会計名及び科目 | 一般会計 | (組織) | 厚生労働本省 | (項)職業転換対策事業費 | ||
(組織) | 都道府県労働局 | (項)都道府県労働局 | ||||
平成11年度以前は、 | ||||||
(組織) | 労働本省 | (項)職業転換対策事業費 | ||||
(組織) | 労働保護官署 | (項)労働保護官署 | ||||
(組織) | 職業安定官署 | (項)職業安定官署 | ||||
(項)施設整備費 | ||||||
平成12年度は、 | ||||||
(組織) | 都道府県労働局 | (項)都道府県労働局 | ||||
(項)労働官署 | ||||||
(項)労働官署施設費 | ||||||
労働保険特別会計 | (労災勘定) | (項)業務取扱費 | ||||
(雇用勘定) | (項)業務取扱費 | |||||
(項)施設整備費 | ||||||
(項)雇用安定等事業費 | ||||||
(徴収勘定) | (項)業務取扱費 |
不正に支出された経費等の概要 | (1) | 物品の購入等に係る庁費等 |
(2) | 相談員等に対する謝金等 | |
(3) | 職員等に対する旅費 | |
(4) | 職員に対する超過勤務手当 | |
(5) | 協議会に対する委託費 |
不正に支出された金額 | (1) | 422,093,274円 | (平成11年度〜16年度) |
(2) | 85,747,950円 | (平成11年度〜15年度) | |
(3) | 41,587,419円 | (平成11年度〜16年度) | |
(4) | 20,383,106円 | (平成11年度〜16年度) | |
(5) | 27,720,268円 | (平成11、12両年度) | |
計 | 597,532,017円 |
1 兵庫労働局の業務の概要及び不正経理事案に係る厚生労働本省の調査等
兵庫労働局(平成11年度以前は兵庫県、兵庫労働基準局及び兵庫女性少年室。以下「兵庫局」という。)は、労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ることなどを任務としており、その一環として事業場に対する監督指導、職業紹介、職業訓練、高年齢者の雇用の確保、地域雇用開発等の業務を行っている。そして、これらの業務の実施に当たり、一般会計及び労働保険特別会計において毎年度多額の予算を執行している。
厚生労働本省(13年1月5日以前は労働本省。以下「本省」という。)では、広島労働局の不正経理を受け、他の労働局においても不正経理がないかを点検するため、16年4月から同年8月までの間、広島労働局を除く全国の46労働局に対し特定監査を実施した。
そして、本省が行った兵庫局の特定監査において、旅費に係る11年度の支出に不正が認められたほか本省の委託事業である緊急地域就職促進プロジェクト(注1)
に係る12年度の支出等にも不正があり計30,609,988円が不正に支出されていたことが判明した。本省及び兵庫局では16年8月にこの結果を公表するとともに、関係者の処分を行い、不正支出額については延滞利息を付して約4005万円を国庫に返還した。
しかし、その後の兵庫県警察本部の捜査により、兵庫局職員が収賄等の容疑で逮捕されるとともに、本省及び兵庫局が明らかにした上記の調査結果以外にも多額の不正経理が行われていたこと及び職員による個人着服等があったことが判明した。
本省では、前回の調査が不十分であったとの反省の下、16年10月、「兵庫労働局不正問題調査班」を設置し、11年度以降の関係書類を調査確認するとともに関係者から事情聴取を行い、17年7月及び8月に、その調査結果を公表した。それによると、兵庫局の不正経理は、表1のとおり、11年度から16年度までの間に、物品の購入等、施設整備、職業相談員等の非常勤職員(以下「相談員等」という。)に対する謝金・賃金(以下「謝金等」という。)、旅費及び超過勤務手当において不正又は不適正な支出が行われていて、その総額は、16年8月に公表した30,609,988円と合わせ、計589,927,779円であったとしている。
表1 本省が公表した兵庫局の不正又は不適正な支出額(平成16年8月公表分を含む)
(単位:円)
年度 | 物品の購入等及び施設整備に係る不正支出額 | 謝金等に係る不正支出額 | 旅費に係る不正支出額 | 超過勤務手当に係る不適正支出額 | 協議会の委託費に係る不正支出額 | 合計 |
11 | 22,111,099 | 31,105,201 | 9,036,946 | 3,270,282 | 3,410 | 65,526,938 |
12 | 138,020,122 (10,000,000) |
34,126,970 | 12,308,582 | 3,319,449 | 27,716,858 | 215,491,981 (10,000,000) |
13 | 162,144,019 | 15,416,148 | 9,341,528 | 3,753,343 | 0 | 190,655,038 |
