会計名及び科目 | 一般会計 (組織)経済産業本省 (項)経済産業本省 |
部局等の名称 | 経済産業本省 |
補助の根拠 | 予算補助 |
補助事業者 (事業主体) |
財団法人2005年日本国際博覧会協会 |
補助事業 | 日本国際博覧会事業及び日本国際博覧会関連施設整備事業 |
補助事業の概要 | 2005年日本国際博覧会の開催に当たり、財団法人2005年日本国際博覧会協会が行う会場建設事業及び関連施設整備事業 |
検査の対象とした負担金の額 | 56億3174万余円 | (平成13年度〜15年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 26億0901万余円 |
実際の事業費の確認が適切に行われていなかった負担金の額 | (1) | 8億3839万余円 | (平成13年度〜15年度) |
実際の事業費に基づく精算が適切に行われていなかった負担金の額 | (2) | 1億3668万余円 | (平成14、15両年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | (1) | 3億9880万円 | |
(2) | 5889万円 | ||
計 | 4億5769万円 |
1 事業の概要
2005年日本国際博覧会(以下「博覧会」という。)は、平成17年3月25日から9月25日までの間に愛知県豊田市及び愛知郡長久手町に所在する長久手会場と瀬戸市に所在する瀬戸会場の2会場において、「自然の叡智」をテーマとした新しい文化・文明の創造を目指して開催されたものである。
博覧会の開催に先立ち、国は、「愛知県における国際博覧会の開催申請について」(7年12月閣議了解。以下「閣議了解」という。)に基づき、国際機関である博覧会国際事務局に対し、国際博覧会条約上の開催申請手続を進めることとし、「2005年日本国際博覧会の博覧会国際事務局に対する登録申請について」(12年9月閣議決定)に基づく博覧会国際事務局に対する登録申請(以下「登録申請」という。)において、国際博覧会の開催国の義務を果たすために必要な措置を講ずることとしている。
国は、登録申請を行うに際し、その資金計画において、会場の土木工事、公式参加者の展示施設等の建設工事等(以下「会場建設事業」という。)に要する費用等を約1350億円と見積もり、国、関係地方公共団体及び民間法人等がそれぞれ1:1:1の割合(国の負担額約450億円)で負担することとしている。
そして、経済産業省では、日本国際博覧会事業費補助金交付要綱(平成12・03・31財第46号)等に基づき、博覧会の開催者として9年10月に設立された財団法人2005年日本国際博覧会協会(以下「博覧会協会」という。)に対し、21世紀の地球社会の発展に寄与することなどを目的として、会場建設事業を対象とする日本国際博覧会事業費補助金及び博覧会開催に係る関連施設整備事業を対象とする日本国際博覧会関連施設整備費補助金(以下、これらを「補助金」という。)を交付している。
博覧会協会では、博覧会開催に伴い必要となる輸送設備や汚水処理施設等の増強・増設工事等については、地方公共団体等が博覧会の開催を前提とせずに元来計画していた公共事業などを活用することとしていることから、これらの施設整備等については、地方公共団体等に対して博覧会対応分の工事等を委託し、その費用を負担金として支払う協定を地方公共団体等と締結している。これら以外に、電気・ガス等の博覧会のために専用工事が必要になる設備についても、整備に要する費用を負担金として支払う契約を電気・ガス等事業者と締結している。
そして、経済産業省では、博覧会協会がこれらの地方公共団体等や電気・ガス等事業者に負担金を支払って実施する事業(以下「負担金事業」という。)を会場建設事業及び関連施設整備事業として補助金の交付対象としている。
補助金の交付手続については、博覧会協会は、会場建設事業等として実施する事業の内容、事業ごとに要する経費の額等を記載した交付申請書を経済産業省に提出し、これを受理した経済産業省は、交付申請書の内容を審査の上、交付決定を行い、補助金を交付することとなっている。
そして、補助事業の完了後、博覧会協会は、実施した事業の内容、事業ごとに要した経費の額等を記載した実績報告書を経済産業省に提出し、これを受理した経済産業省は、実績報告書の内容等を審査の上、交付すべき補助金の額を確定することとなっている。
2 検査の結果
博覧会は21世紀初頭の国際博覧会として国内外の高い関心を受けて開催される一方、閣議了解では、厳しい財政事情の下、会場建設費は極力圧縮したものとすることとなっている。
