我が国の財政は、15年度末現在の公債残高が456兆円に達しており、15年度の国債費が15.5兆円と一般会計歳出の約2割を占めているなど依然として厳しい状況となっており、政府においては、財政の健全化に向けて歳出改革等を推進しているところである。
今回、一般会計歳出予算の執行状況について検査したところ、本院で比較相対的な概念として設定した経費の区分でみると、裁量性の高い経費を多く含むものを中心に年度末に支出率が高くなっているとともに、これらの中には不用率が低くなっているものも見受けられた。そして、本省支出官に係る契約のうち、物品購入や施設整備についてその時期をみたところ、年度末に契約件数が増加している状況となっていた。また、予算の区分を変更し経費を融通する移流用が同じ科目において2箇年度続いて行われていたり、会計年度独立の原則の例外である繰越しにおいて、全く支出負担行為が行われずに全額明許繰越がなされている事項が相当数見受けられたりした。
歳出予算の執行については、予算執行を統制する観点から、支出負担行為担当官及び支出官に対して厳格な執行責任が課されているが、国の歳出予算が貴重な国民の税金を主たる財源としているものであり、また、現下の厳しい財政状況にかんがみ、その使用に対しては各府省等における一層厳正な管理が求められる。
したがって、各府省等において、歳出予算の執行に当たっては、引き続き、国の各般の需要を的確に把握して一層効率的、効果的な執行を行うとともに、法令及び予算に従った執行に努めることが重要である。そして、効率的な執行により生じた不用額は財政状況の好転に寄与するものであることから、不用の発生事由の精査を更に充実させ、その結果を効率的な予算執行に活用していくことが望まれる。
また、法令及び予算制度の原則に沿って予算執行を行いつつ、原則どおりに執行することがかえって非効率になるような場合には、今後とも、移流用、繰越し等の制度を適切に活用することにより、効率的な執行に努めることが必要である。政府において、16年度予算から試行的に導入された「モデル事業」は、事業の性格に応じた予算執行の弾力化を認めるものであり、厳格な事後評価が行われることが予算統制を補完する重要な要素と考えられることから、同事業の実効性を上げるために事後評価の充実に向けた格段の努力が望まれる。
そして、決算を予算に反映していくことの重要性がますます高まっていることを踏まえ、予算の執行状況の検証及び決算の分析を十分に行って予算への反映を実効あるものにし、更に今後の効率的、効果的な予算執行に資することが望まれる。
予算の執行状況の確認は本院の重要な職責であり、昨今の決算重視の流れも踏まえ、本院としては、今後とも様々な角度から検査を行っていくこととする。