会計名及び科目 | 一般会計(組織)国土交通本省 | (項)海岸事業費 | |
港湾整備特別会計(港湾整備勘定) | (項)港湾事業費 | ||
(項)受託工事費 | |||
(項)改革推進公共投資港湾事業費 | |||
(特定港湾施設工事勘定) | (項)エネルギー港湾施設工事費 |
部局等の名称 | 直轄事業 | 北陸、中部、近畿、中国各地方整備局 | |
補助事業 | 関東、中部、近畿、四国、九州各地方整備局 | ||
事業及び補助の根拠 | 港湾法(昭和25年法律第218号)、海岸法(昭和31年法律第101号)等、予算補助 | ||
事業主体 | 直轄事業 | 地方整備局4 | |
補助事業 | 都、県2、市5 | ||
計 | 12事業主体 | ||
工事名 | 直轄事業 | 新潟港(西港地区)航路泊地埋没浚渫工事(その2)ほか43工事 | |
補助事業 | 平成14年度汐浜運河内部護岸(補強)建設工事ほか77工事 | ||
工事の概要 | 港湾整備事業等の一環として、所定の水深まで海底の土砂等の掘削を行うもの |
工事費 | 直轄事業 | 317億3023万余円 | (平成14年度〜16年度) | |
補助事業 | 261億9326万余円 | (平成14年度〜16年度) | ||
(国庫補助金交付額 90億9083万余円) | ||||
検測待ちの拘束費の積算額 | 直轄事業 | 1億1799万余円 | (平成14年度〜16年度) | |
補助事業 | 7014万余円 | (平成14年度〜16年度) | ||
低減できた積算額 | 直轄事業 | 3270万円 | (平成14年度〜16年度) | |
補助事業 | 2720万円 | (平成14年度〜16年度) | ||
(国庫補助金相当額 1080万円) |
1 事業の概要
国土交通省では、港湾施設等の整備を推進するため、国が行う直轄事業又は地方公共団体等の港湾管理者等が行う国庫補助事業として、港湾整備事業等を毎年度多数実施している。
これら事業の一環として、北陸地方整備局ほか3地方整備局(注1)
では、平成14年度から16年度までに、新潟港ほか5港において、新潟港(西港地区)航路泊地埋没浚渫工事(その2)ほか43工事を工事費総額317億3023万余円で施行している。また、東京都ほか7港湾管理者(注2)
では、14年度から16年度までに、東京港ほか8港において、平成14年度汐浜運河内部護岸(補強)建設工事ほか77工事を工事費総額261億9326万余円(国庫補助金90億9083万余円)で施行している。
上記の各工事は、船舶の航行及び停泊時の安全を確保するなどのため、航路及び泊地の海底の土砂等を所定の水深まで掘削する浚渫を行ったり、防波堤等の港湾構造物の安定した基礎を築造するため、海底の土砂等を所定の水深まで掘削する床掘りを行ったりなどするものである。これら浚渫及び床掘り(以下「浚渫等」という。)の工事は、グラブ浚渫船(注3)
、土運船等の作業船舶で構成される船団(以下「作業船団」という。)により実施されている。
港湾工事の工事費は、国土交通省港湾局が制定した「港湾請負工事積算基準」又はこの積算基準を参考にして港湾管理者が制定した積算の基準(以下、これらを併せて「積算基準等」という。)に基づき積算することとなっている。
積算基準等によれば、浚渫等における作業船団の費用については、主な作業である土砂等の掘削、運搬等に係る費用のほかに、浚渫等の完了後に監督職員が行う出来形の確認のための測量(以下「検測」という。)に伴う作業船団の拘束に係る費用(以下「検測待ちの拘束費」という。)などを計上することとなっている。
上記検測待ちの拘束費は、検測の結果、浚渫等の出来形が設計図書で示された水深を確保していなかった場合に、請負業者が速やかに再浚渫等を行えるよう工事箇所近くの海上等に作業船団を待機させておく際に発生する費用である。港湾請負工事積算基準では、8年4月の改訂時における実態調査の結果に基づき、検測待ちの拘束費として1日分の作業船団の供用損料及び船員の労務費を工事費に計上することとしている。そして、本件各工事では、検測待ちの拘束費を直轄事業分で計1億1799万余円、補助事業分で計7014万余円と積算している。
2 検査の結果
近年、作業船舶等の作業位置を決めたり、水深を測定したりする場合などに、汎地球測位システム(注4)
(以下「GPS」という。)やコンピュータを用いた施工管理等の技術が利用されるようになっている。
国土交通省では、海上工事の測量や位置決めを容易にする測位システムとしてGPSの測量精度を向上させたリアルタイム・キネマティックGPS(注5)
