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医療費に係る国の負担が不当と認められるもの


(43)医療費に係る国の負担が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計(組織)厚生労働本省 (項)精神保健費
    (項)生活保護費
    (項)身体障害者保護費
    (項)老人医療・介護保険給付諸費
    (項)児童保護費
    (項)国民健康保険助成費
  厚生保険特別会計(健康勘定) (項)保険給付費
    (項)老人保健拠出金
    (項)退職者給付拠出金
  船員保険特別会計 (項)保険給付費
    (項)老人保健拠出金
    (項)退職者給付拠出金
部局等の名称 社会保険庁、北海道ほか28都府県  
国の負担の根拠 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、老人保健法(昭和57年法律第80号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)、児童福祉法(昭和22年法律第164号)等  
医療給付の種類 健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、老人保健法、生活保護法、身体障害者福祉法、児童福祉法等に基づく医療
実施主体 国、都道府県32、市525、特別区23、町830、村114、国民健康保険組合90、計1,615実施主体
医療機関及び薬局 医療機関235、薬局45
不適切に支払われた医療費に係る診療報酬等 入院基本料、入院基本料等加算(平成14年3月までは入院基本料加算)、調剤報酬等
不適切に支払われた医療費の件数 465,074件(平成13年度〜17年度)  
不適切に支払われた医療費の額 1,702,540,793円 (平成13年度〜17年度)
不当と認める国の負担額 927,798,223円 (平成13年度〜17年度)

1 医療給付の概要

(医療給付の種類)

 厚生労働省の医療保障制度には、老人保健制度、医療保険制度及び公費負担医療制度があり、これらの制度により次の医療給付が行われている。
ア 老人保健制度の一環として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が老人保健法に基づき、健康保険法、船員保険法、国民健康保険法等(以下「医療保険各法」という。)による被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)のうち、当該市町村の区域内に居住する老人(75歳以上の者(注1) 又は65歳以上75歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)に対して行う医療
イ 医療保険制度の一環として、医療保険各法に規定する保険者が、医療保険各法に基づき被保険者(老人を除く。)に対して行う医療
ウ 公費負担医療制度の一環として、都道府県、市町村が、生活保護法に基づき要保護者に対して行う医療、身体障害者福祉法に基づき身体障害者に対して行う医療、児童福祉法に基づき身体に障害のある児童に対して行う医療等

75歳以上の者 老人保健制度の対象年齢は、平成14年10月の老人保健法の改正により、原則として70歳以上から75歳以上に引き上げられたが、14年9月30日の時点において70歳以上である者については、その者が75歳以上の者に該当するに至った日の属する月の末日までの間は、その者を75歳以上の者とみなすこととされている。

(診療報酬又は調剤報酬)

 これらの医療給付においては、被保険者(上記ウの要保護者、身体障害者、身体に障害のある児童等を含む。以下同じ。)が医療機関で診察、治療等の診療を受け又は薬局で薬剤の支給等を受けた場合、市町村、保険者又は都道府県(以下「保険者等」という。)及び患者がこれらの費用を医療機関又は薬局(以下「医療機関等」という。)に診療報酬又は調剤報酬(以下「診療報酬等」という。)として支払う。
 診療報酬の支払の手続は、図1のとおりとなっている。

図1 診療報酬の支払の手続

図1診療報酬の支払の手続

(注)
調剤報酬の支払の手続についても同様となっている。

ア 診療等を担当した医療機関等は、診療報酬等として医療に要する費用を所定の診療点数に単価(10円)を乗じるなどして算定する。
イ 医療機関等は、上記診療報酬等のうち、患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬等(以下「医療費」という。)については、老人保健に係るものは市町村に、医療保険各法に係るものは各保険者に、また、公費負担医療制度に係るものは都道府県又は市町村に請求する。
 このうち、保険者等に対する医療費の請求は、次のように行われている。
(ア)医療機関等は、診療報酬請求書又は調剤報酬請求書(以下「請求書」という。)に診療報酬等の明細を明らかにした診療報酬明細書又は調剤報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して、これらを、国民健康保険団体連合会又は社会保険診療報酬支払基金(以下「審査支払機関」と総称する。)に毎月1回送付する。
(イ)審査支払機関は、請求書及びレセプトに基づき請求内容を審査点検した後、医療機関等ごと、保険者等ごとの請求額を算定し、その後、請求額を記載した書類と請求書及びレセプトを各保険者等に送付する。
ウ 請求を受けた保険者等は、それぞれの立場から医療費についての審査点検を行って金額等を確認の上、審査支払機関を通じて医療機関等に医療費を支払う。

