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  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 役務

研究調査事業に係る委託費の支払に当たり、当該事業に要した経費に架空の消耗品費が含まれていたため、支払額が過大となっているもの


(37)研究調査事業に係る委託費の支払に当たり、当該事業に要した経費に架空の消耗品費が含まれていたため、支払額が過大となっているもの

会計名及び科目 一般会計  (組織)厚生労働本省試験研究機関
        (項)科学技術振興調整費
部局等の名称 国立感染症研究所
委託契約の概要 免疫担当細胞の腸管粘膜内発達分化機構の解明とその制御技術を開発するもの
契約の相手方 学校法人慶應義塾
契約 平成14年11月
支払 平成15年4月
支払額  8,492,000円
過大になっている支払額  5,857,376円

1 委託契約の概要

(委託契約の概要)

 国立感染症研究所(以下「感染研」という。)では、人の腸管に進入した病原微生物等を防御している腸管免疫組織の特殊性について分子・遺伝子レベルでの解明を行い、腸管粘膜免疫予防の制御に向けた技術の開発を行うことを目的として、平成14年11月に、「免疫担当細胞の腸管粘膜内発達分化機構の解明とその制御技術の開発」を課題とした研究調査事業に係る委託契約を、学校法人慶應義塾(以下「受託者」という。)との間で締結している。

(委託事業の実施)

 上記の委託契約においては、受託者は、事業計画書及び委託費所要額調書を感染研に提出し、事業計画に従って事業を行うこととされている。そして、受託者が提出した事業計画書等によると、委託事業の実施に要する経費の内訳は、実験動物等の消耗品費5,317,000円、賃金2,139,000円、一般管理費等1,036,000円、計8,492,000円となっている。

(委託費の支払)

 本件委託契約においては、委託費の支払額は、契約に定められた8,492,000円の範囲内で、委託事業の実施に要した経費の額とすることとなっている。そして、受託者は委託事業の終了後に、実績報告書、請求書及び請求内訳書を感染研に提出することとされている。
 感染研では、15年4月に、受託者から本件委託事業の実施に要した経費の額を8,492,000円とする実績報告書等の提出を受け、これに基づき委託費として同額を支払っていた。

2 検査の結果

 検査したところ、受託者は、感染研に提出した委託事業の実績報告書等において、実験用マウス等を消耗品費6,019,000円で購入したとしていた。
 しかし、実際に消耗品を購入した額は161,624円にすぎず、差額の5,857,376円については、慶應義塾大学医学部教授である本件委託事業の研究担当者が、業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより受託者に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたものである。そして、同研究担当者は、上記の架空の取引に係る消耗品費5,857,379円全額を業者に預けて別途に経理し、事業計画書等に記載されていない実験動物用飼育施設の整備費等の支払に充てていた。
 したがって、実績報告書等に計上されていた額のうち上記の5,857,376円は委託事業に要した経費とは認められず、本件委託事業に係る委託費5,857,376円が過大に支払われていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、受託者において研究担当者から提出された納品書、請求書等の検査及び確認が十分でなかったことなどにもよるが、感染研において、受託者から提出された事実と相違した実績報告書等についての検査及び確認が十分でなかったことによると認められる。