会計名及び科目 | 一般会計 (組織)国土交通本省 | (項)科学技術振興調整費 | |
(項)地球環境保全等試験研究費 | |||
(項)環境研究総合推進費 | |||
自動車検査登録特別会計 | (項)業務取扱費 |
部局等の名称 | 国土交通本省 |
物品の概要 | 国土交通省所管に属する研究用機器 |
委託契約の相手方 | 独立行政法人交通安全環境研究所 |
平成16年度末までに終了している委託研究に係る研究用機器(取得価格50万円以上)を購入した委託契約の件数及び金額 | 25件 | 9億0728万円 | (平成13年度〜16年度) | |
平成16年度末までに終了している委託研究に係る研究用機器の数量及び取得価格(取得価格50万円以上) | 109個 | 4億8380万円 | (平成13年度〜16年度) |
1 委託契約の概要
国土交通省では、国土の総合的かつ体系的な利用、開発及び保全、そのための社会資本の整合的な整備、交通政策の推進、気象業務の健全な発達並びに海上の安全及び治安の確保を図ることを任務としている。そして、それらを達成するため、建設技術、運輸技術及び気象業務に関連する技術に関する研究及び開発並びにこれらの助成並びに建設技術、運輸技術及び気象業務に関連する技術に関する指導及び普及に関する業務を行うこととしている。
そして、平成15年11月、同省では上記の業務に関して、技術研究開発の方向性を明確に示すために国土交通省技術基本計画を策定し、これに基づき関係部局や研究機関において、それぞれの分野における技術研究開発に関する施策を進めている。
国土交通省の技術研究開発は、従来は同省の試験研究機関が行っていたが、13年4月に主な試験研究機関が独立行政法人に移行したことから、同省の施策に係る技術研究開発については、当該独立行政法人へ委託して(以下「委託研究」という。)実施している。
技術研究開発における重点分野は、交通機関の安全対策や環境対策、国土の災害対策など多岐にわたっている。その中で陸上運送及び航空運送の分野に関する技術研究開発については、13年4月に同省の交通安全公害研究所から移行した独立行政法人交通安全環境研究所(以下「交通研」という。)に委託されている。
交通研は、運輸技術のうち陸上運送及び航空運送に係るものに関する試験、調査、研究、開発等を行うことにより、陸上運送及び航空運送に関する安全の確保、環境の保全及び燃料資源の有効な利用の確保を図ることを目的として設置されている。
そして、国土交通本省(以下「本省」という。)では、表1のとおり、交通研と13年度から16年度までの間に「危険物を運搬するタンクローリー等の横転防止に係る基準策定のための調査」ほか74件の委託契約を契約額計60億7301万余円で締結している。交通研では、これらの委託契約により委託研究のための研究用機器を購入している。
表1 委託契約の年度別件数、契約金額
(単位:千円)
契約年度 | 契約件数 | 契約金額計 |
13年度 | 15 | 376,681 |
14年度 | 17 | 1,762,067 |
15年度 | 21 | 1,964,289 |
16年度 | 22 | 1,969,978 |
合計 | 75 | 6,073,017 |
上記の委託契約は年度ごとに締結されているが、実際に委託研究に要する期間は、おおむね2、3年程度のものが多い状況となっている。
国土交通省では、本省の所掌業務に係る委託契約を締結する場合、国土交通本省委託契約取扱要領(平成13年国官会第293号。以下「委託契約要領」という。)の定めによることとしている。そして、この委託契約要領では、契約終了後の研究用機器(残存物件)の取扱いについて、「乙(受託者)は、委託業務の実施により生じた残存物件は、成果物の引渡し後遅滞なく、甲(委託者)に返還しなければならない。」と定められている。
2 検査の結果
国土交通省では、交通研と、前記のとおり毎年多額の委託契約を締結している。そこで、交通研が独立行政法人に移行した13年度から16年度までの間に委託研究が終了した25件の委託契約(契約額計9億0728万余円)に係る研究用機器(取得価格50万円以上)について、その使用状況、取扱い等に着眼して検査した。
検査したところ、上記25件の委託契約で購入していた研究用機器は、表2のとおり、計109個、取得価格総額4億8380万余円(16年度末時点の残存価格総額1億9071万余円)となっていた。
表2 平成16年度末時点で委託研究が終了している研究用機器
(単位:個、千円)
委託研究で研究用機器を購入した年度 | 研究用機器の数量 | 取得価格の計 | 16年度末時点の残存価格 注(1) |
13年度 | 39 | 186,960 | — 注(2) |
14年度 | 24 | 107,261 | 47,827 |
15年度 | 37 | 155,670 | 110,893 |
16年度 | 9 | 33,910 | 31,991 |
合計 | 109 | 483,801 | 190,712 |
注(1) | 16年度末時点の残存価格は、交通研における減価償却後の額である。 |
注(2) | 13年度に購入した研究用機器は、当該年度に全額を減価償却している。 |
これらの研究用機器は、委託契約書において、委託契約終了後に本省に返還することとされているのに、本省に返還されておらず、引き続き交通研において管理されていた。そして、交通研の固定資産台帳に登録されたままで、委託研究終了後も貸借対照表に資産として計上されていた。
これらの研究用機器を減価償却する際の耐用年数はおおむね4年であるが、委託研究に要する期間はおおむね2、3年程度のものが多いことから、ほとんどの研究用機器は委託研究終了後も使用可能であると思料された。そして、交通研でこれら109個の研究用機器の使用状況を確認したところ、委託研究終了後も引き続き他の研究に使用されていた。
一方、このように、上記の研究用機器が委託研究終了後も引き続き交通研で管理され他の研究に使用されていて、本省に返還されていなかったが、研究用機器が返還された場合でも、国土交通省の試験研究機関のほとんどが独立行政法人に移行していることから、同省には研究用機器を使用して技術研究開発を行う部門がほとんどない状況であり、これらが返還された後の取扱方法や手続も定められていないために、研究用機器の有効活用が図られる体制とはなっていなかった。
以上のように、委託研究終了後の研究用機器が返還されていないことから、同省の物品として管理されておらず、適切な処置が講じられないまま交通研で管理され、使用され続けていた事態は適切とは認められず、適切な管理のもとで有効活用を図るよう改善の要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、国土交通省から独立行政法人等に技術研究開発を委託するに当たり、委託研究終了後の研究用機器の適切な管理及びその取扱いについての認識が十分でなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、17年6月に委託契約要領を改正し、契約終了後の研究用機器(残存物件)の返還については、委託先と協議の上、適正に取り扱うこととし、返還させた研究用機器を同省の物品管理簿に記載して物品として管理することとした。
また、返還させた物品について、当該物品を必要とする委託先に無償貸付するなどして有効に活用するため、委託契約における残存物件の取扱方針を定め、関係部局に周知徹底を図るとともに、そのために必要な省令を整備することとした。