(国の負担)

 保険者等が支払う医療費の負担は次のようになっている。
ア 老人保健法に係る医療費(以下「老人医療費」という。)については、老人の居住する市町村が審査支払機関を通じて支払うものであるが、この費用は国、都道府県、市町村及び保険者が以下のように負担している(図2参照)
(ア)老人保健法により、老人医療費については、原則として、国は12分の4を、都道府県及び市町村は、それぞれ12分の1ずつを負担(注2) することになっており、残りの12分の6については各保険者が拠出する老人医療費拠出金が財源となっている。
(イ)国民健康保険法により国は市町村等が保険者として拠出する老人医療費拠出金の納付に要する費用の額の一部を負担している。
(ウ)健康保険法等により国は政府管掌健康保険等の保険者として老人医療費拠出金を納付している。

平成14年10月の老人保健法の改正に伴う経過措置として、老人医療費について国、都道府県及び市町村が負担する割合の合計が3割から5割へ段階的に引き上げられることとなっており、それぞれの負担割合となるのは18年10月1日からとなっている。

図2 老人医療費の負担

図2老人医療費の負担

イ 医療保険各法に係る医療費については、国は、患者が、〔1〕政府管掌健康保険等の被保険者である場合の医療費は保険者としてその全額を、〔2〕市町村が行う国民健康保険の一般被保険者である場合の医療費は市町村が支払った額の45%(注3) を、〔3〕国民健康保険組合が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は国民健康保険組合が支払った額の47%を、それぞれ負担している。
ウ 生活保護法、身体障害者福祉法、児童福祉法等に係る医療費については、国は都道府県又は市町村が支払った医療費の4分の3又は2分の1を負担している。

平成17年4月の国民健康保険法の改正により、市町村が行う国民健康保険に係る医療費について国が負担する割合は、16年度までの50%から17年度は45%に引き下げられ、18年度以降は更に43%に引き下げられることとなっている。

2 検査結果の概要

(検査の着眼点)

 国民医療費は11年度以降毎年30兆円を超えており、このうち老人医療費は15年度では約37%を占め、高齢化が急速に進展する中でその占める割合は高くなっている。このような状況の中で医療費に対する国の負担も多額なものとなっていることから、本院では従来から老人医療費を中心に診療報酬の請求が適正に行われているかに着眼して検査を行っている。
 そして、近年では医療機関において、医師、看護師等の医療従事者が不足していて要件を満たしていなかったり、必要な各種届出を行っていなかったりしているのにこれらを満たすことが要件とされている診療報酬を請求したり、診療報酬を画一的に算定して請求したりしている不適正と認められる事態が多く見受けられる。また、昨今の医薬分業の進展に伴い増加傾向にある調剤報酬についても、算定要件を満たしていないのに請求しているなど不適正と認められる事態が多く見受けられる。そこで、本年の検査に当たっても、これらの点を中心に検査した。

(不適切な支払の事態)

 社会保険庁の29社会保険事務局(注4) 及び29都道府県(注5) において検査したところ、1,615実施主体が235医療機関及び45薬局に対して行った13年度から17年度までの間における医療費の支払について、465,074件、1,702,540,793円が適切でなく、これに対する国の負担額927,798,223円が不当と認められる。

(注4) 29社会保険事務局 北海道、青森、宮城、秋田、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、富山、石川、長野、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、奈良、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本各社会保険事務局
(注5) 29都道府県 東京都、北海道、京都、大阪両府、青森、宮城、秋田、群馬、埼玉、千葉、神奈川、富山、石川、長野、岐阜、愛知、兵庫、奈良、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本各県

