会計名及び科目 | 港湾整備特別会計 | (港湾整備勘定) | (項)港湾事業費 | |
一般会計 | (組織)海上保安庁 | (項)海上保安官署 |
部局等の名称 | 国土交通本省(平成13年1月5日以前は運輸本省) |
海上保安庁 | |
事業の概要 | 我が国港湾の国際競争力強化等に資するために、港湾EDIシステム等を開発、改修し、管理・運営する事業 |
港湾EDIシステム等の開発、改修等に係る経費 | 国土交通省 | 16億0398万円 | (平成9年度〜16年度) | |
海上保安庁 | 3億8629万円 | (平成11年度〜16年度) | ||
計 | 19億9027万円 | |||
港湾EDIシステム等の管理・運営、保守等に係る経費 | 国土交通省 | 1億3070万円 | (平成15、16両年度) | |
海上保安庁 | 1億2075万円 | (平成15、16両年度) | ||
計 | 2億5145万円 |
1 事業の概要
国土交通省及びその外局である海上保安庁では、平成9年4月に閣議決定された「総合物流施策大綱」に基づき、我が国港湾の国際競争力強化等の一環として、港湾諸手続の情報化・簡素化を図るため、港湾管理者と協力して、港湾諸手続を電子申請するためのシステム(以下「港湾EDIシステム」という。EDI:Electronic・Data・Interchange)を開発し、11年10月から運用を開始しており、15年からは、港湾法(昭和25年法律第218号)の改正により、同法に基づく電子申請システムとしての運用を行っている。
港湾EDIシステムは、輸出入・港湾手続の電子化、複数の手続を1つの窓口(システム)から行うワンストップ化の具体的な方策として、利用者である船舶代理店、船舶会社等が従来書面で港湾管理者及び港長(注)
に別々に提出していた入出港届、係留施設使用許可申請等をインターネットを利用して電子申請することにより、一度の入力・送信で港湾管理者及び港長に係る手続を同時にできるなど、手続の簡素化、迅速化を図り利便性を向上させ、我が国港湾の国際競争力の強化に資するものとして開発され、運用しているものである。
港湾EDIシステムは、港湾管理者においては、国際海上輸送網の拠点等となる重要港湾128港のうち、11年度中に17港で運用を開始している。そして、国土交通省では、国土交通省政策評価基本計画(平成15年度)において、重要港湾128港を管理する港湾管理者の港湾EDIシステム加入率を17年度中に100%とする目標を設定しているが、加入及び運用開始時期は各港湾管理者の判断によることから、16年度末までに重要港湾86港で運用を開始している。一方、港長においては、海上保安庁の方針により、喫水の深い船舶が出入りできるなどの特定港86港のうち、11年度中に9港で手続の一部が運用を開始し、15年度末までにすべての特定港で港長に提出することとされている入出港届、係留施設使用届及び危険物荷役許可申請等についての手続の運用を開始している。
そして、港湾EDIシステムにより電子申請が可能な手続は、順次拡大され、これに伴うシステム改修を順次行っており、15年7月からは、厚生労働省の検疫所に係る手続を対象に加え、厚生労働省と合同で運用を行っている。また、これに併せて財務省の通関情報処理システム(3年10月運用開始)及び法務省の乗員上陸許可支援システム(15年7月運用開始)と港湾EDIシステムを相互に接続・連携したシステム(以下「シングルウィンドウシステム」という。)として運用を開始し、港湾管理者、港長及び検疫所に税関及び入国管理局を加えた5官署に対する入出港届等をシングルウィンドウシステムにより電子申請できる体制となっている。
また、国土交通省及び海上保安庁では、16年度に、海上交通安全法(昭和47年法律第115号)に定める航路通報等の新たな届出に係る手続を港湾EDIシステムの対象とするためのシステムの改修、調査検討を行っている。
港湾EDIシステム及びシングルウィンドウシステム(以下、これらを合わせて「港湾EDIシステム等」という。)に係る開発、改修等の経費は、国土交通省で約16億0398万円(9年度から16年度)、海上保安庁で約3億8629万円(11年度から16年度)、計約19億9027万円となっている。
