会計名及び科目 | 道路整備特別会計 | (項)道路事業費 | |
(項)離島道路事業費 | |||
(項)道路環境整備事業費 | |||
(項)地方道路整備臨時交付金 |
部局等の名称 | 岩手県ほか17府県 |
補助の根拠 | 道路法(昭和27年法律第180号)、道路整備費の財源等の特例に関する法律(昭和33年法律第34号)等 |
補助事業者(事業主体) | 岩手県ほか17府県 |
工事の概要 | 鋼製又はコンクリート製の桁等の製作・架設を行う工事 |
工事費 | 500億9755万余円 | (平成15、16両年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 260億1854万余円 | |
支承材料費の積算額 | 45億2391万余円 | (442種類2,981個) |
上記の支承のうち特別調査単価を仮定することができた支承材料費 | 41億7717万余円 | (423種類2,875個) |
推計した特別調査単価による支承材料費 | 29億1021万余円 | |
支承材料費の開差額 | 12億6690万円 | |
上記に対する国庫補助金相当額 | 6億5410万円 |
1 工事の概要
国土交通省では、道路交通の安全確保とその円滑化を図ることを目的として道路整備事業を実施しており、その一環として、一般国道及び地方道の道路整備事業を行う地方公共団体に対し、毎年度多額の国庫補助金を交付している。そして、地方公共団体では、国庫補助金の交付を受けて、橋りょう上部工工事を実施している。この工事は、鋼製又はコンクリート製の桁等を工場で製作し、これを架設現場へ運搬し、別途工事で築造した橋台や橋脚の上に支承を設置した後、この上に桁等を架設するなどのものである。
岩手県ほか17府県(注1)
(以下「18府県」という。)では、平成15、16両年度に、同工事を148工事、工事費総額500億9755万余円(国庫補助金総額260億1854万余円)で契約し、施行している。そして、これらの工事では、支承については、大規模な地震に対応するため、地震時水平力分散型、免震型等のゴム製支承を使用している。
支承は、工場で製作される鋼製又はゴム製の部材で、桁等から伝達される荷重を確実に橋台や橋脚に伝達し、地震、風、温度変化等に対して桁等が安全な状態となるようにするため、桁等と橋台等の接点に設置されるものである。
そして、7年の阪神・淡路大震災による橋りょうの甚大な被害を契機として、支承の設計においては、大規模な地震に耐える構造が求められ、より大型化・多様化した高額なゴム製支承が多く採用されるようになってきている。
このゴム製支承は、天然ゴム、高減衰ゴム等と鋼板とを交互に積層して接着させたもので、鉛直方向に硬く水平方向に柔らかい性質を持つ支承本体と、桁等及び橋台等と支承を連結するために本体に取り付けられたプレート、アンカーボルト等の金属の取付部材から構成されている(参考図参照)
。また、ゴム製支承は、設置する橋りょうごとに荷重等が異なるため、寸法等の規格が異なる特注品となっている。
前記の148工事で使用しているゴム製支承は、支承本体の体積が2,184cm3 から1,265,877cm3 、金属の取付部材も含めた支承の総重量が115kgから28,213kg、1個当たりの単価が130,000円から29,102,553円となっていて、小型のものから大型のものまで442種類に上っている。そして、148工事では計2,981個のゴム製支承が使われており、18府県では、各支承の単価にそれぞれの設置数量を乗ずるなどして、ゴム製支承の材料費を計45億2391万余円と積算している。
2 検査の結果
近年、橋りょうの耐震化がより一層求められ、支承の設計においてはより大型化・多様化した高額なゴム製支承が多く採用されるようになってきたため、その材料費が工事費に占める割合も大きくなってきている。
そこで、前記の18府県が施行した148工事におけるゴム製支承の材料費の積算において、ゴム製支承の単価が市場の実勢を反映したものとなっているかに着眼して検査した。
(1)ゴム製支承の単価の決定方法
18府県では、いずれも土木工事費の積算における材料単価の決定に当たり、物価調査機関に委託して実施させた調査等により各府県が毎年度制定している「土木関係設計単価表」等(以下「単価表」という。)に基づくこととしている。そして、単価表に記載されていない材料については、各府県が国土交通省制定の土木工事標準積算基準書を基にそれぞれ制定している積算基準等において、物価資料(刊行物である積算参考資料をいう。以下同じ。)に掲載されている場合は物価資料により、物価資料によりがたい場合は特別調査(注2)
により、そして、物価資料及び特別調査ともによりがたい場合は見積りによるとしていたり、特別調査についての記載がなく物価資料によりがたい場合は見積りによるとしていたりなどしていて、単価の決定方法は府県によって区々となっていた。
