独立行政法人名 | (1) | 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構(平成15年9月30日以前は独立行政法人農業技術研究機構) |
(2) | 独立行政法人農業生物資源研究所 | |
科目 | (1) | (農業技術研究業務勘定(平成15年10月1日以降)) 工具器具備品 |
(2) | 機械及び装置 | |
部局等の名称 | (1) | 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構中央農業総合研究センターほか6研究所 |
(2) | 独立行政法人農業生物資源研究所 | |
契約の概要 | 研究用機器の購入 |
適切な契約事務を実施する要があると認められた契約件数及び契約金額 | (1) | 31件 | 1億8934万円 | (平成15、16両事業年度) |
(2) | 21件 | 7753万円 | (平成15、16両事業年度) |
1 購入契約の概要
独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構(平成15年9月30日以前は独立行政法人農業技術研究機構。以下「研究機構」という。)及び独立行政法人農業生物資源研究所(以下「生物研究所」という。)では、農業等に関する種々の試験、研究等を行っている。そして、両法人では、15、16両事業年度に、国の施設整備費補助金又は運営費交付金により、試験、研究等の実施に必要な研究用機器を購入している。
両法人における研究用機器の購入に係る会計事務処理は、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構会計規程(13規程第26号)等及び独立行政法人農業生物資源研究所会計規程(13農生研第28号)等に基づき行うこととされ、次のとおり規定されている。
〔1〕 購入契約を締結する場合には、原則として一般競争に付することとし、一般競争に付することが不利と認められるときなどの場合は指名競争に付するものとする。
〔2〕 契約の性質又は目的が競争を許さないとき、緊急を要する場合で競争に付することができないとき、競争に付することが不利と認められるときは随意契約によるものとし、予定価格が500万円を超えない物品を買い入れるときなどの場合には随意契約によることができる。
〔3〕 随意契約による場合でも、原則として予定価格を定め、なるべく2以上の者から見積書を徴さなければならない。
両法人では、研究用機器を随意契約で購入する場合の事務処理を次のように行っている。
〔1〕 研究者は、購入予定の研究用機器について、2、3社の製造メーカーの機種を機能などの面から検討する。
〔2〕 研究者は、これらのうちから、原則として実施予定の研究業務に必須な機種として特定の製造メーカー1社の研究用機器を選定し、各研究施設の契約担当職員に対し、当該研究用機器の購入の請求を行う。
〔3〕 これを受けた契約担当職員は、仕様の精査を行うなどして予定価格を定める。
〔4〕 契約担当職員は、予定価格作成後、購入予定の研究用機器が、製造メーカーにより直接販売されている場合には、契約の相手方は製造メーカー1社となるため、当該製造メーカーから見積書の提出を受ける。また、当該研究用機器が製造メーカーの販売代理店や特約店(以下、これらを「代理店」という。)を通じて販売されている場合には、原則として研究施設が所在する各都道府県内(以下「県内」という。)の代理店1社又は複数社から見積書の提出を受ける。
〔5〕 契約担当職員は、当該研究用機器が製造メーカーにより直接販売されている場合には、予定価格の範囲内の見積価格であれば当該製造メーカーと随意契約により研究用機器を購入する。また、代理店を通じて販売されている場合には、1社の場合は予定価格の範囲内の見積価格であれば当該代理店と、複数社の場合は予定価格の範囲内で最低の見積価格を提出した代理店と随意契約により研究用機器を購入する。
研究用機器の製造メーカーは、一定の地域における代理店の設置に当たって、1社しか認めない場合と複数社の設置を認める場合がある。また、代理店には、製造メーカーとの代理店契約により、取引地域について、県内など一定の地域に限定している場合と取引地域を限定していない場合がある。
したがって、両法人と代理店との契約事務は、次のようになる。
