歳出予算は、効率的な執行ができ、また、執行の責任の範囲が明確になるように体系的、統一的に区分されており、各「項」に定める目的の外にこれを使用してはならないこととされている。しかし、実際の執行段階においては、予算編成後における事情の変更や予期し得ない事態の発生等によって、当初予算のとおり執行し得ない場合、あるいは執行することがかえって適切でない場合もあり得る。このような場合の対応の一つとして、予算の移用及び流用(以下「移流用」という。)の制度が認められている。
このうち、移用は、各所管の各「組織」の金額又は各「組織」内の各「項」の金額を他の「組織」又は他の「項」に移して使用することであり、「項」までが国会の議決の対象となっていることから、あらかじめ国会の議決を得た場合に限り、財務大臣の承認を経て行うことができることとされている。また、流用は、各「項」内における「目」の金額を相互に移して使用することであり、あらかじめ国会の議決を得ておく必要はないが、予算統制の観点から、原則として財務大臣の承認が必要とされている。
このように、移流用の制度が予算の区分を変更し経費を融通するものであることから、その状況について調査することとした。
元年度から14年度までの間に移流用を行った額及び歳出予算現額に対する割合の推移をみると、表9のとおりである。
このうち、移流用を行った額が最も多いのは13年度の606億円、最も少ないのは元年度の241億円となっており、また、移流用を行った額の歳出予算現額に対する割合は0.03%から0.07%の間で推移している。
表9 移流用額及び移流用額の歳出予算現額に対する割合の推移(元年度〜14年度)
(単位:百万円)
元年度 | 2年度 | 3年度 | 4年度 | 5年度 | |
移流用額(A) | 24,140 | 44,798 | 42,747 | 43,681 | 45,593 |
歳出予算現額(B) | 66,977,234 | 70,390,137 | 71,460,125 | 72,258,814 | 78,398,223 |
(A)/(B) | 0.04% | 0.06% | 0.06% | 0.06% | 0.06% |
6年度 | 7年度 | 8年度 | 9年度 | 10年度 | |
移流用額(A) | 25,475 | 35,875 | 33,300 | 34,788 | 31,099 |
歳出予算現額(B) | 76,053,539 | 80,130,597 | 81,448,553 | 80,882,682 | 89,690,833 |
(A)/(B) | 0.03% | 0.04% | 0.04% | 0.04% | 0.03% |
11年度 | 12年度 | 13年度 | 14年度 | ||
移流用額(A) | 28,675 | 49,819 | 60,635 | 29,196 | |
歳出予算現額(B) | 93,449,493 | 93,572,143 | 89,907,572 | 87,844,155 | |
(A)/(B) | 0.03% | 0.05% | 0.07% | 0.03% |
14年度に移流用を行った額について、主要経費別及び使途別の状況をみると、表10及び表11のとおりである。
主要経費別にみると、社会保障関係費及びその他の事項経費における移流用が増額及び減額共に全体の額の8割以上を占めている。また、これらの経費以外のものについては、同一主要経費内での移流用となっている。
使途別にみると、補助費・委託費が移流用増額の67.7%、移流用減額の75.7%を占めている。そして、差引増減額では、施設費及びその他において移流用増となっており、一方、補助費・委託費、人件費、旅費及び物件費において移流用減となっている。
表10 主要経費別移流用額(14年度)
(単位:百万円)
主要経費別 | 移流用増額(A) | 移流用減額(B) | (A)-(B) |
社会保障関係費 | 18,450 | 9,820 | 8,629 |
文教及び科学振興費 | 28 | 28 | − |
国債費 | − | − | − |
恩給関係費 | 0 | 0 | − |
地方財政関係費 | − | − | − |
防衛関係費 | 3,845 | 3,845 | − |
公共事業関係費 | 561 | 561 | − |
経済協力費 | − | − | − |
中小企業対策費 | − | − | − |
エネルギー対策費 | − | − | − |
食料安定供給関係費 | 787 | 787 | − |
産業投資特別会計へ繰入 | − | − | − |
その他の事項経費 | 5,523 | 14,153 | △8,629 |
