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  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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鰻ふ化仔魚育成技術の開発等に係る委託事業の実施に当たり、委託事業の経費に架空の出張旅費を含めるなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの


(204)鰻ふ化仔魚育成技術の開発等に係る委託事業の実施に当たり、委託事業の経費に架空の出張旅費を含めるなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)水産庁 (項)水産業振興費
部局等の名称 水産庁
契約名 (1) 重要種苗対策調査委託ほか3件(平成11年度〜14年度)
  (2) 内水面漁場高度利用調査委託ほか1件(平成11、12両年度)
契約の概要 鰻ふ化仔魚育成技術の開発に係る検討委員会の開催、試験研究に必要な親鰻の手配等、鰻の資源量や生態を解明するための河川等における各種の調査等
契約の相手方 (1) 日本養鰻漁業協同組合連合会
  (2) 社団法人日本水産資源保護協会(再委託先 日本養鰻漁業協同組合連合会)
契約時期等 (1) 平成11年5月ほか 随意契約
  (2) 平成11年8月ほか 随意契約(日本養鰻漁業協同組合連合会への再委託 平成11年12月ほか 随意契約)
支払額 (1) 32,777,000円 (平成11年度〜14年度)
  (2) 82,572,000円 (平成11、12両年度)
    うち日本養鰻漁業協同組合連合会への再委託分
    7,500,000円  
  115,349,000円  
過大になっている支払額 (1) 4,973,580円 (平成11年度〜14年度)
  (2) 210,200円 (平成11、12両年度)
  5,183,780円  

1 委託事業の概要

(委託事業の概要)

 水産庁では、内水面における重要魚種である鰻及び鮎の適切な資源増大方策を確立し、もって内水面漁業及び養殖業の効率的かつ安定的な経営に資するなどのため、日本養鰻漁業協同組合連合会(以下「日鰻連」という。)、社団法人日本水産資源保護協会(以下「協会」という。)、大学、県等に各種の事業の実施を委託している。
 このうち、日鰻連に対する委託事業(以下「日鰻連委託事業」という。)の内容は、鰻ふ化仔魚の育成技術の開発のための試験方法等について検討を行う検討委員会の開催、試験研究に必要な親鰻の手配等となっている。また、協会に対する委託事業(以下「協会委託事業」という。)の内容は、鰻の資源量や生態を解明するための河川等における各種の調査等となっている。そして、協会では、協会委託事業のうち、鰻に標識を付して放流しその移動状況を調査する事業については、水産庁の承諾を得て、日鰻連に再委託している(以下、この再委託事業については「日鰻連再委託事業」という。)。

(委託費の支払手続)

 日鰻連委託事業及び協会委託事業に係る委託契約書によると、水産庁は、委託事業が終了し、日鰻連又は協会から事業の成果を記載した実績報告書の提出を受けたときは、当該委託事業が契約の内容に適合するものであるかどうかについて検査を行い、適合すると認めたときは、委託契約書に定める額を限度として委託費の支払を行うものとされている。また、日鰻連再委託事業に係る委託契約書によると、協会は、日鰻連から実績報告書の提出を受けたときは、当該委託事業が契約の内容に適合するものであるかどうかについて検査を行い、適合すると認めたときは、同じく委託契約書に定める額を限度として委託費の支払を行うものとされている。

(委託費の支払額)

 水産庁では、平成11年度から14年度まで、毎年度、日鰻連から委託契約書に定める額と同額で日鰻連委託事業を実施したとする実績報告書の提出を受け、これに基づき同額で委託費の支払を行っており、その支払額は計32,777,000円となっている。また、11、12両年度に、協会から委託契約書に定める額と同額で協会委託事業を実施したとする実績報告書の提出を受け、これに基づき同額で委託費の支払を行っており、その支払額は、計82,572,000円(そのうち、日鰻連再委託事業に係る委託費の支払額は、計7,500,000円)となっている。

2 検査の結果

 日鰻連委託事業及び協会委託事業について検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 日鰻連では、11年度から14年度までの日鰻連委託事業の実施に当たり、出張旅費として計10,859,550円を支出したとする実績報告書を水産庁に、また、11、12両年度の日鰻連再委託事業の実施に当たり、出張旅費として計1,270,140円を支出したとする実績報告書を協会にそれぞれ提出していた。
 しかし、これらの出張旅費のうち、日鰻連委託事業に係る計4,025,900円及び日鰻連再委託事業に係る計170,480円については、架空の名目により出張報告書等の関係書類を作成するなどして支出されていた。また、日鰻連委託事業に係る計947,680円及び日鰻連再委託事業に係る39,720円については、これらの事業の目的とは関係のない出張に支出されていた。
 このため、事業の実施に要した経費として実績報告書に計上されていた額のうち、日鰻連委託事業に係る計4,973,580円及び協会委託事業に係る計210,200円が過大となっていた。
 このような事態が生じていたのは、日鰻連において、事実と相違する内容の実績報告書を作成していたこと、水産庁及び協会において、実績報告書の内容に対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
 したがって、次表のとおり、日鰻連委託事業に係る適正な委託費の額は計27,803,420円、協会委託事業に係る適正な委託費の額は計82,361,800円となり、それぞれ支払額との差額計4,973,580円、計210,200円、合計5,183,780円が過大に支払われていて、不当と認められる。
 なお、水産庁では、15年度に日鰻連が実施した養鰻業振興対策事業に対して国庫補助金を交付しているが、当該国庫補助事業においても前記と同様の事態(国庫補助金過大交付額163,583円)が見受けられた。

日鰻連委託事業及び協会委託事業における過大な支払額

(単位:円)
年度
事業
委託費の支払額
適正な委託費の額
過大な支払額
11 日鰻連
3,548,000
2,118,840
1,429,160
協会
44,641,000
(3,000,000)
44,596,920
(2,955,920)
44,080
(44,080)
12 日鰻連
2,143,000
1,727,080
415,920
協会
37,931,000
(4,500,000)
37,764,880
(4,333,880)
166,120
(166,120)
13 日鰻連
14,543,000
12,870,560
1,672,440
14 日鰻連
12,543,000
11,086,940
1,456,060
日鰻連
32,777,000
27,803,420
4,973,580
協会
82,572,000
(7,500,000)
82,361,800
(7,289,800)
210,200
(210,200)
合計
115,349,000
(7,500,000)
110,165,220
(7,289,800)
5,183,780
(210,200)
注(1)  事業欄の「日鰻連」は日鰻連委託事業、「協会」は協会委託事業をそれぞれ示すものである。
注(2)  括弧内の金額は、日鰻連再委託事業に係るものである。