本院では、7年以降、金融システムの安定化のための諸施策の実施状況について、多額の公的資金が使用されていることなどから、継続して検査を実施してきた。このうち、平成13年度決算検査報告において、金融機能早期健全化法等に基づく資本増強措置の効果とともに、資本増強措置を受けた金融機関全体の不良債権処理損失額や繰延税金資産の計上状況などの財務状況の推移や経営健全化計画の達成状況などについて横断的に分析したところである。そして、同計画での想定を大きく上回る不良債権処理損失額の計上により、当期利益及び剰余金の実績が計画値を下回っている金融機関が多数見受けられたことなどから、3割ルール適用の対象となった金融機関については、剰余金の蓄積状況等を監視するとともに、同計画の見直しの際には、不良債権処理損失額等の見通しについて十分配慮することが肝要である旨を記述したところである。
その後、前記のとおり、大和及びあさひ両銀行が再編されたりそな銀行並びに足利銀行の財務状況が悪化したことにより、15年度にそれぞれ金融危機対応措置が実施され、1号措置が実施されたりそな銀行に対しては、再び多額の公的資金を使用することとなった。また、3号措置が実施された足利銀行に関しては、後述のとおり、同銀行の持株会社である株式会社あしぎんフィナンシャルグループ(以下「あしぎんFG」という。)は会社更生手続を開始し、公的資金の大半についてき損が避けられない状況となっている。
国会においても、りそな及び足利両銀行に金融危機対応措置が実施された経緯や両銀行に対する金融庁の検査及び監督の実施状況、金融危機対応措置の実施に伴う国民負担のリスクなどについて多くの議論が行われたところである。
そこで、本年次の検査においては、金融危機対応措置を中心に以下の点に着眼して検査した。
(1)金融危機対応措置が預金保険法の枠組みに沿った実施となっているかなどについて
(2)りそな銀行の前身である大和及びあさひ両銀行並びに足利銀行の経営健全化計画の履行状況、また、これに対する金融庁の監督状況について
(3)過去に公的資金により大和及びあさひ両銀行並びに足利銀行に対して実施された資本増強措置や今回実施された金融危機対応措置が預金保険機構の財務に与える影響について