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  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 日本原子力研究所|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

燃料試験施設を外部利用させるに当たり、作業の実態を適切に反映した料金単価とするよう改善させたもの


燃料試験施設を外部利用させるに当たり、作業の実態を適切に反映した料金単価とするよう改善させたもの

科目 (款)事業収入 (項)事業収入
部局等の名称 日本原子力研究所(平成17年10月1日以降は独立行政法人日本原子力研究開発機構)本部
燃料試験施設利用の概要 原子力の開発及び利用の促進に寄与する目的で燃料試験施設を民間企業、大学等の利用に供しているもの
利用料金徴収額 2億6760万余円 (平成15、16両年度)
利用料金として徴収できた額 4100万円 (平成15、16両年度)

1 利用料金の概要

(燃料試験施設の概要)

 日本原子力研究所(平成17年10月1日以降は独立行政法人日本原子力研究開発機構。以下「原研」という。)では、原子力の研究、開発及び利用の促進に寄与する目的で、原子力発電所等で使用済みとなった燃料集合体(注) 等の安全性、健全性等についての試験を実施するため、東海研究所に燃料試験施設を設置している。燃料試験施設では、放射線を遮へいするコンクリート又は鉛で覆われた試験室に燃料集合体等を搬入して、試験室の外部に設置された作業ステーションからの遠隔操作により、中性子の照射の影響等を各試験装置で測定等して試験を実施している。
 そして、上記の試験に当たっては、燃料集合体等の核燃料物質を取り扱うことから、「東海研究所核燃料物質使用施設等保安規定」(平成12年12達第77号。以下「保安規定」という。)に基づき、施設の定期点検、日常点検等を実施しなければならないこととされている。

燃料集合体 ウランなどの核燃料物質を原子炉で燃料として使用するため、被覆管で密封した核燃料物質(燃料棒)をひとまとまりの単位に組み立てたもの

(燃料試験施設の外部利用)

 近年、商業用原子力発電所等において使用済みの燃料集合体等の貯蔵量が増加していることなどから、燃料集合体等をより効率的で安全に使用する研究、開発等が民間企業、大学等で行われている。そこで、原研では、原子力の開発及び利用の促進に寄与するため、このような外部機関からの利用申込みに基づき、燃料試験施設を当該外部機関の利用に供することとしている。そして、この場合、試験は原研の職員が行うこととし、燃料試験施設を利用した外部機関からは利用料金を徴収することとしている。

(利用料金の算定及び徴収)

 上記のような外部機関の利用に当たり、原研では、「共同利用業務取扱規程」(昭和49年49達第5号)において、燃料試験施設の利用時間1時間を1点として、放射線測定、外観観察等の試験項目ごとの標準的な試験に要する時間に基づき点数を定め、この点数に燃料試験施設1時間当たりの利用料金単価(以下「料金単価」という。)を乗じて得た額を利用料金として徴収することとしている。

(料金単価の算出)

 原研では、上記の規程で定めている料金単価を次のように算出している。
〔1〕 燃料試験施設で実際に試験を実施することが可能な年間の運転時間(以下「年間運転可能時間」という。)を、1日の勤務時間(8.5時間)から休憩時間(1時間)を控除した1日当たりの運転可能時間7.5時間に定期点検、休日を除いた年間の運転日数(過去3箇年平均184.4日)及び作業ステーション数(25)を乗じて34,575時間とする。
〔2〕 燃料試験施設の1年間の運営に伴い発生する人件費、施設保守費、減価償却費、間接費等(以下、これらを「発生費用」という。)を〔1〕の年間運転可能時間で除して得た額50,550円(消費税込み。以下同じ。)を料金単価とする。
〔3〕 なお、その利用目的が研究開発である場合は、原子力の研究、開発の促進に寄与するという原研の設立目的に沿うものであることなどから、外部機関の負担を軽減するため、発生費用から減価償却費及び間接費を控除した額を年間運転可能時間で除して得た額23,640円を研究開発利用の料金単価とする。
 これにより、原研では、利用料金として、15年度に123,604,560円、16年度に144,067,980円、計267,672,540円を徴収していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 原研は、燃料試験施設の維持及び運営に多額の経費を要している。また、近年、法令により核燃料物質等の取扱いに関する規制が強化されており、それに伴って、保安規定で定められた点検項目が増加していることなどから、利用料金の算定がこのような作業の実態に即して適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、利用料金の算定について次のように適切とは認められない事態が見受けられた。
 すなわち、前記のとおり、原研では年間運転可能時間を、1日の勤務時間(8.5時間)から休憩時間(1時間)を控除して1日当たり7.5時間とし、これに定期点検、休日を除いた年間の運転日数及び作業ステーション数を乗じて算出していた。
 しかし、燃料試験施設については、保安規定により、定期点検のほか試験を実施するに当たって、試験装置等の安全を点検し異常がないことを確認しなければならないこととなっている。このため、試験開始前に各試験装置が正常に維持されているか、安全装置及び警報装置等の計器類の指示値が正常であるかなどの点検作業に30分、また、試験終了後にも同様に30分、計1時間要しており、この間は試験を実施できない状況となっていた。
 したがって、実際に試験装置等を運転して試験が実施できる1日当たりの運転可能時間は、前記の7.5時間から更に点検作業の時間1時間を控除した6.5時間とすべきであったと認められた。

(燃料試験施設の運転可能時間に基づいて算定した利用料金)

 利用料金の算定に当たって、1日当たりの運転可能時間を6.5時間として年間運転可能時間(29,977時間)を算出し、これに基づいて料金単価を算出すると、前記〔2〕、〔3〕の料金単価は、それぞれ58,300円、27,270円となり、これらに15、16両年度の試験項目の点数の実績を乗じると、15年度で142,564,330円、16年度で166,170,315円、計308,734,645円となり、前記の267,672,540円との差額約4100万円が利用料金として徴収できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、近年、核燃料物質等を取り扱う施設において安全確保の視点から点検作業の重要性が増し、保安規定による点検項目が増加するとともに、その記録及び保存が義務付けられて点検作業の内容及び時間を容易に把握できることとなっているのに、これらを利用料金の算定に反映させていなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、原研及び核燃料サイクル開発機構を統合し17年10月に新たに設立された独立行政法人日本原子力研究開発機構では、利用料金の適正化が図れるよう、同月に、燃料試験施設の作業の実態を反映させて1日当たりの運転可能時間に点検作業時間を含まない適正な料金単価とする規則を制定し、同月以降の燃料試験施設の外部利用の申込みから適用する処置を講じた。