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  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

延長工事等を行った滑走路に係る国有財産台帳の価格改定を延長部分等の耐用年数満了時まで行うことにより、台帳価格を適正なものとし、国有資産等所在市町村交付金の交付額を適切なものとするよう改善させたもの


(10)延長工事等を行った滑走路に係る国有財産台帳の価格改定を延長部分等の耐用年数満了時まで行うことにより、台帳価格を適正なものとし、国有資産等所在市町村交付金の交付額を適切なものとするよう改善させたもの

会計名 空港整備特別会計
部局等の名称 国土交通本省、東京、大阪両航空局
国有財産の分類 (分類)行政財産 (種類)公用財産 (区分)工作物
価格改定の概要 各省各庁の長がその所管に属する国有財産について、5年ごとにその現況を財務大臣の定めるところにより評価し、その評価額により台帳価格を改定するもの
国有資産等所在市町村交付金の概要 国の所有する固定資産が所在する市町村等に対して、固定資産税に代わるものとして、毎年度交付しているもの
検査の対象とした空港数 21空港
検査の対象とした滑走路に係る台帳価格     426億0103万円 (平成12年度末)
    440億5829万円 (平成13年度末)
    456億9017万円 (平成14年度末)
    468億7374万円 (平成15年度末)
    474億1458万円 (平成16年度末)
過大と認められた台帳価格     101億7411万円 (平成12、13、14、15、16各年度末)
滑走路に係る国有資産等所在市町村交付金交付額     2億9820万円 (平成14年度)
    3億0840万円 (平成15年度)
    3億1983万円 (平成16年度)
    3億2811万円 (平成17年度)
  12億5455万円  
過大と認められた国有資産等所在市町村交付金交付額     7121万円 (平成14、15、16、17各年度)
  2億8487万円  

1 国が設置及び管理する空港における滑走路の概要等

(空港施設の概要)

 国土交通省では、主要な国内航空路線等に必要な空港として、東京国際空港ほか20空港(注1) (以下「21空港」という。)を設置及び管理している。空港の施設は、滑走路、着陸帯等の基本施設及び排水施設等の附帯施設からなっているが、これらの取得、維持、保存及び運用並びに処分については、国有財産法(昭和23年法律第73号)に基づいて行われている。

東京国際空港ほか20空港 東京国際、大阪国際、新千歳、稚内、釧路、函館、仙台、新潟、八尾、広島、高松、松山、高知、福岡、北九州、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、那覇各空港

(国有財産に関する地方航空局長の分掌事務)

 国土交通省では、21空港に係る国有財産に関する事務を、国土交通大臣から東京航空局長又は大阪航空局長(以下、これらを「地方航空局長」という。)に分掌させており、地方航空局長は、国有財産の分類及び種類ごとに、区分及び種目、所在、数量、価格等を記載した台帳(以下「国有財産台帳」という。また、国有財産台帳に記載されている価格を以下「台帳価格」という。)を備え、管理している。国有財産台帳は、国有財産の価格等を記録し、国有財産を適正に経理するための帳簿であり、国有財産の取得等に基づく数量及び価格の変動があった場合は、その増減を国有財産台帳に記載することとされている。

(滑走路の国有財産台帳への記載)

 国が管理する空港の滑走路は、国有財産法、国有財産法施行令(昭和23年政令第246号)等により、分類「行政財産」、種類「公用財産」、区分「工作物」、種目「鋪床」として整理され国有財産台帳に記載されており、21空港の滑走路に係る台帳価格は、平成16年度末現在で約474億円となっている。

(国有財産の価格改定及び評価要領)

 国有財産の現況を適正に評価し台帳価格に反映させて把握するため、国有財産法施行令により、各省各庁の長は、その所管に属する国有財産について、5年ごとにその年の3月31日の現況において、財務大臣の定めるところによりこれを評価し、その評価額により台帳価格を改定(以下「価格改定」という。)しなければならないとされている。
 また、12年度末の13年3月31日に実施された直近の価格改定に当たり、財務省理財局は、具体的な評価方法を示した「国有財産台帳の価格改定に関する評価要領」(以下「評価要領」という。)を各省各庁に示している。
そして、この評価要領によれば、国が取得(注2) した工作物等の国有財産の評価額は、該当する台帳価格にその耐用年数満了時までの期間に応じた残存価額率(注3) を乗じ経年による価値の減損を反映させて算定するなどした額とされている。

(注2) 取得 新設、増設、修繕など財産の増となるもの
(注3) 残存価額率 残存価額を算定するため、耐用年数及び経過年数ごとに定める率

(国有資産等所在市町村交付金の概要)

 東京、大阪両航空局(以下、これらを「地方航空局」という。)では、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律(昭和31年法律第82号)の規定に基づき、21空港が所在する市町村等に対して、毎年度国有資産等所在市町村交付金(以下「交付金」という。)を交付している。これは、国の所有する固定資産については固定資産税が非課税となっていることから、これに代わるものとして、その所在する市町村等に対して固定資産税相当分を交付するものである。この交付金の交付額は、地方航空局が算定した交付当該年度の前年の3月31日現在の空港内の固定資産(土地、建物、工作物等)に係る交付金算定標準額に100分の1.4を乗じて得た額とされている。また、滑走路に係る交付金算定標準額は台帳価格の2分の1とされている。
 地方航空局では、21空港が所在する市町村等に対し、12年度から15年度までの各年度末現在の台帳価格等に基づき、表1のとおり、14年度から17年度までの間に計305億4983万余円の交付金を交付しており、このうちの滑走路に係る分は12億5455万余円となっている。