14 | 60,039,726 | 3,570,271 | 2,545,473 | 4,366,763 | 0 | 70,522,233 |
15 | 37,823,298 | 1,134,592 | 1,165,740 | 4,556,207 | 0 | 44,679,837 |
16 | 1,955,010 | 0 | 33,400 | 1,063,342 | 0 | 3,051,752 |
合計 | 422,093,274 (10,000,000) |
85,353,182 | 34,431,669 | 20,329,386 | 27,720,268 | 589,927,779 (10,000,000) |
2 検査の結果
本院では、兵庫局が11年度から16年度までの間に支出した物品の購入等に係る庁費等、相談員等に対する謝金等、旅費及び超過勤務手当並びに本省が11、12両年度に委託事業として支出した緊急地域就職促進プロジェクト等の委託費を対象に、兵庫局の関係職員から事実関係を聴取したほか関係書類に基づき本省が調査した内容を確認するなどして、本省の調査結果は適正であったかなどを検査した。
また、本省の調査は、兵庫局の総務部、職業安定部及び管下の公共職業安定所(以下「安定所」という。)に係る支出を中心としていたが、本院はこのほか兵庫局の他の部局(労働基準部)及び管下の労働基準監督署(以下「監督署」という。)においても同様の不正経理が行われていないか検査した。
なお、今回の会計実地検査時点では、兵庫局が保管していた物品取得伺、見積書等が司法当局に押収されていたため、これに代わるものとして兵庫局が保有していた関係書類の写し及び本省の調査の際に業者等から徴取していた資料等により確認した。
検査したところ、不正又は不適正な支出の各項目について次のような事態となっていた。
(1)物品の購入等及び施設整備に係る不正支出
本省では、兵庫局の物品の購入等に係る庁費等、施設整備に係る施設費等の支出について、業者及び関係者から事実関係を聴取したほか関係書類により調査を行い、その結果、11年度から16年度までの間に計422,093,274円が不正に支出されたとしている。また、これらの不正経理に関与した業者が県内の事務機器販売業者等6社あったとしている。
ア 物品の購入等及び施設整備に係る不正支出の方法
兵庫局では、兵庫局職業安定部職業安定課(11年度以前は兵庫県労働部職業安定課、以下「職業安定課」という。)等の職員が直接業者から見積書を徴するなどして実質的な契約を行い、関係書類を偽造するなどして不正な支出を行っていた。
そして、不正支出のうち物品の購入等に係るものについては、業者に〔1〕実際に購入する物品の数量よりも多い数量を購入することとして代金を請求(水増取引)させたり、〔2〕実際には購入しない物品を購入することとして代金を請求(架空取引)させたりしていた。
また、施設整備に係るものについては、業者に〔1〕実際に要する経費よりも多額な経費で工事を施工することとして代金を請求(水増取引)させたり、〔2〕実際には施工しない工事を施工することとして代金を請求(架空取引)させたりしていた。
イ 物品の購入等及び施設整備に係る不正支出の態様
兵庫局では、上記により庁費等を不正に支出し、それを職員等が着服したり目的外に使用したりなどしていたが、その内容を具体的に示すと次のとおりである。
兵庫局では、業者A、B、C、D及びEの5社から物品を購入するなどの際に、水増し又は架空取引のための請求書を提出させるなどして不正に支出し、その水増し分等に相当する額を業者に預け金として積み立てていた。そして、当該預け金から現金、商品券等により計276,251,682円を労働局職員に返金させるなどして職員が着服したり目的外に使用したりしていたほか、業者も計145,841,592円を着服するなどしていた。これらによる不正支出額の業者別の内訳は、表2のとおりであり、11年度から16年度までで計422,093,274円となっている。
上記の不正支出額について、本省の調査結果では、業者の関係帳簿、関係者の供述に係る資料よりその額を確定しており、本院もそれら関係資料によりその内容が事実であることを確認した。
なお、12年度に兵庫局職員が業者Fから1000万円相当の商品券を受領しているが、本省の業者Fに対する聴取書等により確認したところ、本件について兵庫局の業者Fに対する支出との関連性を確認することはできなかった。
表2 5業者に係る不正支出額の内訳
(単位:円)
年度等 | 業者A | 業者B | 業者C | 業者D | 業者E | 合計 | ||
11 | 不正支出額 | 3,600,000 | 792,544 | 15,000,000 | 776,055 | 0 | 20,168,599 | |
職員着服等 | 3,600,000 | 792,544 | 6,000,000 | 776,055 | 0 | 11,168,599 | ||
