会計名及び科目 | 一般会計 平成10年度継続費 (組織)防衛本庁 (項)平成10年度甲型警備艦建造費 |
部局等の名称 | 海上幕僚監部(要求部局) 契約本部(契約部局)(平成13年1月5日以前は調達実施本部) |
契約名 | 護衛艦(2239)製造請負契約ほか1契約 |
契約の概要 | 護衛艦「たかなみ」及び「おおなみ」を製造するもの |
契約の相手方 | 株式会社マリンユナイテッド(平成14年10月1日以降は株式会社アイ・エイチ・アイマリンユナイテッド)ほか1社 |
契約 | 平成11年3月 随意契約 |
契約金額 | 548億3360万余円 | (当初契約金額533億8200万円) |
ガスタービンパワーセクション予備機の価格 | 2億7200万円 | (4台) |
低減できた総利益相当額 | 2950万円 |
1 主発電機用原動機のガスタービンパワーセクション予備機の調達等の概要
海上幕僚監部では、平成10年度に「たかなみ」型護衛艦2隻(以下「10年度護衛艦」という。)を継続費により契約本部(13年1月5日以前は「調達実施本部」)に対し調達要求している。これを受け契約本部では、11年3月に株式会社マリンユナイテッド(14年10月1日以降は株式会社アイ・エイチ・アイマリンユナイテッド)ほか1造船会社とそれぞれ艦艇製造請負契約を締結している。
これらの契約は、各造船会社が艦艇製造に必要な原材料を購入して加工したり、機器等を他の会社から購入したりするなどして造船所において艦艇を製造するものである。そして、艦艇に必要な電力を供給するための装置である主発電装置の購入もこれらの契約に含まれている。一方、艦艇に搭載する機器等のうち航行用の主機関や武器等については、契約本部が別途に調達して造船会社に支給する方式によっている。
上記の主発電装置は、ガスタービン機関である主発電機用原動機(以下「原動機」という。)と主発電機から構成されており、造船会社が他の会社から購入して艦艇1隻当たり3台搭載されている。このうち、原動機の出力発生部であるガスタービンパワーセクション(以下「パワーセクション」という。)は、圧縮した空気中に燃料を噴射し燃焼させ、それにより発生したガスでタービンを回転させて出力を得る構造となっている。このパワーセクションは、原動機内にボルトで固定されていて着脱可能な構造となっており、あらかじめ定められた主発電装置の運転時間等が一定の基準に達した場合等には予備のパワーセクション(以下「予備機」という。)との換装を行っている。そして、原動機から取り外されたパワーセクションは、分解検査及び組立復旧等を行うオーバーホールを実施した後は、次回の換装用の予備機となり、以後繰り返し使用されていくものである。
また、パワーセクションを含む原動機は、艦内に電力を供給する重要な装置である主発電装置の主要構成品であり、その信頼性を確保することが重要である。このため原動機は、その製造メーカー及び仕様についてあらかじめ契約本部の承認を受けなければならない指定品とされており、造船会社は製造メーカーから購入する前に契約本部へ指定品承認申請書を提出し承認を受けることとなっている。その際には、造船会社は必要に応じ、主な性能等を記載した要目表、主発電装置の組立図、パワーセクションの図面などの製品の詳細を示す図書を製造メーカーから取り寄せ、併せて提出することとなっている。
パワーセクションは、前記のように換装を繰り返して使用されていくものであることから、稼動する艦艇数に対してあらかじめ一定数の予備機が必要である。そこで、海上幕僚監部では、新たな艦艇の就役等により予備機の数に不足が生じることとなる場合には、予備機を艦艇製造請負契約に含めて造船会社から調達(以下、このような調達方法を「造船会社調達」という。)するよう契約本部に対し要求している。
そして、これら予備機の調達状況についてみると、3年度に契約した護衛艦(以下「3年度護衛艦」という。)以降の10年度護衛艦を含む計14艦はいずれも同じ型式の原動機を継続して使用しており、これらに対する予備機の調達台数は累計で12台となっている。
艦艇製造請負契約の予定価格の算定に当たっては、「調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令」(昭和37年防衛庁訓令第35号)に基づき原価計算方式を適用することとし、造船会社が費消した直接材料費、加工費、直接経費の製造原価に、総利益(一般管理及び販売費、支払利子並びに利益をいう。以下同じ。)等を加算する方法により計算価格を算定し、これを基に予定価格を決定している。また、予備機は艦艇製造請負契約に含めて造船会社が調達する機器であるので、造船会社が購入する費用に相当する額が直接材料費として計上されていて、これに造船会社の総利益等が加算されている。
そして、10年度護衛艦の契約については、製造原価を計464億2000万円と計算し、これに総利益計51億6000万円を加算するなどして計算価格を計548億9400万円と算定し、これに基づき予定価格を決定していて、11年3月に契約金額計533億8200万円(最終変更後の契約金額計548億3360万余円)で前記の2造船会社とそれぞれ艦艇製造請負契約を締結している。
上記の各契約において、造船会社調達した予備機は計4台であり、各造船会社から提出された生産明細書(注)
における価格は計2億7200万円(消費税を除く。)となっている。
2 検査の結果
前記のとおり、海上幕僚監部では、調達要求に当たり、予備機を造船会社調達することとしているが、一方、別途に調達して造船会社に支給することとしている機器等もある。
そこで、予備機は調達当初は艦艇に搭載されないで陸上保管となる物品であり、また、その価格も高額であることから、予備機を造船会社調達としていることは経済的な調達となっているか否かに着眼して検査した。
検査したところ、予備機については、製造メーカーの工場内で製造メーカーが性能試験を行い、これを契約本部の検査官が確認したのち、製造メーカーが同工場内において専用のコンテナに納め防錆等のために密閉措置を施した上で、造船所へ搬入されていた。そして、造船所へ搬入されたコンテナについては、造船会社は特段の作業を行わずに開封しないまま造船所内の倉庫で保管され、艦艇の納入に合わせて艦艇の配属地区内の造修補給所へ陸上保管物品として納入されていた。
また、10年度護衛艦における原動機の指定品承認申請書の内容についてみたところ、当時既に使用実績がありパワーセクションのオーバーホールの実績もある3年度護衛艦の原動機と型式等に変更がなく、同一の製造メーカーの同一製品を使用する旨が記載されていて、必要に応じ提出することとなっている要目表や組立図等の図書も提出されていない状況となっていた。
したがって、造船会社調達とした予備機については、造船会社は特段の作業を行っておらず、また、10年度護衛艦の艦艇製造請負契約においては、使用実績があり信頼性の確保されている原動機を調達しているのであるから、予備機を造船会社調達とする必要はなく、製造メーカーから別途に調達することができたと認められた。
10年度の艦艇製造請負契約における予備機について、製造メーカーから別途に調達することとした場合、当該艦艇製造請負契約の計算価格における予備機単独の価格が不明であったことから、仮に前記の生産明細書の価格を基に計算価格に含まれる総利益相当額を修正計算すると、これを約2950万円低減でき、造船会社調達に比べて経済的に調達できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、海上幕僚監部において、契約本部への調達要求に当たり、予備機を造船会社調達とするか製造メーカーから別途に調達するかについて、経済性等の観点からの検討が十分でなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、海上幕僚監部では、17年9月に艦艇製造における予備機の調達方針を定め、今後の艦艇製造において、過去の使用実績等から当該原動機の信頼性が確保されている場合には、その予備機については製造メーカーから別途に調達することとする処置を講じた。