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  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 文部科学省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

国立大学法人に帰属する承継財産の数量及び価額を適正なものに是正させたもの


(3)国立大学法人に帰属する承継財産の数量及び価額を適正なものに是正させたもの

会計名 国立学校特別会計
部局等の名称 文部科学本省
承継財産の概要 国立大学法人の成立の際現に国が有する権利及び義務で国立大学法人が承継した権利及び義務のうち、権利及び義務の承継の際出資があったものとされる財産
承継財産の価額が過小になっていた件数及び金額 17,711件
237億5726万円
(28国立大学法人に帰属する承継財産)
承継財産の価額が過大になっていた件数及び金額 6,858件
166億6233万円
(27国立大学法人に帰属する承継財産)

1 制度の概要

(国立大学法人の設立)

 国立大学法人法(平成15年法律第112号。以下「法人法」という。)に基づき、平成16年4月1日、大学の教育研究に対する国民の要請にこたえるとともに、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図るため、国立大学を設置して教育研究を行う国立大学法人北海道大学ほか88国立大学法人(以下「89国立大学法人」という。)が設立された。
 これに伴い、同日、国立学校設置法(昭和24年法律第150号)が廃止され、これまでは同法の定めるところにより文部科学省の施設等機関として設置されてきた国立大学(以下「法人化前の国立大学」という。)は、国立大学法人が設置する国立大学となった。

(権利義務の承継等)

(1)国が有する権利義務の承継

 国立大学法人の成立の際現に国が有する権利及び義務のうち、各国立大学法人が行う国立大学の設置、運営等の所定の業務に関するものは、当該国立大学法人が承継するとされている。
 そして、各国立大学法人は、法人法附則第9条第1項及び国立大学法人法施行令(平成15年政令第478号。以下「施行令」という。)附則第3条の規定に基づき、次のような権利及び義務を承継した。
〔1〕 法人化前の国立大学に所属する土地、建物、立木竹、工作物、船舶及び航空機(以下「土地・建物等」という。)のうち、文部科学大臣が財務大臣に協議して各国立大学法人ごとに指定するものに関する権利及び義務
〔2〕 国立大学法人の成立の際現に法人化前の国立大学に使用されている物品のうち、文部科学大臣が指定するものに関する権利及び義務
〔3〕 国立大学法人の業務に関し国が有する権利及び義務のうち〔1〕及び〔2〕に掲げるもの以外のものであって、文部科学大臣が指定するもの以外のもの

(2)出資の対象

 各国立大学法人が上記の権利及び義務を承継したときは、当該国立大学法人に承継される権利に係る財産で施行令で定めるもの(以下「承継財産」という。)の価額の合計額から、承継される義務に係る負債で法人法及び施行令で定めるもの(以下「承継負債」という。)の価額の合計額を差し引いた額に相当する金額は、政府から当該国立大学法人に対し出資されたものとするとされている。
 そして、承継財産及び承継負債については、次のように定められている。

ア 承継財産について

〔1〕 土地・建物等のうち、文部科学大臣が財務大臣に協議して各国立大学法人ごとに指定するもの
〔2〕 法人化前の国立大学に所属する地上権、地役権及び鉱業権(以下「地上権等」という。)
〔3〕 国立大学法人の設立に伴い廃止される前の国立学校特別会計法(昭和39年法律第55号)第7条の規定による財政融資資金借入金、及び日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法(昭和62年法律第86号)第7条第6項の規定による産業投資特別会計社会資本整備勘定(以下「社会資本整備勘定」という。)から旧国立学校特別会計(以下「旧特別会計」という。)への繰入金(以下「NTT無利子貸付金」という。)を財源として整備した物品(以下「出資物品」という。)

イ 承継負債について

〔1〕 独立行政法人国立大学財務・経営センター(以下「センター」という。)が承継した旧特別会計の財政融資資金借入金債務のうち、国立大学法人がセンターに対して負担することとされる、当該国立大学法人の附属病院に係る施設及び設備の整備に要した部分として文部科学大臣が定める債務に相当する額の債務
〔2〕 社会資本整備勘定から旧特別会計へのNTT無利子貸付金の繰入れに伴って、旧特別会計から社会資本整備勘定に繰り入れるものとされた繰入金に係る負債

(承継財産の特定等に係る事務)