業者着服 | 0 | 0 | 9,000,000 | 0 | 0 | 9,000,000 | ||
12 | 不正支出額 | 66,926,237 | 19,234,445 | 19,000,000 | 7,231,250 | 5,623,065 | 118,014,997 | |
職員着服等 | 40,302,542 | 16,835,247 | 7,600,000 | 4,606,250 | 5,623,065 | 74,967,104 | ||
業者着服 | 26,623,695 | 2,399,198 | 11,400,000 | 2,625,000 | 0 | 43,047,893 | ||
13 | 不正支出額 | 61,718,656 | 62,456,478 | 16,125,000 | 10,719,870 | 26,278,140 | 177,298,144 | |
職員着服等 | 37,089,914 | 46,833,790 | 6,450,000 | 10,719,870 | 26,278,140 | 127,371,714 | ||
業者着服 | 24,628,742 | 15,622,688 | 9,675,000 | 0 | 0 | 49,926,430 | ||
14 | 不正支出額 | 8,632,744 | 32,531,767 | 15,125,000 | 2,310,255 | 8,233,460 | 66,833,226 | |
職員着服等 | 5,209,006 | 19,019,767 | 6,050,000 | 630,315 | 8,233,460 | 39,142,548 | ||
業者着服 | 3,423,738 | 13,512,000 | 9,075,000 | 1,679,940 | 0 | 27,690,678 | ||
15 | 不正支出額 | 3,722,752 | 24,086,306 | 9,375,000 | 0 | 639,240 | 37,823,298 | |
職員着服等 | 2,263,011 | 15,088,956 | 3,750,000 | 0 | 639,240 | 21,741,207 | ||
業者着服 | 1,459,741 | 8,997,350 | 5,625,000 | 0 | 0 | 16,082,091 | ||
16 | 不正支出額 | 0 | 1,955,010 | 0 | 0 | 0 | 1,955,010 | |
職員着服等 | 0 | 1,860,510 | 0 | 0 | 0 | 1,860,510 | ||
業者着服 | 0 | 94,500 | 0 | 0 | 0 | 94,500 | ||
合 計 |
不正支出額 | 144,600,389 | 141,056,550 | 74,625,000 | 21,037,430 | 40,773,905 | 422,093,274 | |
職員着服等 | 88,464,473 | 100,430,814 | 29,850,000 | 16,732,490 | 40,773,905 | 276,251,682 | ||
業者着服 | 56,135,916 | 40,625,736 | 44,775,000 | 4,304,940 | 0 | 145,841,592 |
水増し及び架空取引による上記5業者に対する支出額及びこれを利用して職員等が着服したなどの不正支出額を年度別会計別に示すと表3のとおりである。
表3 物品の購入等及び施設整備に係る不正支出の内訳
(単位:件、円)
年度 | 水増し及び架空取引による5業者に対する支出額 | 労働局職員及び業者の着服額等 (不正支出額) |
|||||||||
一般会計 | 労働保険特別会計 | 合計 | |||||||||
労災勘定 | 雇用勘定 | 徴収勘定 | |||||||||
件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | ||
11 | 8 | 3,031,836 | 0 | 0 | 130 | 71,520,507 | 15 | 3,085,869 | 153 | 77,638,212 | 20,168,599 |
12 | 103 | 176,016,828 | 3 | 159,660 | 144 | 206,732,281 | 44 | 10,585,381 | 294 | 393,494,150 | 118,014,997 |
13 | 59 | 24,675,146 | 0 | 0 | 148 | 462,360,519 | 23 | 5,857,108 | 230 | 492,892,773 | 177,298,144 |
14 | 38 | 52,624,015 | 0 | 0 | 64 | 62,200,542 | 12 | 3,533,638 | 114 | 118,358,195 | 66,833,226 |
