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  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 外務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

日本人学校の校舎等の建設等に対する援助について、援助額の算定を適切に行うとともに、交付を運営主体の金融機関への償還の状況に即して適切に行うよう改善させたもの


日本人学校の校舎等の建設等に対する援助について、援助額の算定を適切に行うとともに、交付を運営主体の金融機関への償還の状況に即して適切に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)在外公館 (項)在外公館
部局等の名称 外務本省
援助の概要 海外において、我が国の教育関係法令に準拠して本邦の小学校又は中学校が行っている教育に相当する教育を行うことを目的とする全日制の日本人学校の校舎等の建設等に要する費用の一部を負担するもの
平成11年度から16年度までに終了した援助及び16年度末現在において継続している援助に係る援助基礎額 27校32援助 85億1556万余円
 (うち交付済額54億3413万余円)
上記のうち援助基礎額の算出が適切と認められないもの 12校13援助  交付済額10億2277万円
平成11年度から16年度までに終了した援助に係る交付済援助金総額 12校13援助  36億9046万余円 (援助開始から平成16年度まで)
上記のうち償還総額に対し援助金の総額が過大に交付されたもの 5校6援助  5億8223万円  

1 事態の概要

(日本人学校に対する援助)  

 外務省では、日本人学校等の在外教育施設は、現地在留邦人によって設立、管理・運営されるもので、その経費も基本的には自助努力によって賄われるべきであるが、特に義務教育段階の海外子女教育に対しては、保護者の負担を軽減すべきであるとの観点から、校舎等の建設等の経費、現地採用講師の謝金等の一部を負担(以下「援助」という。)している。
 在外教育施設のうち、教育関係法令に準拠し、本邦の小学校及び中学校が行っている教育と同等の教育を行うことを目的とする全日制の日本人学校は、日本人会等の在留邦人団体によって構成された日本人学校運営委員会等(以下「運営主体」という。)によって、平成16年4月15日現在で、47箇国1地域において、82校設置されている。
 日本人学校に対する援助については、運営主体が校舎等を家主から借り上げる場合の借料のほか、校舎等を建設し、又は購入する場合等の経費に対する援助などが行われている。

(校舎等の建設又は購入に対する援助)

 外務本省では、校舎等を建設し、又は購入する場合等については、運営主体から、大使館又は総領事館(以下「在外公館」という。)を通じて援助の要請書の提出を受け、その必要性、緊急性等を勘案するなどして採否を決定することとしている。そして、運営主体では、外務本省から援助を行う旨の通知を受けた後、校舎等を建設し、又は購入することとしており、16年度の交付済援助額は7億9040万余円(邦貨換算額。以下、外国通貨の場合、同じ。)となっている。
 この援助の取扱いについては、「日本人学校校舎の新・増築及び購入に際しての「シドニー方式(注) 」による政府援助について」(外務省領事移住部領事移住政策課制定。以下「取扱要領」という。)に定められている。すなわち、取扱要領においては在外公館が毎年度運営主体から日本人学校の用途に供するために校舎等を借り上げることとし、在外公館が運営主体に借料を支払うことによって援助することとしている。そして、借料として支払う援助額の算定方法を定め、これにより算定した額を運営主体に毎年度交付することとしている。

昭和46年にシドニー日本人学校の建設に対して援助するに当たって当該方式が、初めて採用されたことから「シドニー方式」と称している。

(援助額の算定方法)

