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  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 日本道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

雪氷対策作業に係る巡回車に乗務する者の職種の組合せ及び労務費の積算を作業の実態に適合するよう改善させたもの


(2)雪氷対策作業に係る巡回車に乗務する者の職種の組合せ及び労務費の積算を作業の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (項)高速道路管理費
  (項)一般有料道路管理費
部局等の名称 北海道、東北、北陸、中部、関西、中国、九州各支社、東京管理局(平成17年10月1日以降は、東日本高速道路株式会社の北海道、東北、関東各支社及び新潟管理局、中日本高速道路株式会社の中部地区支配人及び横浜、八王子、金沢各支社、西日本高速道路株式会社の関西、中国、九州各支社)
工事名 道東自動車道帯広管内道路保全工事ほか158工事
工事の概要 高速道路等の道路保全工事の一環として、降雪等による交通障害を防止するなどのため雪氷対策作業を実施するもの
工事費 772億4700万余円 (平成15、16両年度)     
請負人 北海道道路サービス株式会社ほか36会社
契約 平成15年4月〜17年2月 公募型指名競争契約、随意契約
招集時に巡回車に乗務する者の労務費積算額 9億8614万余円 (平成15、16両年度)
低減できた招集時に巡回車に乗務する者の労務費積算額 5340万円 (平成15、16両年度)

1 工事の概要

(工事の内容)

 日本道路公団(平成17年10月1日以降は、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構。以下「公団」という。)では、15、16両年度に、高速道路等の機能を保持するため、雪氷対策作業、修繕、事故復旧等を行う道路保全工事159工事(工事費総額772億4700万余円)を北海道道路サービス株式会社ほか36会社に請け負わせ実施している。
 このうち、雪氷対策作業は、降雪等による交通障害を防止し、道路利用者を安全、円滑に通行させるため、巡回車及び除雪車により、冬期間における路面、道路付帯設備等の除雪作業等を行うものである。

(連絡員及び自動車運転手等の業務)

 公団制定の「維持修繕作業共通仕様書」(以下「共通仕様書」という。)によると、連絡員は、巡回車を運転し又はこれに同乗して道路を巡回し、道路状況等を把握してその内容を公団の管理事務所等に設置された雪氷対策本部(以下「本部」という。)に通報するとともに、本部等において作業記録の作成補助等の業務(以下「補助業務」という。)を行うこととされている。
 また、自動車運転手と運転助手等(以下「自動車運転手等」という。)は、除雪車を運転・操作することにより除雪作業等を行うこととされている。

(招集時に巡回車及び除雪車に乗務する者の労務費の積算)

 巡回車及び除雪車には通常2名の者がそれぞれ乗務するが、その作業体制は、あらかじめ設定された期間・時間内に常時拘束される体制と、必要の都度招集され所定の時間内拘束される体制とがある。このうち、招集時に巡回車及び除雪車に乗務する者の労務費は、公団制定の「土木工事積算要領」(以下「積算要領」という。)に基づき、次のとおり、その職種の区分に応じて積算することとされている(参考図参照)

(1)連絡員の労務費について

 連絡員は、道路を巡回して道路状況を把握・通報する巡回作業の前後においても、本部等で補助業務に従事することから、拘束されている時間(以下「拘束時間」という。)内は、連続して作業を行うこととなっている。したがって、連絡員の労務費は、1時間当たりの基本賃金に各種作業手当を加えた1時間当たりの単価(以下「作業単価」という。)に拘束時間を乗じて算定する。

(2)自動車運転手等の労務費について

 自動車運転手等は、除雪車の運転・操作の除雪作業等の前後は本部等において待機していることから、自動車運転手等の拘束時間は作業を行っている時間(以下「作業時間」という。)と行っていない時間(以下「待機時間」という。)に区分され、その労務費は、作業単価に作業時間を乗じて算定する作業労務費と、作業単価から雪氷作業手当を減額するなどした1時間当たりの単価(以下「待機単価」という。)に待機時間を乗じて算定する待機労務費を合算して積算する。

(参考図)

招集時の労務費積算の概念図

招集時の労務費積算の概念図

 以上の方法により、招集時に巡回車及び除雪車に乗務する者の労務費を積算していて、このうち巡回車に乗務する者の労務費を9億8614万余円と積算していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 冬期間において毎年継続的に行われる雪氷対策作業は、高速道路等の重要な管理業務であり、多額の経費を要していることから、その職種が実際の作業内容に適合しているか、また、その労務費の積算が実態に適合した合理的、経済的なものとなっているかに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、招集時に巡回車に乗務する者の職種及び労務費の積算について、次のような事態が見受けられた。

