検査対象 | 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(平成15年9月30日以前は新エネルギー・産業技術総合開発機構) |
科目 | 石炭経過勘定等 |
事業の概要 | 国内炭助成事業等の一環として貸し付けられた石炭会社等に対する貸付金等に係る債権の管理・回収等業務を行うもの |
貸付累計額 | 2兆0247億円 | (昭和35事業年度〜平成13事業年度) |
債務保証引受累計額 | 374億円 | (昭和37事業年度〜平成13事業年度) |
貸付金等債権残高 | 1428億円 | (平成13事業年度末) |
308億円 | (平成15事業年度末) | |
貸付金等債権償却額 | 887億円 | (平成14、15両事業年度) |
1 石炭会社等に対する貸付金等債権の概要
我が国の石炭鉱業は、明治以来、近代化を支える基幹産業として重要な役割を果たしてきた。特に、戦後の復興期においては、主要な国産エネルギーとして産業の発展と国民生活の向上に大きく貢献してきた。しかし、昭和25年以降、国内経済が安定期に入るに伴い石炭の生産は過剰になり、石炭鉱業を営む会社(以下「石炭会社」という。)は大幅な合理化を迫られ、相次ぐ閉山と離職者の発生が社会問題となった。
このため、30年には石炭鉱業構造調整臨時措置法(昭和30年法律第156号。以下「構造調整臨時措置法」という。)が制定され、非能率炭鉱の整理等が実施された。その後、石油の世界的な過剰傾向等により石炭鉱業が構造的不況に陥ったことから、政府は、石炭鉱業合理化事業団(55年9月解散)を通じて、炭鉱の近代化等に必要な設備資金の一部について長期の無利子貸付けを行うこととした。そして、同事業団は、35事業年度以降、国内炭助成事業の一環として石炭会社等を対象事業者とした各種貸付事業及び債務保証事業(以下「貸付事業等」という。)を行い、55年10月以降は、新規に設立された新エネルギー総合開発機構(63年10月以降は新エネルギー・産業技術総合開発機構。以下「旧機構」という。)が貸付事業等を承継して行ってきた。
また、石炭鉱害に係る貸付事業については、38年に石炭鉱害賠償等臨時措置法(昭和38年法律第97号。以下「賠償等臨時措置法」という。)が制定され、これに基づき鉱害賠償基金(40年5月鉱害基金に名称変更)が石炭会社等を対象事業者とした貸付事業を開始し、43年7月以降は石炭鉱害事業団(平成8年9月解散)が、8年10月以降は旧機構が同事業を承継して行ってきた。
旧機構では、上記の経緯により、13事業年度まで、〔1〕 構造調整臨時措置法に基づく石炭鉱業構造調整業務及び〔2〕 賠償等臨時措置法に基づく石炭鉱害賠償等業務の両業務の一環として、石炭会社等を対象事業者とした貸付事業等を行ってきた。しかし、13年度に構造調整臨時措置法等が廃止されたことから、旧機構は、貸付事業等については13事業年度をもって新規の貸付け及び債務保証引受けを終了し、14事業年度以降は貸付金及び債務保証に係る債権(以下「貸付金等債権」という。)の管理・回収等業務のみを行うこととした。そして、15年10月に設立された独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「機構」という。)は、この貸付金等債権の管理・回収等業務を旧機構から承継し、現在、同業務を石炭経過勘定(旧機構における14年3月30日以前は石炭合理化勘定及び石炭鉱害勘定、14年3月31日以降は石炭経過業務勘定。以下同じ。)等で経理している。
上記の経緯の中で、昭和35事業年度以降、貸付事業として各種の貸付制度が創設されている。これらの貸付金の貸付実績は、構造調整臨時措置法等が廃止された平成13事業年度において表1のとおりであり、全体では、貸付累計額2兆0247億円、回収累計額1兆8762億円、償却累計額62億円、13事業年度末貸付金残高1423億円(貸付金債権残高同額)に上っている。
業務別 | 貸付金名 | 創設事業年度 | 貸付累計額 〔1〕
|
13事業年度までの回収累計額 〔2〕
|
13事業年度までの償却累計額 〔3〕
|
13事業年度末貸付金残高 〔1〕-〔2〕-〔3〕
|
石炭鉱業構造調整業務 | 近代化資金 | 昭和35 | 302,396 | 257,971 | 2,361 | 42,062 |
整備資金 | 37 | 61,462 | 46,220 | 1,860 | 13,380 | |
再建資金 | 38 | 4,500 | 3,949 | 550 | − | |