また、港湾EDIシステム等の管理・運営、保守等の経費は、15、16両年度で国土交通省約1億3070万円、海上保安庁約1億2075万円、計約2億5145万円となっている。
国土交通省では、「1965年の国際海上交通の簡易化に関する条約」(平成17年条約第13号)の締結に伴い、条約の対象となっている入出港届について、様式の統一、届出項目の削減を行い、この様式による届出を17年11月から実施することとしている。また、電子政府構築計画(平成15年7月決定)に基づき、関係各府省により策定された「輸出入及び港湾・空港手続関係業務に係る業務・システムの見直し方針」を受け、港湾EDIシステムを対象とする「港湾手続関係業務に係る業務・システムの見直し方針」を策定することとし、これらを踏まえて、17年12月を目途に、港湾手続関係業務・システム最適化計画(以下「最適化計画」という。)を策定することとしている。
2 検査の結果
我が国港湾の国際港湾物流における地位が相対的に低下していることから、国土交通省等では、港湾物流の更なる効率化を実現し、国際競争力の強化を図るために港湾EDIシステム等を開発、運用している。そして、港湾EDIシステムについては、電子申請システムとしての運用開始後5年以上経過していることなどから、港湾管理者の加入状況、港湾管理者及び港長における利用状況等について検査を実施した。
国土交通省、海上保安庁及び86港の特定港を管轄する海上保安部等96箇所並びに24都道府県に所在する51港湾管理者が管理する重要港湾85港について検査した。
(1)国土交通省について
ア 加入又は運用開始の状況について
検査した重要港湾85港のうち、16年度末現在で、64港が港湾EDIシステムに加入していたが21港が未加入となっていた。また、港湾EDIシステムに加入している64港のうち、55港が同システムの運用を開始していたが9港が運用を開始していなかった。
イ 利用状況について
(ア)重要港湾における利用状況
港湾EDIシステムの運用を開始している上記の重要港湾55港における船舶代理店等による16年度の利用状況は、入出港届及び係留施設使用許可申請の総受理件数約71万件のうち、港湾EDIシステム等によるこれら届出等の件数が約10万件となっており、利用率は15.3%にすぎない状況となっていた。
この利用率を港湾別にみると、利用率が50%以上であるのは4港にすぎず、10%未満の港湾が15港、全く利用されていない港湾が17港あるなど低い利用状況となっていた。
(イ)特定重要港湾における利用状況
上記55港のうち、国際海上輸送網の拠点として特に重要な港湾である特定重要港湾15港における16年度の利用状況は、入出港届及び係留施設使用許可申請の総受理件数約37万件のうち、港湾EDIシステム等によるこれら届出等の件数が約9万件となっており、利用率は24.1%となっていた。
上記の特定重要港湾15港のうち5港では、港湾EDIシステム等と並行して港湾管理者が独自に構築したシステムを運用している。そして、この独自システムは、入出港届、係留施設使用許可申請や港湾管理者に係る各種の届出等を電子申請することができることもあり、港湾EDIシステム等に比較して独自システムの利用率の方がおおむね高くなっていた。しかし、独自システムと港湾EDIシステム等との連携が十分でないため、船舶代理店等が港湾管理者の独自システムを利用して申請した入出港届は、港湾EDIシステム等に取り込めないものとなっており、税関等他官署に対する届出が別途必要となっていた。
また、この特定重要港湾15港において、常時入出港届及び係留施設使用許可申請を提出している船舶代理店等延べ約1,100事業所における港湾EDIシステム等の利用の申込状況を調査したところ、利用申込を行っている船舶代理店等は483事業所となっていて、その割合は約43.3%となっており、利用申込はしているものの実際にはほとんど利用していない船舶代理店等も相当数見受けられた。
(ウ)港湾管理者による届出
港湾EDIシステムの運用を開始している前記重要港湾55港のうち、43港は特定港でもあることから、港湾管理者から港長へ係留施設使用届の提出が義務づけられている。この43港における16年度の利用状況は、同届出数約12万件のうち港湾EDIシステムによる届出の件数が約3万件で、利用率は24.8%となっており、全く利用していない重要港湾が29港見受けられた。
