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  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

配合飼料用米穀の販売に当たり、政府売渡価格から控除する飼料用米販売経費を実態に合わせて算定することなどにより、経費の節減を図るよう改善させたもの


(5)配合飼料用米穀の販売に当たり、政府売渡価格から控除する飼料用米販売経費を実態に合わせて算定することなどにより、経費の節減を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 食糧管理特別会計(国内米管理勘定) (項)食糧管理収入
    (項)国内米管理費
部局等の名称 農林水産本省
配合飼料用米穀の販売の概要 政府米のうち、保管期間の長期化に伴う古米臭等により、主食用として販売することが適当でないと判断された米穀を配合飼料用米穀として買受人の指定した倉庫等まで運送し販売する業務
政府売渡価格から控除した飼料用米販売経費のうち入庫料及び荷役料 (1) 4億0323万余円 (平成15年度〜17年度)
鹿児島県出水市所在の飼料工場に係る県外から鹿児島市内の倉庫までの政府運送の経費 (2) 7320万余円 (平成15、16両年度)
上記の政府運送された米穀の政府売渡価格から控除した飼料用米販売経費   2507万余円 (平成15、16両年度)
節減できた入庫料及び荷役料 (1) 2275万円 (平成15年度〜17年度)
節減できた政府運送の経費 (2) 1106万円 (平成15、16両年度)
節減できた飼料用米販売経費   232万円 (平成15、16両年度)

1 配合飼料用米穀の概要

(配合飼料用米穀)

 農林水産省では、「平成8・9年産政府米の配合飼料用販売事務取扱要領」(平成16年15総食第665号)等に基づき、安全性の面においては問題ないものの、保管期間の長期化に伴う古米臭等により、主食用として販売することが適当でないと判断された平成8年産及び9年産の政府米32万5000tを配合飼料の原料となる配合飼料用米穀(以下「飼料用米」という。)として、16年2月から17年4月までの間に、全国農業協同組合連合会(以下「全農」という。)に販売している。そして、全農は、買い受けた飼料用米を配合飼料製造業者の組織である配合飼料団体に販売し、配合飼料団体は構成員である配合飼料製造業者に販売している。

(飼料用米の運送)

 農林水産省では、政府米の販売に当たり、政府米を保管している倉庫から、全農が配合飼料団体に売り渡すために政府米の解袋・ばら化等の荷役作業を行う倉庫等(以下「中継基地」という。)まで米穀を運送し、そこで全農に飼料用米として販売している。全農は、この中継基地から配合飼料製造業者の飼料工場に飼料用米を運送している。そして、政府米を保管している倉庫から中継基地までの運送(以下「政府運送」という。)の経費は農林水産省が負担している。
 また、農林水産省では、飼料用米の販売に当たっては、あらかじめ全農との合意によって、各飼料工場別の中継基地を選定し、これを売買契約書に定めている。

(政府売渡価格から控除する経費)

 16年2月から17年4月までの飼料用米の政府売渡価格は、農林水産省と全農で締結されている売買契約により、1t当たり15,000円から20,000円となっている。
 農林水産省では、自ら飼料用米を販売する場合に要する費用相当分として、全農が行う次の〔1〕及び〔2〕の業務に係る経費(以下、〔1〕と〔2〕の経費を合わせた額を「飼料用米販売経費」という。)の1t当たりの単価を上記の政府売渡価格から控除している。
〔1〕 中継基地に包装されたまま飼料用米をいったん入庫した後、飼料工場へ運ぶためこれをトラックの荷台等へ移動させて、そこで、包装容器を解いて飼料用米をばらにするなどの荷役作業に係る経費
〔2〕 ばらにした飼料用米を、中継基地から飼料工場まで運送する運送経費
 そして、全農は、政府売渡価格と同額で配合飼料団体に販売している。

(全農の買受代金の納付)

 全農は、政府売渡価格から1t当たりの飼料用米販売経費を差し引いた各飼料工場別の価格にそれぞれの販売数量を乗じて得た金額を合計し、この合計額に消費税及び地方消費税相当額を合わせた金額を飼料用米の買受代金として農林水産省に納付している。全農の買受代金の総額は、前記32万5000tの政府売渡価格の総額56億8922万余円から飼料用米販売経費の総額11億5189万余円を控除した45億3733万余円に、消費税及び地方消費税相当額の総額2億2686万余円を加えた47億6419万余円となっている。

2 検査の結果

(検査の着眼点及び対象)

 農林水産省では、主食用として備蓄していた政府米を保管期間の長期化に伴う古米臭等の理由により全農に飼料用米として大量に販売している。そこで、上記の飼料用米32万5000tを対象に、飼料用米の販売に当たり、政府売渡価格から控除している飼料用米販売経費は適切に算定されているか、政府運送は経済的に実施されているかなどに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、飼料用米の販売において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