 これを診療報酬等の別に整理して示すと、次のとおりである。

診療報酬等 実施主体
(医療機関等数)
不適切に支払われた医療費の件数 不適切に支払われた医療費 不当と認める国の負担額
    千円 千円
〔1〕入院基本料 千歳市ほか517市区町村等(57) 45,820 518,760 293,197
〔2〕入院基本料等加算 北見市ほか606市区町村等(43) 37,178 384,835 198,146
〔3〕在宅医療料 千歳市ほか156市区町村等(52) 12,948 162,760 83,728
〔4〕特定入院料 仙台市ほか191市区町村等(4) 7,321 155,474 79,675
〔5〕初診料・再診料 札幌市ほか264市区町村等(33) 30,478 129,401 73,206
〔6〕指導管理料 帯広市ほか75市区町村等(16) 13,526 62,644 34,099
〔7〕入院時食事療養費 さいたま市ほか83市区町村等(3) 4,136 39,741 22,322
〔8〕手術料 北佐久郡望月町ほか80市町村等(6) 241 35,454 21,167
〔9〕処置料 三郷市ほか108市区町村等(9) 4,227 23,900 11,335
〔10〕検査料等 流山市ほか534市区町村等(12) 64,026 43,990 24,472
〔1〕—〔10〕の計 1,434実施主体(235) 219,901 1,556,964 841,351
〔11〕調剤報酬 帯広市ほか440市区町村等(45) 245,173 145,576 86,446
〔1〕—〔11〕の計 1,615実施主体(280) 465,074 1,702,540 927,798

注(1)  複数の診療報酬について不適正と認められる請求があった医療機関については、最も多い診療報酬で整理した。
注(2)  計欄の実施主体数は、各診療報酬等の間で実施主体が重複することがあるため、各診療報酬等の実施主体数を合計したものとは符合しない。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。
ア 医療機関等から不適正と認められる診療報酬等の請求があったのに、これに対する実施主体及び審査支払機関の審査点検が十分でなかったこと
 特に、診療報酬請求上の各種届出についての確認が必ずしも十分でなかったこと
イ 地方社会保険事務局及び都道府県において、医療機関の医療従事者が不足していることを把握する資料があるにもかかわらずその活用が必ずしも十分でなかったこと
ウ 地方社会保険事務局及び都道府県における医療機関等に対する指導が十分でなかったこと

3 検査結果の詳細

 上記医療費の支払が適切でない事態について、診療報酬等の別に、その算定方法及び検査の結果の詳細を示すと次のとおりである。

〔1〕 入院基本料

(入院基本料の算定方法)

 入院基本料は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。この入院基本料は、看護師及び准看護師(以下「看護職員」という。)の数並びに看護補助者の数が入院患者数に対して所定の割合以上であること、看護職員の数に占める看護師の数が所定の割合以上であることなどの厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、その基準に掲げる区分に従い所定の点数を算定することとされている。
 そして、看護職員の数に占める看護師の数が所定の割合以上であることの要件を満たしていない場合であっても、別に厚生労働大臣が定めるより低い所定の割合以上である場合には所定の点数を減算して入院基本料を算定することとされている。
 また、医療機関において、医師の数が医療法(昭和23年法律第205号)に定める標準となる数(以下「標準人員」という。)に100分の60を乗じて得た数以下である場合(以下「著しい医師不足」という。)の入院基本料については、所定の減額をして算定することとされている。
 さらに、療養病棟に入院している患者の身体障害の状態等が厚生労働大臣の定める基準に適合している場合に算定する日常生活障害加算等は、患者の身体障害の状態等を評価し、これを定期的に見直すことが算定要件とされている。

(検査の結果)

 検査の結果、千歳市ほか44市町に所在する57医療機関において、入院基本料等の請求が不適正と認められるものが45,820件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 患者の身体障害の状態等の評価について定期的に見直し等を行っていないのに、日常生活障害加算等を算定していた。
イ 入院患者数に対する看護職員等の数又は看護職員の数に占める看護師の数が所定の割合以上であることの要件を満たしていないのに、高い点数の区分の入院基本料の点数を算定していた。
ウ 看護職員の数に占める看護師の数が所定の割合以上であることの要件を満たしていないのに、入院基本料の点数から所定の点数を減算することなく入院基本料を算定していた。
エ 著しい医師不足であるのに、入院基本料について所定の減額をしないで算定していた。
 このため、上記45,820件の請求に対し千歳市ほか517市区町村等が支払った医療費について518,760,676円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額293,197,842円は負担の要がなかったものである。