開発資金 | 40 | 28,407 | 18,762 | − | 9,644 | |
経営改善資金 | 48 | 765,698 | 745,936 | − | 19,761 | |
特定災害復旧資金 | 52 | 2,214 | 2,214 | − | − | |
石炭供給安定資金 | 62 | 661,698 | 661,698 | − | − | |
新分野開拓資金 | 平成4 | 21,401 | 11,733 | − | 9,667 | |
石炭鉱害賠償等業務 | 鉱害賠償資金 | 昭和38 | 145,478 | 100,010 | 1,379 | 44,087 |
鉱害防止資金 | 40 | 21,584 | 18,281 | 74 | 3,227 | |
高度化業務(注) | 海外炭探鉱資金 | 52 | 9,934 | 9,463 | − | 470 |
計 | 2,024,772 | 1,876,241 | 6,226 | 142,303 |
昭和37事業年度に創設された債務保証事業については、債務保証引受累計額は374億円(60事業年度以降の債務保証実績はない。)であり、平成13事業年度末の債務保証残高はなく、債務保証に係る債権は求償権3億円、未納保証料債権1億円、計5億円となっている。
上記の貸付事業等の原資等に充てるため、国から旧機構に対して出資が行われている。13事業年度までの国からの出資金累計額の各業務ごとの会計別内訳は表2のとおりであり、〔1〕 石炭鉱業構造調整業務では、国の石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計(以下「石油等特会」という。)石炭勘定と一般会計から計1378億円、〔2〕 石炭鉱害賠償等業務では、石油等特会石炭勘定と一般会計から計235億円、〔3〕 エネルギー需給構造高度化業務(旧機構において新エネルギー勘定で経理されていた海外炭探鉱資金等)では、石油等特会石油及びエネルギー需給構造高度化勘定等から75億円、合計1689億円に上っている。
一方、旧機構は、13年度の構造調整臨時措置法等の廃止に伴う貸付け等の終了に際し、上記〔1〕及び〔2〕の出資金のうち国庫に納付すべき額として経済産業大臣が定めた額228億円を、14年3月、国庫に納付している。この結果、石炭会社等に対する貸付金等債権の管理・回収等業務等に係る国の旧機構に対する出資残高は、13事業年度末において石炭経過勘定1385億円、新エネルギー勘定75億円、計1460億円となっている。
会計
\ 業務
|
石油等特会からの出資金 | 一般会計からの出資金 | 計 | |
〔1〕 石炭鉱業構造調整業務(石炭経過勘定) | ||||
13事業年度までの累計額 | 107,402 | 30,486 | 137,888 | |
13事業年度国庫返納額 | 22,884 | − | 22,884 | |
13事業年度末残高 | 84,517 | 30,486 | 115,004 | |
〔2〕 石炭鉱害賠償等業務(石炭経過勘定) | ||||
13事業年度までの累計額 | 22,543 | 1,000 | 23,543 | |
13事業年度末残高 | 22,543 | 1,000 | 23,543 | |
〔3〕 エネルギー需給構造高度化業務(新エネルギー勘定) | ||||
13事業年度までの累計額 | 7,550 | − | 7,550 | |
13事業年度末残高 | 7,550 | − | 7,550 | |
合 計 |
13事業年度までの累計額 | 137,495 | 31,486 | 168,981 |
13事業年度国庫返納額 | 22,884 | − | 22,884 | |
13事業年度末残高 | 114,610 | 31,486 | 146,097 |
2 検査の背景及び着眼点
13年度に構造調整臨時措置法等が廃止されたことから、旧機構では、石炭会社等に対する新たな貸付け等を終了し、14事業年度以降は、貸付事業等の最終的な整理段階としての貸付金等債権の管理・回収等業務のみを行ってきた。しかし、15年には、最大の貸付先であるA社の親会社であるB社が債務超過の状況となり、株式会社産業再生機構(以下「再生機構」という。)に対し支援要請を行い、同年9月に支援が決定され、これを受けて、同年10月に旧機構の業務を承継した機構が多額の貸付金債権を償却した。このように貸付金等債権の回収は必ずしも順調に進んでいるとはいえない状況にある。そして、機構は、現在保有している貸付金債権についてどのように管理・回収等業務を行っていくかが今後の課題となっている。
