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租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの


(13)租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの

会計名及び科目 一般会計 国税収納金整理資金  (款) 歳入組入資金受入
      (項)各税受入金
部局等の名称 札幌北税務署ほか101税務署    
納税者 199人    
徴収過不足額 徴収不足額 
593,582,214円
(平成11年度〜16年度)
  徴収過大額 
34,183,600円
(平成14年度〜16年度)

1 租税の概要

 源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、申告・納付の手続などが定められている。
 平成16年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は56兆2692億余円となっている。このうち源泉所得税は14兆0001億余円、申告所得税は2兆8317億余円、法人税は12兆4884億余円、相続税・贈与税は1兆5926億余円、消費税及地方消費税は15兆6022億余円となっていて、これら各税の合計額は46兆5152億余円となり、全体の82.6%を占めている。

2 検査の結果

(徴収過不足の事態)

 上記の各税に重点をおいて、課税が法令等に基づき適正に行われているかなどに着眼して、札幌北税務署ほか183税務署を検査したところ、札幌北税務署ほか101税務署において、納税者199人から租税を徴収するに当たり、徴収額が不足していたものが185事項593,582,214円(11年度〜16年度)、徴収額が過大になっていたものが14事項34,183,600円(14年度〜16年度)あった。
 これを、税目別にみると次表のとおりである。

税目
徴収不足の事項数
徴収過大の事項数
徴収不足額
徴収過大額(△)

源泉所得税
申告所得税
法人税
相続税・贈与税
消費税


7

66
4
68
3
19
7
25


65,895,214

129,412,600
△6,353,500
230,074,800
△6,563,200
78,655,700
△21,266,900
89,543,900

185
14
593,582,214
△34,183,600

 なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、すべて徴収決定又は支払決定の処置が執られた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、前記の102税務署において、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤るなどしているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、誤ったままにしていたことなどによるものである。

(税目ごとの態様)

 この199事項について、源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税の別に、その主な態様を示すと次のとおりである。

(1)源泉所得税に関するもの

 源泉所得税では徴収不足になっていたものが7事項あった。これらは、退職手当及び配当に関するものである。
 退職手当及び配当の支払者は、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収し、徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないこととなっている。また、法人が、自己株式の取得(市場取引による取得等を除く。)に際し、株主に対し金銭等を交付した場合、当該株式に対応する資本等の金額を超える部分の金額は、利益の配当とみなされ、源泉所得税を徴収して、上記の法定納期限までに国に納付しなければならないこととなっている。そして、この法定納期限までに納付がない場合には、支払者に対して、納税の告知をしなければならないこととなっている。
 この退職手当及び配当に関し、徴収不足になっている事態が7事項65,895,214円あった。その主な内容は、退職手当に対する税額の計算に当たり勤続年数に誤りがあり税額が過小のままとなっていたり、自己株式の取得による配当とみなされる金額について、法定納期限を経過した後も長期間にわたって源泉所得税が納付されていなかったりしているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、これを見過ごしたりしたため、納税の告知をしていなかったものである。


 源泉所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。

<事例1>  配当に関する源泉所得税について納税の告知をしていなかったもの
 A会社は、平成13年12月に株主5名から市場取引等によらないで自己株式11,969株を取得し、総額149,971,570円を支払っていたが、これに対する源泉所得税を納付していなかった。
 しかし、同会社の1株当たりの資本金の額は500円であり、これに取得株数11,969株を乗じた金額は5,984,500円となることから、支払金額のうちこれを超える部分の金額143,987,070円は配当の額とみなされる。そして、この金額は同年12月に支払われているので、これに対する源泉所得税が14年1月10日までに納付されていなければならないのに、この事実を把握していなかったため、納税の告知をしておらず、源泉所得税額28,797,414円が徴収不足になっていた。

(2)申告所得税に関するもの

 申告所得税では徴収不足又は徴収過大になっていたものが70事項あった。この内訳は、不動産所得に関するもの25事項、事業所得に関するもの14事項、譲渡所得に関するもの13事項及びその他に関するもの18事項である。

ア 不動産所得に関するもの

 個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
 そして、個人が有する減価償却資産につきその償却費として不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、その者が当該資産について定められた償却の方法に基づいて計算した金額とすることとなっている。また、不動産の貸付けについて、収入、経費の各項目の金額に消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)を含めて経理している場合には、経費に係る消費税等の額が収入に係る消費税等の額を超えるときに生ずる消費税等の還付金は、不動産所得の計算上、総収入金額に算入することとなっている。
 この不動産所得に関し、徴収不足になっている事態が25事項51,796,300円あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア)総収入金額から差し引く減価償却費等の必要経費の額を誤って過大としているのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていた。
(イ)収入及び経費に消費税等を含めて経理している場合の消費税等の還付金が総収入金額に算入されていないのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていた。