15 | 15 | 6,998,740 | 0 | 0 | 52 | 70,203,086 | 9 | 2,776,187 | 76 | 79,978,013 | 37,823,298 |
16 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 453,264 | 0 | 0 | 1 | 453,264 | 1,955,010 |
合計 | 223 | 263,346,565 | 3 | 159,660 | 539 | 873,470,199 | 103 | 25,838,183 | 868 | 1,162,814,607 | 422,093,274 |
(2)謝金等に係る不正支出
本省では、兵庫局内各課室及び管下の神戸安定所ほか16安定所(注2)
における相談員等に関する雇用の実態について、当時の関係者から聞取り調査を行い、不正な謝金等の支払が認められた安定所に相談員等としての登録があった者について書面調査により本人確認等を行った。
その結果、上記17安定所において、相談員等としての雇用の事実がないのに雇用したこととして謝金等を不正に支払っていたものが、11年度から15年度までの間に計1,056件、85,353,182円あったとしている。
これらは、相談員等に係る履歴書等の関係書類を偽造するなどの方法により、雇用した事実がないのに雇用したこととして不正に謝金等を支払っていたものである。
本院では、上記の謝金等に係る不正支出について、本省が調査した関係資料や関係者からの聞取りにより確認したところ、集計に誤り等があったことから、表4のとおり修正した。その結果、謝金等に係る不正支出額は本省の調査結果よりも394,768円多くなっている。
表4 謝金等に係る不正支出の内訳
(単位:件、円)
年度 | 一般会計 | 労働保険特別会計雇用勘定 | 合計 | |||
件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | |
11 | 151 | 10,735,500 | 219 | 20,483,200 | 370 | 31,218,700 |
12 | 107 | 7,116,000 | 294 | 27,109,800 | 401 | 34,225,800 |
13 | 58 | 2,653,500 | 145 | 12,852,400 | 203 | 15,505,900 |
14 | 33 | 1,509,750 | 24 | 2,099,400 | 57 | 3,609,150 |
15 | 24 | 1,076,400 | 1 | 112,000 | 25 | 1,188,400 |
合計 | 373 | 23,091,150 | 683 | 62,656,800 | 1,056 | 85,747,950 |
(3)旅費に係る不正支出
本省では、架空出張等により旅費を不正に支払っていないかなどについて、兵庫局内各課室の旅費担当者に対して聞取り調査を行い、不正な旅費の支払が認められた課室に在籍していた職員に対して個人面談により出張の事実確認等を行った。また、前記17安定所の職員に対しても書面調査等により出張の事実確認等を行った。
その結果、兵庫局内各課室及び前記17安定所において、出張の事実がないにもかかわらず出張したこととして旅費を不正に支払っていたものが、11年度から16年度までの間に兵庫局内各課室で1,071件、26,046,489円、17安定所で1,842件、8,385,180円、計2,913件、34,431,669円あったとしている。
本院では、上記の旅費に係る不正支出について、本省が調査した関係資料等によりその内容が事実であることを確認した。
また、本省の調査結果以外にも旅費の不正な支払がないかなどを検査したところ、宿泊せずに日帰りで出張していたにもかかわらず、宿泊付の旅費を支払っているなどの事態が、11年度から15年度までの間で計624件、7,155,750円見受けられた。
以上の結果、本院の検査で判明した事態と本省の調査結果を合計すると、旅費に係る不正支出の件数及び金額は、表5のとおり、11年度から16年度までの間で計3,537件、41,587,419円となる。
表5 旅費に係る不正支出の内訳
(単位:件、円)
年度 | 一般会計 | 労働保険特別会計 | 合計 | |||||||
労災勘定 | 雇用勘定 | 徴収勘定 | ||||||||
件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | |
11 | 224 | 3,341,524 | 0 | 0 | 304 | 5,796,442 | 183 | 1,770,680 | 711 | 10,908,646 |