〔2〕 入院基本料等加算

(入院基本料等加算の算定方法)

 入院基本料等加算には、療養病棟療養環境加算、超重症児(者)入院診療加算、看護補助加算等がありそれぞれ所定の点数が定められている。
 そして、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、それぞれの届出に係る所定の点数を算定することとされている。ただし、これらの加算の多くは、医師等の数が標準人員を満たしていないなどの場合には算定できないこととされている。
 また、超重症児(者)入院診療加算等は、厚生労働大臣が定める超重症等の状態にある患者に対して算定することとされている。ただし、この加算は、一般病棟等に入院している老人の患者に対しては、算定できないこととされている。
 さらに、看護補助加算は、看護補助者の数が入院患者数に対して所定の割合以上であることなどの要件を満たす旨の地方社会保険事務局長への届出を行った場合、入院基本料の区分と看護補助者の数に応じて所定の点数を算定することとされている。
 このほか、療養病棟療養環境加算は、患者の選定に係る特別の病室に入院していて、特別の料金を徴収している患者に対しては算定できないこととされている。

(検査の結果)

 検査の結果、北見市ほか35市区町に所在する43医療機関において、入院基本料等加算等の請求が不適正と認められるものが37,178件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 医師の数が標準人員を満たしていないのに、療養病棟療養環境加算等を算定していた。
イ 一般病棟等に入院している老人の患者に対して、超重症児(者)入院診療加算等を算定していた。
ウ 看護補助者の数が入院患者数に対して所定の割合以上であることの要件を満たしていないのに、看護補助加算を算定していた。
エ 地方社会保険事務局長への届出を行っていないのに、療養病棟療養環境加算等を算定していた。
オ 患者の選定に係る特別の病室に入院していて、特別の料金を徴収している患者に対して、療養病棟療養環境加算を算定していた。
 このため、上記37,178件の請求に対し北見市ほか606市区町村等が支払った医療費について384,835,432円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額198,146,600円は負担の要がなかったものである。

〔3〕 在宅医療料

(在宅医療料の算定方法)

 在宅医療料のうち在宅患者訪問看護・指導料等は、医療機関が、居宅において療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して、看護師等を訪問させて看護又は療養上必要な指導を行った場合等に算定することとされている。また、歯科診療の訪問歯科衛生指導料は、訪問歯科診療を行った患者等に対して、歯科衛生士等が療養上必要な実地指導を行った場合に算定することとされている。ただし、介護保険の要介護被保険者等である患者に対しては、これらは算定できないこととされている。
 また、往診料及び在宅患者訪問診療料は、同一の患家で2人以上の患者を診療した場合、2人目以降の患者については算定できないこととされている。
 そして、寝たきり老人在宅総合診療料の24時間連携体制加算は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出た医療機関において所定の点数を算定することとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、千歳市ほか39市町村に所在する52医療機関において、在宅医療料等の請求が不適正と認められるものが12,948件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 介護保険の要介護被保険者等である患者に対して在宅患者訪問看護・指導料又は訪問歯科衛生指導料等を算定していた。
イ 同一患家で診療した2人目以降の患者について往診料又は在宅患者訪問診療料を算定していた。
ウ 都道府県知事への届出を行っていないのに、24時間連携体制加算を算定していた。
 このため、上記12,948件の請求に対し千歳市ほか156市区町村等が支払った医療費について162,760,467円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額83,728,309円は負担の要がなかったものである。

〔4〕 特定入院料

(特定入院料の算定方法)

 特定入院料には、精神療養病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料等があり、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、その基準に定める区分に従い所定の点数を算定することとされている。
 そして、精神療養病棟入院料等は、医師等の数が標準人員を満たしていない場合には、算定できないこととされている。
 また、回復期リハビリテーション病棟入院料等は、入院患者数に対する看護補助者の数が所定の割合以上であることの要件を満たしていない場合には、算定できないこととされている。

(検査の結果)