 運営主体が校舎等の建設又は購入に要する経費のうち、援助の対象とする経費(以下「援助対象経費」という。)の算出については、本邦の小学校又は中学校の校舎等を建設する際の文部科学省の公立義務教育諸学校校舎建設国庫補助(以下「校舎建設補助」という。)の例に準ずることとしている。援助の対象項目は校舎、体育館及びプールの建設費又は購入費並びに土地のリース料としている。
 そして、校舎等の建設又は購入に対する援助に当たっては、校舎等のすべての面積を対象とするのではなく、小学部及び中学部の別に建設等の前年度の児童生徒数を基に、同学年の児童生徒数40人で1学級を編成することとして学級数を算出し、この学級数に応じて定められた所定の区分ごとに算出した必要面積の範囲内で行うことなどとし、この面積を超える部分は援助の対象としないこととしている。また、児童生徒数の急増が見込まれる場合には、効率的に校舎等を建設し、又は購入するなどの理由から、本邦の校舎建設補助の例に準じ、3年先の児童生徒数の見込数を基準にすることができることとしている。
 そして、援助額の算定は以下のように行い、毎年度予算の範囲内で交付することとしている。
〔1〕 校舎等の建設又は購入に必要な経費に、建設又は購入する校舎等の面積に占める必要面積の割合を乗ずるなどして援助対象経費を算出する。
〔2〕 援助対象経費に2分の1の援助率を乗ずるなどして算出した額(以下「援助基礎額」という。)と、この額を運営主体が金融機関から固定金利により融資を受けると想定した場合に生ずる利息の合計額を算出する。
〔3〕〔1〕及び〔2〕の計算について、建設計画時の予定経費を基に算出した場合と建設完了時の実際の経費を基に算出した場合を比較し、いずれか低い方の額を援助の総額とする。
〔4〕 この援助の総額をおおむね5年から25年までの間に設定した償還期間にわたり、援助することとして、均等割にした額を毎年度の援助額とする。

(外務本省が徴する書類)

 外務本省では、運営主体から、援助の要請時に建設計画書を、また、工事が完了した後に、工事完了報告書をそれぞれ提出させることとしている。そして、これらの書類には、児童生徒の実績数及び見込数、校舎等の面積、校舎等の建設又は購入に要する経費等を記載させることとしている。また、運営主体から毎年度、「銀行借入及び銀行返済状況報告書」(以下「返済状況報告書」という。)を提出させることとしている。そして、これには、当該援助に係る金融機関からの借入金の返済状況等を把握するために、元本及びこれに係る利息等を記載させることとしている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 日本人学校は、海外における在留邦人の子女に対する教育の機会を確保するための施設として重要な役割を担っている。そして、校舎等の建設又は購入に対する援助は、継続的に長期間にわたり、毎年度交付されている。
 そこで、援助額の算定が適切に行われているか、交付された援助金は、実際の償還の状況に即して適切なものとなっているかなどに着眼して検査を実施した。

(検査の対象)

 11年度から16年度までに援助が終了した日本人学校12校における13援助及び16年度末現在で援助が継続して実施されている日本人学校20校における22援助、計27校(重複5校を含む。)における35援助(これに係る交付済援助総額104億3033万余円。邦貨換算は援助期間中の毎年度の支出官レート。以下同じ。)を対象として、検査を実施した。このうち、6校における11援助については現地調査を実施した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)援助基礎額の算出について

