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  • 平成15年度|
  • 第4章 特定検査対象に関する検査状況|
  • 第2 株式会社りそな銀行及び株式会社足利銀行に対する金融危機対応措置の実施について|
  • 1 検査の背景|
  • (3)金融庁の監督・検査の枠組み

ア 銀行法等に基づく金融機関に対する監督・検査


ア 銀行法等に基づく金融機関に対する監督・検査

(ア)金融機関の決算を基にした監督

 各金融機関では、毎決算時における損益計算書、貸借対照表等の財務諸表の作成に当たっては、保有する資産を個別に検討して、回収の危険性又は価値のき損の危険性の度合いに従って区分し(注5) (以下「自己査定」という。)、その結果に基づいて償却・引当てを行っている。
 金融庁では、金融機関の財務の健全性を確保するための監督手法の中心として、金融機関の財務諸表等から算出される自己資本比率(注6) が4%(海外に営業拠点を持たない国内基準行の場合。国際的に業務展開を行っている国際基準行は8%。)を下回った金融機関に対して、銀行法(昭和56年法律第59号)等に基づいて資本の増強のための具体的な方策を含む経営改善計画の提出などを命ずる早期是正措置制度を10年4月から導入している。
 この早期是正措置により、〔1〕適時に是正措置を講ずることにより金融機関経営の健全性確保と経営破綻の未然防止を図ること、〔2〕是正措置の発動ルールを明確化することにより行政の透明性確保に資すること、〔3〕金融機関が破綻した場合の破綻処理コストの抑制を図ることなどが期待されるとしている。

(注5)  金融庁の前身である金融監督庁が平成11年7月に公表した「預金等受入金融機関に係る検査マニュアル」によれば、金融機関の自己査定の結果、貸出債権等の資産は債務者の財務状況等により「正常先」、「要注意先」、「破綻懸念先」、「実質破綻先」及び「破綻先」に区分される。なお、「要注意先」のうち財務内容に問題があるなど今後の管理に注意を要する債務者に係る債権は「要管理先」として区分することが望ましいとされている。その上で回収の危険性又は価値のき損の可能性の度合いに応じて資産を4段階に分類する。分類の詳細については表16注釈参照
(注6) 自己資本比率  資産の各項目にそれぞれのリスク・ウェイト(例えば、一般向け債権の場合100%、国債等の場合0%)を乗じて得られた額の合計(リスク・アセット)に対する資本金等の比率。国際基準行については8%以上、国内基準行については4%以上の自己資本比率を持つことが健全性の観点から求められている。

(イ)金融機関の決算に対する金融検査

 金融庁では、金融機関の健全かつ適切な運営を確保するために、金融機関に対して立入検査(以下「金融検査」という。)を実施し、この中で、金融機関の財務の状況についても検査を行っている。この検査は、前記の自己査定等を経て作成された金融機関の決算を事後的に検査するもので、その検査の結果については、当該金融機関の次回の決算に反映されるものとなっている。また、金融検査においては、前記のとおり金融機関の財務諸表等から算出する自己資本比率を基に金融庁による監督が行われることから、金融機関が自らの責任において行った自己査定結果の正確性等に加え、償却・引当額の総額及びその水準の適切性、特に、償却・引当額の総額が信用リスク(注7) に見合った十分な水準となっているかを重視して検証するとされている。

信用リスク  貸出先などの財務状況の悪化等により、資産の価値が減少ないし消滅し、金融機関が損失を被るリスク