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  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 国会|
  • (衆議院)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

電話関係業務に係る契約について、契約事務を適正に実施する体制を整備したり、予定価格の積算手順を整備したりするなどして契約事務を適切に実施するよう改善させたもの


電話関係業務に係る契約について、契約事務を適正に実施する体制を整備したり、予定価格の積算手順を整備したりするなどして契約事務を適切に実施するよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)衆議院   (項)衆議院
      (項)衆議院施設費
部局等の名称 衆議院
契約名 本館電話中継端子装置改修工事ほか149件
契約の概要 電話機の購入、電話交換機の改修や保守・点検、通信ケーブルの更新等
上記に係る契約件数及び金額 150件   9億4059万余円 (平成13年度〜15年度)
一般競争等に付することが適切であると認められた契約件数及び金額 26件   3億9270万円  
割高となっていた契約件数及び金額 14件   1807万円  

1 契約等の概要

(契約の概要)

 衆議院では、国会の衆議院内で使用する電話通信設備を整備するため、毎年度、電話機の購入・移設、電話交換機の改修や保守・点検、通信ケーブルの更新等(以下、これらを「電話関係業務」という。)に係る契約を多数実施している。

(契約方式)

 上記の契約に係る事務の実施に当たっては、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等(以下「会計法令等」という。)に基づき行うこととされている。このうち契約方式については、公正性、競争性、経済性等の面から、原則として一般競争に付することとされている。ただし、契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数で一般競争に付する必要がないなどの場合には指名競争に付するものとされ、また、緊急の必要により競争に付することができないなどの場合には随意契約によるものとされ、契約に係る予定価格が少額である場合には随意契約等によることができることとされている。
 そして、国の物品の購入等の契約に係る一般競争又は指名競争に参加する場合については、国の事務効率化、競争参加者の負担軽減等のため、衆議院も含めた各省各庁に共通の統一参加資格が定められており、この資格を有する者の名簿(以下「統一資格名簿」という。)が作られている。

(契約事務手続)

 衆議院では、電話関係業務については庶務部電気施設課が所掌し、これに係る契約事務については同部会計課が所掌することとしているが、実際には、電話関係業務に係る契約事務については専門的な知識が必要であるとして、電気施設課が契約方式、予定価格等について決定し、見積り徴取の相手方を選定し、見積りの徴取等を行い、そのまま会計課長(支出負担行為担当官)等の決裁を得るなどしていて、実質上、電気施設課が契約事務も行っている。
 また、本件契約に係る予定価格の積算に当たっては、工種については「公共建築工事積算基準」(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修。以下「積算基準」という。)に、労務単価については「公共工事設計労務単価」(農林水産省及び国土交通省決定。以下「二省単価」という。)によることとしている。そして、これらに掲載されていない工種や労務単価については、刊行されている積算参考資料や業者からの見積りなどを参考にして積算することとしている。

2 検査の結果

(検査の対象及び着眼点)

 平成13年度から15年度までの間に締結された電話関係業務に係る契約件数及び金額は、150件、9億4059万余円に上っており、このうち147件が随意契約となっている。
 そこで、これら150件を対象として、契約方式は、公正性、競争性、経済性等を確保したものとなっているか、予定価格の積算は適切に行われているかなどに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)契約方式について

 前記150件のうち、契約に係る予定価格が少額であるため随意契約としていたもの109件及び衆議院議員総選挙のため緊急に契約を締結する必要があることから随意契約としていたもの4件を除くと、指名競争に付したものが3件、随意契約としていたものが34件、計37件となっていた。そして、これらについて、当該契約方式とした理由をみると、次のとおりであった。

ア 指名競争に付していたもの 3件

 これらは一般に市販されている電話機の購入に係るものである。この契約は予算の執行状況を勘案して年度末に行うこととしていることから、一般競争に付するための期間を確保できないとして指名競争に付していた。
 しかし、計画的に電話機の購入・設置を行えば、一般競争に付する期間は十分確保できることから、上記の契約3件(契約金額1549万余円)は、指名競争ではなく一般競争によるべきであったと認められた。
 なお、このうち2件については、電気施設課が、統一資格名簿に記載されておらず指名競争に参加できない業者を含めて競争参加者を選定し、その業者が落札していた。