(1)中継基地内における飼料用米販売経費の算定について

 飼料用米販売経費は、中継基地における作業に係る経費が6億9482万余円、中継基地から飼料工場までの運送経費が4億5706万余円、計11億5189万余円となっている。
 上記の中継基地における作業に係る経費のうち、中継基地への入庫に係る経費(以下「入庫料」という。)及び中継基地内の移動に係る経費(以下「荷役料」という。)の算定に当たっては、政府米を保管する場合に適用している「政府所有食糧及び農産物等寄託契約書」(以下「寄託契約書」という。)に準じて算定していた。その算定に当たっては、飼料用米の包装容器の種類をすべて紙袋とし、入庫料を中継基地ごとに1t当たり810円から1,100円、計2億8802万余円、荷役料を1t当たり324円から440円、計1億1520万余円とそれぞれ算定し、合計4億0323万余円としていた。
 しかし、寄託契約書によると、入庫料及び荷役料は、米穀の包装容器の種類により作業性が異なることなどから、1t当たりの料金が高価なものから順に紙袋、麻袋(樹脂袋を含む。)及びフレキシブルコンテナ詰に区分されている。
 そこで、今回販売された飼料用米の包装容器の種類を販売に関する資料等から調査したところ、実際は、紙袋が66.8%、麻袋・樹脂袋が31.5%、フレキシブルコンテナ詰が1.7%となっていた。
 また、農林水産省では、地方農政事務所等で産地、品種等のほか、包装容器についての情報も電子計算機に入力するなどして在庫管理を行っていた(以下、これらの情報を「在庫管理情報」という。)。
 したがって、飼料用米の販売に当たって、包装容器には紙袋の他により安価な麻袋等があることから、地方農政事務所等の在庫管理情報を活用して、販売対象となる飼料用米の包装容器の種類について実態を調査した上で、その種類別の割合に基づいた入庫料及び荷役料を算定すべきであると認められた。

(2)鹿児島県出水市の飼料工場に係る政府運送の経費及び飼料用米販売経費の算定について

 農林水産省では、全農が鹿児島県出水市に所在する飼料工場(以下「出水工場」という。)に運送する飼料用米5,065tについて、関東農政局ほか11地方農政局等(注) が保管する倉庫から鹿児島市内に所在する中継基地(以下「鹿児島基地」という。)までの政府運送を総額7320万余円で実施していた。また、全農の飼料用米販売経費は2507万余円となっていた。
 飼料用米の政府運送の実施状況等は次のとおりである。
〔1〕 売買契約の締結に当たり、全農との合意によって出水工場の中継基地を鹿児島基地とする。
〔2〕 飼料工場への販売数量と飼料用米を保管する倉庫の所在地などを勘案した上、関東農政局ほか11地方農政局等が保管する倉庫から鹿児島駅まで貨車輸送し、同駅からはトラックで鹿児島基地まで運送するなどして、そこで全農に販売する。
〔3〕 全農は、鹿児島基地から出水工場までトラックで運送する。
 しかし、出水工場の中継基地を鹿児島基地とせずに、熊本県八代市に所在する中継基地(以下「八代基地」という。)とすれば、八代基地の最寄りの八代駅は、鹿児島本線の鹿児島駅までの途中駅であることから政府運送の運送距離が短縮されることなどからその経費が節減できると認められた。また、全農が行う八代基地から出水工場までの運送距離も鹿児島基地からの運送距離と比べて短縮されることなどから飼料用米販売経費が節減できると認められた。

 したがって、飼料用米の販売に当たり、包装容器の種類について実態を調査せずにすべて割高な紙袋として入庫料及び荷役料を算定したり、政府運送の経費や飼料用米販売経費が経済的となるよう中継基地を選定していなかったりしている事態は適切とは認められず、改善を図る要があると認められた。

(節減できた飼料用米販売経費及び政府運送の経費)

 農林水産省が実施した飼料用米の販売に関して、次のア、イのように飼料用米販売経費及び政府運送の経費を節減できたと認められた。
ア 飼料用米の包装容器の種類の実態に応じた割合に基づいて入庫料及び荷役料を修正計算すると、入庫料2億8802万余円は2億7176万余円に、荷役料1億1520万余円は1億0871万余円となり、入庫料1625万余円、荷役料649万余円、計2275万余円が節減できたと認められた。
イ 出水工場の中継基地を八代基地として修正計算すると、政府運送の経費7320万余円は6213万余円に、飼料用米販売経費2507万余円は2275万余円となり、政府運送の経費が1106万余円、飼料用米販売経費が232万余円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、農林水産省において、次のことなどによると認められた。
(ア)飼料用米販売経費の入庫料及び荷役料の算定に当たり、地方農政事務所等が保有する在庫管理情報を活用して包装容器の種類別の割合を把握していなかったこと
(イ)売買契約の締結に当たり、政府運送の経費や飼料用米販売経費が経済的となる中継基地の検討が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、次のような処置を講じた。
(ア)飼料用米販売経費の入庫料及び荷役料の算定に当たっては、地方農政事務所等が保有している在庫管理情報を活用し、包装容器別の構成割合によって単価を作成して入庫料及び荷役料を算定することとした。そして、17年4月以降に実施している飼料用米の販売に係る契約を変更して同年10月販売分から上記の単価を適用することとした。
(イ)八代基地を出水工場の中継基地とすることについては、17年4月、契約変更の処置を講じるとともに、今後の政府運送の経費や飼料用米販売経費の算定に当たっては、経済的となる中継基地の検討を十分に行うこととした。

関東農政局ほか11地方農政局等 関東、北陸、九州各地方農政局、栃木、神奈川、新潟、富山、福井、山口、高知、佐賀、長崎各地方農政事務所