また、貸付事業等の原資等に充てるため、国から旧機構に対して13事業年度までに1689億円に上る出資が行われてきたが、この出資金のうち貸付け等の終了に伴い国に納付された額は228億円にとどまっている。
国からの出資は、もとより国民の納付する税金を基にして行われていることから、国民に対して広く石炭会社等に対する貸付金等債権の管理・回収等の状況を明らかにする必要がある。
そこで、旧機構が新たな貸付け等を終了し貸付金等債権の管理・回収等業務のみを行うこととしてから2年が経過した現在、国が旧機構等を通じて行ってきた国家事業としての石炭政策の最終的な整理段階である貸付金等債権の管理・回収等業務が旧機構及び機構においてどのように行われているかなどの点に着眼して検査した。
3 検査の状況
(1)貸付金等債権の回収及び償却状況
旧機構及び機構では、前記のとおり、14事業年度以降、貸付事業等として、債権の実態の把握、返済の督促、貸付条件の変更等の貸付金等債権の管理・回収等業務のみを行っており、その回収及び償却状況は、表3のとおりである。そして、13事業年度末に石炭会社等34社に対し1423億円あった貸付金債権残高は、14、15両事業年度に232億円(13事業年度末貸付金債権残高の16.3%)を回収したが、償却額は882億円(同61.9%)に上り、15事業年度末貸付金債権残高は石炭会社等18社に対し308億円となっている。また、債務保証に係る債権である求償権及び未納保証料債権は、13事業年度末5億円であったが、14事業年度に一部を回収し、15事業年度に残額の4億円を償却している。
区分 | 13事業年度末貸付金等債権残高(34社) | 14、15両事業年度 | 15事業年度末貸付金等債権残高(18社) | |
回収額 (回収率) |
償却額 (償却率) |
|||
貸付金債権 | 142,303 | 23,213 (16.3%) |
88,223 (61.9%) |
30,867 |
求償権等 | 506 | 6 | 499 | − |
計 | 142,810 | 23,220 | 88,723 | 30,867 |
(2)貸付金等債権の管理・回収等業務の実施状況
15事業年度に償却が行われた貸付金等債権及び15事業年度末残高が多額に上っている貸付金債権の管理・回収等業務の実施状況の例を示すと、次のとおりである。
A社は石炭会社であり、B社はその親会社である。両社に対する平成13事業年度末の貸付金債権残高は、A社618億円、B社95億円、計714億円であり、旧機構が13事業年度末に保有していた貸付金債権残高の総額の50.2%を占めていた。
旧機構及び機構のA、B両社に対する貸付金債権の回収及び償却状況は、表4のとおりである。
石炭会社等名 | 13事業年度 | 14事業年度 | 15事業年度 | ||||
事業年度末貸付金債権残高 | 回収額 | 償却額 | 事業年度末貸付金債権残高 | 回収額 | 償却額 | 事業年度末貸付金債権残高 | |
〔1〕 | 〔2〕 | 〔3〕 | 〔4〕=〔1〕-〔2〕-〔3〕 | 〔5〕 | 〔6〕 | 〔7〕=〔4〕-〔5〕-〔6〕 | |
A社 | 61,881 | 974 | − | 60,906 | 9,883 | 51,023 | − |
B社 | 9,560 | 1,004 | − | 8,555 | 2,215 | 6,340 | − |
計 | 71,441 | 1,979 | − | 69,461 | 12,098 | 57,363 | − |
旧機構では、A社の炭鉱の閉山に伴い、9年に、A社が所有する土地の売却代金を返済財源として685億円の債務を最大20年間で返済する旨等について取り決めた金融協定をA、B両社と締結し、同協定に基づき回収を行うこととした。
A社が所有する土地の売却状況は、表5のとおりである。9年度は売却実績額(7、8両年度売却分を含む。)が売却計画額を上回ったものの、10年度以降は実績額が減少し、12年度は計画額55億4800万円に対し実績額27億8200万円、13年度は計画額61億5500万円に対し実績額30億7700万円となった。
このように土地の売却が計画どおりに進まないことから、両社は、14年に金融協定の見直しを旧機構に申請した。これに対し旧機構では、15年1月に14年度以降の5年間の売却計画額を約2分の1に減額し返済期間を更に5年延長するなどとする内容に金融協定を変更している。しかし、14年度の新たな計画額42億円に対し売却実績額は21億円となっている。