(1)職種及び労務費の積算が実態に適合していないもの

 関西、九州両支社及び東京管理局管内の8管理事務所(注1) では、巡回車に乗務する者2名の職種をいずれも連絡員(1時間当たりの基本賃金1,900円〜2,437円)としていた。そして、その労務費については、拘束時間内は連続して作業を行うこととして、連絡員の作業単価に拘束時間を乗じて積算していた。
 しかし、運転日報等により作業の実態を調査したところ、上記の2名のうち1名については、車両上で道路状況等を把握し本部に通報することを主な作業としていて、この作業を行っていないときは連続して本部等において補助業務に従事していたが、もう1名は、専ら巡回車の運転に従事していて、巡回車を運転していない時間は本部等で待機している状況であった。
 したがって、巡回車に乗務する者の職種については、作業の実態に基づき、原則として連絡員1名と自動車運転手(1時間当たりの基本賃金1,662円〜2,125円)1名の組合せとすることが適切と認められた。そして、1名を自動車運転手とした場合の当該運転手の労務費については、作業の実態に合わせて、拘束時間を作業時間と待機時間に区分して積算し、そのうち待機時間の労務費については自動車運転手の待機単価を乗じて算定すべきであると認められた。

(2)労務費の積算が実態に適合していないもの

 北海道、東北、北陸各支社及び東京管理局管内の36管理事務所等(注2) では、巡回車に乗務する者2名の職種を連絡員と自動車運転手(各1名)としていた。そして、労務費については、両名とも、拘束時間内は連続して作業を行うこととして、連絡員と自動車運転手の作業単価に拘束時間をそれぞれ乗じて積算していた。
 しかし、運転日報等により作業の実態を調査したところ、連絡員とした者は、前記(1)と同様に、拘束時間内は連続して作業を行っていたが、自動車運転手とした者は、巡回車を運転していない時間は本部等で待機している状況であった。
 したがって、自動車運転手とした者の労務費については、作業の実態に合わせて、拘束時間を作業時間と待機時間に区分して積算し、そのうち待機時間の労務費については作業単価ではなく自動車運転手の待機単価を乗じて算定すべきであると認められた。
 現に、中部支社等管内の23管理事務所等では、巡回車に乗務する者2名のうち1名の職種を自動車運転手とし、さらに、その労務費については拘束時間を作業時間と待機時間に区分して積算し、そのうち待機時間の労務費については自動車運転手の待機単価を乗じて算定していた。

(低減できた積算額)

 このように、前記の159工事における雪氷対策作業費について、招集時に巡回車に乗務する者の職種の組合せを連絡員と自動車運転手(各1名)とし、その上で、自動車運転手の労務費について、待機時間には自動車運転手の待機単価を乗ずるなどして修正計算すると、前記の積算額9億8614万余円は9億3269万余円となり、約5340万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、招集時に巡回車に乗務する者の職種の組合せ及び労務費の積算について、共通仕様書及び積算要領において明確になっていなかったこと、作業の実態等を労務費の積算に適切に反映させるための検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、17年9月に、雪氷対策作業費の積算に当たっては、招集時に巡回車に乗務する者の職種の組合せを原則として連絡員と自動車運転手(連絡員助手)によることとし、その上で、自動車運転手の労務費については、拘束時間を作業時間と待機時間に区分して積算し、そのうち待機時間の労務費については自動車運転手の待機単価を乗じて算定するよう共通仕様書及び積算要領を改正し、同年10月以降契約する工事から適用する処置を講じた。

(注1) 関西、九州両支社及び東京管理局管内の8管理事務所 吹田、南大阪、福知山、神戸、京都丹波道路、下関、八代、袋井各管理事務所(平成17年10月1日以降は、中日本高速道路株式会社の横浜支社、西日本高速道路株式会社の関西、九州両支社管内の8管理事務所)
(注2) 北海道、東北、北陸各支社及び東京管理局管内の36管理事務所等 帯広、鶴岡両工事事務所、金沢管理所(平成17年7月1日以降は、金沢管理事務所)、室蘭、苫小牧、札幌、岩見沢、旭川、青森、十和田、盛岡、北上、古川、仙台、福島、郡山、八戸、横手、秋田、山形、いわき、会津若松、湯沢、新潟、長岡、上越、富山、福井、敦賀、所沢、高崎、佐久、長野、大月、甲府、松本各管理事務所(17年10月1日以降は、東日本高速道路株式会社の北海道、東北、関東各支社及び新潟管理局、中日本高速道路株式会社の八王子、金沢両支社管内の36管理事務所等)