会計名及び科目 | 一般会計 (組織) | 農林水産本省 |
(項)農村整備事業費 | ||
(項)離島振興事業費 | ||
(項)北海道農村整備事業費 |
部局等の名称 | 農林水産本省、東北、関東、東海、中国四国、九州各農政局 |
補助の根拠 | 予算補助 |
補助事業者 | 北海道ほか11県(うち事業主体、福島県ほか1県) |
間接補助事業者(事業主体) | 市7、町19、村6、計32事業主体 |
補助事業 | 農業集落排水、農業集落排水緊急整備、農村総合整備モデル、農村基盤総合整備、農村活性化住環境整備 |
補助事業の概要 | 農業用用排水の水質保全、農業用用排水施設の機能維持又は農村生活環境の改善を図り、併せて公共用水域の水質保全に寄与するため、農業集落におけるし尿、生活雑排水等の汚水、汚泥等を処理する施設の整備を行うもの |
効果が十分発現していない施設 | 51施設 | |
上記の施設に係る事業費 | 20億5046万余円 | (平成元年度〜13年度) |
上記に対する国庫補助金 | 10億2713万円 |
1 事業の概要
農林水産省では、「農業集落排水事業実施要綱」(昭和58年58構改D第271号農林水産事務次官通達。以下「実施要綱」という。)等に基づき、農業用用排水の水質保全又は農村生活環境の改善を図り、併せて公共用水域の水質保全に寄与するなどのため、農業集落におけるし尿、生活雑排水等の汚水を処理する施設(以下「汚水処理施設」という。)等を整備する事業(以下「農業集落排水事業」という。)を実施している。
そして、農林水産省では、農業集落排水事業を実施する都道府県、市町村等(以下、これらを「事業主体」という。)に対して、毎年度、多額の国庫補助金を交付しており、平成元年度から16年度までの国庫補助金の予算額の累計は1兆6237億余円となっている。
農業集落排水事業の実施に当たり、事業主体は、処理区(注1)
のし尿処理の現況、施設計画の概要、汚泥処理・処分計画等を記載した事業計画を策定することとなっており、また、汚泥を農地還元する施設を整備する場合は、汚泥処理・処分計画に汚泥を農地還元することを記載することになっている。そして、汚水処理施設はこの事業計画に基づいて整備することになっている。
また、都道府県は、事業主体に対し、事業計画の作成及び事業の実施の適切かつ円滑な推進のための技術的な助言、指導、その他の援助を講ずるものとされている。
処理区の各家庭等から排出される汚水は管路施設を通じて集められ、凝集・沈殿施設、汚泥貯留槽等からなる浄化施設で汚泥と浄化した処理水に分離される。そして、分離された汚泥の循環利用の一環として農地還元するには、汚泥脱水装置や肥料化施設(汚泥乾燥施設、コンポスト(注2) 施設)(以下、これらを「肥料化施設等」という。)で肥料(脱水汚泥、乾燥汚泥、コンポスト)に再生する(図参照) 。この場合、汚泥脱水装置では汚泥を脱水させた脱水汚泥、汚泥乾燥施設では脱水汚泥を乾燥させた乾燥汚泥、コンポスト施設では脱水汚泥を発酵させたコンポストをそれぞれ製造する。
近年、農村地域における混住化の進展等、農業及び農村を取り巻く状況の変化により、農業用用排水の汚濁が進行し、農作物に生育障害が生じたり、悪臭が発生したりするなど、農業生産環境及び農村生活環境の両面に大きな問題が生じている。また、農業の有機性資源の利活用による循環型社会の構築が重要な政策課題の一つとなっていて、農業集落排水事業で整備した汚水処理施設から排出される汚泥の循環利用について、今後一層の対応が必要となっている。
このような状況を踏まえ、土地改良長期計画(平成15年10月閣議決定)において、環境への負荷の少ない循環型社会の構築に資するため、汚泥のリサイクル率を14年度実績の45%から19年度には55%まで向上させる目標を設定している。
2 検査の結果
農林水産省では、環境への負荷の少ない循環型社会の構築を図るため、汚泥の循環利用を行うための肥料化施設等を積極的に整備してきているところである。
そこで、農業集落排水事業により整備された肥料化施設等は事業計画に示されたとおりに利用されているか、また、肥料となった汚泥は循環利用されているかなどに着眼して検査した。
北海道ほか23県(注3) において、元年度以降に農業集落排水事業により整備された肥料化施設等244施設、これに係る事業費計166億7163万余円(国庫補助金計83億8120万余円)を対象として検査を実施した。
