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  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

同一日に複数の会議に出席するなどした委員の勤務日数を適切に管理することにより、委員手当の支給を適切なものとするよう改善させたもの


(2)同一日に複数の会議に出席するなどした委員の勤務日数を適切に管理することにより、委員手当の支給を適切なものとするよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)船員労働委員会 (項)船員労働委員会
部局等の名称 国土交通本省、北海道運輸局ほか8運輸局、神戸運輸監理部(支出庁)
船員中央労働委員会、北海道船員地方労働委員会ほか9船員地方労働委員会(給与事務担当庁)
沖縄船員地方労働委員会(支出庁及び給与事務担当庁)
委員手当の概要 一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)等に基づき、非常勤の国家公務員である船員労働委員会の委員に対して勤務一日につき支給する手当
管理していた勤務日数 14,578日 (平成15、16両年度)
上記に対して支給された委員手当の額 3億7231万余円 (平成15、16両年度)
適切に管理されていなかった勤務日数 5,263日 (平成15、16両年度)
上記に対する委員手当の額 1億3613万円 (平成15、16両年度)

1 船員労働委員会の委員手当の概要

(船員労働委員会の組織)

 船員労働委員会(以下「船労委」という。)は、国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第3条の規定に基づき国土交通省に置かれる外局で、船員中央労働委員会(以下「船中労委」という。)及び北海道船員地方労働委員会ほか10船員地方労働委員会(注1) (以下「船地労委」という。)が設置されている。
 船中労委及び船地労委は、使用者を代表する者(使用者委員)、労働者を代表する者(労働者委員)及び公益を代表する者(公益委員)をもって組織する三者構成の機関となっており、船中労委においては各7人(計21人)、船地労委においては各5人(計15人)の委員(以下「本委員」という。)が所属している。また、必要に応じて船労委に置かれる最低賃金専門部会等については、専門の事項を調査審議させるなどのための委員(以下「専門委員」という。)を置くこととされ、これらの本委員及び専門委員は、国土交通大臣がそれぞれ任命することとなっている。
 そして、船中労委及び船地労委には、その事務を整理させるため、事務局(以下、それぞれ「船中労委事務局」及び「船地労委事務局」という。)が置かれている。

(船員労働委員会の委員の業務)

 船労委は、労働組合法(昭和24年法律第174号)等に基づき、船員に係る労働紛争の解決のための調査・調整等の事務と、国土交通大臣及び地方運輸局長等の諮問機関としての船員の労働条件等に関する調査審議等の事務を担当している。そして、船労委の委員は、これらの事務を行うため、船員労働委員会規則(平成16年船員中央労働委員会規則第2号)に規定される総会ほか9種類の会議(注2) に出席したり、船員の労働争議のあっせんなどの会議によらない業務(以下「関連業務」という。)に従事したりして、その職務を遂行している。

(船員労働委員会の委員手当)

 船労委の委員は、国家公務員法(昭和22年法律第120号)等により、国家公務員の身分を有する非常勤職員となっており、その給与については、一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)等に基づき、勤務一日につき、所定の手当を支給することとなっている。この場合において、一日についての勤務時間は特に定められていない。そして、船労委の委員に対する一日当たりの手当額は、平成15年11月以降では19,700円から37,900円(15年4月から10月までの間は19,900円から38,400円)となっている。

(委員手当の支給事務)

 船中労委の委員に対する手当の支給に当たっては、給与事務を担当している船中労委事務局が、委員の勤務日数を管理して給与簿等を作成し、会計事務を担当している国土交通本省が、当該給与簿等に基づき委員手当を支給している。また、船地労委の委員に対する手当の支給に当たっては、給与事務を担当している船地労委事務局が、委員の勤務日数を管理して給与簿等を作成し、会計事務を担当している北海道運輸局ほか9運輸局等(注3) 及び沖縄船地労委が、当該給与簿等に基づき委員手当を支給している。

2 検査の結果

(検査の着眼点及び対象)

 船労委の委員は、一日についての勤務時間が定められているものではないことにかんがみ、委員手当の支給が適切に行われているかに着眼し、15、16両年度に、船中労委及び船地労委の委員(延べ644人)に支給した委員手当3億7231万余円(延べ14,578日分)を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、船労委では、多忙である各委員の出席率を高めるなどのため、同一日に複数の会議を開催していて、同一の委員が同一日に複数の会議に出席したり、会議に出席した日に関連業務にも従事したりなどしている状況が多く見受けられた。そして、このような場合に、船中労委事務局及び船地労委事務局では、一つの会議に出席したり関連業務に従事したりするごとに、それぞれ独立した別の職務に従事したものと解釈して、それぞれにつき勤務一日として当該委員の勤務日数を管理していた。このため、当該委員には、一日の勤務に対して出席した会議の数と関連業務に従事した数に応じた日数分の委員手当が支給されていた。
 しかし、委員の勤務日数を上記のように管理していることは、本委員と最低賃金専門部会の専門委員のように任命を別途に受けて二つの官職に就く委員が、同一日にそれぞれの官職の立場によって二種類の会議に出席するなどした場合は別として、次の理由により、適切でないと認められた。
〔1〕 委員が各会議に出席することや関連業務に従事することは、船労委の委員としての職務の範囲内にあること
〔2〕 船労委における委員手当は、船労委の委員として勤務した一日につき支給する手当であること
 したがって、委員が同一の官職の立場の場合は、同一日に複数の会議に出席したり関連業務に従事したりしたとしても、勤務一日として、委員の勤務日数を管理する要があると認められた。

(適切に管理されていなかった勤務日数に係る委員手当の額)

 上記の方法により委員の勤務日数を管理し、支給すべき委員手当の額を算定すると、15、16両年度における委員の勤務日数は延べ9,315日、これに対する委員手当の額は2億3617万余円となる。したがって、船中労委事務局及び船地労委事務局が管理していた前記の勤務日数は延べ5,263日が適切に管理されておらず、これに対する委員手当1億3613万余円の支給が適切を欠いていたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、船中労委事務局及び船地労委事務局において、船労委における委員手当が船労委の委員として勤務した一日につき支給される手当であることについての認識が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、船中労委事務局では、17年8月に、各船地労委事務局に対して通知を発し、同年9月以降、船労委において、委員が同一の官職の立場によって同一日に複数の会議に出席するなどした場合、当該委員の勤務日数は一日として管理するよう取り扱う処置を講じた。

(注1) 北海道船員地方労働委員会ほか10船員地方労働委員会 北海道、東北、関東、北陸信越、中部、近畿、神戸、中国、四国、九州、沖縄各船員地方労働委員会
(注2) 総会ほか9種類の会議 総会、公益委員会、公益委員分科会、調停委員会、仲裁委員会、女子船員調停委員会、最低賃金専門部会、船員職業安定部会、船員労働基準審議会、小委員会
(注3) 北海道運輸局ほか9運輸局等 北海道、東北、関東、北陸信越、中部、近畿、中国、四国、九州各運輸局及び神戸運輸監理部