12 | 139 | 1,406,800 | 15 | 262,900 | 669 | 11,102,153 | 273 | 2,008,229 | 1,096 | 14,780,082 |
13 | 113 | 1,933,505 | 1 | 13,100 | 444 | 7,389,629 | 331 | 1,991,994 | 889 | 11,328,228 |
14 | 69 | 690,356 | 0 | 0 | 213 | 1,720,623 | 161 | 682,244 | 443 | 3,093,223 |
15 | 43 | 133,950 | 0 | 0 | 255 | 833,235 | 67 | 476,655 | 365 | 1,443,840 |
16 | 0 | 0 | 0 | 0 | 33 | 33,400 | 0 | 0 | 33 | 33,400 |
合計 | 588 | 7,506,135 | 16 | 276,000 | 1,918 | 26,875,482 | 1,015 | 6,929,802 | 3,537 | 41,587,419 |
(4)謝金等及び旅費に係る不正支出によりねん出した資金のその後の状況
兵庫局内各課室及び前記17安定所において謝金等及び旅費を不正に支払ってねん出した資金のその後の状況について検査したところ、上記17安定所では、謝金等の不正な支払によりねん出した8535万余円(表4の不正支出額の合計8574万余円から源泉徴収等相当額39万余円を控除したもの)のうち3848万余円を兵庫局に移管し、残額4686万余円と旅費に係る不正支出額838万余円との合計額5525万余円を別途に経理していた。
なお、前記17安定所のうち、西宮安定所ほか7安定所(注3)
では、10年度以前にねん出した別途経理資金の11年度当初における残額が1561万余円あったことが判明したが、兵庫局内各課室や他の安定所については、10年度以前にねん出した別途経理資金を11年度に繰り越している事実を関係者の説明から確認したものの、裏付けとなる資料が十分に整っていなかったため事態を具体的に特定するに至らなかった。
(5)超過勤務手当に係る不正支出
兵庫局では、本省の指示を受け、11年度以降の兵庫局内各課室、管下の11監督署及び17安定所に在籍した職員計1,103人について、個別面談により超過勤務の実績を確認した。
その結果、兵庫局内各課室、管下の8監督署及び15安定所(注4)
において、残業の事実がないのに残業したこととして超過勤務手当を不正に支給していたものが、11年度から16年度までの間に計185件、20,329,386円あったとしている。
本院では、上記の超過勤務手当に係る不正支出について、兵庫局が調査した関係資料により内容を確認したところ、集計に誤りがあったため、表6のとおり修正した。その結果、超過勤務手当に係る不正支出額は、兵庫局の調査結果よりも53,720円多くなっている。
表6 超過勤務手当に係る不正支出の内訳
(単位:件、円)
年度 | 一般会計 | 労働保険特別会計 | 合計 | |||||||
労災勘定 | 雇用勘定 | 徴収勘定 | ||||||||
件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | |
11 | 11 | 1,195,543 | 3 | 177,929 | 7 | 1,049,124 | 6 | 844,885 | 27 | 3,267,481 |
12 | 17 | 1,589,435 | 4 | 449,982 | 5 | 945,899 | 3 | 247,668 | 29 | 3,232,984 |
13 | 16 | 1,913,878 | 6 | 514,552 | 6 | 785,957 | 3 | 538,956 | 31 | 3,753,343 |
14 | 18 | 2,555,335 | 6 | 461,095 | 9 | 1,271,623 | 1 | 187,145 | 34 | 4,475,198 |
15 | 22 | 2,305,302 | 7 | 847,524 | 10 | 1,197,192 | 2 | 240,740 | 41 | 4,590,758 |
16 | 13 | 637,169 | 0 | 0 | 8 | 243,125 | 2 | 183,048 | 23 | 1,063,342 |
合計 | 97 | 10,196,662 | 26 | 2,451,082 | 45 | 5,492,920 | 17 | 2,242,442 | 185 | 20,383,106 |
(6)協議会の委託費に係る不正支出
本省では、緊急地域就職促進プロジェクト等の委託事業を兵庫県地域雇用開発協議会に委託していたが、同協議会の事務局の職員はすべて職業安定課(12年度は職業安定部)の職員が兼務していた。
本省では、上記の委託事業に係る経理関係書類がすべて廃棄されていたことから、協議会事務局における委託事業の経理事務について、残された関係書類や当時の関係者から聞取り調査を行った。
