部局等の名称 | 九州森林管理局(平成11年2月28日以前は熊本営林局) |
国有財産の分類 | (分類)普通財産 (区分)土地 |
(分類)行政財産 (種類)企業用財産 (区分)土地 | |
検査の対象とした国有財産 | 沖縄県の区域内に所在する国有林野(平成16年度末) |
適正に整備されていない国有財産台帳に係る面積 | 普通財産 | 1346万m2 |
行政財産 | 45万m2 | |
計 | 1391万m2 | |
上記の面積に係る台帳価格 | 普通財産 | 1014万円 |
行政財産 | 50万円 | |
計 | 1064万円 | |
上記の面積に係る固定資産税課税標準額に相当する額 | 普通財産 | 1億8454万円 |
行政財産 | 314万円 | |
計 | 1億8769万円 |
(平成17年10月19日付け 林野庁長官あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を要求する。
記
1 沖縄の国有林野の概要
貴庁では、国有財産法(昭和23年法律第73号)及び国有林野の管理経営に関する法律(昭和26年法律第246号)等に基づき、国有財産である国有林野の管理及び処分を行っている。国有財産は、国の行政目的に直接使用される行政財産とそれ以外の普通財産に分類されている。そして、各森林管理局は、国有財産を適正に管理及び処分するため、国有財産の現況を把握することができるよう、上記の分類ごと及び市町村等の区域ごとに国有財産台帳を備えるとともに、国有林野を地番ごとに整理することによって国有財産台帳の内訳簿としての機能を持つ国有林野地籍台帳を備えている。
(1)復帰前の状況
戦後、沖縄(沖縄県の区域をいう。以下同じ。)にあった国有林野は、沖縄が「日本国との平和条約及び関係文書」(昭和27年条約第5号)により米国の施政下に置かれたため、米国政府の出先機関として設立された琉球列島米国民政府(以下「米国民政府」という。)の委任を受けた琉球政府(当時。以下、組織の名称変更等をしたものは当時の名称を表示している。)がその管理を行っていた。
沖縄においては、戦禍により地形が変化したり、土地台帳が焼失したりなどしていた。このために生じた所有権の問題を解決するため、米国民政府の布告等に基づき、市町村長から土地所有者に対して土地の所有権の調査を踏まえた土地所有権証明書が交付されるとともに、米国民政府により、戦前と異なる区画に新たな地番を付した土地台帳、登記簿及び公図等が作成された。しかし、国有林野の中には、所有者が不明であるなどとして、新たに作成された登記簿に沖縄県、市町村等の所有として登記されたものもあった。
(2)復帰直後の状況
沖縄は昭和47年5月に復帰した。これに伴い、沖縄の国有財産については、「沖縄の復帰に伴う国有財産の国有財産台帳への新規登録及び国有財産台帳価格の改定等の取扱いについて」(昭和47年蔵理第2721号大蔵省理財局長通達)等に基づき、各省各庁の長において、47年度中を目途として現況に基づき国有財産台帳を整備するとともに国有財産の数量及び価格を記載した調書を作成し、大蔵省理財局長に提出することとされた。これを受けて、熊本営林局では、戦前の国有財産台帳及び国有林野地籍台帳による面積と、復帰時に米国民政府から引き継いだ同政府作成の書類(以下「引継書類」という。)、土地台帳、公図等による面積の照合を行った。しかし、戦前の両台帳に登録されていた地番や面積と土地台帳及び公図の地番や面積が異なっており、期限内に戦前の地番の位置の特定や面積の確定を行い現況に基づいて両台帳を整備することが困難であったなどのため、戦前の国有財産台帳に基づき調書を作成し、提出した。
2 本院の検査結果
国有財産台帳は、国有財産の数量、価格等を記録し、国有財産を適正に経理するための帳簿であり、また、これを基に毎年度作成される国有財産増減及び現在額報告書、及び同総計算書(以下「国有財産報告書等」という。)は、国有財産の現況を国会を通じて国民に対して明らかにするという性格を有するものとされている。
一方、前記のとおり、沖縄の復帰に当たっては、現況に基づく国有財産台帳の整備が行われなかった。
そこで、平成16年度末において国有財産台帳に登録されている沖縄の国有林野に係る普通財産(国有財産台帳の面積13,465,629m2
、台帳価格10,140,718円)及び行政財産(同面積364,925,399m2