そして、18府県では、ゴム製支承の単価について、単価表に記載されておらず、また、物価資料にも掲載されていないこと、ゴム製支承は汎用性のない特注品で規格等が多様となっており特別調査によりがたい場合に当たると判断したこと、積算基準等に特別調査についての記載がないことなどから、すべて見積りにより決定していた(以下、見積りにより決定した単価を「見積単価」という。)。
一方、国土交通省の国道事務所等(以下「国道事務所等」という。)では、15、16両年度に施行した橋りょう上部工工事において1,312種類のゴム製支承を使用していたが、その単価については、市場における実際の取引価格(以下「市場価格」という。)をより的確に把握するため、特別調査を行って決定していた(以下、特別調査を行って決定した単価を「特別調査単価」という。)。
(2)特別調査単価と見積単価の比較
上記のとおり、ゴム製支承の単価は、18府県では見積単価となっていたが、国道事務所等では特別調査単価になっていた。このことから、ゴム製支承については、特注品ではあるものの特別調査により市場価格を把握することが可能と認められた。そこで、個々のゴム製支承について、特別調査単価と見積りで示された単価にどの程度の差があるのか調査したところ、次のような状況になっていた。
ア 国土交通省の4地方整備局を通じて、国道事務所等が33種類のゴム製支承について行った特別調査の結果と併せて複数の支承メーカーからの見積りを徴したところ、特別調査単価は見積りで示された単価(平均値)の43%から77%程度となっていた。
イ 18府県のうち埼玉、山梨両県では、会計実地検査の結果を踏まえ、17年度に使用する予定の53種類の支承について特別調査を行うとともに、支承メーカーから見積りを徴した。本院において、これらの単価を比較したところ、特別調査単価は見積りで示された単価(平均値)の55%から73%程度となっていた。
このように特別調査単価の方が見積単価より安価になるのは、物価調査機関では、ゴム製支承の特別調査に当たり、支承メーカーに種類ごとに見積りの提出を依頼し、これに加えて各社ごとの値引率を確認するなどして市場価格を把握するとしていることによると思料された。
以上のことから、ゴム製支承の単価については、見積りにより決定するよりも、特別調査を行って決定した方がより市場価格を反映した経済的なものになると認められた。
上記のとおり、ゴム製支承の単価は、特別調査単価の方が見積単価よりも経済的であることから、本件148工事においてゴム製支承の単価を特別調査単価としていれば、支承材料費は低減できたと認められた。
そこで、ゴム製支承は主要な材料がゴムと金属の2種類であることから、本院では、国道事務所等が特別調査を行って単価を決定した1,312種類のゴム製支承の中から、本件148工事で使用された442種類のゴム製支承と本体の体積及び総重量において近似するものを抽出し、その単価を本件148工事で使用されたゴム製支承の特別調査単価と仮定して支承材料費を推計した。
この結果、442種類(2,981個)のうち423種類(2,875個)のゴム製支承について近似するものを抽出して特別調査単価を仮定することができた。そして、これら2,875個のゴム製支承に係る材料費の積算額計41億7717万余円は、計29億1021万余円となり、特別調査を行って単価を決定した方が差し引き約12億6690万円(国庫補助金相当額約6億5410万円)低減できる計算となった。
このような事態が生じていたのは、18府県において、橋りょう上部工工事におけるゴム製支承の単価の決定に当たり、国道事務所等では市場価格をより的確に把握するために特別調査を行っているのに、支承メーカーからの見積りだけによっていて、特別調査等による市場価格の把握、検討が十分でなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、18府県では、17年7月以降、橋りょう上部工工事において設置するゴム製支承の単価の決定に当たり、市場価格をより的確に把握するために特別調査を行うこととする旨の積算基準の改定又は通知を順次発し、各府県内の関係各機関に対して特別調査の活用等を周知することにより、ゴム製支承の材料費の積算が適切に行われるよう処置を講じた。
また、国土交通省では、17年10月、すべての都道府県等に対し、同省では物価資料に掲載されていないゴム製支承のような特別な規格・材料等の資材価格の決定に当たり、市場価格をより的確に把握するために特別調査を行っていることを周知した。
(注1) | 岩手県ほか17府県 京都、大阪両府、岩手、山形、群馬、埼玉、富山、山梨、岐阜、静岡、愛知、和歌山、島根、岡山、山口、福岡、長崎、熊本各県 |
(注2) | 特別調査 材料単価の決定に当たり、物価調査機関に特定の品目を指定して市場価格の調査をさせるものをいう。 |
支承の概念図