検査したところ、北海道ほか11県(注4) において整備された51施設、これに係る事業費計20億5046万余円(国庫補助金計10億2713万余円)において、補助事業の効果が発現しておらず、適切とは認められない事態が次のとおり見受けられた。
(1)循環利用を行うための肥料化施設等が稼働していないもの
20施設 事業費9億7525万余円(国庫補助金4億8953万余円)
A県では、平成9年度に、事業計画に基づき、B町C処理区の浄化施設で発生した汚泥を脱水・発酵させてコンポストを製造し、これを農地還元するためにコンポスト施設を事業費40,680,000円(国庫補助金20,340,000円)で整備し、12年4月、同町に施設を移管し供用を開始している。
しかし、同県では、同施設を整備する際に脱臭装置を設置するなどの適切な臭気対策を立てていなかったことから、13年4月に周辺住民から同施設から発生する臭気に対する苦情が寄せられた。このため、同年5月から同施設は稼働していない状況となっていた。
(2)肥料化施設等で製造された肥料が農地還元されていないもの
31施設 事業費10億7520万余円(国庫補助金5億3760万余円)
D市では、平成6年度に、事業計画に基づき、E処理区において汚泥脱水装置を事業費44,356,517円(国庫補助金22,178,258円)で整備し、10年6月に供用を開始している。
事業計画では、E処理区及び同処理区以外の3処理区に整備予定の浄化施設及び汚泥脱水装置で製造した脱水汚泥を同市内に建設予定のコンポスト施設(1施設)でコンポストにし、農家等がこれを利用することとしていた。
しかし、同市では、E処理区以外の3処理区で予定していた浄化施設等の整備を公共下水道事業や合併浄化槽の整備に変更したことから、コンポスト施設の建設は取り止めとなった。このため、E処理区の汚泥脱水装置で製造する脱水汚泥をそのまま農地還元することとしたが、これについて農家等の理解を得られず、脱水汚泥は農地還元できなくなった。そして、同市では別の民間コンポスト会社等の受け入れ先を探すなどの対策を実施しておらず、同装置の供用開始当初から、脱水汚泥は民間の処分業者により焼却され埋立処分されている状況となっていた。
以上のように、肥料化施設等を整備するために多額の国庫補助金を交付し、これが整備されたにもかかわらず、稼働していなかったり、肥料が農地還元されていなかったりなどしている事態は、汚泥のリサイクル率の向上につながらないなど事業効果が十分発現されているとは認められず、改善を図る要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 事業主体において、整備した肥料化施設等に臭気対策などの所要の対策を実施したり、製造した肥料の受け入れ先を確保したりするなど汚泥の循環利用に対する取組等が十分でなかったこと
イ 道県において、上記についての事業主体への指導、監督が十分でなかったこと
ウ 農林水産省において、事業主体及び道県に対して、肥料化施設等の効果発現に対する指導が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記に対する本院の指摘に基づき、農林水産省では、17年9月に、各地方農政局等に対して通知を発し、前記51施設の是正処置を図るとともに、事業の効果を十分発現させるために道府県に対して事業の効果的な実施と整備した施設の適正な利用に向けて、各事業主体へ次のような指導等を行わせ、その結果について地方農政局等に報告させるよう処置を講じた。
ア 肥料化施設等の実態調査を実施し、利用状況等を十分に把握すること
イ 実態調査の結果、肥料化施設等が全く稼働していなかったり、汚泥の農地還元が計画どおり実施されていなかったりした肥料化施設等については、改善計画を立案するよう指導すること
ウ 改善計画の達成が見込まれるまでの間、事業主体を適切に指導するとともに、その進ちょく状況を毎年報告すること
(注3) | 北海道ほか23県 北海道、青森、宮城、山形、福島、栃木、群馬、千葉、石川、福井、長野、岐阜、愛知、三重、滋賀、和歌山、鳥取、岡山、山口、徳島、高知、熊本、大分、鹿児島各県 |
(注4) | 北海道ほか11県 北海道、青森、宮城、福島、栃木、群馬、愛知、三重、岡山、熊本、大分、鹿児島各県 |