区分
\ 年度
|
売却計画額 | 売却実績額 |
平成7 8 9 10 11 12 13 14 |
− − 9,070 4,400 5,095 5,548 6,155 4,200 |
1,587 3,403 4,209 2,906 2,598 2,782 3,077 2,101 |
一方、B社は、14年度決算において、子会社であるA社の保有する土地の評価額を土地の実勢価格の下落等を考慮して減額したことにより、B社のA社に対する貸付けに係る貸倒引当金等の新たな計上が必要となったため、B社は債務超過の状況に陥る結果となった。これらにより、B社は、再生機構に対し支援要請を行い、15年9月に再生機構において支援が決定された。
再生機構は、旧機構に対してA、B両社に対する690億円(15年9月末現在)の貸付金債権を一定価額で買い取る条件を内容とする支援決定の通知を行っている。これに対し、旧機構では、再生機構の買取額が法的整理による場合に想定される回収額を上回るなどとして買取りに応じることとし、独立行政法人に移行する直前の15年9月に、A、B両社に対する貸付金債権690億円に対し、貸倒引当金を573億円計上した。そして、機構は、16年1月に再生機構と債権売却に係る契約を締結し、両社に対する上記の貸付金債権を売却し、売却差額については上記の貸倒引当金を充当して償却している。
C社は石炭会社であり、D社はその親会社である。両社に対する平成15事業年度末の貸付金債権残高は、C社132億円、D社9億円、計141億円であり、機構が保有している貸付金債権残高の総額の45.9%を占めている。
旧機構及び機構のC、D両社に対する貸付金債権の回収及び償却状況は、表6のとおりである。
石炭会社等名 | 13事業年度 | 14事業年度 | 15事業年度 | ||||
事業年度末貸付金債権残高 | 回収額 | 償却額 | 事業年度末貸付金債権残高 | 回収額 | 償却額 | 事業年度末貸付金債権残高 | |
〔1〕 | 〔2〕 | 〔3〕 | 〔4〕=〔1〕-〔2〕-〔3〕 | 〔5〕 | 〔6〕 | 〔7〕=〔4〕-〔5〕-〔6〕 | |
C社 | 14,362 | 196 | − | 14,165 | 949 | − | 13,216 |
D社 | 1,100 | 34 | − | 1,065 | 105 | − | 959 |
計 | 15,462 | 231 | − | 15,231 | 1,054 | − | 14,176 |
旧機構では、C社の炭鉱の閉山に伴い、14年5月に、C社が所有する土地等の売却代金等を返済財源として最大20年間で債務を返済する旨等について取り決めた金融協定をC、D両社と締結し、同協定に基づき回収を行うこととした。
C社が所有する土地等の売却等状況は、表7のとおりである。14年度は売却等計画額10億円に対し売却等実績額は17億円、15年度計画額6億円に対し実績額は3億円となっている。
しかし、上記の14年度実績額には、5年間の割賦返済で受け取ることとして14年度から18年度までの計画額に分割して計上されていた設備に係る売却代金を14年度に一括して受け取ったもの(9億円)が含まれている。そこで、この設備に係る計画額を14年度に一括して計上して計画額と実績額を比較すると、14年度計画額18億円に対し実績額は17億円、また、15年度計画額5億円に対し実績額は3億円で、両年度とも計画額を下回ることとなる。
区分
\ 年度
|
売却等計画額 | 売却等実績額 | 割賦返済分調整後の売却等計画額 |
平成14 | 1,056 | 1,708 | 1,825 |
15 | 697 | 308 | 504 |
(3)機構の財務状況
旧機構では、前記のとおり、「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」(昭和55年法律第71号)に基づき、経済産業大臣が国庫に納付すべきとして定めた額228億円を、14年3月、石炭経過勘定から国庫に納付している。この納付額は、国から旧機構に出資された額のうち業務に必要な資金に充てるべき額を勘案して定められたものである。
また、旧機構の新エネルギー勘定に出資されていた国からの出資金75億円は、旧機構が独立行政法人に移行した15年10月に、旧機構がその全額を国庫に納付している。