(1)承継財産の特定

 文部科学省は、各国立大学法人の設立に際して、当該国立大学法人へ承継する財産の特定等の事務を行うため、法人化前の国立大学に対して、〔1〕国立大学法人等に対する国有財産の承継及び現物出資要領(平成15年事務連絡)、〔2〕財政融資資金を取得財源とした附属病院に係る物品目録の作成について(照会)(平成16年事務連絡)、〔3〕改革推進公共投資施設整備費により取得した物品に係る物品目録の作成について(依頼)(平成16年事務連絡)等(以下、これらを「事務連絡等」という。)を発した。
 上記の事務連絡等を受けて、法人化前の国立大学は、土地・建物等及び地上権等については国有財産台帳と突合するなどして、また、出資物品については物品管理簿等と突合するなどして、それぞれ承継財産を特定した。そして、土地・建物等及び地上権等については承継予定財産リスト等を、また、出資物品については財政融資資金を取得財源とした附属病院に係る物品目録及び改革推進公共投資施設整備費により取得した物品に係る物品目録(以下、両者を併せて「物品目録」という。)を、それぞれ作成して文部科学省に提出した。
 文部科学大臣は上記の承継予定財産リスト等及び物品目録に登載された承継財産を各国立大学法人への承継財産として指定し、当該国立大学法人がこれらの財産を承継した。

(2)承継財産の価額の算定

 承継財産の価額は、国立大学法人の成立の日現在における時価を基準として、文部科学大臣が承継財産の価額を評価するために国立大学法人ごとに任命した評価委員が評価した価額とするとされている。この評価委員による評価のため、文部科学省は、前記の事務連絡等により、15年度において法人化前の国立大学に承継財産の時価を算定させており、その算定方法等は次のとおりとなっている。

ア 土地・建物等及び地上権等について

 法人化前の国立大学は、前記の事務連絡等により、土地・建物等及び地上権等の16年4月1日現在における時価評価を不動産鑑定士等の民間精通者に委託して行った。
 不動産鑑定士等による時価評価は、法人化前の国立大学が提供した国有財産台帳に登録されている土地・建物等及び地上権等の取得、修繕等に要した費用に基づいた価格(以下「台帳登録価格」という。)等のデータを基に、物価変動率等を用いて時点修正を行って再調達原価を求めこれを経過年数等により減価修正するなどして行われた。
 そして、法人化前の国立大学は、原則として不動産鑑定士等が鑑定した時価評価額を当該土地・建物等及び地上権等の時価とした。

イ 出資物品について

 法人化前の国立大学は、前記の事務連絡等により、物品管理簿に登録されている出資物品の、取得年月日、数量、取得価格等のデータを基にするなどして、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)に定める減価償却資産の耐用年数(以下「法定耐用年数」という。)を適用した定額法により、それぞれの出資物品について、その取得時点から承継時点までの減価償却計算を行い、減価償却後の価額をそれぞれの出資物品の時価とした。

 そして、文部科学省は、国立大学法人の設立後、承継財産の価額について評価委員の評価を受けるため、法人化前の国立大学が算定した承継財産の時価を基に、各国立大学法人ごとに承継財産の数量、価額等を記載した評価調書を作成した。
 各国立大学法人の評価委員は、上記の評価調書等に基づいて評価を行い、承継財産の価額を評価調書のとおりの金額とする評価を行った。
 この評価によると、89国立大学法人の承継財産の価額の合計額は7兆2097億8156万余円、承継負債の価額の合計額は1兆3482億1010万余円で、承継財産の価額の合計額から承継負債の価額の合計額を差し引いた額に相当する金額(以下「政府出資金の額」という。)は5兆8615億7145万余円となっている。
 そして、各国立大学法人の資本金は政府出資金の額とするとされていることから、各国立大学法人は、当該国立大学法人に対する政府出資金の額を資本金の額として登記した。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 各国立大学法人は、その設立時に国から各種の権利及び義務を承継している。このうち政府からの承継財産は、国立大学法人の業務を確実に実施するために必要な資本金その他の財産的基礎となるものである。
 そこで、89国立大学法人が国から権利の承継を受けるに当たって、承継財産に該当する土地・建物等、地上権等及び出資物品の特定は適正なものとなっているか、承継財産の価額は適正に算定されたものとなっているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 文部科学省及び国立大学法人北海道大学ほか41国立大学法人(注1) において、文部科学省及び法人化前の国立大学が行った承継財産を特定する事務について事情を聴取するとともに、承継予定財産リスト等や物品目録、並びに国有財産台帳、物品管理簿等の法定帳簿等と国立大学法人が実際に承継した土地・建物等、地上権等及び出資物品とを対照するなどして検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)土地・建物等のうち建物、工作物等について

ア 価額が過小になっているもの

 承継財産に該当する建物、工作物等を承継予定財産リスト等に記載していなかったり、また、修繕、模様替等に要した建築費及び製造費(以下「建築費等」という。)に応じて建物、工作物等の台帳登録価格を増額しなければならないのに、全く増額していなかったり、増額すべき金額を過小にしていたりなどしたため、これらに係る台帳登録価格が過小になっていた。
 上記について、適正な台帳登録価格を基に時価評価を再度行うなどして時価を修正したところ、国立大学法人北海道大学ほか18国立大学法人(注2) において、建物、工作物等の価額が37億9486万余円から675万余円過小になっており、その件数及び金額を合計すると計4,215件、167億5874万余円になっていると認められた。