計 | 29,196 | 29,196 | − |
表11 使途別移流用額(14年度)
(単位:百万円)
使途別分類 | 移流用増額(A) | 移流用減額(B) | (A)-(B) |
人件費 | 2,200 | 3,623 | △1,423 |
旅費 | 302 | 701 | △399 |
物件費 | 2,200 | 2,451 | △251 |
施設費 | 351 | − | 351 |
補助費・委託費 | 19,770 | 22,106 | △2,336 |
他会計へ繰入 | − | − | − |
その他 | 4,371 | 312 | 4,059 |
計 | 29,196 | 29,196 | − |
13、14両年度に連続して移流用増を行っている「目」は39目(年度途中における事業の制度改正等に伴い移流用が行われた「目」を除く。)あり、その移流用増額は13年度135億円、14年度104億円となっている。このうち、両年度とも1億円以上の移流用増となっている「目」についてみると、表12のとおりである。
このように連続して移流用増を行っていることについては、両年度とも各種事務事業の実施において、事業等の実績が予算で見込んだ量を上回ったことなどによるとしている。
表12 13、14両年度に1億円以上の移流用増となっている「目」
(単位:百万円)
所管 | 組織 | 項 | 目 | 移流用増額 | |
13年度 | 14年度 | ||||
厚生労働省 | 厚生労働本省 | 介護保険推進費 | 介護保険事務費交付金 | 3,154 | 3,915 |
内閣府 | 防衛本庁 | 防衛本庁 | 退職手当 | 4,991 | 1,268 |
厚生労働省 | 厚生労働本省 | 社会福祉諸費 | 社会福祉施設職員等退職手当共済事業紿付費補助金 | 3,360 | 1,501 |
農林水産省 | 農林水産本省 | 水田農業経営確立対策費 | 水田農業経営確立助成等補助金 | 700 | 720 |
裁判所 | 裁判所 | 下級裁判所 | 委員手当 | 360 | 616 |
法務省 | 法務本省 | 法務本省 | 賠償償還及払戻金 | 261 | 248 |
計 | 12,828 | 8,271 |
また、13、14両年度に連続して移流用減を行っている「目」は57目(年度途中における事業の制度改正に伴い移流用が行われた「目」を除く。)あり、その移流用減額は13年度171億円、14年度133億円となっている。このうち、両年度とも1億円以上の移流用減となっている「目」についてみると、表13のとおりである。
このように連続して移流用減を行っていることについては、両年度とも事業等の実績が予算の積算に当たり計上している所要額を下回ったり、事務事業の効率化等により経費を削減したりなどしたことによるとしている。
表13 13、14両年度に1億円以上の移流用減となっている「目」
(単位:百万円)
所管 | 組織 | 項 | 目 | 移流用減額 | |
13年度 | 14年度 | ||||
厚生労働省 | 厚生労働本省 | 介護保険推進費 | 介護保険事業費補助金 | 3,154 | 3,915 |
厚生労働省 | 厚生労働本省 | 社会福祉諸費 | 在宅福祉事業費補助金 | 3,360 | 1,501 |
内閣府 | 防衛本庁 | 防衛本庁 | 職員基本給 | 2,947 | 202 |
厚生労働省 | 厚生労働本省 | 水道施設整備費 | 水道施設整備費補助 | 2,404 | 364 |
内閣府 | 防衛本庁 | 防衛本庁 | 教育訓練費 | 1,394 | 553 |
農林水産省 | 農林水産本省 | 水田農業経営確立対策費 | 水田農業経営確立対策推進交付金 | 700 | 720 |
厚生労働省 | 厚生労働本省 | 厚生労働本省 | 医療関係者養成確保対策費等補助金 | 269 | 1,031 |
厚生労働省 | 厚生労働本省 | 保健衛生施設整備費 | 医療施設等施設整備費補助金 | 354 | 847 |
裁判所 | 裁判所 | 下級裁判所 | 職員諸手当 | 360 | 616 |
内閣府 | 防衛本庁 | 防衛本庁 | 宿舎特別借上費 | 413 | 405 |
法務省 | 法務本省 | 法務本省 | 国家公務員共済組合負担金 | 261 | 276 |
法務省 | 矯正官署 | 矯正収容費 | 護送旅費 | 130 | 175 |
内閣府 | 防衛本庁 | 防衛本庁 | 電子計算機等借料 | 120 | 172 |
裁判所 | 裁判所 | 裁判費 | 裁判旅費 | 141 | 138 |
計 | 16,012 | 10,923 |