購入予定の研究用機器を取り扱う代理店が県内に複数社ある場合には、県内の代理店各社による競争契約又は各社からの見積書の徴取による随意契約ができる。しかし、県内に代理店が1社しかない場合には、当該代理店との随意契約となるが、上記の代理店契約において取引地域を限定されていない代理店が県外にあれば、県外の代理店からも購入することが可能であるので、県外の代理店を含めた各社による競争契約又は各社からの見積書の徴取による随意契約ができる。
2 検査の結果
両法人では、研究用機器の購入に係る支払額が毎年度多額に上っている。そこで、研究機構の内部組織である中央農業総合研究センターほか9研究所(注1) (以下「機構研究所」という。)及び生物研究所において、15、16両事業年度に締結された研究用機器の購入契約のうち、機構研究所における1件当たり300万円以上の309件、契約金額20億2634万余円、生物研究所における1件当たり100万円以上の154件、契約金額8億3646万余円を対象として、その契約方式の決定方法が公正性及び競争性を確保したものとなっているかなどに着眼して検査した。
検査したところ、15、16両事業年度において、研究用機器を随意契約により購入した件数、契約金額は、機構研究所166件、8億7290万余円、生物研究所123件、4億9779万余円となっており、このうち、1社のみから見積書を徴取しているものは、機構研究所108件、6億4231万余円、生物研究所43件、3億2810万余円となっていた。そして、製造メーカーが直接販売する場合や代理店の取引地域が限定されかつ県内に代理店が1社しかない場合を除いた中央農業総合研究センターほか6研究所(注2) 31件(契約金額1億8934万余円)、生物研究所21件(契約金額7753万余円)の購入契約において、次のとおり、契約方式の決定が適切でなかったり、見積書の徴取が適切でなかったりしていて、公正性及び競争性が確保されていないと認められる事態が見受けられた。
ア 契約方式の決定が適切でなかったもの
機構研究所 | 粒度分布測定装置ほか17件 | 1億4487万余円 | ||
生物研究所 | 熱風循環乾燥機ほか4件 | 3305万余円 |
研究用機器の納入が可能な代理店が県内に1社しかないことから契約の性質又は目的が競争を許さない場合に該当するとして、当該代理店のみから見積書を徴取し、随意契約により購入していたが、県内に研究用機器の納入が可能な代理店が複数あったり、県外に取引地域を限定しない代理店があったりしていて、これらも含めて競争契約に付することが可能であった。
イ 見積書の徴取が適切でなかったもの
機構研究所 | 高速液体クロマトグラフほか12件 | 4447万余円 | ||
生物研究所 | エチレン高感度分析装置ほか15件 | 4448万余円 |
研究用機器の予定価格が500万円を超えないため、随意契約により購入することとして、代理店1社から見積書を徴取していたが、県内に研究用機器の納入が可能な代理店が複数あったり、県外に取引地域を限定しない代理店があったりしていて、これらも含めて複数の見積書を徴取することが可能であった。
したがって、研究用機器の購入契約に当たり、適切な契約方式によっていなかったり、見積書の徴取が適切でなかったりしている事態は、契約事務における公正性及び競争性が十分確保されていないことから適切とは認められず、改善を図る要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、両法人において、研究用機器の購入契約に当たり、当該研究用機器の納入が可能な代理店が県内に複数社あるか又は県外にもあるかなどについて十分な調査を行っていなかったこと、公正性及び競争性の確保についての検討が十分でなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、両法人では、契約事務における公正性及び競争性の確保を図るため、17年9月に、研究機構では機構研究所に対して事務連絡を発し、生物研究所では契約方法についての取扱いを定めて、研究用機器の購入契約については、調達先を県内の代理店に限らず県外の代理店も含めた競争参加者の拡大を図るなど適切な契約事務の実施について周知徹底を図った。
(注1) | 中央農業総合研究センターほか9研究所 中央農業総合研究センター、果樹研究所、花き研究所、野菜茶業研究所、畜産草地研究所、動物衛生研究所、北海道農業研究センター、東北農業研究センター、近畿中国四国農業研究センター、九州沖縄農業研究センター |
(注2) | 中央農業総合研究センターほか6研究所 中央農業総合研究センター、果樹研究所、花き研究所、野菜茶業研究所、動物衛生研究所、東北農業研究センター、近畿中国四国農業研究センター |