9年度 10年度 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度
経過年数 10年 9年 8年 7年 6年 5年 4年 3年 2年 1年 0年
契約家賃を100
とした場合の基
準額の指数
87.7 82.1 79.3 78.6 74.5 69.3 67.8 65.5 71.7 72.7 74.0
(注)所得が23万8千円の者の場合

図4 民間賃貸住宅の家賃動向(総務省家計調査年報(15年2月)より)

(注)所得が23万8千円の者の場合

ウ 管理方式

 空家率が15%以上となっている1,081団地の管理方式についてみたところ3分の1以上に当たる376団地は一括借上方式となっていた。この方式では前記のように、賃貸住宅家賃相場の下落に伴い当該特優賃の家賃が相対的に割高になることによる空家の増加があっても特優賃の所有者はそれによる減収のリスクを負わない。そのため、特優賃の所有者において積極的に契約家賃の見直しが図られないこととなる。

エ 供給計画時の需要の検討

 空家率が15%以上となっている1,081団地のうち、供給計画認定の段階において、当該特優賃が建設される地域の世帯向け住宅の戸数や空家状況を調査するなどして需要の検討を行ったうえで供給計画を認定したものは40団地しかなかった。

オ 空家が発生する理由

 空家率が15%以上となっている主な理由を認定事業者にアンケート調査したところ、図5のように、低金利等住宅を取り巻く環境が変化する中、持ち家取得の傾向が強まっていたり、周辺の賃貸住宅の家賃相場下落により当該特優賃の家賃の割安感が薄れていたりなどとなっていた。

図5 空家率が15%以上となっている主な理由(複数回答)

図5空家率が15%以上となっている主な理由(複数回答)

カ 地方公共団体等の対応

 上記のような事態に対して対策を講じている一部の地方公共団体、認定事業者等は〔1〕一括借上方式の対象となっているものも含め、認定事業者に対する契約家賃見直しの働きかけ〔2〕地方公共団体が認定事業者に対して家賃の補助を独自に行い入居者負担額を基準額より下回る額に設定〔3〕供給計画の認定をフラット型家賃方式を採用したものに限ることとするなど供給計画の限定的な認定〔4〕供給計画の独自の評価基準等の作成〔5〕空家の用途変更を行い公営住宅として管理〔6〕公営住宅に入居している収入超過者、高額所得者への入居のあっせんなどの対策を実施している。
 空家解消のために契約家賃等を見直した団地は4,213団地のうち1,239団地あり、見直し後の空家戸数は見直し前の5,384戸から4,635戸に減少し、その改善率は13.9%となっていた。
 契約家賃の見直しは、入居者負担額が契約家賃にほぼ近づきつつあるものなどは、入居者負担額の低減につながるものであり、また、入居者負担額と契約家賃の差が比較的大きいものについても将来的な家賃負担の低減となることから、転出に対する抑止効果があるものと思料される。

(2)特公賃について

ア 空家状況

 特公賃は表6のとおり、管理戸数14,410戸に対し1,752戸の空家(空家率12.2%)が発生しており、これを空家期間別に区分したところ3ケ月以上の空家は1,436戸(空家率10.0%)で、このうち1年以上の空家は938戸(同6.5%)となっていた。
 また、長期新築空家も1,186団地、14,410戸のうち47団地、288戸(うち257戸は3年以上で最長は8年)と多数発生していて、うち一つの団地で5戸以上発生している団地が13団地あるなど、特優賃と同様に特定の団地において長期新築空家が見受けられた。これは、後述の特公賃を管理している地方公共団体に対する空家が発生している理由についての調査にもあるとおり、特公賃の家賃が同一敷地(棟)内に混在する公営住宅の家賃と比較して割高になっていると認識され、特公賃の入居対象者に敬遠されているためなどと思料される。

表6 特公賃における空家発生状況

(単位:団地、戸)

団地数 管理戸数
(A)
空家戸数
(B)
B/A
 %
3ヶ月
以上の
空家戸

(C)
C/A
%
Cのうち1年以上の空家戸数(D) D/A 
%
  長期新築空家
団地数 戸数
  うち3
年以上
1,186 14,410 1,752 12.2% 1,436 10.0% 938 47 288 257 6.5%

イ 家賃方式

 検査した特公賃1,186団地のうち、特殊な用途に使用される133団地を除いた1,053団地について、家賃方式ごとの空家の発生状況をみたところ、表7のとおり空家率が15%以上となっている団地の割合は、家賃独自施策の団地及びフラット型家賃方式の団地において低くなっており、傾斜型家賃方式の団地において高くなっていた。

表7 家賃方式ごとの空家発生状況
家賃方式 団地数(A) 空家率が15%以
上の団地数(B)

B/A%

家賃独自施策 713 64 9.0
フラット型家賃方式 40 2 5.0
傾斜型家賃方式 300 75 25.0

ウ 収支均衡見通しの作成

 前記のように特公賃の供給については、運用通知に基づき収支均衡見通しを作成することとなっているが、これを作成している団地は全1,186団地のうちわずか20団地しかなかった。収支均衡見通しは、特公賃の供給についてその需要予測に資するとともに供給後の管理運営に有効な手段となり得ることから、この作成が求められるところである。

エ 空家が発生する理由

 空家率が15%以上となっている団地について主な理由を地方公共団体にアンケート調査したところ、図6のように、同一敷地内に家賃が低廉な公営住宅が混在していたり、公営住宅の収入超過者等の受け皿として整備したものの想定より当該特公賃への移転が伸び悩んでいたりなどとなっていた。