イ 随意契約としていたもの 34件

 これらは電話機の移設、通信ケーブルの更新等に係るものである。そして、次のことを理由として随意契約としていた(各項目の件数には重複しているものがある。)。
〔1〕 通信の秘密の確保が必要であるとしていたもの 30件
〔2〕 特殊な仕様や技術のため、他に契約できる業者がいないとしていたもの 9件
〔3〕 既設の設備と一体不可分でこれらを調整する必要があるとしていたもの 14件
〔4〕 既設の設備の状況等に精通しているため、作業が効率的にできるとしていたもの 30件
 しかし、施工箇所の状況や電話機の仕様等について検査したところ、次のような状況となっていた。
(ア)〔1〕の30件のうち21件については、院内通信網の全体が把握されることのない電話機の移設や通信ケーブルの更新等であって、職員の立会を条件とするなどすれば、他の業者でも施工できるものであった。
(イ)〔2〕の9件のうち1件については、一般に市販されている電話機等と一部特殊な仕様の製品とを併せて購入するものであるが、電話機等については他の業者から購入できるものであった。
(ウ)〔3〕の14件は、いずれも通信設備の端子盤の改修工事等に熟練した業者であれば施工できるものであった。
(エ)〔4〕の30件は、いずれも必要な仕様を書類や図面で示せば他の業者でも施工できるものであった。
 したがって、上記契約34件のうち23件(契約金額3億7721万余円)は、随意契約ではなく競争契約によるべきであったと認められた。
 上記ア及びイの本件契約計26件(契約金額3億9270万余円)は契約方式が適切でないと認められた。

(2)予定価格の積算について

 契約に当たって、指名競争に付する場合及び随意契約で予定価格が100万円を超える場合には予定価格調書を作成することとされている。そして、前記契約150件のうち、予定価格調書を作成することとされているものは55件であり、このうち資料が保存されていない11件を除く44件についてみると、次のような状況であった。

ア 労務費について

 上記44件のうち13件(契約金額1億7520万余円)については、労務費の積算に当たり、電話通信設備の改修等であることを理由に、積算参考資料の「通信工事技術者」の単価を参考にするなどして、1人1日当たりの労務単価を20,410円から31,950円と積算していた。
 しかし、これらの作業内容は、通信ケーブルの敷設、端子盤の設置工事等となっており、二省単価において、配線器具、盤類、電線等の取付け、撤去等を行うこととされている「電工」の作業に該当すると認められた。したがって、この二省単価を適用すると、1人1日当たりの労務単価は17,900円から18,100円となる。
 また、上記13件のうち2件(契約金額9019万余円)には、成端処理(注) が作業内容に含まれており、これに係る労務費の積算に当たっては、既存の端子盤には通信ケーブルが接続されていて新設の通信ケーブルを接続するには接続箇所の確認を行う必要があるとして、業者から見積りを徴するなどして成端処理1対当たりの労務単価を560円又は640円として積算していた。
 しかし、この成端処理には、既に接続されている通信ケーブルを確認して施工する必要がある端子盤への接続18,166対のほか、そのような確認の必要がない新設の端子盤等への接続17,190対が含まれており、これらの新設の端子盤等への接続は、積算基準にある「端子接続」を適用でき、これによると成端処理1対当たりの労務単価は156.44円から543.26円となる。

成端処理 通信ケーブル先端のビニル被覆をはいで、束になった電線をほぐし、ばらばらになった心線を1対ずつに整理して端子盤へ接続する作業

イ 材料費について

 前記44件のうち1件(契約金額1億1760万円)は、老朽化した蓄電池をMSE—4000規格の蓄電池に取り替えるものである。この材料費の積算に当たり、当該規格の蓄電池が積算参考資料に掲載されていない特殊な仕様であるとし、業者から同蓄電池25個の価格の見積りを徴するなどして2696万余円と積算していた。
 しかし、設計図の蓄電池の仕様では「MSE—4000(2V2000Ah電池25個2組)」とされており、MSE—4000規格の蓄電池は、2000Ah電池であるMSE—2000規格の蓄電池2個分に相当することから、これは積算参考資料の「MSE—2000」50個と同じものであり、これによると材料費は2300万円となる。
 上記の14件に係る予定価格を修正計算すると、計2億7472万余円となり、契約金額計2億9280万余円はこれに比べて1807万余円割高となっていると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、衆議院において、次のことなどによると認められた。

ア 電話関係業務に係る契約事務の執行に当たって、会計法令等に対する理解が十分でなかったり、電気施設課が実質的に契約事務を行っていたり、会計課による審査が十分に行える体制になっていなかったりなどしていて、契約事務の適正な執行を確保する態勢が整っていなかったこと
イ 指名競争に付すること又は随意契約とすることの検討や競争参加者の資格の有無についての確認が十分でなかったこと
ウ 電話関係業務に係る予定価格の積算に当たり、積算基準や二省単価を適用する手順が整備されていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、衆議院では、17年9月に、電話関係業務を行う課長等に通知を発し、電話関係業務等に係る契約事務の執行に当たっては会計法令等をより十分理解して行うよう、関係職員に対して周知徹底を図るなどするとともに、次のような処置を講じた。
ア 契約事務が適正に行われるよう、契約事務に係る権限を明確にし、また、審査体制を強化するための職員を配置するなどした。
イ 公正性、競争性、経済性等を一層確保するために、契約方式や競争参加者が適切かなどを調査、審議するための委員会を設置した。
ウ 電話関係業務に係る予定価格の積算について、労務費、材料費の積算手順を整備するなどした。