科目 | (項)業務収入 |
部局等の名称 | 北海道、東北、北陸、中部、関西、中国、四国、九州各支社、東京管理局(平成17年10月1日以降は、東日本高速道路株式会社の北海道、東北、関東各支社及び新潟管理局、中日本高速道路株式会社の中部地区支配人及び横浜、八王子、金沢各支社、西日本高速道路株式会社の関西、中国、四国、九州各支社) |
通行料金の概要 | 高速道路等の建設等に要した資金の償還に当てるため、高速道路等を通行する車両から徴収する料金 |
適切な未納通行料金等の残高 | 11億1774万円 | (平成16年度末) |
不正通行に係る通行料金等の試算額 | 5億3101万円 | (平成16年度) |
1 未納通行料金等の債権管理等の概要
(1)通行料金の徴収
日本道路公団(平成17年10月1日以降は、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構。以下「公団」という。)では、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号。以下「特措法」という。)に基づき、公団が高速道路等の建設等に要した資金の償還に当てるため、高速道路等を通行する車両から通行料金を徴収しており、その額は、16年度において、2兆0505億余円に上っている。
(2)未納通行料金等の概要
通行料金には、現金、ETC(有料道路自動料金収受システム)、ハイウェイカード等の徴収の形態があるが、原則として、通行時に料金所において通行料金を徴収している。その際、通行料金の支払がない者のうち通行者を特定できる者(以下「未納者」という。)に係る債権を、次のとおり、未納通行料金等として管理することになっている。
〔1〕 通行時に金銭の不所持等により通行料金を支払うことができない場合は、当該未納通行料金
〔2〕 料金所において停止せずに通行したり、通行料金の不払運動を行っている団体の会員等が無料通行を宣言する書面を収受員に手渡して通行したりするなどして、不正に通行料金を支払わずに通行(以下「不正通行」という。)した場合は、未納通行料金及び当該未納通行料金の2倍に相当する割増金
各年度末における未納通行料金等の残高は表1のとおりとなっている。
12年度 | 13年度 | 14年度 | 15年度 | 16年度 | |
件数(件) | 49,870 | 59,149 | 91,440 | 120,684 | 148,434 |
金額(円) | 292,558,391 | 358,114,230 | 726,568,733 | 1,086,946,015 | 1,443,286,671 |
未納通行料金等の年度末残高が年々増加しているのは、14年度以降、通行料金の不払運動を行っている団体の活動が活発化するなどして不正通行に係る未納通行料金等が16年度では16,957件、2億7816万余円と多額に上っているなど、表2のとおり、未納通行料金等の発生額が増加し、年度内の徴収率が低下傾向にあることなどによる。
12年度 | 13年度 | 14年度 | 15年度 | 16年度 | ||
未納通行料金等の発生(A) | 件数(件) | 64,893 | 63,820 | 90,661 | 92,566 | 89,401 |
金額(円) | 311,912,552 | 309,096,536 | 640,584,491 | 660,474,882 | 664,085,981 | |
Aのうち当該年度内の徴収(B) | 件数(件) | 48,842 | 44,591 | 48,422 | 51,856 | 48,568 |
金額(円) | 215,901,961 | 187,431,486 | 211,923,662 | 232,194,652 | 233,280,893 | |
Aのうち当該年度内の未徴収(A-B) | 件数(件) | 16,051 | 19,229 | 42,239 | 40,710 | 40,833 |
金額(円) | 96,010,591 | 121,665,050 | 428,660,829 | 428,280,230 | 430,805,088 | |
年度内の徴収率(%)(B/A) | 件数 | 75.3 | 69.9 | 53.4 | 56.0 | 54.3 |
金額 | 69.2 | 60.6 | 33.1 | 35.2 | 35.1 |
(1)未納通行料金等の債権管理
公団では、料金収受業務事務処理要領(平成元年道路公団達第33号。以下「事務処理要領」という。)等に基づき、未納通行料金等の債権管理を行うこととなっている。
通行時に通行料金の支払がない場合には、料金所において収受員が、未納金納入告知書(以下「告知書」という。)を未納者に交付するとともに、未納金台帳を作成することとなっている。
そして、公団の管理事務所、管理所、営業所等(以下「管理事務所等」という。)では、料金所において作成した未納金台帳により、個別の未納通行料金等を債権管理している。その後、未納通行料金等の入金があった場合には、未納金台帳に入金日及び入金額を記載することにより、入金済として処理することとなっている。