ア 校舎等の必要面積を算出していなかったなどしていたもの
 検査した27校35援助のうち建設計画書等の書類の確認ができた27校32援助(これに係る援助基礎額85億1556万余円。うち16年度末までの交付済額54億3413万余円。以下、交付済額は16年度末までの額をいう。)においては、児童生徒数に基づく学級数に応じた必要面積を算出しておらず、建設する校舎の全面積を援助の対象としていたり、建設する校舎の教室数をそのまま学級数とみなして必要面積を算出していたりするなどしていた。
 したがって、これら27校32援助について、建設計画書等に記載されている3年先の児童生徒数の見込数に基づく学級数に応じた必要面積を算出したとすると、11校11援助については援助の対象とした面積が当該必要面積を超過することとなり、これに係る援助基礎額に12億9861万余円(うち交付済額8億8632万余円)の開差が生ずることとなる。
イ 小学部と中学部の共用する部分について校舎等の必要面積を控除して算出していなかったもの
 日本人学校の小学部及び中学部の校舎等を一体として建設又は購入して共用する場合(以下「校舎共用の場合」という。)における必要面積の算出方法については取扱要領に明記されていない。
 必要面積は、当該学校の学級数に応じ、小学部及び中学部ごとに校舎又は体育館のそれぞれについて、教育を行うのに必要な最低限度の面積として定められているものである。小学部又は中学部の必要面積の算出式には、校舎においては普通教室、校長室、保健衛生室等の管理関係室、物置等の附属室、及び玄関、階段等の通路部分等の面積が、体育館においては主室等の面積が、含まれている。
 このことから、校舎共用の場合の日本人学校において、小学部及び中学部の必要面積をそれぞれ別個に算出した後にそれらを合算すると、校舎については、校長室、保健衛生室、物置、玄関、階段等の面積が、体育館については、全面積が重複して計算されることとなり、合理的ではない。
 そこで、本邦の中高一貫教育を行っている学校に対する補助の取扱いについてみると、中学校と高等学校の校舎等を一体として建設して共用する場合の必要面積の算出については、中学校の生徒数を高等学校の生徒数とみなす算出方法が示されていることから、この例にならい、小学部の児童数を中学部の生徒数とみなして、これに基づく学級数に応じた必要面積を算出すべきであると認められる。
 したがって、上記の方法により必要面積を算出すると、前記の27校32援助のうち10校10援助については援助の対象とした面積が当該必要面積を超過することとなり、これに係る援助基礎額に1億7252万余円(うち交付済額1億3644万余円)の開差が生ずることとなる。
 前記ア及びイのとおり、必要面積の算出が適切と認められないため、12校12援助(重複9校9援助を含む。)に係る援助基礎額に計14億7114万余円(うち交付済額10億2277万余円)の開差が生ずることとなる。

(2)交付した援助金の総額について

 既に援助が終了した12校13援助(これに係る交付済援助総額36億9046万余円)についてみると、5校6援助については、運営主体が金融機関から受けた融資に係る支払金利が、援助額を算定した際に想定した固定金利よりも実際には低率で推移したなどのために、交付した援助金の総額が、金融機関への償還金の総額(以下「償還総額」という。)を5億8223万余円(邦貨換算は援助終了年度の支出官レート)上回っていて、援助金が過大に交付されていると認められた。
 なお、現在援助を継続して実施しているもののうち11校12援助については、16年度末現在までの援助金の総額が償還総額に対し1904万余円(邦貨換算は16年度の支出官レート)過大となっており、このまま推移すると、援助期間終了時には前記と同様に援助金の総額が償還総額を上回ることとなり、援助金が3億9380万余円(邦貨換算は16年度の支出官レート)過大に交付される計算となる。
 以上のように、援助基礎額の算出について、所定の算出方法によっていなかったり、校舎等の使用の実態に即した算出方法を定めていなかったりしており、また、交付した援助金の総額が償還総額を上回っていて、援助金が過大に交付されており、適切を欠く事態となっていると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、外務本省において、次のことなどによると認められた。

(1)援助基礎額の算出について

ア 援助基礎額の算出手順が明確なものとなっていなかったこと
イ 必要面積の算出に必要な児童生徒数及び学級数を把握することができる書式を定めていなかったこと
ウ 校舎共用の場合の必要面積の算出方法を定めていなかったこと

(2)援助金の交付について

ア 毎年度の運営主体の金融機関への償還の状況を把握するため、返済状況報告書の提出を受けることとしているが、この書式の内容が金融機関への償還の状況と援助金の状況とを対比する様式となっていなかったことなどから、援助金と償還金とのかい離の状況を把握していなかったこと
イ 援助金の総額が償還総額を超過している場合の取扱いを定めていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、外務省では、17年10月に、取扱要領を改正して、日本人学校の校舎等の建設又は購入に対する援助が適切なものとなるよう、次のような処置を講じた。
ア 援助基礎額の算出手順を明確化したほか、必要面積の算出に必要な児童生徒数及び学級数を把握するための書式を定めるとともに、校舎共用の場合についても共用する部分が重複しないよう必要面積の算出方法を定めた。
イ 援助金の交付については、返済状況報告書の書式を改め、毎年度の運営主体の金融機関への償還の状況を十分把握し、これを踏まえた援助金の交付を行うとともに、援助金の総額が償還総額を超過している場合には援助金を減額調整する取扱いなどについて定めた。