 検査の結果、仙台市ほか3市に所在する4医療機関において、特定入院料等の請求が不適正と認められるものが7,321件あった。その態様は次のとおりである。
ア 医師の数が標準人員を満たしていないのに、精神療養病棟入院料等を算定していた。
イ 入院患者数に対する看護補助者の数が所定の割合以上であることの要件を満たしていないのに、回復期リハビリテーション病棟入院料を算定していた。
 このため、上記7,321件の請求に対し仙台市ほか191市区町村等が支払った医療費について155,474,100円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額79,675,677円は負担の要がなかったものである。

〔5〕 初診料・再診料

(初診料・再診料の算定方法)

 初診料は、患者の傷病について医学的に初診といわれる医師の診療行為があった場合に、再診料はその後の診療行為の都度それぞれ算定することとされている。
 ただし、特別養護老人ホームほか9施設(注6) (以下「老人ホーム等」という。)に配置されている医師(以下「配置医師」という。)がこれら施設の入所者に対して行っている診療については、その診療が別途介護保険制度の介護給付等として行われているものであることから、初診料、再診料は算定できないこととされている。
 また、医療機関に老人ホーム等が併設されている場合、当該医療機関の医師が当該老人ホーム等の入所者に対して行っている診療についても、初診料、再診料は算定できないこととされている。

特別養護老人ホームほか9施設 特別養護老人ホーム、養護老人ホーム(定員111名以上の場合)、指定短期入所生活介護事業所、身体障害者更生施設(旧重度身体障害者更生援護施設)、身体障害者療護施設、救護施設(定員111名以上の場合)、知的障害者入所更生施設(定員150名以上の場合)、知的障害者入所授産施設(定員150名以上の場合)、乳児院(定員100名以上の場合)及び情緒障害児短期治療施設

(検査の結果)

 検査の結果、札幌市ほか30市町に所在する33医療機関において、初診料、再診料等の請求が不適正と認められるものが30,478件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 配置医師が特別養護老人ホーム等の入所者に対して行った診療について、初診料、再診料を算定していた。
イ 医療機関の医師が当該医療機関に併設されている特別養護老人ホームの入所者に対して行った診療について、初診料、再診料を算定していた。
 このため、上記30,478件の請求に対し札幌市ほか264市区町村等が支払った医療費について129,401,834円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額73,206,138円は負担の要がなかったものである。

〔6〕 指導管理料

(指導管理料の算定方法)

 指導管理料のうち老人慢性疾患生活指導料等は、配置医師が老人ホーム等の入所者に対して行っている診療の場合、前記〔5〕 のとおり、その診療が別途介護保険制度の介護給付等として行われているものであることから算定できないこととされている。
 また、歯科診療の老人訪問口腔指導管理料は、居宅等において療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して訪問歯科診療を行い、かつ、当該訪問歯科診療に際して、療養上必要な指導を行った場合に算定することとされている。ただし、介護保険の要介護被保険者等である患者に対しては算定できないこととされている。

(検査の結果)

 検査の結果、帯広市ほか15市に所在する16医療機関において、指導管理料等の請求が不適正と認められるものが13,526件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 配置医師が特別養護老人ホームの入所者に対して行った診療について、老人慢性疾患生活指導料等を算定していた。
イ 介護保険の要介護被保険者等である患者に対して老人訪問口腔指導管理料を算定していた。
 このため、上記13,526件の請求に対し帯広市ほか75市区町村等が支払った医療費について62,644,836円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額34,099,611円は負担の要がなかったものである。

〔7〕 入院時食事療養費

(入院時食事療養費の算定方法)

 入院時食事療養費のうち入院時食事療養(I)は、厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、食事療養を行った場合に算定することとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、さいたま市ほか2市に所在する3医療機関において、入院時食事療養費の請求が不適正と認められるものが4,136件あった。その主な態様は、地方社会保険事務局長への届出を行っていないのに、入院時食事療養(I)を算定していたものである。
 このため、上記4,136件の請求に対しさいたま市ほか83市区町村等が支払った医療費について39,741,850円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額22,322,967円は負担の要がなかったものである。

〔8〕 手術料

(手術料の算定方法)