図6 空家率が15%以上となっている主な理由(複数回答)

図6空家率が15%以上となっている主な理由(複数回答)

オ 地方公共団体の対応

 上記のような事態に対して対策を講じている一部の地方公共団体は、〔1〕契約家賃等の見直し〔2〕地方公共団体が自己財源で独自に入居者負担額を基準額より下回る額に設定〔3〕フラット型家賃方式の導入〔4〕長期新築空家の用途変更を行い準公営住宅として管理〔5〕公営住宅に入居している収入超過者、高額所得者への入居のあっせんなどの対策を実施している。
 空家解消のために契約家賃等を見直した団地は1,186団地のうち178団地あり、見直し後の空家戸数は見直し前の1,035戸から879戸に減少し、その改善率は15.1%となっていた。

(公営住宅の収入超過者等へのあっせん)

 前記のとおり、地方公共団体は、公営住宅に入居している収入超過者や高額所得者に対して、公営住宅の明渡しを容易にするように、特優賃等への入居のあっせん等に努めなければならないこととされている。しかし、特優賃等の空家率が15%以上になっているにもかかわらず同一市区町村内に所在する公営住宅の収入超過者等への入居あっせんをしていない地方公共団体が243地方公共団体のうち142地方公共団体見受けられた。

(国土交通省の対応)

 国土交通省としては15年度からは、傾斜型家賃方式を採用していた場合でも途中からフラット型家賃方式に移行できることとし、16年度からは、地域の実情に的確に応じた特優賃等の供給を図るとして〔1〕供給計画の認定要件である最低戸数を5戸とできる特例、同居親族がない者が入居可能な場合の要件、住戸の面積要件、の3点についての緩和、〔2〕特優賃等の募集をしたにもかかわらず1年以上の空家が15%かつ15戸以上ある市区町村内での特優賃等の新規供給については国庫補助対象としないこと、〔3〕特公賃だけでなく特優賃も準公営住宅への用途変更を可能とすること、〔4〕準公営住宅に転用する場合、従来の住戸床面積の上限である80m という面積要件を撤廃することなどの対策を執ったところである。

(1年以上空家となっている特優賃等の建設費補助金等)

 前記のとおり、1年以上の空家や長期新築空家となっているものが特優賃5,042戸、特公賃938戸、計5,980戸あり、これらに対する建設費補助金を各団地ごとに管理戸数に占める空家の戸数の割合であん分し算出すると、約95億円となる。
 また、前記のような、特優賃等の空家率が15%以上になっているにもかかわらず同一市町村内に所在する公営住宅の収入超過者に当該特優賃等への入居あっせんなどをしないまま当該収入超過者分に係る公営住宅家賃対策補助金を14、15両年度で7496万余円交付している事態も見受けられた。

3 本院の所見

 国土交通省では、中堅所得者層のための居住環境の良好な賃貸住宅の供給に努め、その実績は約22万戸となっており、優良な賃貸住宅のストック形成が図られてきているところである。しかし、特優賃等において社会・経済情勢が変化する中、契約家賃の見直しが行われなかったり、同一敷地(棟)内に混在する公営住宅の家賃と比較して割高となっていると認識されたりなどしていることから、空家が多数発生していて、中には3年以上も長期新築空家になっている事態も見受けられる。また、住宅・土地統計調査の結果においても、空家率は上昇傾向にあり、このような事態が続くと特優賃等においても今後も同様に空家率が上昇することが懸念される。
 前記のとおり、国土交通省においてはこのような事態に対応して各種の対策を執ったところではあるが、空家の解消等には、国土交通省や地方公共団体の努力のほか、特優賃の所有者等の理解と協力が必要である。
 したがって、国土交通省及び地方公共団体において、特優賃の所有者等の理解と協力の下、次のような方策を講じるなどして特優賃等の、より一層の空家解消等を図ることが望まれる。

(1)国土交通省においては

ア 前記のように16年度より地域の実情に的確に応じた特優賃等の供給を図るとして、供給計画の認定要件の緩和、需要が見込まれない地域への補助対象の制限、準公営住宅への転用要件の緩和等の対策を執ったところであるが、これらの対策が十分講じられるよう都道府県等に対し周知徹底を図ること

イ 契約家賃等については経済状況の変化を十分斟酌し、適切な契約家賃等となるよう認定事業者と十分な協議を図るよう都道府県等に働きかけること

ウ 特優賃等と同一市町村内に所在する公営住宅の収入超過者等に対し、積極的に入居のあっせんを図るよう徹底させること

エ 特優賃等の新規供給を行う際には、需要の検討、収支均衡見通しの策定を必ず行うよう都道府県等を指導すること

(2)地方公共団体においては

ア 長期にわたり空家となっている特優賃等についてはその原因を分析のうえ、公営住宅等への転用のための用途廃止等を含め適切な対応をとること

イ 契約家賃等については見直しが必要な場合、市場家賃なども十分勘案のうえ適切な契約家賃等となるよう認定事業者と十分な協議を行うこと

ウ 公営住宅の収入超過者等に対して特優賃等へのあっせんを行っていないものについては積極的にあっせんを行うこと

エ 特優賃の供給計画認定の際には需要の検討を十分に行うこと、また特公賃の建設に際しては収支均衡見通しを必ず作成すること