会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)文部科学本省 | (項)私立学校助成費 |
平成12年度以前は、 | |||
(組織)文部本省 | (項)私立学校助成費 |
部局等の名称 | 文部科学本省(平成13年1月5日以前は文部本省)、北海道ほか23都府県 |
補助の根拠 | 予算補助 |
補助事業 | 私立学校施設整備事業等 |
補助事業の概要 | 私立の高等学校等又は専修学校を設置する学校法人が施設の高機能化等整備事業又は設備の整備事業を実施する場合に、当該学校法人に対して、その経費の一部を補助するもの |
補助事業者 (事業主体) |
(1) 補助事業が適切に執行されていなかった学校法人数 |
121学校法人(平成11年度〜16年度)
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(2) 文部科学省において国庫補助金の交付決定等の手続が適切に行われていなかった学校法人数 | |
198学校法人(平成11年度〜16年度)
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上記に係る施設又は設備整備の事業費 | (1) | 12億2057万円
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(2) | 123億3203万円
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上記に対する国庫補助金 | (1) | 5億6071万円
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(2) | 49億3730万円
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1 制度の概要
文部科学省は、我が国の学校教育において重要な役割を果たしている私立学校の振興の一環として、高等学校等又は専修学校(注1)
(専門課程に限る。以下同じ。)を設置する学校法人又は準学校法人(以下、これらを併せて「学校法人」という。)が施設の高機能化等整備事業又はIT教育設備若しくは情報処理関係設備等の整備事業を実施する場合に、当該学校法人に対し、その事業に必要な経費について都道府県が支出に関する事務を行って、私立学校施設整備費補助金又は私立大学等研究設備整備費等補助金(以下、これらを併せて「国庫補助金」という。)を交付している。
このうち、私立学校施設整備費補助金は、「私立学校施設整備費補助金(私立学校教育研究装置等施設整備費(私立高等学校等施設高機能化整備費))交付要綱」(平成13年文部科学大臣裁定)等に基づき、高等学校等又は専修学校の教育の充実と質的向上を図ることなどを目的として、教育内容・方法の改善のために行う多目的室等の施設(以下「施設」という。)の高機能化等整備事業に要する経費の一部について国が補助するものである。そして、文部科学省は、この事業を実施する学校法人に対し、平成11年度から16年度までに143億4402万余円の国庫補助金を交付している。
また、私立大学等研究設備整備費等補助金は、「私立大学等研究設備整備費等補助金(私立高等学校等IT教育設備整備推進事業費)交付要綱」(平成14年文部科学大臣決定)等に基づき、高等学校等又は専修学校のIT教育の充実を図ることなどを目的として、教育用コンピュータ等の設備(以下「設備」という。)の購入に要する経費の一部について国が補助するものである。そして、文部科学省は、この事業を実施する学校法人に対し、11年度から16年度までに152億8300万余円の国庫補助金を交付している。
上記の各交付要綱等において、補助事業の対象は、設備の購入に要する経費であること、当該会計年度内に契約締結のうえ納入が完了されるものであることなどとされている。
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)において、補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならないとされている。そして、前記の各交付要綱において、補助事業者である学校法人は、補助事業により取得し又は効用の増加した財産(以下「取得財産等」という。)を処分を制限された期間内に処分しようとするときは、あらかじめ文部科学大臣の承認を受けなければならないとされている。
また、前記の各交付要綱において、学校法人は、取得財産等を、補助事業の完了後においても善良なる管理者の注意をもって管理し、補助金交付の目的に従ってその効率的運用を図らなければならないとされている。
2 検査の結果
前記のとおり、文部科学省は、私立の高等学校等又は専修学校の施設又は設備の整備を行う学校法人に対し、都道府県が支出に関する事務を行って、毎年度多額の国庫補助金を交付している。
そこで、このような学校法人が実施した本件補助事業が適切に執行されているかなどに着眼して検査した。
北海道ほか23都府県(注2) の215学校法人271校において、11年度から16年度までに本件補助事業により整備された施設又は設備(補助対象事業費134億1582万余円、国庫補助金54億4523万余円)を対象として検査した。
検査したところ、補助事業が適切に執行されていなかった事態が、北海道ほか23都府県の121学校法人139校(補助対象事業費12億2057万余円、国庫補助金5億6071万余円)で、また、文部科学省において国庫補助金の交付決定等の手続が適切に行われていなかった事態が、北海道ほか22都府県(注3)
の198学校法人248校(補助対象事業費123億3203万余円、国庫補助金49億3730万余円)で、それぞれ見受けられた。
これらを態様別に示すと次のとおりである((1)、(2)の態様には事態が重複しているものがある。)。
(1)補助事業が適切に執行されていなかったもの(ア、ウ、エの態様には事態が重複しているものがある。)
24都道府県
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121学校法人(139校)
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補助対象事業費
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12億2057万余円
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国庫補助金
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5億6071万余円
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ア 補助の対象とならない事業等を補助の対象としていたもの
23都道府県
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62学校法人(73校)
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補助対象事業費
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3億9878万余円
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国庫補助金
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1億9073万余円
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これらは、学校法人において、補助事業年度の前年度に既に自力により事業を完了していたり、購入に当たらないリース契約等によりパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という。)等の設備を整備していたりなどしていて、補助の対象とならないのに国庫補助金の交付を受けていたものである。
A学校法人は、平成14年度にパソコン等の整備事業を補助対象事業費1455万余円(国庫補助金727万余円)で実施しており、14年4月に販売業者と契約を締結して納品を受け、検収を行い事業が完了した後、同月に支払を行ったとして実績報告書を提出し、これにより国庫補助金の交付を受けていた。
