平成14年度決算検査報告参照 | |
平成15年度決算検査報告参照 |
1 本院が表示した改善の意見
農林水産省では、卸売市場の施設の規模の指標、適正な配置の目標等を定めた卸売市場整備基本方針(以下「基本方針」という。)を策定している。
そして、同省では、中央卸売市場、地方卸売市場の両卸売市場について、卸売市場施設整備費補助金交付要綱等に基づき、中央卸売市場施設整備事業及び地方卸売市場施設整備事業(以下、これらを併せて「卸売市場施設整備事業」という。)の実施に要する経費の一部を補助している。
卸売市場施設整備事業の実施に当たっては、目標年度における市場流通量の規模(以下「目標取扱量」という。)を算定し、これに基づき施設の必要規模の算定を行うこととしている。この施設の必要規模を算定する基準として、基本方針に「卸売市場施設規模算定基準」(以下「算定基準」という。)を示し、目標取扱量等を算定することとしている。さらに、この目標取扱量の算定方法については、「卸売市場の施設規模の算定基準について」(以下「基準通知」という。)に定めている。
また、基本方針によると、卸売市場の適正な配置の目標として、目標年度における取扱品目ごとに一定の目標とする取扱数量(以下「基準取扱量」という。)を定めていて、中央卸売市場の配置については、それぞれ基準取扱量に達することが見込まれることに留意して行うこととされている。
そこで、卸売市場外流通が増加傾向にあるなかで、卸売市場の取扱量は横ばいないし減少傾向にあることから、卸売市場の施設の規模は適正なものとなっているか、取扱量に応じた卸売市場の適正な配置となっているかなどについて検査したところ、目標取扱量を過大に見積もるなどしていて、必要規模を上回る施設が整備されている事態、及び目標取扱量が基準取扱量を満たしておらず、施設が適切な配置となっていない事態が見受けられた。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められた。
(ア)同省が定めている算定基準等における目標取扱量の算定に当たり、地方公共団体では行政施策の上から減少傾向の予測を立てにくく、また、算定要素として過大な推計を行っている事例が多いなど、目標取扱量が過大に算定される傾向にあること
(イ)同省では、基本方針において卸売市場の適正な配置の目標として定めた基準取扱量については、新たに卸売市場を開設する場合の基準であり、既設の卸売市場を整備する場合には適用されないとしており、その結果、同省において中央卸売市場の適切な配置についての検討が十分に行われていないこと
(ウ)算定基準が必ずしも卸売市場の実情を十分に反映するものとなっていないこと
農林水産省において、卸売市場施設整備事業について、その効率的、効果的な実施を図る要があるとして、次のとおり、農林水産大臣に対し平成15年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の意見を表示した。
(ア)同省において、卸売市場の施設整備に当たり、施設の必要規模の算定基準等を見直し、今後は、合理的、客観的に推計できる将来需要に対応した施設整備を行って、必要性が確実に見込まれる施設又は現に必要な施設を整備すること
(イ)中央卸売市場の適切な配置についても検討を十分に行うよう制度を改善すること
2 当局が講じた改善の処置
農林水産省では、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じた。
(イ)については、16年6月に改正された卸売市場法(昭和46年法律第35号)に、卸売市場の再編に必要な手続等を定めるとともに、同年10月に「第8次卸売市場整備基本方針」を公表し中央卸売市場の再編基準を示した。
(ア)については、同基本方針における算定基準において、施設の必要規模は、目標取扱量を過去の取扱数量等を基に算定することとしたが、目標取扱量等の具体的な算定方法を定める基準通知の見直しについては、卸売市場の実情の調査結果を踏まえ、改正を行うこととしていた。
そして、今回、同省では、基準通知を改正し、17年3月に都道府県等に対して通知を発し、過去の一定期間における取扱数量を基に、取扱数量の増減に影響を及ぼすと見込まれる事項を考慮して目標取扱量を算定するなど、目標取扱量等の具体的な算定方法を定めた。