イ 事業所得に関するもの

 個人が事業を営む場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を事業所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。そして、事業所得の計算上、個人の消費生活上の支出である家事上の経費は、必要経費に算入しないこととなっている。
 この事業所得に関し、徴収不足になっている事態が14事項26,272,200円あった。その主な内容は、必要経費に算入していた損害保険料に家事上の経費に該当するものが含まれていたり、減価償却費の額を誤ったりしているなど総収入金額から差し引く必要経費の額を過大としているのに、これを見過ごしたため、事業所得の金額を過小のままとしていたものである。


ウ 譲渡所得に関するもの

 個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額などを差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている。
 そして、公共事業施行者から買取り等の申出を受けた日から6箇月以内に収用交換等により資産を譲渡した場合等には、譲渡所得の計算上、所定の金額と当該譲渡した資産に係る譲渡利益金額とのいずれか低い金額を特別控除額として譲渡利益金額から控除できることとなっている。また、相続又は遺贈により取得した資産を相続税の納付のために物納した場合には、納付すべき相続税額を限度として譲渡がなかったものとみなし、課税しないこととなっている。ただし、物納財産の収納価額が相続税額を超えるときに還付される金額は譲渡所得の計算上総収入金額に算入し課税することとなっている。
 この譲渡所得に関し、徴収不足になっている事態が11事項13,959,500円、徴収過大になっている事態が2事項2,642,600円あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア)買取り等の申出を受けた日から6箇月を経過した後に行われた収用交換等による資産の譲渡等について誤って特別控除額の控除をしているのに、これを見過ごしたため、譲渡所得の金額を過小のままとしていた。
(イ)物納財産の収納価額が相続税額を超えていて譲渡所得があるのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、課税していなかった。

エ その他に関するもの

 上記アからウのほか、雑所得等に関し、徴収不足になっている事態が16事項37,384,600円、徴収過大になっている事態が2事項3,710,900円あった。

 申告所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。

<事例2>  不動産所得の総収入金額を過小としていたもの
 納税者Bは、平成14年分の申告に当たり、不動産所得の総収入金額を391,986,445円とし、この金額のうちに消費税等の還付金はないとしていた。そして、この金額から必要経費等を差し引き不動産所得の金額を84,372,487円としていた。
 しかし、同人は不動産の貸付けに係る収入及び経費にそれぞれ消費税等を含めて経理しており、また、14年5月に同人に対して消費税等の還付金16,514,640円が支払われている。したがって、消費税等の還付金を不動産所得の総収入金額に算入するなどすると、不動産所得の金額は100,968,791円となるのに、これを見過ごしたなどのため、申告所得税額6,213,400円が徴収不足になっていた。

<事例3>  事業所得の必要経費を過大としていたもの
 納税者Cは、平成15年分の申告に当たり、事業所得の計算において、損害保険料10,556,740円を必要経費に算入し、必要経費の額を914,662,399円としていた。そして、総収入金額からこの必要経費の額を差し引き、事業所得の金額を34,091,030円としていた。
 しかし、上記の損害保険料のうち9,676,130円は年金払積立傷害保険の保険料であり、必要経費とは認められない同人の家事上の経費に該当するものであることから、必要経費に算入することはできない。したがって、これにより計算すると、事業所得の金額は43,767,160円となるのに、これを見過ごしたため、申告所得税額3,580,100円が徴収不足になっていた。

(3)法人税に関するもの

 法人税では徴収不足又は徴収過大になっていたものが71事項あった。この内訳は、同族会社の留保金に関するもの21事項、減価償却費の計算に関するもの12事項及びその他に関するもの38事項である。

ア 同族会社の留保金に関するもの

 3人以下の株主等(株主等に同族会社でない法人がある場合はその法人を除く。)並びにこれらと特殊の関係にある個人及び法人が発行済株式の総数又は出資金額の100分の50を超える株式の数又は出資の金額(注1) を有している同族会社(以下「特定の同族会社」という。)については、通常の法人税のほか、利益のうち社内に留保した金額が一定の金額を超える場合には、その超える部分の金額(以下「課税留保金額」という。)に対し特別税率(注2) の法人税を課することとなっている。
 この同族会社の留保金に関し、徴収不足になっている事態が20事項101,748,500円、徴収過大になっている事態が1事項691,300円あった。その主な内容は、特定の同族会社に該当し課税留保金額が算出されるのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、特別税率の法人税を課していなかったものである。


100分の50を超える株式の数又は出資の金額平成15年4月1日前開始事業年度分については、100分の50以上の株式の数又は出資の金額

特別税率 課税留保金額が年3000万円以下の部分については100分の10、年3000万円を超え1億円以下の部分については100分の15、年1億円を超える部分については100分の20