、台帳価格409,812,725円)について、復帰後の国有財産台帳の整備や国有財産の管理及び処分が適正に行われているかなどに着眼して検査した。
(1)普通財産に係る国有財産台帳の整備について
沖縄の国有林野のうち普通財産については、熊本営林局において復帰後から引き続き昭和51年3月まで国有林野地籍台帳の地番と登記簿の地番の照合調査を行ったものの、面積を確定することができなかった。このため、貴庁では、56年に国有財産の総括事務を所掌する大蔵省理財局と対応を協議し、沖縄に係る同事務を分掌する沖縄開発庁沖縄総合事務局と沖縄営林署との間で国有財産台帳の整備の方法について協議することとした。
しかし、国有財産台帳の整備に必要となる国有林野地籍台帳の地番ごとの実態調査及び関係資料の作成については、実態調査における調査事項や調査結果に基づき作成すべき関係資料の記載事項を明確にした具体的な整備方針が定められなかった。その後貴庁及び熊本営林局において対応を検討したものの、整備方針が定められなかったため、実態調査及び関係資料の作成は行われず、現在においてもなお国有財産台帳は現況に基づくものとはなっていない状況である。
そこで、本院が、国有林野地籍台帳の地番と登記簿の地番の照合が可能なものについて、登記簿等の資料に基づき、現況を調査したところ、平成16年度末現在の国有財産台帳の面積約1346万m2
に対し、登記簿上の所有者が農林水産省等となっていて国有林野と想定される土地の面積は、約468万m2
となっていた。
上記のほか、所有者を農林水産省等ではなく沖縄県、市町村として登記簿に登記されたもので、引継書類等により国有林野であると認められたものについては、登記簿上の所有者である同県又は市町村の承諾があれば、法務局に嘱託して所有者を農林水産省として登記簿に更正の登記をすることが可能であると認められる。また、国有林野地籍台帳に登録されていて登記簿に登記がないもの(いわゆる「白地」)などについても、所有者を農林水産省として所有権保存の登記をすることが可能であると認められる。
これらを踏まえ、国有林野と想定される面積を算定すると、次表のとおり、前記の面積約468万m2
に、新たに所有者を農林水産省として登記することが可能と認められる面積約326万m2
を加えても約794万m2
となり、国有財産台帳の面積に比べ、約551万m2
少ない状況となっている。
表 国有財産台帳の面積と現況の差異 | ||||||||||||||||
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上記のように、国有財産台帳の面積は国有林野と想定される現況の面積と著しく異なっており、沖縄の普通財産に係る国有財産台帳(台帳の面積13,465,629m2
、台帳価格10,140,718円。これに係る固定資産税課税標準額に相当する額(注)
は1億8454万余円。)が適正に整備されていないと認められる。
このように、国有財産台帳が適正に整備されていないため、国有財産報告書等が現況を正しく反映したものとなっていないと認められる。また、国の行政目的に直接使用されていない普通財産で現に未利用となっている土地等については、貸付け、売払い等によりその有効活用を図るべきものであるが、国有財産台帳が現況に基づき整備されず、土地の所在、面積等が不明なままではその有効活用も図ることができないこととなる。このほか、国有林野が所在する市町村に対して貴庁が交付している国有資産所在市町村交付金(以下「市町村交付金」という。)の額についても、国有財産台帳の面積に基づき算定されていることから、適正な額による交付が確保できないこととなる。
また、国有財産台帳が適正に整備されていないため、次のような事態も見受けられた。
前記のとおり、農林水産省の所有として登記されるべき土地のうち、沖縄県、市町村の所有として登記されたものについては、所有者を農林水産省として登記簿に更正の登記をすることが可能であると認められる。しかし、本院が引継書類に基づき登記簿を調査したところ、更正の登記を行わず放置されていたため、登記簿上の所有者である同県により、既に第三者に対し売り払われ、所有権移転の登記も行われているものが、3件(面積計1,937m2
、売払価格計94万余円)あった。
(2)行政財産に係る国有財産台帳の整備について
