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  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第8 独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

駐留軍等労働者に対する定期健康診断を委託により実施するに当たり、契約単価の設定を診療報酬点数表によることなく市場価格等を考慮することにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの


駐留軍等労働者に対する定期健康診断を委託により実施するに当たり、契約単価の設定を診療報酬点数表によることなく市場価格等を考慮することにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの

科目 受託経費
部局等の名称 独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構三沢支部ほか9支部
委託先 三沢市立三沢病院ほか11健診機関等
委託契約名 健康診断の業務委託
契約の概要 防衛施設庁から委託を受けた駐留軍等労働者に対する定期健康診断等の健康診断業務を健診機関等に再委託するもの
上記に係る委託費 3億0275万余円 (平成16年度)
上記のうち定期健康診断の委託費 1億8981万余円  
上記に係る定期健康診断の受診者数 23,420人  
節減できた定期健康診断の委託費 6480万円  

1 定期健康診断の概要

(独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構の業務)

 独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構(以下「機構」という。)では、独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構法(平成11年法律第217号)に基づき、我が国に駐留しているアメリカ合衆国軍隊及びその施設内に設置されている食堂、売店等に必要な労働力の確保を図ることを目的として、これらのために労務に服する者(以下「駐留軍等労働者」という。)の雇入れ、提供、労務管理等に関する業務を行っている。また、同法の規定により、これらの業務のほか、法令の規定により事業者としての防衛施設庁でなければ行うことができないとされる福利厚生業務の一部を、同庁の委託に基づき行うことができることとされている。

(防衛施設庁からの福利厚生業務の受託)

 機構では、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)の規定により事業者である防衛施設庁が毎年行わなければならないとされている駐留軍等労働者に対する定期健康診断等の福利厚生業務について、防衛施設庁の委託を受けて行っている。そして、機構では、毎年度、当該福利厚生業務に係る委託契約(以下「福利厚生業務委託契約」という。)を防衛施設庁との間で締結していて、平成16年度の国からの委託費は3億8281万余円(精算後)、このうち駐留軍等労働者に対する定期健康診断に係る分は1億8981万余円となっている。

(定期健康診断の実施)

 定期健康診断は、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)に基づき、事業者が、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回定期に、問診及び聴打診、血圧測定、胸部エックス線検査等の健康診断項目(以下「健診項目」という。)について医師による健康診断を行うものであり、これらの健診項目のうち一部については、受診者の年齢等により検査を省略できることとされている。
 そして、機構の三沢支部ほか9支部(注) では、防衛施設庁から機構が受託した前記の福利厚生業務のうち、各支部管内の駐留軍等労働者に対する定期健康診断等の健康診断業務について、健康診断業務を実施している医療機関等(以下「健診機関等」という。)に再委託することとし、健診機関等との間で再委託に係る契約(以下「健康診断委託契約」という。)を締結している。

(健康診断委託契約の概要)

 各支部では、健康診断委託契約において、駐留軍等労働者に対する定期健康診断については、前記のとおり、受診者の年齢等により省略できる健診項目があることから、受診者を40歳未満の者(35歳の者を除く。)、35歳の者及び40歳以上の者等に区分してその区分ごとに受診者1人当たりの契約単価を設定し、各契約単価に受診者数を乗じるなどして委託費を算定している。
 そして、機構では、毎年度、四半期ごとに防衛施設庁から委託費の概算払を受け、各支部において再委託により本件定期健康診断を実施し、再委託に要した委託費の合計額を翌年4月に防衛施設庁に提出する福利厚生業務委託契約に係る業務報告書に記載し、防衛施設庁は、この金額により福利厚生業務委託契約のうちの定期健康診断に係る分の委託費を精算している。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 駐留軍等労働者の数は16年度末現在で約2万5千人となっており、駐留軍等労働者に対する定期健康診断の委託費も多額に上っていることから、これに係る契約単価は経済的なものとして設定されているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 各支部において、16年度に三沢市立三沢病院ほか11健診機関等に再委託した、健康診断業務に係る委託費3億0275万余円のうち、駐留軍等労働者に対する定期健康診断の委託費計1億8981万余円(受診者数23,420人)を対象に検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、本件定期健康診断の委託費の算定に当たり、次のような事態が見受けられた。
 機構では、防衛施設庁との間で締結された福利厚生業務委託契約により示された委託業務計画書において、定期健康診断について、「契約単価は、厚生労働省が定める診療報酬点数表による。」などと記述されていることから、毎年度、個々の健診項目ごとに健康保険法(大正11年法律第70号)に基づく医科診療報酬点数表の点数(以下「健保点数」という。)及びこれらに10円を乗じて算出した単価を記述した健康診断診療報酬表を作成し、各支部に対して、健診機関等との健康診断委託契約の締結に当たってはこれにより契約単価の設定等を行うよう事務連絡を発していた。
 そして、各支部では、大部分の健康診断委託契約において、上記の健康診断診療報酬表の該当する健保点数による額に基づいて本件定期健康診断の契約単価を設定していた。
 しかし、健保点数は、医療機関が健康保険法等に基づき医療給付を行った場合の報酬を算定するために定められたものであり、医療給付の対象とならない定期健康診断においては適用する必要はないものである。そして、一般に健診機関等では、定期健康診断について、健保点数によらない安価な料金を独自に設定している。
 現に、各支部では、支部職員の定期健康診断について複数の健診機関等から見積りを徴しそのうちの最低価格の者と契約を締結するなどしたり、また、駐留軍等労働者について、岩国支部では、一部の健康診断委託契約において、健保点数によらずに見積りによる安価な契約単価を設定したりして、市場価格を考慮した契約を行っている状況であった。
 したがって、上記のように、本件定期健康診断の実施に当たり、適用する必要がない健保点数をそのまま用いて契約単価を設定していて市場価格が考慮されていない事態は適切とは認められず、改善を図る要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、機構において、健保点数に関する理解が十分でなく、駐留軍等労働者に対する定期健康診断の経済的な実施に対する配慮が不足していたこと、また、防衛施設庁において、委託業務計画書の契約単価に関する記述が適切でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、駐留軍等労働者に対する定期健康診断が経済的に実施されるよう、機構では、17年3月に各支部に対して通知を発し、健康診断委託契約締結の際は市場価格を調査した上で予定価格を算定することとし、また、防衛施設庁では、17年度の委託業務計画書の記述について、健康診断委託契約締結の際は市場価格等を考慮することとする適切なものに改めるなどの処置を講じた。
 なお、当局が改善の処置を講じた後の契約単価を用いて計算すると、16年度の委託費は約6480万円節減できたこととなる。

三沢支部ほか9支部 三沢、横田、横須賀、座間、富士、呉、岩国、佐世保、那覇、コザ各支部