イ 減価償却費の計算に関するもの

 法人がその有する減価償却資産につき償却費として損金経理をした金額のうち、その法人が当該資産について定められた償却の方法に基づき当該資産の耐用年数等に応じて計算した金額に達するまでの金額は、所得の金額の計算上、損金の額に算入されることとなっている。そして、10年4月1日以後に取得した建物等についての償却の方法は定額法で行うこととなっている。
 この減価償却費の計算に関し、徴収不足になっている事態が12事項39,224,700円あった。その主な内容は、償却の方法を誤り、償却費を過大に計上しているのに、これを見過ごしたため、損金算入額を過大のままとしていたものである。


ウ その他に関するもの

 上記ア、イのほか、役員賞与の損金不算入、受取配当等の益金不算入等に関し、徴収不足になっている事態が36事項89,101,600円、徴収過大になっている事態が2事項5,871,900円あった。

 法人税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。

<事例4>  同族会社の課税留保金額に対して特別税率の法人税を課していなかったもの
 D会社は、平成14年5月から16年4月までの2事業年度分の申告に当たり、上位1人の株主及び同人の親族が発行済株式の総数の100分の44を所有し、第2順位及び第3順位の株主は同族会社でない法人等であることから、特定の同族会社には該当しないとして、利益のうち社内に留保した金額に対し特別税率の規定による税額計算をしていなかった。
 しかし、申告書等によれば、同会社は同族会社でない法人等を除いた上位3人の株主及びこれらの親族が発行済株式の総数の100分の51.9を所有する特定の同族会社である。そして、所定の計算をすれば、課税留保金額が28,889,000円及び103,752,000円算出されるのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課しておらず、法人税額2,888,900円及び14,250,400円、計17,139,300円が徴収不足になっていた。

<事例5>  建物の減価償却費の計算において償却の方法を誤っていたもの
 E医療法人は、平成13年4月から15年3月までの2事業年度分の申告に当たり、事業の用に供している建物について、定率法に基づき計算した減価償却費56,342,906円及び54,262,306円を損金に算入していた。
 しかし、申告書等によれば、当該建物は13年3月及び9月に取得したものであり、減価償却費の計算は定額法に基づき行わなければならない。したがって、取得直後の償却費が定率法に比べ少額となる定額法により計算すると減価償却費は23,571,260円及び24,273,918円となり、損金に算入した額が32,771,646円及び29,988,388円過大となっているのに、これを見過ごしたなどのため、法人税額9,585,600円及び8,105,100円、計17,690,700円が徴収不足になっていた。

(4)相続税・贈与税に関するもの

 相続税では徴収不足又は徴収過大になっていたものが26事項あった。この内訳は、有価証券の価額に関するもの14事項、土地建物等の価額に関するもの7事項及びその他に関するもの5事項である。

ア 有価証券の価額に関するもの

 個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し相続税を課することとなっている。そして、取得した財産の価額は、相続又は遺贈により取得したときの時価とされていて、有価証券のうち取引相場のない株式又は出資の価額については、株式を発行した会社等の各資産の価額の合計額から各負債の金額の合計額を差し引いた純資産価額等を基にして計算することとなっている。
 この有価証券の価額に関し、徴収不足になっている事態が9事項9,908,300円、徴収過大になっている事態が5事項9,820,500円あった。その内容は、取引相場のない株式等の価額の計算を誤っているのに、これを見過ごしたため、株式等の価額を過小又は過大のままとしていたものである。

イ 土地建物等の価額に関するもの

 個人が相続又は遺贈により取得した土地建物等の価額については、路線価、固定資産税評価額等を基にして計算することとなっている。そして、路線価を基とする場合、その土地の形状等に応じた奥行価格補正率等を乗ずることとなっている。また、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族が事業又は居住の用に供していた宅地等のうち用途区分に応じて所定の方法により計算した一定の面積までの部分については、小規模宅地等として、次に掲げる区分に応じ、土地等の価額にその割合を乗じた額を減額できることとなっている。

〔1〕 被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族が発行済株式の総数又は出資金額の10分の5以上を有する法人の事業(不動産貸付業等は除く。)の用に供していた宅地等で、その宅地等を相続又は遺贈により取得した者のうちに、一定の要件に該当する親族がいる場合の宅地等(以下「特定同族会社事業用宅地等」という。)などに該当するもの
  100分の80
〔2〕 上記以外のもの 100分の50

 この土地建物等の価額に関し、徴収不足になっている事態が7事項62,509,600円あった。その主な内容は、次のとおりである。
(ア)路線価を基とした土地の価額の計算に当たり、奥行価格補正率を誤るなどしているのに、これを見過ごしたため、土地の価額を過小のままとしていた。
(イ)土地の価額の計算において、特定同族会社事業用宅地等などに該当しない小規模宅地等について、これに該当するとして減額の計算をしているのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、土地の価額を過小のままとしていた。