(以下「RTK—GPS」という。)を開発し、7年2月以降、RTK—GPSの基準局(以下「固定式基準局」という。)が東京湾ほか8地区(注6)
に16局設置されている。そして、海上での測量や浚渫等に利用され、作業が従来より高精度に行われている。
そこで、固定式基準局を利用した浚渫等工事の施工が可能な前記の直轄事業44工事及び補助事業78工事、計122工事において、検測待ちの拘束費を工事費に計上するに当たり、固定式基準局を利用した施工の実態が適切に反映されているかという点に着眼して検査を実施した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
ア 請負業者は、作業船舶等にRTK—GPS受信機等を搭載し衛星からの電波を利用して得た測位情報を固定式基準局からの情報により補正することで、誤差数cmという従来より高精度な測位情報を得ることができる状況となっている。そして、この測位情報は衛星からの電波を利用するため、天候状況に左右されることなく利用されている。
このようなことから、浚渫等工事においては、固定式基準局を利用することで作業船舶等の作業位置を決める際の測量精度が著しく向上している。
イ コンピュータ技術が発達したことにより、RTK—GPSを利用して得た作業船舶等の測位情報とその位置での水深情報等とを連動させて処理することで、浚渫等の作業が従来より正確に行えるようになっている。また、浚渫等の施工中においても容易に水深等のデータの把握ができるため、請負業者が、施工中に自主測量による出来形の確認を頻繁に行えるようになるなど施工管理の能率も向上している。
以上のように、浚渫等の工事において、作業船舶等の位置を決める際の測量精度や施工管理の能率が8年4月の港湾請負工事積算基準の改訂時に比べ、著しく向上していることから、前記の122工事中120工事については再浚渫等を行っていなかった。
したがって、固定式基準局を利用することにより、浚渫等工事の施工精度等が向上し、検測の結果においても再浚渫等がほとんど発生していないにもかかわらず、作業船団の待機のための費用として検測待ちの拘束費を工事費に計上しているのは適切とは認められない。
上記により、本件各工事において、検測待ちの拘束費を工事費に計上しないこととすると、固定式基準局を利用するために必要となるRTK—GPS受信機の損料等を新たに計上したとしても、積算額を直轄事業分で約3270万円、補助事業分で約2720万円(国庫補助金相当額約1080万円)低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、国土交通省において、浚渫等工事の施工精度等が向上し、検測後に請負業者が再浚渫等を行っている実態がほとんどなく作業船団を待機させておくことの実効がないにもかかわらず、これを積算に反映させていなかったことによると認められた。また、港湾管理者においても、同様に作業の実態に適合した積算を行うことの認識が十分でなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、17年3月に、港湾請負工事積算基準を改訂して、浚渫等工事の積算に当たって、固定式基準局を利用した施工が可能な場合は、検測待ちの拘束費を工事費に計上しないこととし、地方整備局に対して同年4月より適用するよう指導するとともに、港湾管理者等に対して同基準の内容を通知する処置を講じた。
(注1) | 北陸地方整備局ほか3地方整備局 北陸、中部、近畿、中国各地方整備局 |
(注2) | 東京都ほか7港湾管理者 東京都、愛知、徳島両県、横浜、川崎、横須賀、大阪、下関各市 |
(注3) | グラブ浚渫船 土砂等の浚渫等を行うためのグラブバケットを備えた作業船舶 |
(注4) | 汎地球測位システム(GPS) アメリカによって開発・運用されている衛星を用いた測位方法で、受信機とアンテナを用意し4個以上の衛星から電波を受信することで自らの位置を測ることができるシステム |
(注5) | リアルタイム・キネマティックGPS(RTK—GPS) 陸上の特定されている位置に固定した受信機を基準局とし、船舶等に搭載した受信機を移動局として、GPS衛星からの電波をそれぞれの局で同時に受信し、基準局から位置の補正情報を移動局に無線で送ることにより、移動局の位置をリアルタイムに誤差数cmで求めることができるシステム |
(注6) | 東京湾ほか8地区 東京湾、新潟、直江津、伊勢湾、大阪湾、広島、徳島、関門、博多各地区 |