旧機構は石炭会社等に対する貸付金等債権の管理・回収等業務に係る経理を、主として石炭経過勘定において行っていた。この石炭経過勘定の15事業年度(15年4月1日から9月30日まで)の貸借対照表は、表8のとおりである。
表8 旧機構の15事業年度貸借対照表(石炭経過勘定)
(15年9月30日現在単位:百万円)
科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
資産の部 A 流動資産 B 固定資産 貸付金 貸倒引当金 その他 |
41,853 44,164 100,798 △58,739 2,105 |
負債の部
A 流動負債B 固定負債 (負債合計)
資本の部
A 資本金政府出資金 B 剰余金(△欠損金) 資本剰余金 利益剰余金(△欠損金) (資本合計)
|
2,579 20,134 22,714 138,547 △75,243 4 △75,247 63,304 |
資産合計 | 86,018 | 負債・資本合計 | 86,018 |
旧機構の業務を承継した機構は、貸付金債権の管理・回収等業務に係る経理を、主として石炭経過勘定において行っている。この石炭経過勘定の15事業年度(15年10月1日から16年3月31日まで)の貸借対照表は、表9のとおりとなっている。
表9 機構の15事業年度貸借対照表(石炭経過勘定)
(16年3月31日現在単位:百万円)
科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
資産の部
A 流動資産貸付金 その他 B 固定資産 1 有形固定資産 2 無形固定資産 3 投資その他の資産 破産更生債権等 △貸倒引当金 その他
|
37,181 8,254 28,926 55,972 2,033 0 53,938 22,473 △1,376 32,841 |
負債の部
A 流動負債B 固定負債 (負債合計)
資本の部A 資本金 政府出資金 B 資本剰余金 C 繰越欠損金 当期未処理損失 (資本合計)
|
13,212 16,152 29,364 64,117 △34 293 63,788 |
資産合計 | 93,153 | 負債・資本合計 | 93,153 |
政府出資金についてみると、前記のとおり旧機構が14年3月に228億円の政府出資金を国庫に納付したことにより、旧機構の13事業年度末における政府出資金は1385億円となっていたが、独立行政法人に移行する際、旧機構の15事業年度における欠損金752億円の処理等を行い資本金を641億円に減少させたことにより、この資本金を引き継いだ機構の15事業年度末における政府出資金は641億円となっている。
一方、機構が保有する貸付金債権は、15事業年度末において貸付金及び破産更生債権等(注)
の合計額307億円である。機構では、破産更生債権等については、「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」(いずれも平成12年2月独立行政法人会計基準研究会策定、15年3月改訂)に基づき、担保物件からの回収見込額及び保証人の保証履行見込額を除く債権全額を回収不能見込額として、同額を貸倒引当金に計上することとしている。そして、旧機構の15事業年度末における貸倒引当金は587億円であったが、前記のとおり、A、B両社に対する貸付金債権を再生機構に売却した際の売却差額に充当するために一部を取り崩したため、機構の15事業年度末における貸倒引当金は13億円となっている。
4 本院の所見
旧機構が保有していた石炭会社等に対する貸付金等債権については、13事業年度末に1428億円であったものが、その後の石炭会社等の経営破綻等により、その6割を超える額が償却されている。また、一部の貸付金債権については、土地の売却収入等による長期分割返済で回収することとされているが、当該土地の売却が順調に進んでいるとはいえない状況となっている。
一方、出資金の国庫への返納は、13事業年度までの出資累計額の2割を下回る状況となっている。その中で、今後貸付金債権の回収が順調に推移すれば、経済産業大臣の定めるところによりその回収金を原資とする国庫納付が行われることとなる。
石炭政策は、多額の国費を投じて長年にわたり旧機構等を通じて実施されてきた国家事業であり、機構が現在行っている貸付金債権の管理・回収等業務は、その石炭政策の最終的な整理段階の一つに位置付けられるものである。
本院としては、機構の貸付金債権の管理・回収等業務の実施状況等について、引き続き注視していくこととする。