会計名及び科目 | 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)国民健康保険助成費 |
部局等の名称 | 厚生労働本省(交付決定庁) |
北海道ほか15都府県(支出庁) | |
補助の根拠 | 国民健康保険法(昭和33年法律第192号) |
補助事業者 | 36国民健康保険組合(保険者) |
療養給付費補助金の概要 | 国民健康保険組合が行う国民健康保険事業の運営の安定化を図るため、被保険者に係る医療給付費に対して補助するもの |
適用除外の承認を受けていなかった者等に係る医療給付費の額 | 3億2248万円
|
(平成15年度) |
適用除外の承認を受けた場合に生ずる療養給付費補助金の開差額 | 5901万円
|
(平成15年度) |
(平成17年10月19日付け 厚生労働大臣あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
1 補助金の概要
国民健康保険は、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づき、地方公共団体である市町村(特別区を含む。)が保険者となって行うほか、都道府県知事の認可を受けた国民健康保険組合(以下「国保組合」という。)が保険者となって行うことができることとなっている。
貴省では、国民健康保険について各種の国庫助成を行っており、国保組合が行う国民健康保険に対する国庫助成としては、事業運営の安定化を図るために交付する療養給付費補助金等がある。
療養給付費補助金の交付額は、原則として、各国保組合が行う国民健康保険の被保険者の療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る被保険者の一部負担金に相当する額を控除した額及び入院時食事療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額の合算額(以下「医療給付費」という。)の100分の32に相当する額とすることとなっている。
国保組合は、同種の事業又は業務に従事する者で、当該組合が都道府県知事の認可を受けた規約において定めた地区内に住所を有する者を組合員として組織することとなっている。そして、各国保組合の規約等によると、組合員の範囲は、〔1〕各国保組合の母体団体(医師会、歯科医師会、薬剤師会、建設労働組合等)の会員である経営者、〔2〕その経営者が経営している事業所の従業員などとなっている。また、国保組合が行う国民健康保険の被保険者は、これらの組合員及びその世帯に属する者となっている。
健康保険法(大正11年法律第70号)により、常時5人以上の従業員を使用する建設、医療等の事業を行う事業所又は法人の事業所に使用される者は健康保険の適用を受けることとなっており、これらの事業所(以下「適用事業所」という。)に常時使用される者は、健康保険の被保険者となることとされている。ただし、事業所が新たに適用事業所としての要件を満たすこととなる場合、当該事業所に使用される者が、社会保険事務所等(政府管掌健康保険の保険者)に政府管掌健康保険の適用を受けないこと(以下「適用除外」という。)とする申請を行い、承認を受けた場合には、国民健康保険の被保険者となることができることとされている。
上記の適用除外の承認については、「国民健康保険組合の行う国民健康保険の被保険者に係る政府管掌健康保険の適用除外について」(昭和61年厚生省保険局国民健康保険課長、社会保険庁医療保険部健康保険課長通知)において、その取扱いが示されている。この通知によれば、健康保険法改正による昭和61年4月からの健康保険の適用拡大に伴い、従業員5人未満の法人事業所等に使用される者にも政府管掌健康保険が適用されることとなるが、国保組合が国民健康保険制度の中で長年にわたり果たしてきた機能にかんがみ、社会保険事務所等では、政府管掌健康保険の被保険者となるべき国保組合の組合員から適用除外の申請があった場合には、当該組合の組合員であることを確認した上で、これを承認して差し支えないこととされている。
そして、適用除外の申請は、従業員の分を合わせて事業主である組合員が行うこととなっている。
国保組合が行う国民健康保険に対する療養給付費補助金の補助率は、政府管掌健康保険との均衡を図る観点から、国民健康保険法等の改正により、平成9年9月1日以降国保組合の組合員となった者(以下「9年9月以降組合員」という。)のうち適用除外の承認を受けた者及びその世帯に属する国保組合の被保険者(以下、これらの者を「組合特定被保険者」という。)については、前記の100分の32ではなく、国が政府管掌健康保険に補助する率を勘案した100分の13.7(16年度からは100分の13)とすることとされている。
貴省では、「国民健康保険組合規約例について」(昭和34年厚生省保険局長通知)を各都道府県あてに発し、各国保組合が、この規約例を参考にしてそれぞれの規約を作成するよう都道府県を通じて指導している。そして、各国保組合では、規約例とおおむね同様に次のような規定を規約に設けている。
ア 組合に加入しようとする者は、前記の適用除外承認に係る事項を含め、使用される事業所名など所要の事項を記載した書面を組合に提出しなければならないこと、また、これらの事項に変更があったときも、変更後の事項を記載した書面を提出しなければならないこと
イ 国民健康保険法の規定による手続を執らないなどの組合員については、組合は過怠金を課したり、理事会の議決によって除名したりすることができること
2 本院の検査結果
