会計名及び科目 | 道路整備特別会計 (項)沖縄道路事業費 |
部局等の名称 | 沖縄総合事務局 |
工事名 | 与根高架橋下部工(上りP17、P18)工事ほか5工事 |
工事の概要 | 高架橋等を築造するため、海上又は河口部において地盤の掘削、杭の打設などを行うもの |
工事費 | 23億3730万円(平成15、16両年度) |
請負人 | 株式会社大寛組ほか5社 |
契約 | 平成15年7月〜16年9月 公募型指名競争契約 |
仮設足場費の積算額 | 1億0835万余円 |
低減できた仮設足場費の積算額 | 5340万円 |
1 工事の概要
内閣府沖縄総合事務局(以下「事務局」という。)では、観光の支援、地域の活性化等に資するために、沖縄県読谷村から糸満市までの海岸付近に地域高規格道路として沖縄西海岸道路(延長約50km)を建設する事業を実施しており、平成16年度末において3.2kmを暫定供用している。そして、この事業の一環として、15、16両年度に与根高架橋下部工(上りP17、P18)工事ほか5工事(工事費総額23億3730万円)を施行している。
これらの工事は、海上又は河口部に高架橋等を築造するため、地盤を掘削したり、杭を打設したりするなどの工事である。そして、本件各工事の実施に当たっては、施工に先立って、海底又は河口部に埋没している不発弾の有無等を確認するための磁気探査を行っており、その費用は、元請業者が地質調査業者に委託することを前提に業務委託料として、本件各工事の工事費に計上されている。
上記磁気探査は、ボーリングマシンにより直径66mm程度の探査孔を工事の施工箇所のほぼ全面に連続して多数削孔し、その孔内に計測装置等を挿入して地中に埋没している磁性体の有無を検知することにより、不発弾の有無、埋没位置等を確認するものである。このため、施工箇所が水上である本件各工事においては、その作業床として工事ごとに940m2 から1,668m2 (6工事、計7,634m2 )と大規模で連続した仮設足場を組み立て、この上から磁気探査を行うこととしている。
事務局では、本件各工事に係る仮設足場の設置・撤去に係る費用(以下「仮設足場費」という。)の積算に当たり、14年度までは事務局が定めた地質調査標準歩掛を、また、15年度以降は刊行物である積算参考資料に掲載されている地質調査市場単価を適用していた。
この地質調査市場単価における仮設足場に係る単価(以下「市場単価」という。)で対象としている仮設足場は、標準貫入試験などの地質調査を行う場合のボーリングマシンの作業床で、削孔の本数が1、2本程度と少ないことから、1箇所当たりの設置面積も比較的小さいものである。
また、市場単価は、仮設足場を設置する場所により湿地足場、水上足場等の種別ごとに区分され、それぞれ仮設足場1箇所当たりの単価として設定されているものの、その標準となる設置面積については明記されていない。そこで、事務局では、市場単価を適用して本件各工事における仮設足場費を積算するに当たり、次のような算定を行っていた。
〔1〕 市場単価における仮設足場1箇所当たりの標準的な設置面積については、前記地質調査標準歩掛を参考にして20m2
とする。
〔2〕 本件各工事における仮設足場の設置面積をこの20m2
で除し、湿地足場、水上足場等の種別ごとに定めている市場単価をそれぞれ乗ずる。
そして、湿地足場については、各工事ごとの設置面積(計2,626m2
)を20m2
で除し、1箇所当たりの市場単価107,500円を、水上足場については、各工事ごとの設置面積(計5,008m2
)を20m2
で除し、1箇所当たりの市場単価377,000円又は375,500円をそれぞれ乗ずるなどして、仮設足場費を計1億0835万余円と算定していた。
2 検査の結果
本件各工事における仮設足場は、前記のように施工箇所のほぼ全面に連続して削孔を行うため、大規模で連続したものになっているのに対し、事務局が仮設足場の費用の積算に当たり適用した市場単価は、地質調査のためのボーリングマシンの作業床に用いるため、設置面積が比較的小さい仮設足場を対象としており、施工の実態が相当程度異なるものと思料されることから、本件仮設足場費の積算に当たり、市場単価を適用していることが適切かどうかに着眼して検査した。
検査したところ、次のように市場単価が想定している作業と本件各工事の施工の実態が相違していた。
(1)仮設足場の1日当たりの施工量について
市場単価の適用に当たっての留意事項などを定めた国土交通省監修の「設計業務等標準積算基準書」によると、市場単価の想定している仮設足場の1日当たりの施工量は、湿地足場については1箇所、水上足場については0.5箇所となっている。そして、前記のとおり、事務局では市場単価の適用に当たって、仮設足場1箇所当たりの標準的な設置面積を20m2
と想定したことから、仮設足場の1日当たりの施工量は湿地足場で20m2
、水上足場で10m2
として算定したこととなる。
しかし、工事の作業内容等を記録した工事週報により本件各工事における仮設足場の1日当たりの施工量を検査したところ、水深が深くなるに従い作業効率が低下したり、作業船が必要となったりするなど施工条件は異なるものの、平均で60m2
程度となっていて、上記市場単価を適用した場合の1日当たりの施工量10m2
又は20m2
程度を大幅に上回る状況となっていた。
(2)仮設足場の設置・撤去に従事する作業員の職種について
市場単価は、物価調査機関において、地質調査業者が仮設足場の設置・撤去を下請コンサルタント業者に発注する際の価格について調査しているものであることから、仮設足場の設置・撤去には主として下請コンサルタント業者の地質調査員等が従事していると想定される。
しかし、本件各工事における仮設足場の設置・撤去に従事する下請業者の状況を施工体制台帳等により検査したところ、下請コンサルタント業者ではなく、その多くが一般土木業を専門とする業者であり、主な職種は、地質調査員等ではなく、通常の工事用作業足場に従事する普通作業員等が作業を実施していると認められた。
したがって、本件各工事のように大規模で連続した仮設足場費の積算に当たっては、設置面積が比較的小さい仮設足場を対象とし、また、想定される作業員の職種の異なる市場単価を適用するのではなく、施工の実態に適合した適切な積算を行う要があると認められた。
上記により、本件各工事における仮設足場費について、作業の実態調査により、水深2m未満と作業船が必要となる水深2m以上5m未満に区分するなどして修正計算すると、計5492万余円となり、前記の積算額1億0835万余円を約5340万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、事務局において、本件各工事のように大規模で連続した仮設足場費の積算に当たり、施工の実態を検討しないで、設置面積が比較的小さい仮設足場を対象としている市場単価を適用していたことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、事務局では、17年8月に磁気探査のため水上において設置・撤去する仮設足場費について施工の実態に適合した適切なものとなるよう、新たに仮設足場費に係る歩掛かりを制定し、同年9月以降積算する工事から適用する処置を講じた。