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  • 平成16年度|
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厚生労働科学研究費補助金の経理が不当と認められるもの


(45)—(47)厚生労働科学研究費補助金の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)科学研究費
部局等の名称 厚生労働本省
補助の根拠 予算補助
補助金の交付先 3主任研究者
補助事業の概要 厚生労働科学研究の振興を促し、もって、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関し、行政施策の科学的な推進を確保し、技術水準の向上を図ることを目的とする研究事業を行うもの
上記に対する国庫補助金交付額の合計 244,200,000円 (平成14年度〜16年度)
不当と認める国庫補助金交付額 26,184,000円 (平成14年度〜16年度)

1 補助金の概要

(厚生労働科学研究費補助金の概要)

 厚生労働省は、厚生労働科学研究の振興を促し、もって、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関し、行政施策の科学的な推進を確保し、技術水準の向上を図ることを目的とする研究事業を行う研究者等に厚生労働科学研究費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。そして、補助金の交付対象となる研究事業には、化学物質リスク研究事業や免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業、難治性疾患克服研究事業などがある。

(研究組織)

 厚生労働科学研究費補助金取扱細則(平成10年厚科第256号厚生科学課長決定)等によると、研究計画の遂行に関してすべての責任を負う主任研究者が当該研究を複数の者と共同で実施する場合は、主任研究者と研究項目を分担して研究を実施する分担研究者等により研究組織を構成するものとされている。

(補助金の交付対象者等)

 厚生労働科学研究費補助金取扱規程(平成10年厚生省告示第130号。以下「取扱規程」という。)等によると、補助金は、厚生労働省の所管に属する事務を遂行するために必要と認める研究事業を行う一定の要件を満たした個人又は法人に交付することとされており、この個人に該当する者が主任研究者とされている。
 また、補助金の交付を受けた主任研究者は、交付された補助金の一部を分担研究者に配分することができることになっている。

(補助金の管理等)

 「厚生労働科学研究費補助金における事務委任について」(平成13年厚科第332号厚生科学課長決定)等によると、主任研究者及び分担研究者の補助金の管理及び経理の事務に係る負担を軽減するとともに、補助金の経理の透明化や早期執行を図る観点から、原則としてこれらの事務を主任研究者等の所属機関の長に委任し、委任された所属機関の長は、補助金の管理及び経理事務を適正に執行することなどとされている。

(補助事業の実施期間等)

 研究期間は研究事業により複数年度にわたる場合がある。しかし、補助金の交付は単年度ごととなっていることから、各年度の補助事業の実施期間は補助金交付の内定通知を研究者が受領した日から翌年の3月31日までとなり、この期間中に当該研究事業に支出した経費が補助の対象になることとされている。

(補助金の使用制限)

 取扱規程等によると、交付を受けた補助金は、その交付対象となる事業に必要な経費にのみ使用することとされており、また、当該研究計画を遂行する上で必要な一定の研究組織、研究用施設及び設備等の基盤的研究条件が最低限確保されている研究機関の研究者等を交付対象としていることから、建物等施設に関する経費等に充てることはできないこととされている。

2 検査の結果

 国立大学法人北海道大学(平成16年3月31日以前は北海道大学)ほか23大学の27研究事業を対象として検査したところ、2大学の3研究事業で研究者が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより架空の取引に係る購入代金を支払わせ、その全額を業者に預けて別途に経理するなどしていた。このため、補助金が過大に交付されていて、補助金26,184,000円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、研究者において、補助金が公金であることについての意識が著しく欠如していて、事実に基づく適正な経理を行うという基本認識が欠けていたり、補助制度を十分に理解していなかったりしていたこと、大学において、物品等の納品検査等が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを、交付先(大学)別に示すと次のとおりである。

  交付先
(大学名)
研究者
(大学名)
研究事業 年度 補助金交付額 不当と認める補助金額
          千円 千円
(45) 主任研究者(国立大学法人北海道大学) 主任研究者(国立大学法人北海道大学) 化学物質リスク 15、16 141,200 14,278

 この補助金は、国立大学法人北海道大学大学院教授を主任研究者とする上記の研究事業を対象として、平成15、16両年度に計141,200,000円が交付されたもので、当該補助金の管理は国立大学法人北海道大学に委任されている。そして、同大学では、主任研究者から、15、16両年度に、同人が総額14,280,000円で実施するよう業者に委託した血液中のダイオキシン濃度の測定業務に係る納品書、請求書等の提出を受け、その委託料を業者に支払っていた。
 しかし、主任研究者は、業者に委託した上記の測定業務が当該測定に必要な検体数が確保できていないことから実施されていないのに、業者から納品書、請求書の提出を求め、同大学にこれらを提出し測定業務に係る経費を支払わせていた。
 なお、上記の測定については17年6月の会計実地検査時においても行われていなかった。
 したがって、適正な補助対象経費に基づいて補助金の交付額を算定すると126,922,000円となり、交付額との差額計14,278,000円が過大に交付されていた。

(46) 主任研究者(国立大学法人東京医科歯科大学) 分担研究者(慶應義塾大学) 免疫アレルギー疾患予防・治療 14 28,000 6,000
(47) 主任研究者(国立大学法人東京医科歯科大学) 分担研究者(慶應義塾大学) 難治性疾患克服 15 75,000 5,906
  小計       103,000 11,906

 この補助金は、国立大学法人東京医科歯科大学(平成16年3月31日以前は東京医科歯科大学)大学院教授を主任研究者とする上記の両研究事業を対象として、14、15両年度に、計103,000,000円が交付されたものである。そして、両研究事業の分担研究者である慶應義塾大学医学部教授は、上記の補助金から、14、15両年度にそれぞれ6,000,000円の配分を受け、その管理を慶應義塾大学に委任している。

(1)免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業について

 補助金を管理している慶應義塾大学では、分担研究者から実験用マウス等を6,000,000円で購入したとする業者からの納品書、請求書等の提出を受け、その購入代金を業者に支払っていた。
 しかし、分担研究者が実験用マウス等を購入した事実はなく、実際は、分担研究者が、業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより同大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたものであり、分担研究者は6,000,000円全額を業者に預けて別途に経理していた。

(2)難治性疾患克服研究事業

 補助金を管理している慶應義塾大学では、分担研究者から実験用マウス等を6,000,000円で購入したとする業者からの納品書、請求書等の提出を受け、その購入代金を業者に支払っていた。
 しかし、実際に実験用マウス等を購入した額は94,185円にすぎず、差額の5,905,815円については、分担研究者が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより同大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたものであり、分担研究者は5,905,815円全額を業者に預けて別途に経理していた。
 そして、上記(1)及び(2)の別途に経理した補助金計11,905,815円については、分担研究者が、補助対象とならない実験動物用飼育施設を当該業者に整備させ、その整備費等の支払に充てていた。
 したがって、適正な補助対象経費に基づいて補助金の額を算定すると、(1)については22,000,000円、(2)については69,094,000円となり、その結果、交付額との差額(1)については6,000,000円、(2)については5,906,000円、計11,906,000円が過大に交付されていた。

(45)—(47) の計       244,200 26,184