 手術料のうち体外循環を要する手術等は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関以外の医療機関において行った場合、所定の減額をして算定することとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、小諸市ほか5市町に所在する6医療機関において、手術料等の請求が不適正と認められるものが241件あった。その主な態様は、地方社会保険事務局長への届出を行っていないのに、体外循環を要する手術等について所定の減額をしないで算定していたものである。
 このため、上記241件の請求に対し北佐久郡望月町ほか80市町村等が支払った医療費について35,454,289円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額21,167,307円は負担の要がなかったものである。

〔9〕 処置料

(処置料の算定方法)

 処置料には、一般処置料、皮膚科処置料等があり、それぞれの処置ごとに所定の点数が定められている。そして、老人ホーム等の職員が入所者に対して行った処置は、処置料として算定できないこととされている。
 また、処置に当たって薬剤を使用した場合は、薬剤の実際の使用量に基づき、その購入価格を10円で除するなどした薬剤料の点数を合算して算定することとされている。

(検査の結果)

 検査の結果、三郷市ほか8市町に所在する9医療機関において、処置料等の請求が不適正と認められるものが4,227件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 特別養護老人ホームの職員が入所者に対して行った皮膚科軟膏処置等を処置料として算定していた。
イ 人工腎臓の処置に使用される薬剤について、実際よりも多い使用量により薬剤料を算定していた。
 このため、上記4,227件の請求に対し三郷市ほか108市区町村等が支払った医療費について23,900,679円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額11,335,203円は負担の要がなかったものである。

〔10〕 検査料等

(検査料等の算定方法)

 検査料のうち検体検査料には、検体検査実施料及び検体検査判断料があり、それぞれの検査の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、患者に対して検体検査を実施し検体検査判断料を算定した場合、所定の点数に検体検査管理加算を算定することとされている。
 画像診断料には、エックス線診断料、コンピューター断層撮影診断料等があり、それぞれの種類ごとに所定の点数が定められている。そして、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、画像診断を専ら担当する常勤の医師が画像診断を行い、その結果を文書により主治医に報告した場合、所定の点数に画像診断管理加算を算定することとされている。
 注射料は、点滴注射等の注射の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、老人ホーム等の職員が入所者に対して行った注射は、注射料として算定できないこととされている。

(検査の結果)

 検査の結果、流山市ほか11市町に所在する12医療機関において、検査料等の請求が不適正と認められるものが64,026件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 地方社会保険事務局長への届出を行っていないのに、検体検査管理加算又は画像診断管理加算を算定していた。
イ 特別養護老人ホームの職員が入所者に対して行った点滴注射等を注射料として算定していた。
 このため、上記64,026件の請求に対し流山市ほか534市区町村等が支払った医療費について43,990,482円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額24,472,324円は負担の要がなかったものである。

〔11〕 調剤報酬

(調剤報酬の算定方法)

 調剤報酬のうち薬剤服用歴管理・指導料の特別指導加算は、処方された薬剤について、直接患者又はその家族等から服薬状況等の情報を収集して薬剤服用歴に記録し、これに基づき薬剤の服用等に関し必要な指導を行った場合に算定することとされている。
 また、在宅患者訪問薬剤管理指導料は、薬局において、居宅で療養を行っている患者に対して、医師の指示に基づき、薬剤師が患家を訪問して薬学的管理指導を行った場合に算定することとされている。ただし、介護保険の要介護被保険者等である患者に対しては算定できないこととされている。

(検査の結果)