貴庁では、沖縄の国有林野のうち行政財産については、沖縄本島においては昭和49年度から10か年計画で境界位置を確認する測量を実施し、また、西表島においては49年度から52年度にかけて測量を行って隣接地との境界を確定し、61年6月に国有財産台帳を整備したとしている。
しかし、本院が平成16年度末現在における行政財産に係る国有財産台帳と国有林野地籍台帳の面積の照合を行ったところ、国有財産台帳では364,925,399m2
となっているのに対し、国有林野地籍台帳では364,474,434m2
となっていて、国有財産台帳が450,965m2
上回っており、本来一致すべき両台帳の面積が一致していない状況となっていた。
国有林野については、昭和33年の国有財産法施行細則(昭和23年大蔵省令第92号)の改正により、それまで行政財産とされていた準経営区財産は、普通財産とすることとされた。このため、熊本営林局では、復帰時にこの準経営区財産約45万m2
を行政財産に係る国有林野地籍台帳には計上しなかった。しかし、行政財産に係る国有財産台帳には誤って計上したことにより上記の不一致が生じたものであり、沖縄の行政財産に係る国有財産台帳(台帳の面積364,925,399m2
、台帳価格409,812,725円。うち上記の450,965m2
に係る台帳価格は50万余円、これに係る固定資産税課税標準額に相当する額は314万余円。)は適正に整備されていないと認められる。
国有財産台帳は、国有財産の適正な管理及び処分等に用いられる重要な帳簿である。しかし、沖縄の国有林野については、上記のように沖縄が復帰してから現在に至るまで長期にわたり国有財産台帳が適正に整備されていない。このため、国有財産報告書等が現況を正しく反映したものとなっていなかったり、普通財産について、有効活用を十分に図ることができないこととなっていたり、適正な額による市町村交付金の交付ができないこととなっていたり、誤って国以外の者から第三者に売り払われているものがあったりなどしている事態は、適正とは認められず、是正改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
ア 普通財産については、貴庁において、56年以降大蔵省(平成13年1月6日以降は財務省)理財局及び沖縄開発庁(13年1月6日以降は内閣府)沖縄総合事務局との間で国有財産台帳の整備方針について協議を行ってきたものの、長期にわたり、実態調査における調査事項や調査結果に基づき作成すべき関係資料の記載事項を明確にするなどの具体的な国有財産台帳の整備方針が定められなかったこと
イ 行政財産については、熊本営林局(11年3月1日以降は九州森林管理局)において、測量及び境界確定を行って面積を確定したものの、国有財産台帳の整備に当たり、普通財産として整理すべき面積の一部を行政財産の面積として誤って計上したこと
3 本院が要求する是正改善の処置
沖縄の国有林野については、その適正な管理及び処分等を行うため、早急に国有財産台帳の整備を行うべきものである。
しかし、戦前の土地台帳等が焼失していたり、戦禍により地形が変化していたり、土地所有権証明書が発行されていたりなどする沖縄における特殊性もあり、国有財産台帳の整備は進ちょくしてこなかった。
一方、沖縄では、地番ごとに調査、測量等を行ってその所有者、面積等を明確にするための地籍調査が、復帰前後にわたって続けられ、現在までにほぼ完了している。そして、地籍調査の成果は登記簿に反映されることとなっている。さらに、「普通財産実態調査事務の処理について」(昭和33年蔵管第1222号大蔵省管財局長通達。以下「通達」という。)において、財務省所管の普通財産に係る旧軍用財産等の実態調査の結果、対象財産の所在を確認できないときの処理方法を具体的に定めることとするなどの改正が15年2月に行われている。
ついては、貴庁において、国有財産台帳が正当な権利関係や現況の面積等に基づく適正なものとなるよう、沖縄における特殊性を考慮しつつ関係機関と十分調整して、次のような処置を講ずる要があると認められる。
ア 普通財産については、上記の通達における処理方法との整合性を図った上で、実態調査における調査事項及び作成すべき関係資料の記載事項を具体的に定めた国有財産台帳の整備方針を策定し、これに基づく実態調査を促進して、同台帳の整備を図ること
イ 行政財産については、国有財産台帳を訂正するなど、同台帳の所要の整備を速やかに行うこと