イ 価額が過大になっているもの

 修繕、模様替等に要した建築費等に応じて建物及び工作物の台帳登録価格を増額する際、建築費等とは認められない経費を含めるなどしたため、これらに係る台帳登録価格が過大になっていた。また、承継予定財産リスト等に同一財産を重複して記載するなどしたため、当該財産の時価評価額が過大になっていた。
 上記について、適正な台帳登録価格を基に時価評価を再度行うなどして時価を修正したところ、国立大学法人北海道大学ほか16国立大学法人(注3) において、建物及び工作物の価額が54億8882万余円から17万余円過大になっており、その件数及び金額を合計すると計1,858件、123億3837万余円になっていると認められた。

(2)出資物品について

ア 価額が過小になっているもの

 出資物品に該当するものを物品目録に記載していなかったり、誤った法定耐用年数を適用して減価償却計算を行って時価を算定していたりなどしたため、出資物品の価額が過小になっていた。
 上記について、取得価格を基に新たに減価償却計算を行うなどして時価を修正したところ、国立大学法人弘前大学ほか17国立大学法人(注4) において、出資物品の価額が20億9630万余円から130万余円過小になっており、その件数及び金額を合計すると計13,496件、69億9852万余円になっていると認められた。

イ 価額が過大になっているもの

 出資物品に該当しないものを物品目録に記載していたり、取得年月日を取得後の他の年月日と取り違えて減価償却計算を行って時価を算定していたりなどしたため、出資物品の価額が過大になっていた。
 上記について、正しい取得年月日を基に新たに減価償却計算を行うなどして時価を修正したところ、国立大学法人弘前大学ほか20国立大学法人(注5) において、出資物品の価額が12億0777万余円から5万余円過大になっており、その件数及び金額を合計すると計5,000件、43億2395万余円になっていると認められた。

 上記(1)及び(2)の事態は、承継財産の計上漏れの有無についての検証や承継財産の時価の算定に当たっての台帳登録価格等の調査・確認が十分でなかったことなどによるもので、このため、国立大学法人北海道大学ほか27国立大学法人(注6) において承継財産の価額が計17,711件、237億5726万余円過小に、また、国立大学法人北海道大学ほか26国立大学法人(注7) において承継財産の価額が計6,858件、166億6233万余円過大になっていた。
 なお、本院の検査において判明した上記のような指摘の事態を踏まえ、文部科学省は89国立大学法人すべてについて承継予定財産リスト等及び物品目録の再確認(17年1月実施)を行い、更にその徹底を期すため再々確認(17年4月実施。以下、両者を併せて「当局の見直し」という。)を行っており、当局の見直しにより判明した過小金額5,784件、158億0086万余円及び過大金額4,785件、144億2583万余円は、上記の過小金額及び過大金額に含まれている。
 上記のように、国立大学法人に帰属する承継財産に、該当する建物、工作物、出資物品等が含まれていなかったり、承継財産の時価が過小又は過大となっていたりしていたため、承継財産の数量及び価額が適正となっていない事態が見受けられた。このような事態は、各国立大学法人に対する政府出資金の額が適正なものとなっていない結果となっているほか、各国立大学法人の財務諸表等において承継財産の価額及び資本金の額が正しく表示されず、ひいては当該国立大学法人の財政状況が国民等に正確に報告されないことになるので、是正の要があると認められた。

3 当局が講じた是正の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、文部科学省では、次のような処置を講じた。
ア 本院の検査における指摘を踏まえ、前記のように当局の見直しを行った。
 その結果、本院の指摘以外の誤りも判明しており、これと前記の本院の指摘により判明した誤りとの件数及び金額を合計すると、国立大学法人北海道大学ほか83国立大学法人(注8) (以下「84国立大学法人」という。)において、承継財産の価額が計38,968件、434億5530万余円過小に、また、計15,299件、263億0275万余円過大になっていて、これらの承継財産の数量及び価額に係る誤りを修正して適正なものとした。
イ アの修正した数量及び価額を基に評価調書を作成し、17年6月、各国立大学法人の評価委員により当該国立大学法人に帰属する承継財産の価額を評価調書のとおりの金額とする再評価を受けた。
ウ イの各国立大学法人の評価委員により再評価を受けた承継財産の価額及びこれに基づき修正した政府出資金の額を、当該国立大学法人に通知した。
 なお、84国立大学法人は、上記の通知を受け、承継財産に係る資産計上額及び資本金の額を適正な額に修正して財務諸表等において表示するとともに資本金の更正登記を行った。

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