 検査の結果、帯広市ほか34市区町に所在する45薬局において、調剤報酬の請求が不適正と認められるものが245,173件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 薬剤服用歴の記録に基づき薬剤の服用等に関し必要な指導を行うことなどの算定要件を満たしていないのに、特別指導加算を算定していた。
イ 介護保険の要介護被保険者等である患者に対して在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定していた。
 このため、上記245,173件の請求に対し帯広市ほか440市区町村等が支払った医療費について145,576,148円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額86,446,245円は負担の要がなかったものである。
 以上を医療機関等の所在する都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名 実施主体
(医療機関等数)
不適切に支払われた医療費の件数 不適切に支払われた医療費 不当と認める国の負担額 摘要
    千円 千円  
北海道 帯広市ほか115市区町村等(16) 44,575 52,528 29,362 〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕〔5〕〔6〕〔11〕
青森県 弘前市ほか30市町村等(4) 1,091 8,482 4,558 〔2〕〔3〕〔6〕
宮城県 仙台市ほか93市区町村等(6) 32,497 55,498 31,418 〔1〕〔4〕〔10〕〔11〕
秋田県 大館市ほか10市町等(2) 4,249 5,684 4,345 〔11〕
群馬県 沼田市ほか123市区町村等(3) 6,335 117,067 57,697 〔2〕〔4〕
埼玉県 本庄市ほか256市区町村等(30) 29,187 353,272 168,454 〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕〔5〕〔6〕〔7〕〔9〕〔11〕
千葉県 千葉市ほか246市区町村等(11) 55,760 49,185 23,027 〔1〕〔2〕〔3〕〔5〕〔10〕〔11〕
東京都 足立区ほか34市区町等(4) 1,582 14,255 9,037 〔2〕〔9〕〔11〕
神奈川県 茅ヶ崎市ほか23市区町等(10) 4,727 35,897 15,052 〔3〕〔6〕〔11〕
富山県 富山市ほか77市区町村等(11) 56,881 54,797 34,230 〔1〕〔5〕〔6〕〔10〕〔11〕
石川県 金沢市ほか22市町等(3) 2,666 16,690 9,169 〔1〕〔5〕〔9〕
長野県 長野市ほか21市町村等(6) 1,165 10,557 5,874 〔3〕〔6〕〔8〕〔10〕
岐阜県 各務原市ほか52市町等(14) 54,975 63,132 37,182 〔1〕〔2〕〔3〕〔6〕〔11〕
愛知県 知立市ほか149市町村等(13) 13,416 90,961 50,064 〔1〕〔2〕〔3〕〔5〕〔7〕〔9〕
京都府 京都市ほか8市町(8) 1,636 23,296 14,211 〔2〕〔3〕〔5〕〔6〕
大阪府 大阪市ほか75市区町村等(18) 14,828 111,001 60,802 〔1〕〔2〕〔3〕〔5〕〔9〕
兵庫県 川西市ほか92市町村等(19) 17,940 106,370 59,728 〔1〕〔3〕〔5〕〔6〕〔9〕〔11〕
奈良県 生駒市ほか100市区町村等(13) 25,281 45,553 27,068 〔1〕〔2〕〔3〕〔5〕〔11〕
岡山県 新見市ほか43市町村等(6) 16,389 24,529 15,437 〔1〕〔2〕〔3〕〔11〕
広島県 佐伯郡大柿町ほか45市町村等(3) 2,002 33,703 19,561 〔2〕
山口県 熊毛郡田布施町ほか14市町等(2) 850 2,129 1,158 〔5〕
徳島県 徳島市ほか41市町村等(11) 6,048 51,579 35,218 〔1〕〔2〕〔3〕〔5〕〔8〕〔11〕
香川県 さぬき市ほか45市町等(7) 2,135 30,018 18,754 〔2〕〔3〕〔4〕〔5〕〔8〕
愛媛県 今治市ほか41市町村等(7) 2,981 23,409 10,584 〔2〕〔3〕〔5〕〔10〕
高知県 中村市ほか54市町村等(7) 5,116 25,552 13,672 〔1〕〔2〕〔5〕〔11〕
福岡県 北九州市ほか301市区町村等(25) 44,914 204,162 116,459 〔1〕〔2〕〔3〕〔5〕〔6〕〔10〕
佐賀県 小城市ほか8市町(2) 277 4,805 2,726 〔3〕〔10〕
長崎県 西彼杵郡外海町ほか78市町等(13) 11,981 73,641 44,410 〔1〕〔2〕〔3〕〔5〕〔8〕〔10〕〔11〕
熊本県 熊本市ほか61市町村等(6) 3,590 14,777 8,526 〔2〕〔5〕〔9〕〔10〕
 計 1,615市区町村等(280) 465,074 1,702,540 927,798  

注(1)  計欄の実施主体数は、都道府県の間で実施主体が重複することがあるため、各都道府県の実施主体数を合計したものとは符合しない。
注(2)  摘要欄の〔1〕〜〔11〕は、本文の不適切な支払の事態 の診療報酬等の別に対応している。