ウ 普及活動等について
国土交通省では、11年10月の港湾EDIシステムの運用開始時以降、港湾管理者等に対して説明会を実施しており、15年8月には、地方出先機関である各港湾事務所等に船舶代理店等に対する港湾EDIシステム等の普及活動を実施させているが、各港湾事務所等における活動の内容、結果については、把握していない状況となっていた。
また、同年11月には、国土交通省が、船舶代理店等に対するアンケート調査を実施しているが、その結果はとりまとめているものの、改善要望等に対する具体的な処理は現時点まで実施されていない状況となっていた。
エ シングルウィンドウシステムによる届出等について
シングルウィンドウシステムでは、各官署に対する手続のうち、一画面における一度の入力で送信可能な手続は、入出港届(乗員等の名簿を含む。)に限られている。そして、入出港届以外の届出等については、各手続に係る画面を開き、それぞれ必要事項の入力を行い、送信する必要があり、一画面における入力・送信で各手続がすべて完了するものとはなっていないなど、船舶代理店等においては、書面等により提出する従来の方法に比べて、利便性が向上したものであるとの認識が低い状況となっていた。
(2)海上保安庁について
港湾EDIシステム等の運用をしている特定港86港における16年の利用状況は、港長に届け出る入出港届、係留施設使用届及び危険物荷役許可申請等の総受理件数約134万件のうち、港湾EDIシステム等によるこれら届出等の件数は約32万件で、利用率は24.4%にすぎない状況となっていて、25港では全く利用されていなかった。また、上記特定港86港のうち入出港届が1万件を超える18港について16年の入出港届に係る港湾EDIシステム等の利用状況は、入出港届の総受理件数に対して港湾EDIシステム等による届出の割合が30%未満のものが13港となっていて、3港では全く利用されていなかった。
なお、港長の業務は、上記の届出等が港湾EDIシステム等によって申請された場合、海上保安庁内のシステムに対して、従来行っていた届出等の入力作業を省略できる見込みとなっていたものの、利用率が低いため、その作業を継続している状況となっていた。
このような事態が生じていたのは、以下のことなどによると認められた。
ア 国土交通省及び海上保安庁において、港湾EDIシステムに係る港湾管理者及び船舶代理店等の要望等に係る調査、検討及びこれらに対応した対象手続の拡大、入力・操作方法の改善等に対する取組が十分でなく、また、シングルウィンドウシステムについても同様の取組に向けての関係各省等への働きかけが十分でなかったこと
イ 国土交通省において、港湾管理者が構築している独自システムと港湾EDIシステム等との連携についての具体的な取組が十分でなかったこと
ウ 国土交通省及び海上保安庁において、港湾管理者及び船舶代理店等に対する、港湾EDIシステム等の内容、利点、国際競争力の強化における電子申請化の重要性等についての周知徹底が十分でなく、国際競争力の強化等を図るため、港湾EDIシステム等の利用促進等をより一層行う必要があるのに、これに対する認識が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省及び海上保安庁では、港湾EDIシステム等の利用率の向上を図るため、次のような処置を講じた。
ア 港湾EDIシステム等について、港湾管理者及び船舶代理店等の要望等に係る調査を定期的に行い、それらを反映した改善について、シングルウィンドウシステムに係る関係省庁との調整を行い、対象手続の拡大について検討を行うとともに最適化計画等において利便性の向上を図るための改修を行うこととした。
イ 港湾管理者の独自システムに係る調査を踏まえ、港湾管理者の独自システムと港湾EDIシステムの相互の役割や連携の方法等を検討することとした。
ウ 17年9月から10月にかけて、港湾管理者、船舶代理店等を対象とした説明会を開催するとともに、港長を指揮監督する各管区海上保安本部あてに通知を発するなどして、電子申請の重要性や港湾EDIシステム等の利点等を周知徹底し、加入促進、利用促進を図るとともに利用実態等を把握する体制の整備を図ることとした。