ウ その他に関するもの

 上記ア、イのほか、相次相続控除等に関し、徴収不足になっている事態が3事項6,237,800円、徴収過大になっている事態が2事項11,446,400円あった。

相続税・贈与税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。

<事例6>  小規模宅地等の特例の適用を誤っていたもの
 納税者Fは、平成14年3月相続分の申告に当たり、相続により取得した土地のうち、所定の方法により計算した特定同族会社事業用宅地等150.2m などについて小規模宅地等の特例を適用し、その土地の価額から100分の80に相当する金額460,863,300円を減額していた。
 しかし、申告書等によれば、特定同族会社事業用宅地等としていた150.2m のうち134.3m は、不動産貸付業の用に供されているため特定同族会社事業用宅地等に該当しない。したがって、これにより計算すると、減額される金額は379,375,763円となるのに、法令等の適用の検討が十分でなかったため、相続税額30,744,100円が徴収不足になっていた。

(5)消費税に関するもの

 消費税では徴収不足になっていたものが25事項あった。この内訳は、課税仕入れに係る消費税額の控除に関するもの12事項、納税義務の免除に関するもの9事項及びその他に関するもの4事項である。

ア 課税仕入れに係る消費税額の控除に関するもの

 事業者は、課税期間(納付する消費税額の計算の基礎となる期間で、個人事業者は暦年、法人は事業年度)における課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額(注3) を控除した額を消費税として納付し、また、課税仕入れに係る消費税額が課税売上高に対する消費税額を上回る場合には控除不足税額の還付を受けることができることとなっている。この課税仕入れに係る消費税額の控除額は、課税期間における課税売上割合(課税売上高を総売上高で除した割合)が100分の95以上のときは、課税仕入れに係る消費税額の全額、100分の95未満のときは課税売上高に対応する部分の金額となっている。

課税仕入れに係る消費税額 課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)は、消費税額(税率100分の4)と地方消費税額(消費税額の100分の25。消費税率換算で100分の1)に相当する額を含んだ額とすることとされているので、課税仕入れに係る消費税額は、課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)に105分の4を乗ずることとなる。

 この課税仕入れに係る消費税額の控除に関し、徴収不足になっている事態が12事項47,611,200円あった。その主な内容は、課税売上割合の計算を誤り、同割合が100分の95未満であるにもかかわらず、建物の取得等に係る消費税額の全額を控除額としたり、課税売上高に対応する課税仕入れに係る消費税額の金額を過大に計算して控除額としたりしているのに、これを見過ごしたため、消費税額を過小のままとしていたものである。

イ 納税義務の免除に関するもの

 基準期間(個人事業者は課税期間の前々年、法人は課税期間の前々事業年度)における課税売上高が3000万円以下(注4) の事業者(以下「免税事業者」という。)は、課税期間の課税売上げについて納税義務が免除されることとなっている。そして、免税事業者は還付を受けるための申告はできないこととなっている。また、免税事業者が納税義務の免除の規定の適用を受けない旨を記載した届出書(以下「消費税課税事業者選択届出書」という。)を提出した場合には、当該届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間(ただし、当該提出をした日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間である場合等には、当該課税期間)から課税事業者となることとなっている。

3000万円以下 平成16年4月1日以後に開始した課税期間については、納税義務が免除される基準期間における課税売上高は1000万円以下となっている。

 この納税義務の免除に関し、徴収不足になっている事態が9事項37,608,000円あった。その内容は次のとおりである。
(ア)基準期間の課税売上高が3000万円を超えていて納税義務が免除されないのに、当該課税期間の申告がされていないことを見過ごしたため、消費税を課していなかった。
(イ)消費税課税事業者選択届出書を所定の期日までに提出していない免税事業者が還付申告をしているのに、これを見過ごしたため、消費税を還付していた。


ウ その他に関するもの

 上記ア、イのほか、課税売上高の計上等に関し、徴収不足になっている事態が4事項4,324,700円あった。
 消費税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。

<事例7>  免税事業者が消費税の還付を受けていたもの
 免税事業者Gは、平成13年12月に消費税課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者であるとして、同年1月から12月までの課税期間分の申告を行い、課税売上高11,073,180円に対する消費税額442,920円と課税仕入れに係る消費税額の控除額13,300,922円との差額12,858,002円の還付を受けていた。
 しかし、同人の申告所得税の申告書に添付された書類等によれば、同人は12年以前から継続して事業を行っていることから、同人が当該課税期間において課税事業者となるためには、12年12月末日までに消費税課税事業者選択届出書を提出しなければならない。したがって、当該課税期間においては免税事業者であることから、上記還付を受けることはできないのに、これを見過ごしたため、消費税額12,858,000円が還付されていた。

(国税局等別の徴収過不足額)

 これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局等別に示すと次のとおりである。

これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局等別に示すと次のとおりである。