また、支社又は管理局(以下「支社等」という。)においては、料金所から提出される未納及び入金のデータを基に、未納通行料金等を支社等及び管理事務所等ごとに集計した未納金等収納状況表(以下「未納金状況表」という。)を作成し、未納通行料金等の残高を把握している。
(2)未納通行料金等の督促等及び時効の中断
事務処理要領等によれば、下図のとおり、管理事務所等において、未納者が告知書記載の納入期日までに未納通行料金等を完納しない場合には、督促状を送付することとなっていて、さらに、督促状記載の納入期日までに未納通行料金等を完納しない場合には、催促状を送付するなどの方法により催促を行うこととなっている。
そして、時効の起算日から3年を経過した未納通行料金等については、管理事務所等から支社等へ、未納金台帳等の関係書類を引き継いで徴収依頼することとなっており、その後、支社等において、催促状等により未納通行料金等を催促することとなっている。また、未納通行料金等に係る債権は、特措法で準用する道路法(昭和27年法律第180号)に基づき、時効の起算日から5年を経過した日に時効により消滅することとなっていることから、4年を経過してもなお未納のものについては、未納者から支払確約書を徴することにより、時効の中断を図ることとなっている。
図 督促等の手順
(1)不正通行の概要
公団の管理する高速道路等では、近年、不正通行が多数発生している。不正通行が発生した場合には、料金所において、収受員が不正通行した車両の自動車登録番号、特徴等に関して確認できた事項を強行突破報告書等に記録して、管理事務所等に報告することとしている。そして、強行突破報告書等の記録により、通行者を特定できる場合は、不正通行に係る通行料金等を未納通行料金等として債権管理することになっている。一方、通行者を特定できない場合は、その発生件数のみを集計することになっており、表3のとおり、その件数は年々増加している。
14年度 | 15年度 | 16年度 | 合計 |
131,858 | 140,238 | 187,247 | 459,343 |
(2)不正通行対策の概要
不正通行が多数発生していることにかんがみ、不正通行対策を強化するよう、14年7月、国土交通大臣から公団に対し指示があったことから、公団では、本社及び支社等に「不正通行対策本部」を設置している。そして、通行者の特定を行うため、14、15両年度に、中部支社ほか4支社等(注)
において、不正通行の発生件数の多い86料金所の313レーンに不正通行対策用のビデオカメラ設備を計6億2057万余円で設置するなどの対策を実施している。
公団では、上記のビデオカメラ設備の撮影記録又は強行突破報告書等の記録により不正通行した車両の自動車登録番号を捕捉し、運輸支局等に車籍照会するなどして通行者を特定し、未納通行料金等の徴収に努めることになっている。
2 検査の結果
未納通行料金等の残高については、12年度末残高2億9255万余円に比べて、16年度末残高は約4.9倍の14億4328万余円と大幅に増加している。さらに、通行者を特定できない不正通行の発生件数についても、14年度の約13万件に比べて、16年度には約1.4倍の約18万件に増加している。
このような未納通行料金等の残高及び不正通行の発生件数の増加は、適正な通行料金の徴収が行われず、公団に損害を与えるとともに、通行者間の料金負担の公平性を損なうことから、次の点に着眼して検査した。
ア 未納通行料金等の金額の把握等は適切に行われているか
イ 未納通行料金等の督促等は適切に行われているか
ウ 不正通行に係る通行料金等の徴収は適切に行われているか
公団のすべての支社等及び管理事務所等における未納通行料金等の16年度末残高14億4328万余円、14年度から16年度までの通行者を特定できない不正通行件数計459,343件を対象として検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
(1)未納通行料金等の金額の把握等
公団では、未納金状況表により、未納通行料金等の残高を把握しているが、その金額を適切に把握するための具体的な基準を定めていないことから、管理事務所等において未納通行料金等として未納金台帳に計上する範囲が区々となっていたり、未納金状況表と未納金台帳の間で件数・金額が相違したりしていたため、未納金状況表に計上漏れとなっていたものが480件、468万余円、過大計上していたものが25,315件、3億3022万余円見受けられた。
この結果、16年度末の未納金状況表における未納通行料金等の残高14億4328万余円は11億1774万余円となる。
また、公団では、未納通行料金等の年度末残高を貸借対照表の資産の部に計上していなかったが、民営化時の開始貸借対照表に計上すべく、未納金管理システムを改修するなどの準備を進めている。その際、上記の未納通行料金等の残高については修正の上、適切に把握した金額を計上する必要がある。
(2)未納通行料金等の督促等
ア 前記のとおり、未納通行料金等が納入期日までに完納されない場合には、管理事務所等において督促等を行うこととなっている。また、時効の起算日から3年を経過した未納通行料金等については、管理事務所等から支社等へ未納金台帳等を引き継ぎ、支社等において催促等を行うこととなっている。