そこで、博覧会協会が行う補助事業が適切に行われているか、特に、負担金事業について、負担金の額の算定は適切に行われているか、また、支払が実績に基づいたものとなっているかなどに着眼して検査した。
会場建設事業が始まり、負担金事業が増加した13年度から15年度までの間に博覧会協会が支払った負担金56億3174万余円に対する補助金13年度4438万余円、14年度8億6375万余円、15年度17億0087万余円、計26億0901万余円について検査を実施した。
検査したところ、複数年度で施行される補助事業について各年度ごとの実際の事業費の確認をしていなかったり、概算額の事業費を基に算出した負担金の支払について実際の事業費に基づいた精算をしていなかったりしていたため、実績報告が適切に行われていない事態が見受けられた。
これらを態様別に示すと、次のとおりである。
(1)複数年度で施行される補助事業について各年度ごとの実際の事業費を確認していなかったもの
2負担金事業 実績報告が適切に行われていなかった負担金の額 8億3839万余円
(国庫補助金 3億9880万余円)
博覧会協会では、負担金事業として実施する輸送設備の増強工事について、当該工事の実施事業者と協定を締結し、各年度ごとの事業費に基づいた負担金を13年度から15年度までの間に計39億8981万余円支払っていた。そして、博覧会協会は、各年度終了後、実施事業者から報告された額(支払額と同額)をそのまま各年度の補助事業の実績額とし、経済産業省に対して実績報告を行っていた。
しかし、検査したところ、13年度から15年度までの間の実際の事業費は計31億5142万余円で、上記の支払額と比べて計8億3839万余円の開差が生じており、博覧会協会は、この実際の事業費を各年度の実績額とすべきであったのに、博覧会協会と実施事業者との間の事業費の精算を事業全体の終了後に行うこととしていたことなどから、これを確認しておらず、経済産業省に対する各年度の実績報告が適切に行われていなかった。
(2)概算額の事業費を基に算出した負担金の支払について実際の事業費に基づいた精算をしていなかったもの
2負担金事業 実績報告が適切に行われていなかった負担金の額 1億3668万余円
(国庫補助金 5889万余円)
博覧会協会では、負担金事業として実施する汚水処理施設の増設事業等で、事業完了前に負担金を支払うこととなっているものについて、実施事業者と協定等を締結し、実施事業者が行う施設整備等の概算の事業費計38億8006万余円を基に算出した負担金を14、15両年度に計14億0806万余円支払っており、この額で経済産業省に対して補助事業の実績報告を行っていた。
しかし、検査したところ、実際の事業費は計25億5064万余円、これに基づく適正な負担金の額は計12億7138万余円となり、上記の支払額と比べて1億3668万余円が過大となっていたのに、博覧会協会では、協定等に精算条項が付されていないことなどから、実際の事業費の確認を行わず、精算をしていなかったため、経済産業省に対する実績報告も適切に行われていなかった。
そして、(1)、(2)の事態について、経済産業省では、博覧会協会から提出された実績報告書の額と同額で各年度の補助金の額の確定等を行っていた。
このような事態が生じていたのは、次のようなことによると認められた。
ア 博覧会協会において、補助事業に対する理解が十分でなく、各年度ごとの実際の事業費に基づき実績報告を行うべきであるのに、実施事業者から報告された額を確認することなくそのまま経済産業省に実績報告を行っていたり、負担金の額を算定する基礎とした事業費が概算で算出されていることから、実際の事業費に基づく負担すべき額が変動することが十分予想されるのに、協定で精算条項を規定していなかったりなどしていたこと
イ 経済産業省において、補助事業に係る負担金の精算方法等を取扱要領等で明確に示していなかったり、博覧会協会に対する指導、監督が十分ではなかったりしていたこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、経済産業省では、17年9月に、次のような処置を講じた。
ア 博覧会協会に対して過払いとなっている補助金額の返還等を求めるとともに、通知を発し、17年度の補助事業を実施するに当たり、現地調査や実績確認が適切に行える体制を整備させ、また、検査マニュアル及びチェックリスト等を策定させ、活用することにより事業の適切な実施に役立てることとした。
イ 今後内外において開催される博覧会事業に関し、年度ごとの実際の事業費の確認及びそれに基づく実績報告を行うなど、補助事業等の適正な執行に当たっての実施要領、体制の整備等を定めた「博覧会事業に関する予算執行の適正化のための事務マニュアル」を整備した。