表1 年度別交付金交付額
(単位:千円)

14年度 15年度 16年度 17年度
全対象資産 7,468,865 7,600,876 7,685,485 7,794,611 30,549,839
上記のうち滑走路に係る分 298,206 308,406 319,830 328,115 1,254,557

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 滑走路については、航空需要の増大に伴う大型航空機の導入に対応するための延長工事、舗装を厚くするかさ上げ工事及び経年の劣化に対応するための大規模な補修工事等(以下、これらを「延長工事等」という。)が多数行われ、これらに要する工事費は多額に上っている。このため、滑走路に係る台帳価格も増加し、台帳価格に基づいて交付される交付金交付額も増加している。
 そこで、滑走路について、直近の価格改定が実施された12年度末から16年度末までのそれぞれの台帳価格が価格改定等を踏まえた適正なものとなっているか、また、交付金が適切に交付されているかに着眼して検査した。

(検査の対象)

 21空港の滑走路の延長工事等により国有財産台帳に取得増分として登録された当該部分の台帳価格について、滑走路等の耐用年数が短縮された昭和61年3月31日の価格改定後に国有財産台帳に登録された205件、工事費計266億1812万余円を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、196件、工事費計249億2743万余円の価格改定について、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、地方航空局では、滑走路の延長工事等を行い国有財産台帳に登録する際、既設の滑走路の耐用年数が満了している場合には、前記の評価要領とは別に財務省理財局から示された計算事例集のうち耐用年数が満了した建物本体の修繕の事例を参考にするなどして、国有財産台帳に登録した滑走路の延長部分等も耐用年数が満了したものとみなし、価格改定を行わないこととするなどとしていた。
 しかし、この事例は、耐用年数が満了している建物本体に少額の修繕を行った場合に、その修繕部分を価格改定の対象に含める実益に乏しいことから、修繕部分の耐用年数が満了したものとみなして価格改定は行わないこととする事例として示されたものである。
 したがって、本件滑走路の延長工事等については、上記の事例が想定する建物本体の少額な修繕とは性質が異なり、工事費も格段に多額であることなどから価格改定をこの事例によることは適切ではなく、滑走路の延長工事等に伴い、国有財産台帳に登録した当該部分については、既設の滑走路の耐用年数の経過状況に関係なく、台帳価格にその耐用年数満了時までの期間に応じた残存価額率を乗じて経年による価値の減損を反映させるなどして価格改定を行うべきであると認められる。
 このように、滑走路の延長部分等に係る価格改定が行われず台帳価格が減額されないなどの事態は、滑走路の台帳価格が国有財産の現況を正確に表示しているとはいえず、また、台帳価格を基に算定される交付金算定標準額も適切を欠いたものとなっていると認められる。
 上記のように滑走路の台帳価格が国有財産の現況を正確に表示しておらず適切でないと認められたことから、既設の滑走路の耐用年数の経過状況に関係なく、滑走路の延長部分等について価格改定を行った場合の台帳価格を試算したところ、適切と認められる21空港の滑走路に係る台帳価格は平成12年度末現在で324億2691万余円となり、地方航空局算定の台帳価格は101億7411万余円過大に計上されていた。このため、この台帳価格を基にして算定される14年度の交付金相当額は7121万余円過大に交付されていたこととなる。
 そして、12年度末の台帳価格に、16年度末までに登録された滑走路の延長部分等の取得増分などを反映させた13年度から16年度までの各年度末現在の台帳価格及び15年度から17年度までの滑走路に係る交付金相当額の試算を行うと表2のとおりとなり、交付金相当額は14年度から17年度までで計2億8487万余円過大に交付されていたこととなる。

表2 試算に基づく過大額
(台帳価格) (単位:千円)
12年度末 13年度末 14年度末 15年度末 16年度末
当局算定額 42,601,037 44,058,296 45,690,179 46,873,748 47,414,581
試算額 32,426,918 33,884,176 35,516,060 36,699,629 37,240,462
過大計上額 10,174,119 10,174,119 10,174,119 10,174,119 10,174,119

(滑走路に係る交付金相当額)
(単位:千円)

14年度 15年度 16年度 17年度
当局算定額 298,206 308,406 319,830 328,115
試算額 226,987 237,188 248,611 256,896
過大交付額 71,218 71,218 71,218 71,218
14〜17年度過大交付額計
284,874      

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、空港の滑走路は、新設時のみならず、延長等の工事においても多額の国費が投入され、当該延長部分に係る価格改定には特段の留意が必要であるのに、これについて、国土交通省において地方航空局に対する指導監督が十分でなかったこと、地方航空局において認識が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、地方航空局に対して17年9月に通知を発するなどして、滑走路の延長部分等の価格改定については、既設の滑走路の耐用年数の経過状況に関係なく、滑走路の延長部分等の国有財産台帳への登録時から当該延長部分等の耐用年数満了時まで適切に行うよう周知徹底を図り、地方航空局では、17年度末の価格改定において台帳価格の修正を行うこととし、交付金の交付額を適切なものとする処置を講じた。