その結果、協議会事務局の職員が委託事業に係る経理事務を行うに当たり、協議会名義の預金口座に振り込まれた委託費から不正に現金を引き出しているものなどが、11、12両年度で計33件、27,720,268円あったとしている。
本院では、上記の委託費に係る不正支出について、本省が調査した関係資料や関係者からの聞取り等により、その内容が事実であることを確認した。
上記(1)〜(6)について検査した結果、兵庫局における不正支出額の総額は表7のとおりとなった。
表7 兵庫局における不正支出額
(単位:円)
年度 | 物品の購入等及び施設整備に係る不正支出額 | 謝金等に係る不正支出額 | 旅費に係る不正支出額 | 超過勤務手当に係る不正支出額 | 協議会の委託費に係る不正支出額 | 合計 |
11 | 20,168,599 | 31,218,700 | 10,908,646 | 3,267,481 | 3,410 | 65,566,836 |
12 | 118,014,997 | 34,225,800 | 14,780,082 | 3,232,984 | 27,716,858 | 197,970,721 |
13 | 177,298,144 | 15,505,900 | 11,328,228 | 3,753,343 | 0 | 207,885,615 |
14 | 66,833,226 | 3,609,150 | 3,093,223 | 4,475,198 | 0 | 78,010,797 |
15 | 37,823,298 | 1,188,400 | 1,443,840 | 4,590,758 | 0 | 45,046,296 |
16 | 1,955,010 | 0 | 33,400 | 1,063,342 | 0 | 3,051,752 |
合計 | 422,093,274 | 85,747,950 | 41,587,419 | 20,383,106 | 27,720,268 | 597,532,017 |
(7)ねん出した資金の使途
17年7月及び8月に公表した本省の調査結果によると、不正な経理処理等によりねん出した資金5億7959万余円(注5)
の使途については、約2億1331万円相当が職員により着服されていたと考えられるほか、業者が着服したものなどが約1億4584万円あったとしている。また、残りの約2億2044万円は不正経理を行った上司等にいったん渡された上、プール金として組織で保管し、職員間の懇親費用、夜食代、慶弔費等正規に支出できないものの費用に充てていたとしている。しかし、これらについての詳細は出納に係る帳簿等が残存していなかったことなどから本院としては調査・確認することはできなかった。
上記のように、物品の購入等に係る庁費等、謝金等、旅費等を不正に支出し、これを別途に経理して職員等が着服したり目的外の用途に使用したりなどしている事態は、会計法令等に違背し、著しく不当であると認められる。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。
ア 本省において
労働局職員等に対する会計経理の適正化、公務員倫理の徹底及び綱紀の粛正保持についての指導監督が著しく欠如していたこと
イ 兵庫局において
(ア)労働局内のみならず管下の安定所等を含めた労働局全体として、会計法令等に関する遵守の意識及び公金に対する認識が著しく欠如していたこと、また、公務員としての倫理感を著しく喪失していたこと
(イ)労働局移行後も職業安定部の中だけで実質的な経理事務が行えるような組織体制となっていたため、会計経理についての相互牽制が全く機能していなかったこと
(ウ)物品の購入、施設整備等に係る検査事務が事実上行われていなかったこと
(注1) | 緊急地域就職促進プロジェクト 特に就職が困難な中高年の離職者等に対して職場体験講習等を実施することにより早期の就職促進を図ることを目的として、平成10年度から12年度までの間に、各都道府県に設置されていた雇用安定・創出対策協議会等に委託して実施された事業 |
(注2) | 神戸安定所ほか16安定所 神戸、灘、尼崎、西宮、姫路、加古川、伊丹、明石、豊岡、西脇、洲本、柏原、龍野、相生、八鹿、姫路南、西神各公共職業安定所 |
(注3) | 西宮安定所ほか7安定所 西宮、加古川、伊丹、明石、西脇、龍野、相生、八鹿各公共職業安定所 |
(注4) | 8監督署及び15安定所 神戸東、神戸西、尼崎、西宮、加古川、西脇、相生、淡路各労働基準監督署及び神戸、灘、尼崎、西宮、姫路、加古川、伊丹、明石、豊岡、西脇、洲本、柏原、龍野、八鹿、姫路南各公共職業安定所 |
(注5) | 5億7959万余円 表1の本省が公表した不正支出額計589,927,779円から超過勤務手当に係る不適正支出額20,329,386円を除き、業者Fから受領した1000万円相当の商品券を加えた額 |