金融庁では、14年10月に、16年度には主要行の不良債権問題の正常化を図るとともに、より強固な金融システムの構築を目指すために、「金融再生プログラム」を策定した。この中で、主要行の資産査定の厳格化、自己資本の充実などに係る行政としての方針を定めた。
このうち、個別の金融機関が経営難や資本不足などの状況に陥った場合には、金融危機を回避するために、金融危機対応措置を発動するなどして対応するとされた。また、これらの措置を受けることとなった金融機関に対しては、経営者の責任の明確化を厳しく求めることとした。
金融機関の資産査定については、その厳格化を図るために、担保評価の厳正な検証を行ったり、正当な理由がないにもかかわらず金融機関の自己査定と金融検査の結果の格差が是正されない場合には業務改善命令を発動する方針を明確にしたりなどするとされた。繰延税金資産(注9)
については、その資本性が脆弱であるとし、会計指針の趣旨に則りその資産性を厳正に評価するとともに、主要行の経営を取り巻く不確実性が大きいこと、翌年度以降の課税所得を見積もることが非常に難しいことなどから、会計監査人に対して厳正な監査を求めるとともに、金融検査において繰延税金資産の計上について厳しく検査するとされた。
そして、当期利益等の実績が経営健全化計画の計画値を3割以上下回る事態に関しては、その原因と程度に応じて業務改善命令の発動等の必要性を判断するとともに、改善がなされない場合は、責任の明確化を含め厳正に対応することとされた。
(注9) | 繰延税金資産 企業会計上の収益又は費用と課税所得計算上の益金又は損金の認識時点の相違等により、貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産及び負債の額との間に差異がある場合において、当該差異が、解消するときにその期の課税所得を減額させる効果を持つときは、原則として当該差異に係る法人税等相当額が繰延税金資産として、貸借対照表に計上される。 |
金融機関が不良債権等に対し税務上の限度額を超えて貸倒引当金を繰り入れる場合等に、この超過額は損金とされず課税対象となり、将来の課税所得を軽減する効果を有していると見込まれる法人税等相当額が繰延税金資産として資産の部に計上され、その結果、資本の部が増加する。 |