しかし、実際は、同学校法人は、上記事業のうちパソコン本体等(補助対象事業費相当額1437万余円(国庫補助金相当額718万余円))について、補助事業年度の前年度である13年12月に契約を締結し、同月及び14年1月に納品を受け、同年2月及び3月に支払を行っていて、既に自力により事業を完了していた。
イ 実績報告書の内容が実際に実施された事業の内容と異なっていて国庫補助金が過大に交付されていたもの
10道県
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12学校法人(12校)
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補助対象事業費
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1699万余円
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国庫補助金
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782万余円
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これらは、学校法人において、実際には購入していない設備の経費を実績報告書に計上していたり、実績報告書に計上した補助対象事業費よりも実際には低額で事業を実施していたりしていたのに、これを補助対象事業費に含めていたため、国庫補助金が過大に交付されていたものである。
ウ 整備された施設又は設備が文部科学大臣の承認を受けずに処分されるなどしていたもの
13都道府県
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49学校法人(52校)
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補助対象事業費
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5億3127万余円
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国庫補助金
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2億3859万余円
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これらは、学校法人において、補助事業で整備した施設又は設備を財産の処分制限期間経過前であるにもかかわらず、文部科学大臣の承認を受けずに貸し付けたり、目的外に使用したり、廃棄したりするなどしていたものである。
B学校法人は、平成11年度から14年度までにパソコン等の整備事業を補助対象事業費計7662万余円(国庫補助金計3831万余円)で実施していた。
しかし、同学校法人は、文部科学大臣の承認を受けずに、パソコン95台等を15年4月から逐次地方公共団体の一般事務用等として貸し付けたり、パソコン2台等を16年4月から専ら職員の一般事務用として目的外に使用したりしていた(補助対象事業費相当額1265万余円(国庫補助金相当額632万余円))。
エ 整備された施設又は設備が利用されていなかったもの
15都道府県
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49学校法人(56校)
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補助対象事業費
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2億9105万余円
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国庫補助金
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1億3218万余円
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これらは、学校法人において、補助事業で整備した空調機、パソコン等を、当初から利用していなかったり、授業で利用しなくなったため倉庫等に保管したまま利用していなかったりして有効活用していなかったものである。
(2)文部科学省において国庫補助金の交付決定等の手続が適切に行われていなかったもの
23都道府県
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198学校法人(248校)
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補助対象事業費
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123億3203万余円
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国庫補助金
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49億3730万余円
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これらは、文部科学省において、補助事業に係る内定通知の多くを補助事業年度末である2月又は3月に行っており、また、学校法人が内定通知に先立って事業を実施した場合にはその内容について同省の監督が及ばないのに、当該会計年度内に事業に着手していれば内定通知前に自力により事業完了等したものについても補助の対象として交付決定を行っていたものである。
C学校法人において、平成15年度にパソコン等の整備事業を実施しており、これに係る契約の締結を15年7月1日、パソコン等の納入を同月31日、検収を同年8月5日に行っていて既に自力により事業を完了していたのに、文部科学省において、本件事業を国庫補助事業として採択することとし、内定通知を16年3月24日に行い、交付決定通知を同月30日に行っていた。
このような事態が生じていたのは、次のことによると認められた。
(1)補助事業が適切に執行されていなかったものについて
ア 学校法人において、各交付要綱等に定められた補助の対象となる事業の範囲、整備された施設又は設備の適切な管理、有効活用及び財産処分の手続についての認識が十分でなかったこと
イ 都道府県において、学校法人から提出された実績報告書の審査、現地調査等が十分でなかったこと
ウ 文部科学省において、〔1〕学校法人に対し、各交付要綱等において補助の対象となる事業の範囲を示していたものの、その内容が必ずしも明確でなかったり、整備された施設又は設備の適切な管理、有効活用及び財産処分の手続についての指導が十分でなかったりしたこと、〔2〕都道府県に対し、実績報告書の審査、現地調査等を徹底するよう十分指導していなかったこと
(2)文部科学省において国庫補助金の交付決定等の手続が適切に行われていなかったものについて
文部科学省において、補助事業を適切に執行する認識が欠けていたため、国庫補助金の交付決定等の手続に当たり、長年にわたって不適切な取扱いを続けていたこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、文部科学省では、補助事業が適切に行われていなかった事態について国庫補助金の返還措置等を講ずるとともに、17年9月に都道府県に対し通知を発し、同年10月に同省主催の会議を開催するなどして同通知の周知徹底を図ることとし、もって補助事業が適切に執行等されるよう次のような処置を講じた。
(1)補助事業が適切に執行されていなかったものについて
ア 学校法人に対し、補助の対象となる事業の範囲を明確に示すとともに、補助事業により整備された施設又は設備については、善良な管理者の注意をもって適切に管理し、補助金交付の目的に従って有効活用を図り、また、これらの財産の処分を行う際には、あらかじめ文部科学大臣の承認が必要であることなどについて指導を行い、あわせて、それらの有効活用及び財産処分に係る具体的な事例を示した。
イ 都道府県に対し、実績報告書の審査、現地調査等を行う場合に必要となる確認事項を示すとともに、実際の補助事業の内容に基づいて実績報告が行われているかを十分確認するよう指導した。
(2)文部科学省において国庫補助金の交付決定等の手続が適切に行われていなかったものについて
文部科学省において、前記のとおり補助事業年度末の2月又は3月に多く行っていた内定通知を7月下旬を目途に早めるとともに、学校法人が内定通知前に自力により事業に着手している場合には、原則として国庫補助事業として採択しないこととした。