そこで、管理事務所等及び支社等における督促等の状況について検査したところ、事務処理要領等の規定どおりに督促等が適切に行われていないものが計73,681件、7億3560万余円見受けられた。その態様を示すと、次のとおりである。
〔1〕 管理事務所等において、告知書又は督促状記載の納入期日までに未納通行料金等を完納しない者に対して、督促状又は催促状を送付していないもの
47,895件、5億8208万余円
〔2〕 支社等において、管理事務所等から未納金台帳等の関係書類の引継ぎを受けていなかったり、引継ぎを受けていても催促等を行っていなかったりしているもの
25,786件、1億5352万余円
また、時効の起算日から4年を経過した未納通行料金等について、支払確約書を徴していないなど時効の中断を図っていないため、時効の起算日から5年を経過し消滅した債権は、表4のとおりとなっている。
14年度 | 15年度 | 16年度 | |||
件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 |
件 7,100 |
円 41,797,800 |
件 8,166 |
円 48,295,481 |
件 9,882 |
円 55,639,459 |
イ 公団では、通行料金等の未納を繰り返し行っている者(以下「常習者」という。)のうち、無料通行を宣言する書面を収受員に手渡して通行した者に対して強制徴収を行う場合などのため、その情報を最寄りの支社等に集約している。しかし、その他の常習者については、未納通行料金等が発生した料金所を管轄する管理事務所等が債権管理していることから、常習者に対する催促等を複数の管理事務所等が別々に実施するなどしていて、効率的に催促等を行うための公団全体としての取組が十分でない状況となっていた。
(3)不正通行に係る通行料金等の徴収
ア 通行者を特定できない不正通行の状況
前記のとおり、公団では、通行者を特定できない不正通行については、発生件数のみを集計しており、これまで、通行料金等の金額の把握は行われていなかった。今回、不正通行に関するデータが保存されている16年度に発生した187,247件分について、不正通行が発生している路線ごとに1台当たりの平均通行料金を算出し、それぞれに当該路線における発生件数を乗じて、不正通行に係る通行料金等を試算したところ、5億3101万余円と多額に上っていた。
なお、前記(1)の未納金状況表に過大計上していたものの中には、通行者を特定できない不正通行に係るものが、16年度末現在で、24,161件、3億2266万余円あった。
イ 不正通行対策の状況
不正通行に係る通行料金等の徴収を図るためには、通行者を特定した上で、未納通行料金等として債権管理し、当該通行者に対する督促等を強化することが必要である。そのため、公団では、通行者を特定するため、ビデオカメラ設備の撮影記録等を基に車籍照会するなどの対策を実施している。
しかし、ビデオカメラ設備の撮影記録等の活用状況を検査したところ、ビデオカメラ設備を活用する体制が十分に整備されていないことなどから、ビデオカメラ設備の撮影記録及び強行突破報告書等の記録を活用して車籍照会を行っていないなどしていて、通行者の特定が適切に行われていない事態が見受けられた。
なお、14年度から16年度までの間に不正通行に係る通行料金等を徴収した実績は1,353件、1295万余円となっており、このうち、ビデオカメラ設備によるものは59件、8万余円にとどまっていた。
上記(1)、(2)及び(3)のように、未納通行料金等の金額を適切に把握していないこと、未納通行料金等の督促等が適切に行われていないこと、ビデオカメラ設備の撮影記録等を有効に活用していないことなど、通行料金の確実な徴収を図るための体制の整備が十分でない事態は適切でなく、改善を図る必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、本社及び支社等において、未納通行料金等の金額を適切に把握するための具体的な基準を定めていないこと、未納通行料金等の督促等についての支社等及び管理事務所等の認識が十分でなく、公団全体として取り組む体制を整備していないこと、ビデオカメラ設備の撮影記録等を有効に活用するための体制の整備が図られていないことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、公団では、17年9月に、未納通行料金等及び不正通行に係る通行料金等の適切な管理及び徴収の確保が図られるよう、次のような処置を講じた。
ア 未納通行料金等の金額を適切に把握するための具体的な基準等を定めた事務連絡を発し、これに基づき、未納通行料金等の金額を適切に把握し、当該金額を貸借対照表に計上することとした。
イ 担当者会議を開催し、上記の事務連絡に基づき督促等を効率的に行うとともに、事務処理要領等に定める督促等の手続を遵守するよう支社等及び管理事務所等に周知徹底した。さらに、未納者との交渉記録等をデータベース化することにより、常習者に対する催促等を集約して行うなど、適切に債権管理を行う体制の整備を図った。
ウ 不正通行について、ビデオカメラ設備の撮影記録等をデータベース化するなどして通行者の特定を効率的に行う体制の整備を図るとともに、事務連絡を発し、当該撮影記録等を有効に活用するよう支社等及び管理事務所等に周知徹底した。