国保組合の組合員のなかに、適用除外の承認を受けないまま国保組合の被保険者となっている者はないか、また、それらの者及びその世帯に属する国保組合の被保険者に係る療養給付費補助金が適切に算定されているかに着眼して、北海道ほか24都府県(注1)
の107国保組合に対して15年度に交付された療養給付費補助金について検査した。
検査に当たっては、保険医療機関台帳(注2)
や多くの国保組合が保険料の算定、納付事務に用いている事業所別の被保険者台帳等により、9年9月以降組合員が属する事業所が、法人であるか又は従業員が常時5人以上いるか、すなわち、適用事業所としての要件を満たしているかの確認を行った上で、当該組合員が適用除外の承認を受けているかの確認を行った。
検査したところ、前記の25都道府県107国保組合のうち、北海道ほか15都府県(注3)
の36国保組合において、法人でない事業所であって常時5人以上の従業員を使用している601事業所、法人である252事業所、計853事業所において、9年9月以降組合員4,109人が適用除外の承認を受けないまま国保組合に加入している事態が見受けられた。
上記の事態について、態様別に示すと次のとおりである。
〔1〕 国保組合において、事業所が適用事業所としての要件を満たしているか否かを把握していないなどのため、適用除外の承認の申請について当該事業所に勧奨していないもの
24国保組合 608事業所 3,259組合員
〔2〕 国保組合において、事業所が適用事業所としての要件を満たしていることを把握し、適用除外の承認の申請について当該事業所に勧奨しているが、事業主である組合員がその承認の手続を執っていないもの
20国保組合 245事業所 850組合員
なお、〔1〕、〔2〕の態様別分類には、重複している国保組合がある。
また、上記〔2〕の20国保組合のうち2国保組合においては、以前に規約等に基づき組合員に過怠金を課したり、除名手続に入ったりした実績があるが、現在は、上記の20国保組合のうち、適用除外の承認を受けていない組合員に対してこれらの措置を執っている国保組合はなかった。
そして、上記の36国保組合では、療養給付費補助金の算定に当たり、上記9年9月以降組合員4,109人及びその世帯に属する国保組合の被保険者を組合特定被保険者として取り扱わず、一般の被保険者として取り扱っていた。
上記9年9月以降組合員4,109人及びその世帯に属する国保組合の被保険者に係る15年度の医療給付費は3億2248万余円で、これに対する療養給付費補助金の交付額は1億0319万余円となっていた。そして、上記の医療給付費について、適用除外承認を受けた場合の補助率(100分の13.7)により療養給付費補助金の交付額を算定すると4418万余円となり、上記の既交付額1億0319万余円と比べて、5901万余円の開差が生ずることとなる。
上記のように、事業所の状況から本来は政府管掌健康保険の被保険者となるべき者が適用除外の承認を受けないまま、国民健康保険の被保険者となっているのに、国保組合が事業所の状況を把握していなかったり、把握していても事業所に対して勧奨や所要の手続を執っていなかったりしていて、これに係る療養給付費補助金を国保組合の一般の被保険者に係る補助率(100分の32)により算定しているのは適切とは認められず、改善を図る必要があると認められる。
このような事態が生じているのは、主として次のことによると認められる。
ア 都道府県、国保組合及び事業所において、本制度の趣旨を十分に理解していないこと
イ 被保険者台帳や保険医療機関台帳等により、事業所が適用事業所としての要件を満たしているか否かを確認できるのに、国保組合において、これらの活用が十分でなかったため、事業所の状況を把握していないこと
ウ 国保組合において、法令に違反した状態にある組合員に適正な手続を執るよう勧奨していないこと、また、勧奨してもこれに応じない組合員に対して、過怠金を課したり、除名したりする手続を執っていないこと
エ 貴省における都道府県に対する指導及び都道府県における国保組合に対する指導が十分でないこと
3 本院が要求する改善の処置
我が国の医療保険制度には、健康保険、国民健康保険等があるが、これらの制度が国民の信頼を得ていくためには、適正で公平な制度の運営を図る必要がある。
ついては、貴省において、健康保険の適用除外の承認に係る手続が適切に行われるよう、次のような処置を講ずる要があると認められる。
ア 都道府県、国保組合及び事業所に対して、本制度の周知徹底を図ること
イ 国保組合に対して、適用事業所としての要件を満たしているか否かの確認については、被保険者台帳や保険医療機関台帳等を活用して事業所の状況を把握するよう指導すること
ウ 適用事業所としての要件を満たしている事業所の事業主であるのに適用除外の申請をしていない事業主である組合員に対して、各国保組合において法令に則った手続を勧奨するよう指導すること、また、これに従わない場合は、組合の規約に基づいて過怠金を課したり、除名したりする手続を執るよう指導すること
(注1) | 北海道ほか24都府県 東京都、北海道、大阪府、青森、宮城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、富山、山梨、岐阜、愛知、三重、兵庫、鳥取、広島、愛媛、福岡、佐賀、熊本、大分、宮崎、沖縄各県 |
(注2) | 保険医療機関台帳 保険医療機関として指定を受けた病院等の名称(法人名)、所在地等が記載されたもの。新たに指定を受けた保険医療機関についてはその内容が公示され、この台帳に登載される。また、保険者である国保組合にも連絡される。 |
(注3) | 北海道ほか15都府県 東京都、北海道、大阪府、宮城、栃木、埼玉、千葉、岐阜、愛知、三重、兵庫、鳥取、広島、福岡、熊本、宮崎各県 |